fateに魔法少女?   作:アバン

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ここの士郎君放課後に高跳びの練習していませんのでご理解を…


魔法少女は小学生まで

並行世界の俺は確か弓道部に入ってた筈。だがこの世界の俺は百発百中の腕前を持っているわけでもなく、高校に入ってからは帰宅部一筋だった。

中学の頃も部活に入ってない。むしろ部活をしている時間がおしかったからだ。

そんな青春を棒に振る事をしながら俺は一つの事に集中していた。

 

魔術、そんな世界の裏側の一部に触れていた。いーや、触れなきゃいけなかった。

俺にはある異常なモノがあるのは前世での記憶を照らし合わせたらそのままだったので、ある意味では助かり変な意味では己を呪った。

固有結界、魔術の最奥の一つ。自分の心を形にして世界を塗りつぶす。それを使える可能性が俺自身にあるのと、家族を守るため。力をつけるためずっとその修行を続けてきた。

まず、俺が抱えている異常ってのは投影魔術、簡単に言い換えたらコピーだ。普通の投影は出したらすぐに消えるが俺の投影は消えないまま残る。これを魔術師の世界に知れ渡ったら俺は即モルモット行きだ。

 

次に、衛宮家が抱えている問題。元々母さんはアインツベルン家の…プロトタイプのホムンクルスだ。元メイドの二人、リズもセラもホムンクルスである。そこから小聖杯や聖杯戦争がうんたらかんたらだけど、親父と母さんは生まれた娘には普通の生活をしてほしいと願い。今の現状に至る。

初めはアイリさんが生きていることに驚きつつメイドさん二人がいたのを見て白目向いた俺は悪くないと思う。家庭での環境に慣れてきた時に思い切って隠し事をしていませんか? と聞いたらもちろん何それと反応するのでそこで異議ありッ! みたいになり追及してからの本当の家族になりたいんだ! 逃げるのは嫌なんだ! 俺も男だ、長男だ。親父がいない家族を守るのは俺なんだ!と説得を繰り返しなんとか魔術を教えてもらう許可を得たのだ。

そこからはひたすら投影の練習。常にイメージするのは最強の自分だっけ? 任せろ、前世で伊達に妄想に特化したオタクをなめんなと言いつつ。ごめんなさい、魔術なめてましただからもう少し優しくして! 

みたいに弱音を吐きつつ今では固有結界の展開一歩手前まできている。散々と言ってたけどマジで感謝してます、親父、セラ。

最初に行ってたが俺はエミヤみたいな弓の腕前を持っていないのでその分補おうと他の魔術に力を入れた。当然へっぽこなできがほとんどだったがそれでもがむしゃらにやったら何とか一般な魔術とその他オリジナルの魔術ができた。起源弾の投影もできるし固有時制御もできる。これを使って○ンツを覗こうとするのは普通の男子なら仕方ないよね? ま、なくても俺には無駄に良い視力があるからな。ぷーくすくす。

 

おかげ様でそこらの魔術師なら負けない自信はある。冗談で言ったのだが遠坂と俺だったらどっち強いー? って尋ねたらセラがサムズアップ、親父は苦笑いする反応だったがどうにも信じきれない。相手はあの赤い悪魔、勝てるビジョンが浮かばない。イメージなら誰にも負けない自信があったのに…。

 

「士郎。いつもながらかたじけない。お前には何度も助けられてるな…」

 

「俺は好きでやってるだけだし、気にするなー」

 

柳洞一成。小学生からの付き合いで幼馴染である。男の幼馴染って誰得なんだか。あ、○女子なら沸くか。なんやかんやでこいつとは長い付き合いになる。

 

「むぅ。そう言ってくれてるが、お前にも色々と私用とかぷらいべーとがあるだろう? それをわざわざ削ってまで、しかも放課後にだ。それに妹が家で待っているのではないか?」

 

「逆に聞くが、お前の中で俺は妹大好き人間に成ってるんだ?」

 

「それはいつも昼食の時に家の妹はー。とか言ってるではないか」

 

「面白く話せる内容がそっちに固まるんだよ。セラは胸ネタとか脂肪ネタしかないし、リズだったらいつもだらけてるしかないから…。イリヤだったら見ていると表情が喜怒哀楽だから見てて飽きないんだよなー」

