ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

16 / 97
かけがえの無い仲間

 居酒屋おおとりを後にした俺は大急ぎで鎮守府へと戻った。阿賀野の容態はどうだろうか。とりあえず医務室に行こう。

そして医務室へと歩いていると吹雪に話しかけられる。

「司令官、お帰りなさい。何処に行ってたんですか?高雄さんが急に出て行ったって言っていたので心配しましたよ」

吹雪は少し怒ったような口調でそう言った。

「急に出て行って悪かった。それより阿賀野の調子はどうなんだ?」

俺は吹雪に尋ねた。すると吹雪は少し不機嫌そうな顔をして、

「医務室でまだ眠っています。高雄さんが様子を見てるみたいですよ」

と言った。

「ありがとう吹雪」

俺はそう言ってその場を後にした。

そして医務室の前に到着。眠っていると聞いたのでひとまず静かにノックをする。

すると、戸が開き高雄さんが出て来た。

「あら提督、何処へ行ってたんですか?」

やはり吹雪と同じ質問をされる。

「ちょっと近所まで・・・」

俺は適当に誤摩化した。

「そうですか、深くは聞きませんが」

と高雄さんはそう言った。

「ところで阿賀野の様子はどうなんですか?」

俺は一番に気になっている事を聞いた。

「もう大分落ち着いたけどまだベッドで横になっているわ」

よかった。阿賀野は落ち着いているようだ。

「あの、高雄さん?」

「はい、なんでしょう提督」

「阿賀野と話がしたいんですけど今話せる状態ですかね?」

俺は高雄さんに尋ねる。

「ええ。寝てはいないはずだしもう話位はまともにできると思うわ。私は席を外した方がいいかしら?」

高雄さんは俺に聞いてくる。

「はい。その方が有り難いです」

すると

「では提督。私は執務室で大淀ちゃんのお手伝いをしていますから何かあったら呼んでくださいね」

そう言って高雄さんは執務室へ行ってしまった。

俺は一度深く深呼吸をしてから医務室の中に入る。

「阿賀野、入るぞ」

すると。阿賀野はこちらに気付き

「提督さん・・・ごめんなさい。阿賀野・・・」

やはり阿賀野の声にいつもの元気は無い。

「阿賀野、俺は今思っている事をお前に伝えに来た」

俺はそう言った。

「えっ・・・・」

阿賀野はそう言って言葉を詰まらせる。

「まあ良いから聞くだけ聞いてくれ。言うぞ。阿賀野、まだ俺はこの鎮守府に来て1ヶ月も経っていないけど吹雪や淀・・じゃなかった大淀、それに愛宕さんや高雄さんそれにお前も含めた皆が居てこそこの××鎮守府だと思ってる。だから誰一人欠けちゃいけないと思うんだ。みんな変わった艦娘(?)しかいないこの鎮守府だけど、みんなかけがえの無い仲間だと俺は思ってる。それにもっと皆と一緒にこの鎮守府でやっていきたい。お前の事ももっと知りたいんだ。だからお前には居なくなって欲しくない。だからお前は無理にあの作戦に出なくても良い。他の3人だけでもきっとなんとかなるし皆も納得してくれる。いや!なんとかする!俺はただここで指示を出す事しかできないけど絶対になんとかしてみせる。だからお前は・・・」

俺がそこまで言いかけると阿賀野がかぶせて口を開く

「提督さん!」

俺はその言葉に驚き話が止まる。そして数秒間の沈黙を破り阿賀野がまた口を開く

「提督さんの気持ちは嬉しい。でも阿賀野本当にもう大丈夫だから!」

阿賀野は無理に元気そうな声を出して言う。そして

「それに皆がいてこその××鎮守府なんでしょ?それなら尚更私だけ何もしないなんてそんなのできないよ。それに阿賀野達の事大切に思ってくれてるって気持ちは十分伝わったから。きっと皆の足手まといにはならないしもしもの事があっても皆が居ればきっとなんとかなるよ。だから阿賀野も行く、トラックに。それと提督さん一つお願いがあるんだけど、良いかな?」

