歯車戦記   作:アインズ・ウール・ゴウン魔導王

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お久しぶりです。大変お待たせ致しました。むしろ間が開きすぎて、「今更かよ」と一蹴されるかも…。


さて、皆さんの中でCod:WaWをプレイされた方、又はプレイされている方は居られるでしょうか?

つい先日、いつものようにオンラインプレイ中に、なんと!チートプレイヤーによる破壊工作を受けたのです!

オンライン対戦を始めた瞬間から定期的に銃弾が補充されるのはまだ良いのですが、なんと規定人数を連続キルしていないにも関わらず軍用犬が湧き出す始末です(私が使用した扱いなので、軍用犬がプレイヤーを倒すと私にポイントが入ります)。

結果まともなプレイは不可能に───挙げ句他プレイヤーからチートと罵倒され、嫌がらせメッセージまで受ける羽目に…。



最も、一度セーブデータを削除してまた作り直してみたら破壊工作を受ける前のオンラインデータに戻っていたので、今はまた普通のプレイが出来るようになりましたが。

無駄話失礼致しました。では本編をどうぞ!


─追記─

・人数のミスを修正

・序盤の速撃ち劇場の詳細描写を追加


第7話

あっという間の出来事であった。

 

 

僅か数秒───その僅か数秒で、軍人として訓練を受けたソ連兵4名は、オセロットと名乗った青年の早撃ちによって全員が物言わぬ屍と成り果てた。

 

 

手にした武器を発砲することなく、オセロットの正確無比と言えるマカロフの鉛弾によって頭を撃ち抜かれていく様は観る者によっては、彼の格好やブーツとも相まって西部劇の凄腕ガンマンを彷彿とさせるのではないか。

 

 

唯一オセロットの速撃ちによる殺戮劇に巻き込まれなかったのはスネーク、ソコロフ───そして廃工場の屋根に陣取っていた兵士だけであった。

 

 

彼は目の前で起きた光景に心臓に氷柱を刺されたような恐怖感に襲われ、荒い息を吐きながらも手にしたAK47をオセロットへと向けていた。

しかしオセロットが手で回していたマカロフを自分へと向けてきた瞬間、彼は耐えきれなくなったのか直ぐ様身を翻した。

 

 

もし彼が屋根を走って地面に伸びる梯子を目指さず、そのまま屋根から飛び降りていればさしものオセロットも取り逃がしたであろう。

 

 

彼の持つ技術は高度だが万能ではないのだ。しかし惜しむらくは、兵士は彼の持つ特徴的な"技術"を知らなかったことであろう。

 

 

逃げ出した兵士を見ていたオセロットは、ニヤリと笑みを強めて構えていたマカロフの銃口を僅かに右へとずらした。

 

 

発砲音。

 

 

マカロフから射出された弾は、昔は廃工場の屋根を支えていたのであろう剥き出しの鉄骨に当たる。いや、当たったというよりは跳ねた。

 

 

跳弾である。

 

 

普通、拳銃弾は跳弾しにくい。何故なら何も付いていない剥き出しの小口径弾である。当たればめり込むか砕けて終わりである。

 

 

真っ先に跳弾しやすい弾といえば、M14等でも使われるフルメタル・ジャケットが思い浮かぶ(なおフルメタルジャケットでハートマン軍曹の便所での最期を思い出した方は、鏡の前で10秒間叫び声付きでウォーフェイス)

 

 

しかし青年は、弾をギリギリまで浅く掠めさせることによって、拳銃弾で難なく跳弾を可能としていたのである。

 

 

瞬時に地形を読み取り、軌道が読めない筈の跳弾を正確に相手に命中させる。最早オセロットの技術は、神掛かっている等というレベルではなかった。

 

 

胸に弾を受けた兵士が屋根から工場内へ落下したのを見届けたオセロットはマカロフをしまいながら、最初右胸を撃ち抜いた兵士へと近寄る。

 

 

まだ彼には息があったため、オセロットは再びマカロフを取り出した。そして抵抗の素振りを見せた途端に頭部を撃ち抜いた。

 

 

それを見ていたスネークは、この青年が殺しに躊躇の無いプロだと考える。兵士に欠かせない───しかし人として無ければならないモノを持たない男だと。

 

 

そんなスネークを脇目に現状を生み出した当の本人は、最後に射殺した兵士を足で転がしながら、その兵士の背中と地面に挟まれる形だった物───早撃ちの際に落としたベレー帽を拾う。

 

 

「GRUのためとはいえ、やはり同志を撃つのは気持ちがいいものではないな…」

 

 

 

 

 

 

 

しかし、躊躇無く射殺を繰り返した先ほどとは打って変わったように、青年はマカロフをホルスターへと戻しつつ、同じソビエトに仕える人間を殺したことを嫌悪するような雰囲気を漂わせる。

