fateに魔法少女?   作:アバン

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二人目の妹(義)ができるよ!

良かったね士郎君!


ゴルゴーンさんと語りたい

俺が縮地でご自宅に到着後、後から来た凛にもの凄く申し訳なさそうな表情で見られた。やめろ、虚しさが増すだけだから。それからはまたぐだぐだと流れてうちの妹は遠坂の奴隷(サーヴァント)となりました。俺かい? 俺は第一号の奴隷さ! ルヴィアさんとは別々になったが向こうもステッキと魔法少女を発見したらしい。魔法少女が二人だと…? feteの世界だよね? ドロドロのシリアスが生きてないんだけど。イリヤには俺が魔術使いの事を何故黙っていたのとずいずいと迫ってきたのでそこでぶっちゃけました。まあイリヤの秘密とか俺の師匠にセラが含まれている事は言わなかったけど。仲は悪くなる事はならず、今までどーりに話してる。俺とイリヤの絆はそんな事で崩れる程弱くなかったみたいでなにより。部屋に戻るまではなんとか口元が上がらないように頑張ってたんだ。ふう、危なかったぜ。もし上がってたら遠坂から絶対にロリコン認定されるところだった。

 

(しっかし、魔法少女ね…。形は変とはいえイリヤが裏側の世界に踏み入れた事実は変わらない)

 

セラ達にどう説明すればいいんだと悩んでいるとドアの向こうから人の気配を感じた。セラかと思ったがその割には足音が可愛らしいのでこれは一人しかいないなと思い当たった。

 

「イリヤ? 開いているから入ってきていいぞ?」

 

「あ、そうなんだ。そ、それじゃあ…お邪魔しまーす…」

 

入ってきたのはパジャマ姿のイリヤ。若干頬を赤く染めながら俺の普段寝ているベットに恐る恐ると座った。おいおい、俺のベットでそこまで緊張しなくても…。

 

「お…お兄ちゃんのベットに座っちゃった…」

 

俺のベットに座った途端。少しだけ赤かった顔が効果音がなりそうなくらいに赤くなっていく。大胆なのか初心なのかどっちなのやら。

 

「イリヤ? 部屋に入ってくるのはセラやリズに聞かれたくない事があるんだろ?」

 

「う、うん。今さっきの事なんだけど…正直、いきなりすぎて何が何だか…」

 

うん、そりゃそうだよね。いきなり謎のステッキが落ちてきていつの間にか魔法少女になっているなんて俺自身も頭が痛い。当事者のイリヤはもっと酷く混乱をしているだろう。

 

「あー。つまりは受け入れたくないって事だろ? けど、イリヤ。残念ながら背中に張り付いてるステッキが夢じゃない事を表してるぞ」

 

『ステッキじゃなくてルビーちゃんですよ! お兄さん~!』

 

「いつのまに!?」

 

イリヤの背中からルビーと自称するステッキが飛び出てくる。このステッキ、一時間前は遠坂の物だったが今ではイリヤに毒牙をかけた完全犯罪者だ。まったく、360度から起源弾を撃ち込みたいぐらいこのステッキ、人をイラつかせる。俺がいないところに我が家に飛んでくるし、挙句には俺にイリヤと同じくらいに親しげに語り掛けてくる。

 

「言い直すがルビー? 先ほど俺がお前に向かって凶器を向けてた事を忘れたわけではないだろうな?」

 

『そりゃそうですよ! けどお兄さん? 今は殺気が全く出ていないじゃないですか~』

 

「まあな? お前達の事情は少しだけだが理解できるし」

 

『それを分かってくれるお兄さんが好きですよ~!』

 

「はいはい。分かったから近づくなって。地味に痛いから」

 

俺にくっつこうとするルビーを手で抑えながらイリヤと向き合う。イリヤはルビーのせいか今さっきまでこちらに向けなかった視線が今ではルビーに対して冷めた目で見ている。そう、それはこの世のゴミと同じレベルで見る表情だ。ルビーは『冷めた目で見るイリヤさん…。ご褒美ですッ!』と言いながら地面に降りてビクンビクンと動いてやがる。イリヤの目線がさらに冷たくなる。少しは静かにできないのかこのステッキは。

 

「まあ、遠坂を手伝う事になったとはいえ。一体どんな事を手伝うんだろうなー?」

 

「ぶ、物騒なのが無いと嬉しいんだけどね…」

 

む、それは…確かにそうでありたいけど。兄として事実を言わないとな。

 