 

「お前…セラさんがいないからって天罰が下るぞ」

 

「前、一度だけ言ってみたら晩御飯の時。俺だけひもじい食事になった」

 

「お前の謎の度胸はどこから来るんだか…」

 

「母さんに似たんじゃないか?」

 

「あれは度胸というより好奇心だ。あの人は…まあその…色々と敵わんな」

 

「すごい分かるわ」

 

一成は俺との影響を受けたのか、俺の知っている一成とは少しだけ変わってしまった。しょうがないね、俺の家族と俺はすごく個性が強いから。特に母さんはヤヴァイ。一成にも少なからず影響を受けてるだろう。

 

「そう馬鹿なやり取りしている内に終わったぞー」

 

「おお、それでどんな感じだ?」

 

「中の部分がイかれてただけで他には異常なし。部品を変えただけでこいつは後十年戦えるぞ」

 

「うちの冷房は後十年も持つのか…」

 

「今の機械もすごいけど、昔の機械もすごいわ。こんなに長持ちするなんて日本はどこに向かってるんだか」

 

「俺に聞かれても知らん。しかし、すごいのは機械だけでなく士郎もだと思うのだがな…」

 

「なんで? 冷房にパソコンにテレビに扇風機に机に椅子を直せるのにどこがすごいんだか」

 

「はぁ…。お前なら無人島に何も持たなくても一人で暮らせていけそうだな…」

 

「それは褒めてるんだな? 俺は前向きに生きてるからそう捉えるぞ?」

 

「流石に頭は直せんか…」

 

「よし、一成。眼鏡を貸せ、俺が某バーローの少年探偵が使うような眼鏡に改造してやろう」

 

長く付き合った幼馴染は、今ではこうやって皮肉を言い合う仲になりましたとさ。本当、中学一緒で高校も一緒。一成も俺以外の男子と話しかけてる姿はあんまり見たことがない。こいつ、マジで○イじゃないよね? 一応信じてるぞ?

 

「し、士郎君!」

 

「ん? おー森山さん」

 

そんなやり取りしている内に一人の女子高校生が駆け足でやってきた。特徴的なピンクの髪、目がタ○シみたいな優しくお人好しな彼女。森山奈菜巳さんが来られた。Fカップである。どことは言わないがもう一度言う、Fカップである。

 

「お疲れ様。いつもいつもありがとうね…。こういう仕事は私達がしないといけないのに…」

 

「あー…。何度も言うけど好きでやってるわけだし。将来のためにも経験をつみたいから気にしないでくれ」

 

「それでも私達がしなきゃ駄目だよ。士郎君は生徒会でもないんだから」

 

「んー。それを言われると悪い気になってくるなあ…」

 

森山さんとの関係は生徒会関連が主にだ。話し合うきっかけになったのは単純。その人を魅惑させる大きなおもちで痴漢をされているところ俺が出くわしアイアンクローで撃退。その後は森山さんからよく話しかけられるようになっている。森山さんが生徒会に入ってからはよく生徒会の仕事で話すようになった。変わった俺によく話してくれるいい人だ。

 

「ふむ…。士郎、お礼にじゅーすを一本奢ってやろう。何か希望はあるか?」

 

「お、気が利くね一成。じゃあお言葉に甘えて140円のペットボトル。種類は何でもいいわー」

 

「本当に遠慮しないなお前は…。ついでに森山の分も買ってこよう」

 

「え? い、一成君…?」

 

「森山もよく働いてくれている。ここらで一服した方がいいだろう。しばし待て、すぐに戻ってくる」

 

そう言うと一成はスタスタと歩き去っていった。おい、いいのかい一成。俺と森山さんのラブコメコメしていても。まあそれが一成の狙いなんだろうけども。

 

「あ…。い、行っちゃった…」

 

「いやー、あんな事言ってたけど気にすんなよー」

 

「で、でも…」

 

「謙虚もいいけど、遠慮すぎると返って悪くなるからな? 俺、そういうとこ好きじゃないけどなー」

 

「えっ…。ど、努力します…」

 

「うむ。精神するがよい」

 

「なんでいきなり偉くなってるの?」

 

もうっ。と言ってクスクス笑うモリモリさん。アカン…良い娘すぎて悪の俺が浄化されていきそうだ…。ちなみに森山さんの妹、俺の妹と友達である。姉妹揃ってピンク髪に○ケシ目…遺伝子どうなってるんだろうか?

