カカシ真伝 雪花の追憶   作:碧唯

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第二十三話 邂逅

ガイに散々からかわれたお陰で、木ノ葉への道のりが恐ろしく長く感じた。

 

何度、ガイの車椅子をミライに預けて走り出してやろうか、それとも、このまま高速で押して帰ってやろうか…と考えたことか…。

 

驚いたのは、人の顔を覚えるのが苦手な筈のガイが、二度程しか会っていないリッカの事を覚えていた事だ。ま、顔を覚えていたというより、印象が強かったのだろう…。

 

「そうか!あの時の隠し子がこんなに大きくなったのか!」

 

ガイのこの言葉には、ミライが明らかに挙動不審になり、聞いてはいけない事を聞いてしまった…、と思っているのがわかった…。

 

「だーかーらー、隠し子じゃないからね!」

 

それだけ言ったけども、では何なのか?と聞かれても困るので、瞳術「これ以上聞いてくれるな」を使った。

写輪眼でなくても、「先代」なら使える瞳術のはずだ!

 

 

 

そしてようやく火影室までやって来たが

何故今日に限ってこんなに人が居るのか…。

サスケが居ない事だけがオレの救いだった…。

 

リッカがナルトに話をする間、オレは目を閉じて聞いていた。

ナルトがどんな顔をするか、わかっていたからだ…、が、意外にもナルトはリッカの話に茶々を入れる事もなく、黙って聞いていた。

 

流石に火影になったナルトは昔とは違う。感心してそっと目を開けると、そこには…顎が外れんばかりに大きく口を開けて、絶句している七代目の顔があった…。

 

黙って聞いていたんじゃなくて、驚き過ぎて言葉にならなかったのね…。

 

はぁー…。

 

 

「それで、父からの書状がこちらです。 ……ナルトさん? …火影様?」

 

リッカが書状をナルトに渡そうとしても、ナルトは呆けたままだった。

他の者も同じ様子で、唯一正気を保っていたシカマルが受け取り、ナルトに渡す。

 

「あ、あぁ…。わりーわりー」

 

 

書状を開くとナルトはオレを見て尋ねた。

「先生もう読んだのか?」

「いや、火影宛だからオレは読んでない」

 

オレが勝手に読むわけ無いだろう! と、言ってやりたいところだが、まっ、今日は穏便に済ませてやろうじゃないの…。

 

「じゃー、一緒に読もうぜ!」

「まさかお前…、漢字が読めないとか…じゃ、ないよね?」

「ま、ま、まさか!…うーん、確かに漢字が多いな。そ、それはともかく、これってば先生とオレ宛になってるぜ?」

 

それはリッカも知らなかった様子で驚いている。

書状の外側には「火影様」としか書いていなかったからだ。

 

オレは机を回り込み、ナルトの後ろに立つと一緒に書状を読んだ。

 

六代目火影 はたけカカシ様

七代目火影 うずまきナルト様

 

確かに宛名は二人だった。

 

 

六代目火影様、七代目火影様には過日には大変お世話になり深謝致しております。

長らく雑事にまぎれご無沙汰してしまい、誠に申し訳ございません。

また、娘の突然の訪問、大変心苦しく、お詫び申し上げます。

忍界大戦の折には、娘に自分も行かせて欲しいと懇願されましたが、国内がまだ安定しておらず、大戦に乗じた内乱などもあり、行かせてやることができませんでした。

お世話になりながら、ご協力できず大変申し訳ございません。

娘の六代目様への思慕は、ヒイラギより報告を受けておりましたし、あの折の娘の様子からも、承知しておりましたが、時間と共に忘れるだろうとたかをくくっておりました。それ故、弟を一人前にしたら好きにして良いと言ってしまったのですが、娘は私が言った事を心の支えにし、今日まで国に尽くしてくれたようです。

娘は帰国後、三代目火影様の言葉を借り、「お父様は私の父であろうとしないばかりか、国民の父にもなろうとしなかった」と私を諫めました。その娘の尽力もあり、国内も安定し、新しい世代の重臣達も育ち、安心して国政を任せられると思えるようなりました。

そして本日、私は譲位する事に致しました。次なる王は、娘が貴国で学んだ事を元に厳しく育てましたので、国民の父として、きっとより良い国へと育んでくれる事でしょう。

私が王としてやってやれる最後の、また、娘の父としては最初で最後の務めは、娘を貴国へと送り出す事だけでした。

娘の突然の訪問、大変ご迷惑とは存じますが、受け入れていただける事を切に願っております。

 

末筆ではございますが、皆様の益々のご健勝を、心よりお祈り申し上げます。

 

 

「ふーん」とナルトが唸る。

…コイツ、理解できてるんだろうか…。

 

「ってことはさー、リッカってば、あれからずっとカカシ先生の事好きだったのか?」

「おまっ…」そこかよ…。

「え!? ち、父は何を書いてるんですか?」動揺するリッカ…。

「読んでみろってば!」と言いながら、書状を差し出すナルト。

「よろしいんですか?」

「いいよな?先生」

「あぁ、お父上のお気持ちだ」

 

渡された書状を読み始めたリッカの瞳から、次々涙が溢れた。

「…お父様」

「いい親父さんだな! でさー、ずっと好きだったのか?」

…お前、しつこいよ!