「それは低い可能性だぞ? 今変態になってるルビーだが常に魔力障壁を貼る事ができて魔力供給も普通とは桁違いにできる。攻撃力も人によってはとんでもない兵器になるヤバい魔術礼装だからなこいつは」

 

「そんなすごい物みたいだけど…。今こんな状態だから説得力を感じないよ…」

 

「うん、まあ。天才には一癖、二癖はつきもんさ」

 

イリヤの気持ちは分かる、とても分かるが仕方ないんだ。思い出したがこいつは並行世界でも性格は変わってないから。うまく付き合いながら胃を痛めるしかないんだ。

 

「や、やっぱりそうなんだ…。嫌だよ私、喧嘩もしたことないのに…」

 

「…イリヤ」

 

それを言われると俺も何も返せない。今まで俺が体と心に鞭を打ち続けながら辛い修行に耐えれたのは家族の存在があったからだ。力をつけた今、親父と母親に家の事を託されながら結局俺はイリヤを守る選択はせず、遠坂達の方を優先してしまった。俺の直感はやはり正しかった。もしかしたら遠坂達も自力であの状況から脱出できただろう。俺のしたことはただのおせっかいだったのかもしれない。ああ、やはり屑の人間はどれだけ正しく生きようとしても所詮は何もできず無力のままなのか。…もしかしたらだけど、事情の事を知らん顔で生きてたら苦しまずに生きてこれたのかもしれない。いや、それだけはできない。そんな事をしたら俺の踏み台になってしまった少年の魂に顔向けができない。屑と分かりつつ、重い十字架を背負いながら俺はこの世界を生きていく事を誓ったんだから——。

 

『そこは大丈夫ですよ、イリヤさん! その辺は私とお兄さんがパパーってイリヤさんの事を必ずお守りしますから! それにあの悪魔もいますしね~。心配ご無用です!』

 

「る、ルビー!?」

 

ルビーに言われ気づく。そうか、そんな簡単な事だったのか。深く考えすぎて簡単に見つかるのを見落としてたんだ。

 

「イリヤ…」

 

「わっ。お、お兄ちゃん?」

 

イリヤの頭に俺の鍛え上げた硬い手を置いて優しく——

 

「なに暗い顔をしてんだこの野郎ッ!」

 

「え、ちょッ!? せ、せっかくお兄ちゃんに梳いてもらった髪がッ!?」

 

は、せずにがしがしと少しだけ強く頭を撫でた。うん、湿っぽいのは好きじゃない。俺達の仲はこうでなくっちゃ。

 

「後で直してやるから気にすんなッ!」

 

「私が気にするんだけど!?」

 

「まあまあ! とにかく、イリヤはどかっと何も気にせずに構えとけって! やばくなったら俺が全力でフォローするし、弓の腕前はイリヤも知ってるだろ? それに前にも出てフォローもするし! イリヤが気に病む必要はどこにも無し! 知ってるかイリヤ? 兄は妹を守る時には神様にだって負けないんだぜ?」

 

「さ、さすがに神様まではいかないんじゃないかな…?」

 

『あれー? ルビーちゃん、蚊帳の外ですかー?』

 

ステッキが何か申してるが知らん。頭を撫でてるイリヤに視線を合わせるため膝を曲げ腰を屈めて俺の顔をイリヤの顔に近づける。再び顔をトマトと同じように赤くするが気にせずにイリヤの瞳に俺が映る程の距離をとる。

 

「それにだ」

 

「え…? ふえぇ…?」

 

「俺が誰かに負けてる姿、見た事あるか?」

 

にぃ、と俺は悪役がしそうな笑みを浮かべた。一瞬の間があったがそれにつられてイリヤもとびっきりの笑顔をした。

 

「見た事ない…そうだね! 私の知ってるお兄ちゃんはどんな大きい相手だって負けない英雄(ヒーロー)なんだから!」

 

ヒーローと言って英雄か…。そんな柄じゃないんだけどなー。後、笑顔が尊い。俺の真っ黒ハートが浄化されていく…。

 

「英雄(ヒーロー)か…。ま、いざとなったらルビーや遠坂を置いて逃げればいいしな」

 

「それは止めようよッ!?」

 

『お兄さん!?』

 

イリヤとルビーは驚愕の顔をしながら俺にツッコんできた。良い雰囲気だったがぶち壊してやったぜ。だから俺はr(以下略)。

 

「いや、案外しぶとく生きてそうだし。大丈夫でしょ」

 

「いやいやいや! もーさっきまで良い雰囲気だったのにー!」

 

『せっかくイリヤさんの乙女な表情をカメラに収めようとしてたのにー!』

 

「さりげなく写真とってたの!? 今すぐに消して!」

 

『嫌に決まってるじゃないですかー!』

 

「消す! 写真だけじゃなくてルビーの意識も消してやるー!」

 

『元主と似たような台詞を言ってるのに少しだけ心が痛いルビーちゃんでしたー!』

 

ドタドタと走り回るイリヤ。結局俺はその場でイリヤの気持ちを後回しにするしかできなかった。けどイリヤの事は必ず守るからな!