 

「そういえば今度、クラスに新しい転校生がやってくるって話あったよね?」

 

「あー。そういうあったような無かったような気がする…」

 

「先生の話、聴いてなかったでしょ?」

 

「いやだって葛木先生の喋り方。ペース変わんないから睡魔が襲うし…」

 

「まったく、聞いてなかったの士郎君だけだよ? クラスの皆、転校生の話で盛り上がってたよ?」

 

「えっ…シンジのヤツ。いつも寝てるのに起きてたのか?」

 

「うん。その後クラスの皆で話してたみたい」

 

「どうせクラスメイトって女子だけだろ。って事は森山さんにも」

 

「うん…。思わずシャープペン壊しちゃった…」

 

「お、おう。シンジのヤツも一年から変わんないよねー」

 

聞いたかもしれないが森山さんはその細い腕ながらも恐ろしいほどの力を秘めている。俺はどんなに筋トレを頑張っても森山さんみたいな筋力持つ事はできませんでした。くっ…地味地味に努力している自分がバカバカしくなってる気がする…。おっと、心はガラスだからな? だから丁寧に扱えよ?

 

「そうだけど…。そういう士郎君も変わらないよ」

 

「そりゃー、俺の性格は簡単には変わらんさ」

 

「例えば…優しいところとか…ね?」

 

そう言って彼女は微笑んだ。元々優しい顔をした彼女だ。笑顔になれば誰もが見とれてしまう。放課後ってのもあり、背後の夕焼けが変に良い仕事をしやがる。正直、見とれてました。ガラスの心は簡単に砕けるどころか奪われました。おのれ○パン…!

 

「んー。全学年からお人好しと言われてる森山さんには言われたくないなー」

 

「けど、士郎君も困ってる人がいたら学校の人じゃなくても助けに行くでしょ?」

 

「そりゃ、目の前にいたらほっとけないでしょ。いい大人目指してるんだし」

 

「ふふっ。なら日々努力をするよーに」

 

「はいっ! コーチ!」

 

「コーチじゃないってば!」

 

あはは、と笑う俺と森山さん。うん、実に日々を充実している。俺自身や家族の事もあるが今のところは特に問題は起きてなかった。あったとしてもまだまだ先のことだろと…。それが今日、あっさりと崩れていくのに俺は仰天するしかなかった…。

 

一成が買ってきてくれた飲み物は緑茶でしたとさ。おのれええぇぇぇー!

 

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夜、魔術鍛錬を終えてセラの料理を食い尽くし部屋に戻った俺は今日は何故だか何もせずにただ時間が過ぎるのを待っていた。そう、なんか…こう。嫌な予感がする。親父によって鍛えられた俺の危険感知は親父が花丸を送るほどの探知ができる自信がある。つまり、外すことの方が少ないって事だ。うむ、早くこの時間が過ぎ去ってほしいものだ。

 

(…どうしよ? いっその事、外に出て高いところから眺めてみるか? それとも家から離れて探知魔術を徐々に広げていくか…)

 

いや、俺一人考えても拉致があかない。セラとリズに相談するべきか…。駄目だ、考えがまとまらない。一旦落ち着かなければ。

 

外の風でも当たろうかとカーテンに手をかけた時に、俺の危険感知信号が動いた。感じた瞬間、その場を流れる動作ですぐに離れた。体への強化も忘れない。その場を離れる前に二回は全体に回した。今はまだ敵の存在を認識できないため魔術回路を十本だけ起こしておく。これでへっぽこと油断してくれると儲けなんだがどうなるんやら。

 

(…外部からの射撃はない。魔術攻撃もなければ…遠距離攻撃じゃない?)

 

念のために正面180度に探知魔術を飛ばしてみる。無駄な魔力消費だが首の皮が繋がるためと思えば安いもんだ。そうすると遥か上空に2つの魔力が反応した。

 

(あんな上空から!? しかもこの感じだと、二人とも空を飛んでいる!? おいおい、もしかして魔法か!?)

