ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
その頃阿賀野は、自分の記憶を頼りに那珂が居るであろう地点へ向かっていた。
「多分この辺りのはずなんだけど・・・それに途中出くわした敵艦との戦闘で弾薬ももうちょっとしか残ってないし・・・」
そんな時である、電探に反応があった。
「艦娘の反応が2つ?いや、もう片方は艦娘じゃない。何・・・この反応?日も翳って来たし、とにかく急がなきゃ!」
そして阿賀野が速力を上げ、反応のあった地点に近付くと急に辺りの天候が悪化し始めた。
「やだ、雨・・・それに艦娘じゃない反応もこっちに近付いてくるし最悪・・・」
阿賀野は少し不満を洩したが警戒態勢に入る。すると暗がりの中から艦娘の様な影が見えた
「那珂ちゃん!」
知っていた。彼女自身は那珂に合った事は無いが、あの髪型は那珂の物だと阿賀野の脳はそう告げている。しかし電探の反応は艦娘の物ではない。それにそれとは別になにか不気味なプレッシャーの様な物を感じる。
「いや・・・那珂ちゃんじゃない、あなたはだれ・・・?」
阿賀野は恐怖心や好奇心に駆られその影に呼びかけた。するとその影は答えた
「ヤハリ・・・キタカ・・・ニドトフジョウデキナイシンカイへ・・・シズメッ!」
その影はそう言うと砲をこちらに向けてくる。
「なに・・・あれ・・・」
阿賀野はその姿に驚いた。その姿は艦娘により近い姿をしていて、更にどことなく阿賀野自身に似ていると感じた。しかし下半身は人ならざる形をしておりそれは深海棲艦である事はわかった。
「そっちがその気ならこっちだって!阿賀野はその向こうに用があるのだから無理矢理にでも退いてもらうわ!最新鋭軽巡の力見せてあげるんだから!」
阿賀野はその影との戦闘に入った。
「全砲門発射ぁ!」
そう言って阿賀野は砲を放った。
「直撃のはず、せめて航行不能にさえなってくれれば・・・」
阿賀野はそう呟いたが
「ソノテイドカ・・・?」
黒煙の中から傷一つ付いていないその影が現れる。
「そんな・・・直撃のはずなのに傷一つ付けられないなんて・・・・」
阿賀野はその装甲の堅さに恐怖した。
「フン!キサマモ・・・コノサキニイルカンムスモ・・・スベテミナゾコへシズメテヤル・・・」
影はそう言うと砲撃を放って来た。
「駄目!速力が出ない・・・やっぱり補給してないから・・・」
阿賀野は砲撃を避けきれずに被弾してしまう。
「きゃああああっ!」
それを見た影は
「フッ・・・ショセン・・・キサマハマガイモノ・・・マガイモノニハワタシハタオセヌ・・・ソレニ・・・ナニモマモルコトスラデキヌ・・・・」
と阿賀野を嘲り笑った。
「このままじゃ本当にやられちゃう・・・それにこの燃料じゃ今から離脱しようとしても追いつかれるのがオチ・・・どうすれば良いの・・・」
いつしか日は沈み辺りは暗闇に包まれていた。
「このままだと夜戦になる・・・弾薬も持ってあと1発2発が良い所。夜戦の一撃にすべてをかける!」
阿賀野はそう決め隙をうかがう事にし、暗闇に紛れ影の攻撃をなんとかかわす事に専念した。
「ドウシタ・・・?マガイモノ・・・ショセンキサマハイツワリノキオクニアヤツラレテイルダケニスギヌ・・・・イマキサマガカンジ、カンガエテイルコトスベテガジブンノモノデハナイ・・・タダノアヤツリニンギョウ二スギヌ・・・アワレナニンギョウヨ・・・スグミナゾコニタタキオトシテクレヨウ・・・」
影はそう言った。その言葉は阿賀野に突き刺さった。
「阿賀野は・・・いや、私は・・・・」
阿賀野はそこで言葉を詰まらせる
「ドウシタ・・・?マダクチゴタエヲスルヨリョクガアルノカ・・・?ミニクイアガキダ・・・・マガイモノメ・・・キサマモ・・・ワレワレトオナジヨウニシズンデイケ・・・・!」
影はそれを見て更に阿賀野を嘲り笑った。その一言で阿賀野は自分の感じている不気味な感覚、そして影の正体に確証はないが気が付いた。
(そうか・・・この影は昔の阿賀野確証はないけどなにか心の深い所であの影の悲しみや無念が伝わってくる・・・・でもっ提督さんが私は私だって言ってくれたから!絶対負けない!!負けるもんですか!!)
「私は・・・私は紛い物なんかじゃない!!この頭の中に流れる記憶が自分自身の物じゃなくったって私は私なんだ!ここに来たのだって阿賀野としてじゃない。私自身がしたかったからそうしただけ!もうこれ以上私のせいで誰かが死ぬのなんて嫌なの!!例えそれが自分の記憶じゃなかったとしても。私にだって守りたい物の一つや二つ絶対守る!!私は阿賀野だけどあなたじゃない!!私は那珂ちゃんを助けて一緒に帰るんだ!!」
阿賀野は覚悟を決め影に砲と魚雷発射管を向ける。
「ホザクナマガイモノメ!ソノクチニドトヒラケヌヨウニシテヤル・・・シズメエエエエエ!!!!!」
影も同じようにして砲を阿賀野に向ける。
その時一筋の光が影の顔に当たる。
「クッ!・・・ナンダ・・・・?コシャクナ・・・・!!」
光が影の全身を映し出し、影はその眩しさに目を覆った。
「動きが止まった。今しかない!!届けええええええええええ!!」
阿賀野は影にできるだけ接近し、全砲門からありったけの砲弾と魚雷を影に放った。