 

 

 

次の日の朝はイリヤと共に正座をする事になりましたとさ。ちゃんちゃん。

 

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その日、学校にいつも通りに登校すると学生服を着た遠坂を発見してうちの転校生二人の正体を知り納得をした士郎君なのであった。それから俺が学園内を案内する事になり、途中で喧嘩をしそうな二人を抑えつつなんとか無事に案内をすることができた。案内するだけで疲れるとは思わなかったな…。まあ、二人には学園生活に早く慣れてほしいものだ。ただ、学校の物を壊すのは勘弁してほしいな! 俺が後始末する事になるから! …それから数日後、いきなりだったが遠坂からはっきりと伝えられたのだ。仕事だと——

 

嫌な予感はしてたけど…まさかウチの学園にあるとわねー。つくづく呪われてんのかなこの学園は。

 

そう思いながら俺は親父が残した屋敷の中で今日行われる戦闘準備をしていた。この屋敷事態、親父が戦争後に静かに暮らせる場所が欲しくなったらしく買い占めたらしいが母さんの一言がきっかけで今の一軒家に落ち着いたと親父が星空を眺めながら言うもんだからそれ以上は聞けなかった。夫婦の事情ってヤツですな。いつも目が死んでる親父がいつも以上に死んでたのを俺は見逃さなかった…。

自身の左肩から覆うような赤い聖骸布。腰から下は作業着のような形をした礼装。羽織っているのはナタリアさんから俺の誕生日の日に送ってもらった指で数えるくらいしかないその一つ、最高級の礼装をかぶっていた。なんで赤い外装じゃなくて白いんだか。

 

これをもらった時、使う機会がないんだろうなーって思ってたけど案外早かったな。

 

苦笑いしながら腰に無名の刀を下げる。こいつは真名解放はできない宝具、だからと言って並の宝具よりかは匹敵する。おまけに俺の改造によって起源弾の効果が付与されている。こいつで切ればサーヴァント相手でも傷口を治される事はないと思うし運良ければ一発で仕留める事ができるだろう。ま、運が良かったらの話だけど。

他にも足や手、上半身に下着と全てが俺の用意できる最高級の礼装で全てを揃えた。下着までもが礼装である。念には念をって言葉があるからね。

 

「よし、じゃ。行くか」

 

 

 

 

 

 

 

時刻は深夜0時、俺が行く頃には凛は私服姿でグラウンドに立っていた。緊張しているのか? と思うがすぐにその考えを改める。そりゃそうだろ。いくら遠坂でも緊張することだってあるって。

 

「早いな。遠坂」

 

「そりゃ私も初めてだしね。気合い入れていかないと——。ってその礼装は!? しかも上から下まで全て一級品じゃないの!? う、売ったらどれだけの宝石が手に入るか——」

 

喋りかけると同時、遠坂は目を椎茸にしてから鼻息を荒くしてこちらに近づいてきた。やめろ、俺の思い入れの物に邪心で触るな。

 

「お、落ち着け。今はそんなの考えてる場合か?」

 

俺の礼装に触ってくる遠坂に苦笑いしながら対応する。こいつ、金に関しては考えが貧相である。まあ、宝石魔術は消耗品だから少しは解るけど…俺から見たら哀れである。

 

「くっ…。後でどこから手に入れたか徹底的に訊くからね…」

 

そんな恐ろしい事を言いながらグラウンドのトイレからピンク色の光を放ってた。イリヤ…トイレで変身してきたのか。うん、残念だなって思ってないし。マジだし!

 

「お待たせしました…。ってお兄ちゃん!? すっごくかっこよくなっているけどお兄ちゃんだよね!?」

 

今度はイリヤが鼻息を荒くして俺の全身を記憶にインストールするように眺めてくる。いい気分ではないな。そしてイリヤも落ち着け、目がグルグルと渦巻いるぞ?