阿賀野はそう言った。

「ああ!なんでも言ってくれ。」

俺は二つ返事で頭を縦に振る。

「提督さん。少し昔話をさせて、艦娘になった男の子のお話。どうしてかな?誰にも話した事ないんだけど提督さんになら話せる気がするんだ」

誰にも話していない?きっと阿賀野の過去の事だろうか。この事を聞くには覚悟がいるかもしれない。しかし阿賀野はそれ以上の覚悟をしている。だから俺は

「わかった。聞いてやる。」

と答えた。

「じゃあ始めるね。昔々・・・・昔といっても何年か前の事だからね!!そんな大昔の話じゃないんだから!!!」

お前自分で昔話って言ってたじゃないか。しかしその声のトーンはいつもの阿賀野に戻りつつあった。

「昔々ある所にお父さん、お母さんそして4人の兄弟が仲良く暮らしていました。長男は高校生になり、アルバイトを始められる年齢になりました。それから高校3年間で貯めたアルバイト代で、丁度両親の結婚20周年だと聞いていた彼は両親に旅行をプレゼントしました。しかし両親は旅行から帰ってくる事はありませんでした。乗った飛行機が深海棲艦に襲われて墜落してしまったからです。彼は俺が旅行をプレゼントさえしなければと自分の行動を悔やみました。収入源が突如断たれ、3人の弟を養って行かなければならなくなった彼は入学が決まっていた大学への入学を取りやめ、日夜弟達の為に彼は朝から晩まで働きました。しかし働けど働けど生活は毎日苦しくなる一方。それでも彼は自分の行いのせいで両親が死んでしまった罪滅ぼしにと弟達の為に働き続けました。しかし安月給な上に4人分の生活費を稼がなければならなかった為どれだけ働いても生活は良くはらなくて、彼は自分のルックスもそこまで悪いとは思っていなかったし、お金持ちの人に気に入られさえすれば大金が稼げると思い興味本位で男娼に手を出してしまったの。彼は沢山の男の人に媚びてお金を稼いだわ。そしていつもの様に仕事に向かった時あるお客さんに突然言われたの。君には艦娘の適正があるってね。後で聞いたらその人はどこかの鎮守府の偉い人だったみたいでその人はこう言ったわ。艦娘になれば、弟達の生活も保証される。それにもうこんな事はしなくて良くなると。その時彼は男が艦娘になれる訳が無い。馬鹿げていると思ったけどそれと同時に今までの自分の行いは弟への罪滅ぼしの為だったのか?それとも自分の寂しさを消す為に快楽を貪るための行為だったのかもしそうならばただ自分が快楽に溺れる言い訳の為に家族を使ってしまっていたのではないかという疑念が彼の中に渦巻いたの。家に帰る事も少なくなって弟達とも余り会わなくなり雌の様な身体になってしまった自分の姿を弟達が見て本当に喜ぶのかと。その時弟達に会うのが怖くなって彼はもうどうにでもなれ。やれるものならやってみろと博打を打つ感覚でその男の話を承諾したの。最初は半信半疑だったし元より体つきが変になっていたから最初は気付かなかったけどどんどん彼の身体は変わって行ったわ。声も、喋り方も何もかもね。身体だけじゃなく頭の中も変わって行くのがわかったわ。最初はそれが恐怖でしかなかったけど受け入れて行った。いえ受け入れざるを得なくなったのかもね。最初の方は弟達に電話をしてたんだけどもう電話もできなくなってそれから月に1回手紙を欠かさず彼は書き続けているの。必死に当時の口調や癖を思い出しながらね。そして一人の艦娘が生まれたわ。そんな彼・・・いや彼女はもう後戻りはできないのならばこの現状を最大限楽しもう。そして自分のような境遇の人間が居なくなるように深海棲艦と戦おうと思ったの。でも艦娘になってからは手紙を送る事さえ億劫になってしまって結局弟達とは連絡も取れずにいる。これがお金目当てで艦娘になっちゃった馬鹿な男の子のお話。どうだった提督さん?良くできたお話でしょ?」