 

だが懐かしい魔力が一つだけ感じるがすぐに思考を切り替える。窓を少しだけ開けてそこから目に強化魔術を再び叩き込んだ。目に映るは二人の魔術師。戦闘は魔力弾が飛びあう派手な戦闘だが…。

 

うん、まあこんな再会の仕方に俺は現在fateってヤツを呪う。何故あんな恰好になったんだ。あ、デカいヤツがぶつかった。うわ、痛そう(小並感)。ついでに聴力にも強化をかけるか。いいネタが増えそうだし。

 

『あちゃ~。さすがのルビーちゃんでも破られちゃいましたね~』

 

『…痛い。私、今、すごく痛い』

 

でしょうね。てか、痛い程度で済まされているのかアレが。魔術使いの端くれだがあれは普通に考えるとぽっくり逝けるレベルだぞ。てか、あの姿にあのステッキ見た事あるんだが…思い出せない。くそっ、肝心な時に働け俺の脳細胞!

 

『お~ほっほっほっ! 無様ですわよトウサカリン! そのまま落ちてくださっても良くてよ?』

 

『少しは静かにしてください、ルヴィア様』

 

なるほど、あの化け物級たわわはルヴィアっていうのか。二人とも? 見えてますよ? 何かとは言わないけど。まあでも色は予想できたし分かりやすい。ノーカンでいいよね?

 

『てか、なんでいきなり攻撃してくるのよ! アンタの気に食わないのはよーく知ってるけど…いきなり不意打ちはないでしょ!? それでも令嬢なの!?』

 

『そういうのは日本で言うと負け犬の遠吠えとおっしゃいましてよ? 勝てば全てを得て負ければ全てを失う。いつもの優等生ぶりはどこに行ったのかしら?』

 

『………』

 

『あちゃー。これには凛さん、マジギレですね~』

 

『そしてそのきっかけを作る我がマスター。人でなしです』

 

『少しは静かになさい、サファイア』

 

見た感じだとふっかけてきたのはあのルヴィアさんって言う人みたいだ。けど、それに反応する遠坂も悪くなってしまってる。無視を続ければいいのに反応する。仲がいいのやら悪いのやら。コンビとか組ませればいい二人だと思うけどな。

 

『…流石に使おうとは思ってなったけど。売られた喧嘩は買う主義だコルァア!』

 

『ッ!? それならこちらも!』

 

二人は何故か胸からタロットカードみたいなのを取り出す。何々、決闘でもするの?

 

『クラスカード、弓兵(アーチャー)!』

 

『クラスカード、槍兵(ランサー)!』

 

『『限定召喚(インクルード)ッ!!』』

 

…? あ…あれ、反応なし?。カードをステッキに掲げてたけど何にも起こらない。トラブルでも起きたのだろうか?

 

『はぁ~。やれやれ、お二人の喧嘩には付き合ってられません』

 

『はぁ!? な、何を言っているのよ!? それは反撃しようと任務で渡されたルビーを勝手に使ったのはしょうがないじゃないの!? でなければ私、殺されてたわよ!』

 

『家訓である優雅さはどこにいったんですかね~。自分を守るならまだ分かりますが、そこからは相手の意識と無くそうと反撃する凛さんも一応悪いのですよ?』

 

『確かにそうだけど…。チィッ!』

 

『舌打ちも隠す気がないですね~』

 

『まったくです。そもそも私達は喧嘩のための道具ではありません。カードの回収のために渡された最高位の魔術礼装。それを私情を持ち込んで使われて。ルヴィア様、失望しました』

 

『な、何をおっしゃいますのサファイア!? あんな害虫がいなくても私一人で十分でしてよ!』

 

『自意識過剰ではないですか、ルヴィア様』

 

二人の喧嘩に呆れたのか。二つのステッキは主に対して抵抗している模様。でもまあ、なんだかこの喧嘩を見ていると溜息をつきたくなる。

 

『『なので真に勝手ながら…。辞退させていただきます!』』

 

『『え? ちょ!』』

 

あ、変身? が解けて普段着に成った二人が落ちていく。こ、これは流石にギャグでは済まされないぞ!