 

「そうだよ。俺だよイリヤ」

 

出てきたイリヤはピンク色でフリフリな可愛い恰好をしていた。どこかで見た事あるって思ったが…イリヤの好きなアニメをモチーフにしたのかな? あ、髪型はポニーテールのままなのね。

 

「髪型はそのまんまにしているんだな。確か…以前だとロングだったよな?」

 

あれはあれで似合っていたと思うんだがなー。けど、ポニーテールのままでいるのに少しだけ嬉しい乙女な俺。なんせポニーテールにしたのは俺なんでね(どやぁ)。

 

「そうだけど。…お兄ちゃんがせっかくしてくれた髪型だし、崩したくなかったから…。変身で一旦解けてるけど、そこはルビーがなんとかしてくれてるから」

 

『これだけは変えられないッ! と反応するイリヤさんも可愛らしかったですよー!』

 

「そこでなんで言うのかな!? もー!」

 

ぎゃーぎゃーと言い合うルビー&イリヤ。そこに遠坂が手を叩いて注意をこちらに向けた。

 

「はいはい。遠足に来たのアンタ達は? 行く前に少し作戦でも立てていくわよ。いい? まずイリヤは前衛に出て敵と戦ってもらう事になるわ。そこはルビーが指示を出したり勝手に動いたりしてくれるから動けなくなる事なんてないから心配要らないからね?」

 

「うぅぅ…。やっぱり私が前に出るんだ…」

 

『バッチリとイリヤさんを守りますからご安心をー! これでもAランクの障壁を貼る事ができますので!』

 

「それってすごいんだよね? ランク言われても私、分からないから!?」

 

イリヤには分からないと思うがとてもすごいんだぞ。一流の魔術師でも白目になるくらいにだ。

 

「士郎君は後方でイリヤの援護。でも誤射でイリヤに当たらないよう正確に敵に攻撃しないと兄の面が丸潰れになる覚悟でやってもらうから」

 

「任せろ。ってかそれやってしまうと家族に顔出すことできなくなってしまうからな?」

 

絶対にそんな事にはならないようするけど、遠坂から言われるとプレッシャーがくる。まあ、逃げる道なんてないからやるしかないんだけどさ。

 

「まあ、イリヤも士郎君も難易度はベリーハードってこと。私は攻撃手段も援護もできないから二人のサポートをするわ。イリヤにはルビーが付いているし、主に士郎君にサポートする事になると思うけど…」

 

「ルビー、早く倒せるように指示をお願い。なんかちょっとだけやる気が沸いてきたから…!」

 

『おおっ! これは魔法少女に必要なラブパワーが出てきてますね! これはいつも以上に気合いを入れませんと!』

 

俺と遠坂がいる事にそんなに嫌か? でも本番前に少しだけ士気が上がってくれて少し安堵している。

 

「それより遠坂? なんか作戦と言ってすごい浅い内容になっているが大丈夫なのか?」

 

そこである。遠坂なりに考えているんだろうが行く前に納得できる理由がほしいのだ。作戦ってのはもっと段取りとかその工程とか色々とやるんじゃないのか? そんなにあっさり過ぎると返ってこちらは不安になってしまう。そこら辺、どうなのさ?

 

「あー…。それは今回が皆初めてのカード回収になるからあんまり詰めた作戦は返って逆効果になると思ってね…。イリヤに関しては素人だし、私も情けないけど的確に指示を出せる自信がないのよ。試しにとか考えてたけど試しで死んじゃったら元も子もないから確実にって思ったらこうなってたのよ。悪いわねー、こう見えても私かなり緊張してるのよ?」

 

なるほど。そう言う事だったら納得できる。寧ろ緊張しなかったら胸が慎ましい分度胸があるのかって言ってしまうところだったよ。まあ、強がってても遠坂らしいけどさ。それにあまり詰めすぎると返って行動が制限されるし初めて同士の俺達が力を合わせても連携の練習なんてしてないから酷い有様になるのがオチだ。

 

「いや、緊張してるのはここにいるステッキ以外の皆さ。あ、イリヤ? 緊張してるって言ってるけど心配する事なんてしなくてもいいからな?」

 

「言わなくてもいいから!? それだと余計に心配しちゃうよー!」

 

『だからステッキじゃなくてルビーちゃんですよ!』

 

イリヤとルビーが何か言ってるが知らん。ワタシニホンゴワカリマセーン。

 

(『それとお兄さん? お願いっていうより提案なのですが』)