 

 

「ソコロフ、隠れてろ!」

 

 

しかしスネークは油断することなく、ソコロフに指示をしながら自身は麻酔銃を青年へと向ける。

 

 

スネークに対して青年は、敵意は無いと左右に両手を開いた姿勢を見せた。

 

 

「ん?」

 

 

だが青年はスネークの顔を見た途端に、疑念を浮かべた表情を見せる。

 

 

「お前、ボスじゃないな?」

 

 

青年の言葉にスネークは疑問を抱くが、青年の起こした行動で疑問から引き戻される。

 

 

青年が山猫の如く鳴き声を発したからだ。

 

 

そしてその鳴き声が止むと同時に、周囲の茂みや瓦礫の裏から黒衣の野戦服と目出し帽、赤いベレー帽を身に付けた幾人もの兵士達が現れた。

 

 

突如、スネークを囲むように現れた武装集団。

 

 

「GRUの…部隊…!」

 

 

ソコロフの絶望的な呟きを聞き、スネークは麻酔銃とナイフを改めて握り直し、目の前の青年──オセロットを油断なく警戒する。

 

 

「何だ?その構えは?その銃は?」

 

 

オセロットはスネークの(彼等から見れば)奇妙な構えと麻酔銃を見て、周囲の部下達へと目線を送る。

 

 

上官の思惑を受けた部下達はわざと声を挙げてスネークを嘲笑し、呆れたような動作を互いにする。

 

 

オセロットは懐からマカロフを取りだすと指先で遊びながらスネークの周りを気取った風に歩き回ってから、スネークを背に新たなマガジンを装填した。

 

 

「さて、ボスでないのなら…死んでもらおう!」

 

 

そして一瞬のうちに銃身をスライドさせると、先ほどの兵士たち同様スネークを射殺せんと、スライドを戻しながら構えた。

 

 

しかし"ガチッ"という鈍い音が響いただけで、オセロットはスネークを射殺するどころか、弾を発射することすら出来ずに戸惑った。

 

 

戦場で最も致命的なもののひとつ、ジャム(弾詰まり)である。オセロットは目の前に敵がいることも忘れ、弾詰まりを起こしたマカロフに視線を向けてしまう。

 

 

当然、そんな致命的な隙をスネークが見逃す筈もなかった。

 

 

スネークは即座にオセロットに体術を仕掛け転倒させると、その手からマカロフを奪う。銃を奪われ、スネークに足技で首を固められたオセロットは、慌てる部下に命令を下すしか出来なかった。

 

 

オセロットの命令を受けた部下達はスネーク目掛けて攻撃を開始──廃工場に、機関銃やアサルトライフルの音が断続的に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アサルトライフルの射撃を浴び、野戦服の男が蜂の巣となり倒れ込んだ。

 

 

「行け、止まるな!ダヴァイ、ダヴァイ(進め、進め)!定刻までに施設を制圧するんだ!」

 

 

舌足らずな私の命令が響き、それを受けて幾人もの兵士が短く断続的に射撃を繰り返しながら前進する。

 

 

初めまして皆さんこんにちは、小官はターシャ・ティクレティウス少佐と申します。

そして改めてお久しぶりです。元ドイツ第3帝国武装親衛隊所属のターニャ・デグレチャフです。

 

 

現在私はとある秘密作戦に従事している最中でして、その秘密作戦の目的達成の為に鉛弾の飛び交う戦場に再び身を置いております。

 

 

何故だろうか、平和や安寧が望めば望むほどに遠ざかっていくのは?私の今のコードネームに対する皮肉だろうか?失敬、愚痴になってしまいました。コードネーム云々に関しましてはまたいずれお話致しましょう。

 

さて、現状は端から見れば戦場ではよくある兵士同士による撃ち合い、つまりは敵対する人間同士による戦闘行為と映るだろう。

 

 

しかしよくよく見ればおかしいと思われるだろう。私が率いる連中と撃ち合う彼らが皆、同じ色・形の野戦服を着ているからだ。似ているとか瓜二つといったものではなく、まるで一緒なのである。

 

 

そして互いに叫んでいる言語も一緒であった。どちらか一方が相手の味方の真似をして敵を混乱させようとしているのでなければ、この状況から導き出される答えはひとつ───同じ国の兵士同士による殺し合い?