 

窓を咄嗟に開けて裸足であることを無視しながら全速力で家の屋根から屋根へと飛んでいく。潜伏魔術も精密にかけ、二人の落下地点へ予測をし駆け抜けていく。家に残った方がいいぞと五感が呟くがそれを頭の隅っこに追い込んでから再び走る。

 

(ルビーと呼ばれてたステッキが家に向かって行ってる!? 嫌な予感しかしないんだけど!?)

 

戻って方がいいかと思うがもう家からは結構と離れている事を確認。心の中で舌打ちをしてから二人の落下地点と思われる場所に到着した。幸い、大きな川なので遠坂達も自身にかけてる魔術により死ぬ事はまずないだろう。ああ、なんでこういう日になるんだと愚痴りながら俺は得意分野の魔術を発動させる。

 

「投影(トレース)、開始(オン)ーーー」

 

言葉を呟くと鉄を打つ音が頭の中で響き28本の魔術回路が動き出す。一つだけ増えてるのはオマケなのか俺自身の魔術回路を開いた時からは28本あった。嬉しいが正直、微妙である。

 

投影する物は大きなネットと、水流で流されないようにとしっかりと立つ事ができる鉄の棒だ。イメージしたのは超巨大なハンモック。もっとましな物は用意できないのかと言われると耳が痛い。投影するのに難しいし時間がかかるのだ。特訓した時に剣以外に投影するのには苦労した。柔らかい物をイメージできても必ず歪な部分が何故だか出てくる。戦闘以外で役に立ちたいのだが思うようには中々いかないようだ。

 

(これもオマケだ)

 

投影完了したらもう一度、投影する。今度はでっかい低反発のクッションを時間をかけて投影。凛達が何か魔術をかけたのか落ちる速度が俺の考えてたのと遅いおかげでこちらも念入りに準備することができた。

 

(後からめんどーな事になるけど…。しょうがない。いつまでも隠せる自信はなかったし、ばれたとしても口封じをすればいいだけだ)

 

「「あ”ッ!!」」

 

品のない野太い声を聴きながら今後の事を俺は考えていたんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

「色々と聞きたい事あるけど、まずお礼が先ね…。助かったわ。それと、久しぶりね衛宮君」

 

クッションに埋もれてた二人を回収した後。俺は何故だが二人の前で正座をしていた。あれ? 助けたの、俺だったよね? てか、裸足のまんまだし。遠坂は覚えてたのか、俺と元クラスメイトの事を。中学で一年だけだったによく覚えてたな。

 

「生きた心地しなかったですわ…。改めてお礼を、エミヤさん」

 

「どうも。二人共、怪我がなくて良かったです」

 

二人を助けた後にはどこにも打撲や骨折、目立つところは特になかった。無傷で済んでなにより。

 

「ところで…。私達を助けたって事は…アレよねアレ」

 

「? あの華麗な姿のどこに問題がありますの、トウサカリン?」

 

「日本どころかどの国にいたとしても問題しかないわよッ!? よりにもよって知り合いに見られたし!」

 

「あー…。その、かわいかったぞ?」

 

「フォローになってないわよ!? あー……今すぐに消えて無くなりたい…」

 

遠坂は一つ、少しだけ頬を赤くして大きな溜息をついた。ルヴィアさんはどこが恥ずかしいのか理解をできていない。本物の令嬢だから感覚がずれているのかな?

 

「そんな事より衛宮君、あの私達を助けた魔術の事だけど…。あれはどうやって用意できたのかしら?

たった数分であの巨大な物を出し、しかも貴方の意思ですぐに消せる。私の中で思いつく魔術と言ったら投影魔術しか思い当たらないんだけどそこらへんはどうなのかしら?」

 

「私も気になってたところですわ。助けてもらいながら聞くのは無礼と承知なのですが…教えていただけませんか?」

 

…来た。これだよ、赤い悪魔の本性。納得する答えを出さない限り、あの悪魔は止まる事を知らない。吐かなかったらあの手この手、外道な手段を平気で使ってくる(確信)。

 

「ルヴィアさん? その優しい部分をほーんの少しだけでもいいから私に使ってほしかったのだけど? そしたらこんな面倒な事は起きなかったと私は確信しているわ?」

 

「あらあら。そこらへんに飛んでいる小バエに気を遣う必要はあるのですの? おとなしく引き下がる、もしくはあの時に落ちてくれればこーんな事にはならなかったかと思いますのよ?」

 

「「あ”あ”ッ!?」」

 

そしてまたこれだよ(呆れ)。岸に上げる前から喧嘩をしていたから俺が知る限り本日三回目の喧嘩が始まろうとしている。ところで二人共大事な事を忘れてませんかー?

