カカシ真伝 雪花の追憶   作:碧唯

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第十六話 再出発

翌朝、出発するオレ達を火影様があうんの門まで見送りに来てくださった。

「リッカ、お前もワシの家族の一人じゃ。全部終わったらいつでも木ノ葉に帰って来い」

「はい、ありがとうございます!」

「じいちゃん、任せとけってばよ!リッカはオレがぜってー守ってやっから!」

「ナルト…、お前はまず…、スリに気を付けるんじゃぞ」

「な、な、な、なに言ってんだってばよー」

 

焦りまくるナルトに、リッカは顔の前で両手を合わせて謝っている…。

 

「ハハハ…。ま!今回は街に立ち寄る暇は無いですから、大丈夫ですよ! なっ!」

苦笑いしながら、頬を膨らませるナルトの頭をグリグリしておいて

「それでは火影様、行って参ります」

 

「うむ」火影様は目を細め、それ以上は何も言わなかった。

 

「行ってくるってばよー!」

「「「行ってきます」」」

 

暗部は第七班とは少し距離をおき行動することになっているので、顔ぶれとしてはひと月あまり前のあの旅立ちと変わらない。

変わっているのは今回リッカも忍として行動するので、前回とは速度が全く違う事。そしてそのリッカの腰には諸刃の短剣が左右一本ずつある事だった。

 

この短剣を選ぶのに随分と時間がかかった。

リッカが満足するものがなかなか無かったのだ…。

忍の中には手裏剣やクナイに拘りを持つ者もいるが、刀剣使いの比ではないだろう。用途は刺突なのか、斬撃なのか、刀身の長さ、重さなどなど…。

 

そもそも武器庫には大人の忍が使用する武器が保管してあるので、まだ幼いリッカにとっては抜ける刀自体少なかったのだろう。なんとか許容範囲内のものを探しだし持って来ていたが、できればそれを使わずに国に帰してやりたいとオレは考えていた。

 

 

その考えが甘い事に、火の国の国境を越えた所で早くも気付かされる事になる。

 

オレは人の気配を感じ、全員に止まれと合図した。

 

男は刀を持って立っていた。

 

その刀は短刀よりはやや長く、一般的な忍者刀よりは短い…。リッカが昨日探していたものとちょうど一致する。

 

 

「先生、アイツなんなんだってばよ!」

 

やる気満々のナルトを制して言う。

「向こうがその気ならあんな堂々と待ってないよ。…お前じゃないんだから」

 

「でも刀持ってるぜ?」

 

それに答えたのはリッカだった。

「あれは私の刀です」

 

そう言い、男、ヒイラギの方へ声をかける。

「ヒイラギ!ここで何をしてるの?」

 

「可笑しな質問をされる。私が動くのは陛下のご命令のみ」

 

「わかってる、言われなくても帰るわ。邪魔しないで!」

 

「邪魔など致しません。しかしそのような慣れない物では、この先無事帰ることができるか…。これをお使いください」

 

そう言ってヒイラギはリッカに刀を差し出した。

 

「あ、ありがとう…」

リッカは困惑しながらも受け取るが、オレは尋ねた。

 

「この前はそれ持ってなかったよね?その得物じゃないと、この先無事に帰れないと言うのは、ちょっと聞き捨てならないね…。お前、何か知ってるのか?」

 

「どういう事なの?カカシ先生には木ノ葉襲撃計画がある事も全部話してあるわ。説明して!」

 

リッカのこの言葉に彼はまた表情を僅かに動かした。一体どういう感情なんだろう…。

 

 

そして彼は、リッカではなく、オレに向かって答えた。

 

「国からの知らせによると、既に襲撃部隊の出撃準備はでき、何時でも出られる状態だと。このまま行けば、途中で鉢合わせる可能性が高い。部隊の中には一部の重臣より、騒乱に紛れてリッカ様暗殺の密命を帯びている者もいる筈だ。」

 

「私の暗殺はどうでもいい。そんな事より…、止めないと…戦争になってしまう」

リッカはそう言って、唇をかみしめ、刀をギュッと握った。

 

「ま、想定はしてたが…、それでヒイラギ、お前はどうするんだ?」

 

「他国の忍に説明する義務はない」

 

…いちいち突っかかるね、コイツは…。

 

「ヒイラギ!失礼よ! 私達は国に向かってるの。あなたもお父様の命令で私を迎えに来たのなら、それで問題ない筈よ? 気に入らないなら先に帰ればいいわ!」

 

「私は貴女を無事に帰国させなくては意味がありません」

 

素直じゃないね、まったく…。オレが折れるしか無いのか…。

 

「りょーかい!姫の護衛って事なら、一緒に行ったらいいよ」

 

「同行はしない。後ろに付かせて貰う。他の隊も居るようだから、お前達とその部隊の間なら問題無いだろう」

 

問題有るか無いか判断するのはコッチだけどね…。でも、ま、暗部にも気付いていたとは流石だね。どこかで身を潜めて聞いているであろう暗部連中も驚いただろう…。

 

確かに、他国の忍に後ろでウロチョロされては連中も気に入らないだろうから、妥当なところではある。

 

「わかった、それなら構わん」

 

 

 

こちらのピリピリムードとは反してサクラは相変わらずだった。

 

「ちょっと!あのイケメン誰?」リッカを肘でつつきながら聞いている。

 

「ヒイラギと言います。私の護衛件、忍術などの師でもあります」

 

「へぇー。わかったわ、アンタがサスケくん見ても動じなかったのは、あんなイケメンが身近にいたからね!」

 

「え!? サスケさんですか?私は……。いえ、何もです…」

 

「クスクス。わかってるわよー!アンタは」

 

「サクラさんっ!!」リッカが慌ててサクラの口を塞ぐ…。

 

オイオイ…、これから戦闘があるかもって聞いた直後にこの子達、何の話してるんだか…。しかもこの静寂の中、周りは皆忍だぞ…。内緒話になんか全然なってないからな…。

 

 

これは暗部連中のイライラが爆発しないうちに出発しなきゃいけない…。

 

「それじゃ、警戒しながら急ぐよ!」

 


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