俺はその話を聞いて衝撃を受けた。阿賀野にはそんな過去があったとは

「阿賀野・・・お前・・・」

俺は言葉に詰まる。やっぱり肝心な時俺はなんて言ってやれば良いのかわからないダメな奴だ。すると

「あくまで昔話だからね!あんまり真に受けないでね!!それと阿賀野とこの男の子は関係ないんだから!!」

阿賀野は必死になって俺に言う。

「いや、関係ないってお前・・・後半完全に話の視点が客観視点から主観視点に変わってたぞ。」

俺はそんな阿賀野に突っ込みを入れる。

「そうだった?えへへ・・・」

阿賀野は少し気まずそうに笑った。

「どう。もしこれ阿賀野の話だったら提督さん、こんな汚れた身体のオカマみたいな艦娘嫌だよね?引いちゃった?ただもし私に何かあれば弟達に・・・」

ちょっと待て、コイツやっぱり死に行くつもりなのか?

「阿賀野!そんな事は無いぞ。寧ろそんなので嫌いになってたら今俺はここには居ないしそれに過去がどうだって俺は今のお前の事をかけがえの無い大切な仲間だと思ってる。そう言っただろ?その考えは揺るがない!それにお前じゃない先代の阿賀野が同じ海域で沈んでいようがお前はお前なんだ。俺にとってはお前という存在は唯一無二なんだよ。だからそんな事言わないでくれ!お前は絶対に沈まないしお前は弟さんたちの為にも生きなきゃいけない!!戦いが終わったら絶対に俺が弟さんに会わせてやる!阿賀野・・・いや君の兄さんは姿は変われど海をそして君たちを守るために戦った英雄だってな。だから何も恥じる事も自分を嫌う事も俺の前から居なくなる事も絶対に許さない!お前はお前なんだ!!」