 

(「これは…。テレパシー? 本当に何でもありだな」)

 

(『気にしたら負けです。それで提案ってのはイリヤさんが恐怖で動けなくなったら一時的にお兄さんを仮のマスターにしたいのです。私は…凛さんがマスターであるのがとても嫌で嫌で…』)

 

(「どんだけルビーの中で遠坂の評価低いんだよ…。一応だが俺あんな恰好するつもりないんだけど。てかしたら地獄絵図けど」)

 

(『誰も得なんてしませんし私が絶対にさせません。イリヤさんは心のどこかで期待という慢心ができてしまってるのです。もしかしたらなのでお兄さんの仮契約は最終手段と覚えててください』)

 

(「あいよ。そうならないためにも俺も今まで以上に頑張らないとな」)

 

「あーもう! お喋りはおしまい! 何事も始めなきゃ結果は分からないわ。失敗したら次に生かせばいいし、良いところがあればそれを伸ばす。始めるわよ。ルビー、さっさとやっちゃいなさい」

 

『了解しましたー!』

 

そう言うとルビーは色々と呟き、その瞬間。世界が反転した。

 

 

 

 

 

 

反転して来た世界はなんだか居心地が良くなった。鏡面界と言うらしい。元々、魔力でできた曖昧な世界のせいか学校の外からは出る事はできないようだ。それにしても気持ち悪い、早く元の世界に戻りたいものだ。

 

そう適当な感想を述べている間に、目の前から人の形をしたヤツが現れた。その影が次第に無くなり敵の姿が表す。ライダースーツみたいな姿。俺よりも高い身長。胸がけしからん具合に出ている姿に俺はすぐに相手の真名を思い出す。

 

ライダーのクラス。真名はメドゥーサ!

 

そしてそのエロボディコンがけしからん!

俺が成敗してくれる、エロ同人みたいに! もちろん、段々と服が破けていくので!

 

「よし遠坂、俺に強化魔術をかけられるか? できれば肉体に強化してほしい」

 

「強化する前に貴方を成敗したいのだけど。その前に…」

 

遠坂は敵に向けて宝石を叩き込む。爆発系だったのか激しい音が鳴り煙から現れた相手は傷一つもない無傷の状態だった。ってか何故考えてる事バレたし。

 

「…やっぱ並の魔術じゃ通用しないか」

 

遠坂レベルの並って高いんだけど…。泣いていいかな?

 

「この事を予想して俺を?」

 

「そうね。最初はルビーが契約した人となんとかしようと思ってたけど士郎君の魔術を見てピンと来てね。貴方なら投影した物に神秘が宿るみたいだから連れて行こうと思ったのよ。ルヴィアも同じ考えみたいだったけどこちらにはイリヤがいるから付くのも当然。後は通用するかどうかだけど…」

 

なるほど、そこまで考えてたのか。全くこれだから悪魔は(褒め)。

 

「って、こっちに向かってくるよ⁉」

 

おっとつい気が緩んでしまった。イリヤの声に反射で黒い弓と適当な剣を投影する。一工程(シングルアクション)。わざわざ中二病みたいに呟かなくてすむ方法だ。

 

投影した剣を強化で形態を変えずにそのまま射つ。当然ながら放たれた剣は軽々と避けられた。

 

「避けるって事は通用すると考えていいんだな?」

 

「上出来よ。それじゃあイリヤ、後は任せた」

 

「え、ちょ!」

 

『イリヤさん、来ますよー!』

 

姿を消しグラウンドから離れて行くと逃げ回るイリヤとメドゥーサが目に映る。ルビーのおかげかイリヤは敵から追い付かれることなく逃げきれてるようだ。再び剣を投影し、今度は起源弾の効果を上乗せさせて剣から矢へと形を変えた。魔力を注ぎ込み狙いを定める。

 

起源弾がサーヴァント相手に通用するか試させてもらうぞ。

 

(オラァッ!)