 

「はいはい、そこで喧嘩をしない。遠坂には教えないと離してくれ無さそうだし、なんやかんやでルヴィアさんも食い下がりそうだから教えるって。頭を冷やさないと話の内容が入ってこないぞー?」

 

「チッ…。今回は衛宮君の事を考えて引き下がってやるわ。衛宮君に感謝しなさい?」

 

「ふんっ。それはこちらの台詞でしてよ? エミヤさんが素晴らしい紳士な対応に免じて今回は諦めてやりますわ」

 

さりげなく馬鹿にしたのに気づかない問題児二人。周りを見えなくなるってこれは相当厄介だぞ。二人の上司は今頃、胃に穴が開きつつ二人の帰りを待っているんだろうな。

 

「ん? なんて言ったのかしらー?」 「あらら? もう一度おっしゃってくださいましー?」

 

まさかの気づかないフリか。敵に回してしまった自分の運命はいかに。

 

「なんて言っておきながらだけど。俺の魔術は遠坂の考え通り、投影魔術だよ。今さっきのようにすぐに用意できるし以外に応用が利くんだぞ? イメージしたら何でもありだしな」

 

「だけどあの強度を持っているのには論が通ってないわよ? 投影魔術は虚形ってもんなんだから、私の魔力を持ったとしてもあれ程の強度を保つ事はできない」

 

「うん。けど、投影魔術と言ってもやり方までは言ってないよな?」

 

「どういう事ですの、エミヤさん?」

 

「俺の投影魔術。やり方によっては半永久的に残るんだよ。基本骨子、構造材質、制作技術、憑依経験、蓄積年月。これらの過程をやり遂げると作りだした物は俺の意思で消すか、少しでも歪なところが出てこないと消えないんだ」

 

「「………」」

 

説明した途端。二人からは殺気と嫉妬の混じった気配が流れ出す。おおっ、怖い怖い。

 

「最初、俺の師匠に見せた時は今の顔よりもっとおっかなかったぞ。それでも俺はこれが得意みたいだから時間をかけて今に至った。けど頑張った結果がこのザマじゃねぇ。師匠に見られたらなんて言われるか…。さて一通り説明したところだし、どうする? ここで俺を捕らえるか、または存在を消すか。悪いがこんな怪物にも家族はいるんでね。悪あがきは最低させてもらうが…」

 

二人の殺気に平常心を保ちながら隙ができるのを窺う。でも俺は二人共には何もする気はないし、潜伏魔術をかけたらすたこらさっさーと逃げるつもりだが優秀な宝石魔術の二人だ。そう簡単に離してはくれないだろう。反応によってこちらも臨機応変に対応させてもらう。どうでるか…

 

「「……はぁ」」

 

何故そこで溜息なんだ。解せぬ。

 

「確かにアンタの言う事は普通だし、誰もがする選択。けどね…助けてもらった恩を仇で返すなんて遠坂の流儀に反するのと、それを分かりながら他の魔術使いを助けるお人好しにはそんな事はしないわよ」

 

「と、言いつつ恥ずかしいから目を合わせないように喋るとは。見事なツンデレですわね、トウサカリン」

 

「ルヴィア…! アンタってヤツは…!」

 

遠坂が拳を握ってルヴィアに飛び掛かりそうになるがその場に睨みながらとどまる。どうどう、落ち着け。

 

「安心してください、エミヤさん。私は協会側には報告しませんし、貴方の事を世間にも言いませんわ。このルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。助けてくださった恩を忘れる程愚かな者ではありません」

 

「ルヴィアさん…アンタって人は…!」

 

「けどその変わり、条件がありますわ」

 

……へ?