 

「確かに最初は父の言うように、憧れとか、尊敬だったんだと思います。でも、カカシ先生とお話しする度にどんどん好きになっていって、国に帰ってからも、いつも、先生の言葉が支えになってくれて…。ずっと、ずっと、大好きで…、カカシ先生の隣に立っても恥ずかしくない人になりたいと思って、頑張ってこられました」

 

「キャーッ!!」サクラ達がなぜか悲鳴をあげる…。

 もー、帰りたい…。

 

 

「……」質問したナルト本人は、また、大口を開けて絶句していた。放心した挙げ句に

 

「ちょっ、隣に立って恥ずかしいのは、ぜってーカカシ先生の方だってばよ!」

 

マスクで分かりにくいが、オレの口元はひきつり、拳はプルプル震えていた。

それに気付いた部屋中の者が青くなって、ナルトを止めようとするが止まらない。

火影ともあろう者が、背後のこんな殺気を感じ取れないとは…。

 

「だってそうだろー。カカシ先生ってば、あの頃で既にオヤジだったけど、今はホントのオッサンだぜー。大丈夫かよー!ハンザイだよー!」

 

ゴツンッ!

 

オレは渾身の力をこめて拳骨をお見舞いした。

 

「…っ!痛ってーてばよー」

 

頭を抱えて机に突っ伏したナルトに言ってやる。

「ま、当時なら犯罪だけどもだ…、今は別にかまわんでしょ!」

オレがそう言うと、ナルトはニヤッと笑い言った。

「てことはー、先生もOKってことでいいんだな!」

「ま…、ダメとは言ってない!」

「だってよー、リッカ!よかったなー」 

リッカは真っ赤になっていた…。オイオイ、キミが言い出したんだよ…。

 

「でさー、でさー、シカマル! こーいうの何ていうんだっけ? おし…、おし…、押し込み強盗じゃなくってさー」

「それを言うなら、押しかけ女房だろ」

シカマルは思わず即答してしまってから、オレの様子に気付いて青ざめた。

 

「…キミたち、面白がり過ぎでしょ…」

 

オレがそれ以上言い返せないとわかると、部屋中が爆笑に包まれた…。

 

 

シカマルの言葉に耳まで真っ赤になったリッカが、改めてナルトに尋ねる。

「で、では、木ノ葉に住む許可を頂けると?」

 

「あー、それはオレじゃねーってばよ!」

 

ナルトの返事にリッカは困惑してオレを見た。

 

「ん…? 別に大名の許可とかは、要らないはずだけど…?」

 

「あー、もー! 先生まで忘れたのかよ!三代目のじいちゃんが言ってただろー。全部終わったらいつでも帰って来いって。だからー、三代目のじいちゃんがとっくに許可してるんだってばよ! やっと、全部終わったって事なんだろ? お帰り、リッカ!」

 

「はい!ただいまです!」この同じ場所で「木ノ葉に生まれたかった」と言ったあの時と同じように、泣き笑いしながらリッカは言った。

 

「じいちゃんとこにも報告に行ってやれよ! きっと喜ぶってばよ!」

「ん…、そうだね」

 

 

…三代目、あなたの意志は種子となり、遠い雪深い国でも、しっかり芽吹き、根付いたようですよ。

 

 

あの日と同じように、三代目も微笑まれた気がした。

 

 

 

エピローグ 願い

 

 

桜の花びらが舞い散る中、母親が忍術で作り出す雪で、双子が遊んでいる。

母親譲りの黒い髪を逆立て、父に似た生意気そうな顔の男の子と

父親譲りの白銀の髪を肩まで伸ばした、母似の愛らしい女の子

 

 

ナルトが生まれる前、オレはナルト達を戦争を知らない世代だと羨ましがった。

しかし、結局、彼らの時代も戦争が起こってしまった。

 

第四次忍界大戦の後、大きな戦は今のところ無い。

でも今も、世界の何処かでは争い、血を流し

命を落としている人もいるのだろう。

 

長い歴史の中で、人間はバカみたいに同じことを繰り返して生きてきたから

これからも、未来永劫、戦争を無くす事なんてできないのかも知れない。

 

次の世代が平和であることを願って、命を懸け、命を落としていった沢山の忍

生き残ったオレ達は、彼らの想いを繋げていかないといけない。

 

オレ達は、道に迷って傷つけ合い、たくさんの血を流した。

大切な人を亡くした悲痛な叫び、涙、たくさん見てきた。

 

だからこそ願わずにはいられない

 

一人でも多くの人が、オレ達のような悲しみを知らずに過ごせること

次の世代が一日でも長く平和で、一人でも多く戦争を知らない子供が増えるように

その子供が戦争を知らないまま一生涯過ごせるように。

 

 

どうか、この子達も戦争を知らない世代であるように…

 

 

 






エピローグが1話分に満たなかったので最後無理やり入れてしまいました…

これにて、「雪花の追憶」は終わりです。
最後まで読んでいただいてありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ


この後、カカシ真伝II 白き閃雷の系譜 という小説の予告編のようなプロローグを投稿します。
こちらは題名の通り、はたけサクモさんからカカシ先生へと繋がる物語になります。

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

ただ、雪花と違って毎日更新はできません…。
雪花は書き上げた後に投稿を始めたのですが、白き…は書きながらになるからです(´;ω;`)

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Twitter @kakashi0915aoi でもおkです!


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