言ってしまった・・・しかし俺の思いのたけは全て阿賀野にぶつけたはずだ。

「提督さん・・・・」

阿賀野は目を潤ませてこちらを見ている。

「お前がトラックへ行くと決めたのなら俺は止めはしない。ただ絶対に俺の元へ帰って来てくれ。俺は待ってるからな」

俺は最期の一押しと言わんばかりに阿賀野にそう言った。

「提督さん・・・・わかった。約束する」

阿賀野は涙を流しながらそう言った。

「そうか。ならこれを」

俺は女将さんから預かったお守りを渡した。

「提督さん、何・・・これ」

阿賀野はお守りを不思議そうに眺めてそう言った。

「ああ、それな。おおとりの女将さんが貸してくれたお守りだ。きっとお前を守ってくれるって持たせてくれたんだ」

俺はお守りについての経緯を説明する。

「それと女将さんがお前にって肉じゃがをくれたんだ。昼から何も食べてないんだろ?よかったら食えよ」

と風呂敷に包まれたタッパーを取り出す。

「あ〜っ!女将さんの肉じゃが!食べる食べる!!」

その声は完全にいつもの元気な阿賀野に戻っていた。肉じゃが恐るべし。

「ちゃんとレンジで温めて食べろよ」

「は〜い。女将さんにこのタッパーとお守りも返しに行かなきゃいけないし絶対帰ってこなきゃね!」

阿賀野はそう言った。

「おう!その意気だ。もう大丈夫だな。じゃあ俺、高雄さん達に話付けてくるからこれで」

俺はそう言って医務室を後にした。

そして執務室で大淀と高雄さんに阿賀野の意志を伝え自室に戻った。

「ふぅ〜今日は走り回って疲れたし休憩でもするか」

俺が自室のベッドに寝転がったその時である。

「司令官・・・・」

何処からとも無く吹雪の声がしたかと思うと吹雪がこっちに向かって来た。元から部屋に居たのか。

「どうしたふぶ・・・んん????」

なにやら吹雪の胸が異様にふくれあがっていた。

「どどどどうしたんだ吹雪そそそそそそその胸は!!」

あのサイズは阿賀野・・・?いや愛宕さんや高雄さん以上にあるぞ!?その身長には不釣り合いな膨らみを揺らしながらこちらに吹雪は迫って来る。

「やっぱり司令官は大きなおっぱいが好きなんですね?」

そう言って俺の横になっているベッドの上に乗りこちらに這い寄ってくる。

「たっ、たしかに大きい胸はすっ、好きだけどどうしたんだよ急に!!」

俺は今起こっている事に理解ができず混乱する。すると吹雪が

「だって最近ずっと阿賀野さんばかりじゃないですか。私の事ももっと見てください。」

吹雪はそう言うと俺に抱きつき胸を当ててくる。ああああああ!胸が!デカい胸が当たってるううううう!!!

俺は興奮して鼻息が荒くなる。

「あは♡やっぱりおっぱいが大きい方が良いんだ。お・に・い・ちゃ・ん♡」

ああああやめてくれええええ正気を保て俺!コイツは男なんだぞ!いやでも愛宕さん以上の胸で迫って来てお兄ちゃんだなんて反則だろおおおおおおお!!!!!!!!

「我慢できん。揉みたい!いや、揉む!俺はおっぱいを揉むぞ吹雪いいいいいいい!!!!!!!!」

俺はぎゅっと吹雪のおっぱいを握りしめた。自発的におっぱいに触るなんて!男の夢っ!!

「あうっ♡お兄ちゃん、そんな力強く握っちゃ・・・」

吹雪がそう言いかけたそんな時である

パァン!!と大きい音がしたかと思ったら吹雪のおっぱいが俺の握っている方だけ縮んでいた。

「あっ、破けちゃった・・・」

吹雪が残念そうに言った。

「あの・・・吹雪・・・?ちょっと説明してくれないか?」

その巨大な破裂音で正気に戻った俺は吹雪に説明を求める。

「あの・・・・これは・・・私いつも司令官が阿賀野さんに抱きしめられてニヤニヤしてる所を見ていたら胸が苦しくなって来て・・・それで私もおっぱいさえ大きければ私にもっと振り向いてもらえると思って風船を・・・・ごめんなさい。司令官」

吹雪は申し訳なさそうにもう片方の風船を服の中から取り出す。

俺はバカバカしくなって笑いが押さえきれなくなる

「ふっ、はははははははははは」

すると

「笑わないでくださいよ司令官!これでも必死に考えたんですからね!!」

と吹雪は頬を膨らませる。

「いや、吹雪は可愛い奴だなーと思ってさ。お前は胸が無くても十分に可愛いよ。」

俺は吹雪にそう言った。

「ホントですか?私司令官の事大好きです!何回だって言います。」

そう言ってまた吹雪は抱きついて来た。さっきのような柔らかい感触がないのが悔やまれるが・・・

そんな時である。部屋のドアが勢いよく開き。

「謙!どうしたんですか!!銃声みたいな音がしましたけど!!!!!」

と大淀が息を切らして部屋に入って来た。

ん?

この感じ何処かで・・・・

冷静に今の状態を分析してみよう。ここはベッドで俺と吹雪は同じベッドで横になっていて・・・更に吹雪は俺に抱きついて・・・・・これはマズい!

「謙?これはどういう事かしら・・・?」

大淀は笑顔で俺に問いかける・・・・笑ってるのが超怖いんだけど・・・・

「ちっ、違うんだ淀・・・じゃない大淀、これは不可抗力で・・・・」

しかし大淀は既に拳を堅く握りしめている。

「一度ならず二度までも・・・馬鹿は死ななきゃ直らないみたいね。謙!歯ぁ食いしばれ!!」

そう言うと大淀の右ストレートが俺を吹き飛ばした

「あべしっ!!二度もぶった!!!」

俺はベッドから落とされ気を失った。

その後俺は、吹雪と共に大淀に事情を話した後大淀の説教を延々と受けたのは言うまでもない。

 

そして時は流れ出撃当日・・・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。