 

「今回、私達が来たのはこのクラスカードの回収。と、害虫との仲を改善しろと言われて来たのですが…。託された魔術礼装は勝手にどこかへと行ってしまいました。ああ、これでは私達は任務を全うするどころかこの事を協会に知られたら退学は逃れられないでしょう! …魔術師のやり取りは等価交換。さすがに田舎のエミヤさんもご存じでしょう?」

 

上げて下げるどころか崖から手を差し伸べてから突き放しやがった!?

 

「まぁ…それくらいは」

 

「…私は利用しようと思ってなかったわよ。…半分は」

 

お前もかよッ!? 遅れて赤い悪魔が出てきたよ! ルヴィアさんはアレだね、鬼だ。赤い悪魔と青い鬼。名前から見ると逃げるしか選択できないね!

 

「残りの半分は!?」

 

「別れた後にステッキを回収してから脅すところまでは考えてたわね」

 

武力で抑えるってこと!? やだー、遠坂さん。こわーい!

 

「早いか遅いかの違いか!? あ、あれ? 俺って助けた筈だったんだけどなー? 裸足で急いできたんだけどなー? 後、カードの説明される前から任務って事しってたんだけどなー?」

 

「聴こえてたの!? あ、アンタも人の事言えないじゃない! って、それはやろうとしたら自殺行為じゃないの!? 協会側に連絡するって!?」

 

「矢文とかあるし、連絡するならうまくやるし問題はない」

 

しようとしたら親父や母さん達が国境を越えて助けてくれるだろう。ナタリアさんも素敵な笑顔を浮かべて協力してくれるかと。

 

「矢文!? 何、弓の腕に相当自信があるの?」

 

「おう、これでも弓道部の人達からは怪物のエミヤさんと呼ばれているからな。視力にも自信がある。まあ宇宙飛行士よりはあるかな。後は魔術でうんたらかんたら」

 

「アンタ本当に人間!?」

 

「人間だ。けど、投影魔術は異常だけどな」

 

「…士郎君? 私が言うのはなんだけど。貴方は人生の中で今が一番苦労してるんじゃないの?」

 

「遠坂、それは言ってはいけない言葉だ。誰もがそれを理解しつつ気遣おうと誰もがその事を言わないんだよ…」

 

「何よ。それを言われると悪い気になるじゃないの」

 

「おう、分かったから話を戻そう。なんか途中からズレてるし」

 

「ズレた原因はエミヤさんにもあるのですけど…」

 

分かってるって。けどこのままだとぐだぐだが長くなりそうだったからな。まあ、ようは

 

「互いに隠したい事を隠しつつ、俺は二人の協力。二人は俺の秘密を話さないままカードの回収。こう言う事だろ?」

 

「その通りですわ。後、その二人ってのは止めてくださる? 名前はちゃんと名乗りましたわよ?」

 

「ああ、すまなかった。ルヴィアさん」

 

「ええ、それで構いませんわ」

 

「じゃあ、遠坂の事は凛って呼べばいいか?」

 

「からかうなってのグー!」

 

「照れ隠しッ!?」

 

顔面に拳が飛んでくるのを理不尽に思いながら受ける。凛は本当にかわいいなあ。あ、散々ぐだぐだってしてたけど…

 

「ところでステッキを追いかけなくていいのか?」

 

「「あ」」

 

うん、すっかり忘れていたみたい。それじゃあ…結局脅すどころか立場が逆転していたけど。

 

「後日に連絡をッ! さらばっ!」

 

「「ああっ!?」」

 

会話をしている中で解けてた強化を足だけに回して我がお家へと全速力で帰りました。家に向かっていたと思われるステッキだが、まあ他の家に行ったんじゃね? とかすかに希望していたのだが…家に帰ればあらあらまあまあ

 

「お、お兄ちゃ~ん……」

 

涙目になりながら女の子座りをしている魔法少女姿の我が妹が座ってましたとさ…。

 

よし、今すぐにルルブろう。(ルールブレイカーの意味)

いや、持ってないけど気分的にはさ。




士郎君と呼ぶのは後々ありますので…
後、ルヴィアさんゲスくなってしまったよ!

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