 

放った矢は音速で吸い込まれるように敵に向かっていくが、理性が無い分感性が強いのか当たる事なく掠めただけで矢は通りすぎて行った。

 

『ア…。ア"ア"ァ"…』

 

反応有り。どうやらサーヴァント相手でも俺の投影が通用するみたいで良かった。敵は傷ついた部分を修復しようとしたのかその部分だけ煙を出して苦しんでいた。

 

(おかげで動きは少しだけ鈍くなった…。けど鈍くなっただけで体の崩壊してないな。体を動かす分、魔力が働いてると思うんだけど…。サーヴァント相手には効き目が薄いか。要は起源弾は毒みたいな物。本来の効果は出ないけどこれだけで十分だ)

 

親父。これを作り出した親父がとんでもないって改めて思い知ったよ。

 

「士郎君! その調子でどんどん撃ち込んで!」

 

俺の近く木の陰から遠坂の声が聞こえる。了解。なら遠慮する事なくやれる。それに他にも試したい事があるしな。

 

「ええい!」

 

イリヤも魔力弾を放ち相手に追い討ちをする。爆発が起きると同時、敵は直撃して数メートル飛ばされていった。てかなんで通じてるの?

 

『魔術ではなくて純粋の魔力ですからねー。敵の対魔力が働かないってわけですよ!』

 

なるほど。てかお前まで俺の思考分かるのかよ。

 

『ルビーちゃんですから!』

 

理由になってない。何でもありのマジカルステッキだよお前は!

 

『……!』

 

敵は何かに感じたのか、何もない場所に走っていく。そこには——

 

「ッ!? 士郎君!」

 

俺のいる場所に駆けてくる。おい、隠密魔術働いてくれよ。…これ俺がしたんだった、ちくしょう! 矢を放った場所から移動してるのに!

 

遠坂が声を出してくれてるがその前から俺は気づいている。厄介なのから片付けるのは戦闘での基本であり、そして危険を感じるのには人一倍強いと思ってる。

 

下している刀を出して構える。相手は足の速いサーヴァント。見たところ鎖を持っていないようなので行動するパターンとすれば—―

 

「おっと」

 

その速い足を活かした蹴りだろう。相手の蹴りを体をそらしてひらりとかわす。へいへい、動きが単純ですよー!

 

かわした直後相手は砂埃を立てながらその場に留まる。すると目の前に謎の魔法陣が浮かび上がった。

 

「宝具ッ!? 何でもいいから止めて! それは撃たせたらおしまいよ!」

 

「お兄ちゃんッ!?」 『それはマジやばですよ!』

 

「宝具か…。気が早過ぎないか? お姉さんよ」

 

敵の魔力が急激に膨れ上がるのを肌で感じながらヤツを一撃で屠る事ができる宝具を模索する。だったら撃たせる前に仕留めればいい話だ。それが無理ならランクが低くてもいい、一瞬の隙さえできればこいつ(刀)で仕留めれる。

 

無限の剣製からBランク以上の宝具を検索。…発見。該当したのは20件以上、その中で一番効率のいい物を投影する。

 

28本全魔術回路、起動。回せ、廻せ、マワセ。ただし、無理はするな。無理をしようとしたら親父と母さんとの交わした契約(ギアス・ロール)に引っかかる。引っかかったらおしまい、相手から宝具を撃たれて俺の命は紙屑と化するだろう。

 

…少し無理ができないのはとても厳しいんだな。母父達よ。

 

選んだのはかの弓兵が良く使ってた螺旋状の剣、次元現象を起こせる剣を投影する。ただ、俺の場合だと劣化の劣化。あいつと比べたら俺の投影は三流程度だろう。

 

弓を投影し、剣を矢へと変形させる。魔術回路に悲鳴が出ないよう慎重になりながら矢に流すように魔力を叩き込む。投影完了。後は…

 

『ア”ア”……』

 

俺の周りに魔力が溢れる。矢を握る指に力が入る。そして真名解放を

 

 

 

 

 

 

「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)ッ!』」

 

あ、と思った瞬間時すでに遅し。敵は奇襲によってあっけなく敗北しボディコンからタロットカードへと形を変えた。…お、俺の魔力が無駄使いに…

 

カード回収を終えた少女はこちらに目線を向けると目を見開き、俺の方を凝視してきた。え? 俺、横取りされた方なのに…。後から来たルヴィアさんが遠坂と喧嘩ってレベルじゃないくらいに肉体言語してる。お、おーい。説明ぷりーつ。

 

「…!」

 

目を離した間に彼女は涙を流しながら俺に抱き着く。あ、アカン。ますます理解ができん。俺には四歳までの記憶がハッキリと残っているがどの記憶にも目の前の彼女に当てはまらない。何々? 誰か説明してくれよー。

 

「会いたかった…お兄ちゃん…!」

 

…マジで誰か説明してください。雑用とかしますから…。

 

 




戦闘パートは気にしちゃいけない。

そしてライダーさんは犠牲になったのだ…。

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