 

 

ご明察通りである。今現在、私は秘密作戦にさしあたってGRUから貸し出された小隊を率いており、目的の施設を守備するKGBの部隊と交戦中である。

 

 

「諸君、君たちが同国の人間同士とはいえ、目的の前では敵だということを忘れるな!確実に倒せ!───注意、11時方向、機関銃陣地!ノイマン、潰せ!」

 

 

「了解!」

 

 

私がノイマンと呼ぶ巨漢の兵士が返事と共に立ち上がると、両手で抱えた銃を火を噴く機関銃陣地へと向ける。

 

 

彼が持つのはこの秘密作戦にあたってGRUから貸し出された試作型の新型重機関銃だ。

 

彼が引き金を引いた瞬間、銃口から吐き出されたのは12.7mmの金属の塊──たった一発で人間の頭を、高熱で溶解させた塩を流し込んだスイカのように出来る暴力的な弾丸は、毎分700発の速度で容赦なく機関銃陣地へと叩き込まれた。

 

 

数秒足らずの、しかし過剰な威力を誇る弾を正確無比に叩き付けられた機関銃陣地は、粉砕されたDshk機関銃の残骸と人間だったものの血飛沫と臓物によって前衛的アートと化していた。

 

 

被っている制帽から察するに、恐らく機関銃陣地の指揮官だったであろう肉塊の頭部が土嚢にもたれ掛かっており、破片に引き裂かれたのであろう皮一枚で繋がる顎が、プラプラと揺れている。

 

 

「見事だノイマン!さて…ヴァイス、施設の制圧状況は?」

 

 

「はっ!抵抗は既に微弱となりつつあります!あと10分もすれば施設は制圧出来るかと」

 

 

「よし、私はこのまま指揮を続ける。ヴァイス、数名を連れて"彼女"に合流しろ。この施設さえ制圧してしまえば設計局は丸裸だ。後は"例の兵器"を頂くだけだ」

 

 

「了解しました。では後程設計局で」

 

 

「うむ」

 

 

私から指示を受けたヴァイスは無線手を呼ぶと、二言三言会話をしてから、部下3人を連れて離れていった。

 

 

それを見送ると、側に控えている部下から拡声器を受けとり、目的達成のための無慈悲な命令を下す。

 

 

「さあ諸君、仕上げといこう。施設を完全制圧だ!軍曹、部下に兵舎・倉庫・地下・物置に至るまで徹底的にクリアリングさせたまえ、一人たりとも逃がさず射殺───"書記長閣下"に情報が行かぬように、決して生き証人を残すな」

 

 

「はっ!了解しました、ティクレティウス少佐!全員聞け、施設を隅々までクリアリングしろ。誰一人逃さず射殺しろ!」

 

 

命令を下された兵士達は、銃を投げ捨てて降伏や命乞いを叫ぶ施設を防衛していた自分達と同じ軍服を着た兵士達を次々と撃ち殺していく。

 

 

逃げようとする人間も足や背中を撃たれて地面に倒れこみ、近付いてきた兵士によって頭部に更に1発──確実に仕留められていった。

 

 

施設の中からも同じように叫ぶ声があちこちから響くが、発砲音と共に沈黙していった。

 

 

殲滅の命令から約10分、守備兵達の戦意喪失により防衛機能を失った施設は1人の生存者も残さず完全制圧という結果になった。

 

 

そしてこのまま行けば私の目論見通り、クレムリンの指導者がここで起こった事件とその目的を知る事は無かっただろう───しかしこの少し後に起こるイレギュラーによって、クレムリンの指導者はこの事件を知る。

 

 

何故か…とある生き証人が事件の重要事項を自らの指導者に知らせたからだ。そしてフルシチョフもまた、その敵対国の指導者とのホットラインによる対話を経て、事件を知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──場所は戻り、ソ連領ツェリノヤルスク山中・廃工場吊り橋──

 

 

 

ソコロフという科学者を救いだしフルトン回収にて脱出、数時間で終わる筈であった作戦は既に暗礁に乗り上げていた。

 

 

吊り橋の中央にいるのは3人の男女。1人は軍服を着た傷か痣のような跡が幾つも走っている顔を持つ大柄な男──名をエヴゲニー・ボリソヴィッチ・ヴォルギン、GRUの大佐である。1人はオリーブドラブの野戦服を着た金髪の女──人は彼女を様々な名で呼ぶ"特殊部隊の母"、"ヴォエヴォーダ"、"ザ・ボス"と…。そして最後の1人は息も絶え絶えの満身創痍となっているアメリカのエージェント、スネークであった。

 

 

スネークにとっては未だに信じられない状況であった。原子力潜水艦からサポートをしてくれていた筈の恩師が突如としてここツェリノヤルスクに現れ、自身と共にいたソコロフを奪い、更にはソ連へ亡命すると宣言したのだ。

 

 

突き付けられる現実とそれを証明するようにヴォルギン大佐とザ・ボスが呼ぶGRUの男が現れ、上空には恩師をリーダーと仰ぐ特殊部隊の隊員たちが大型の武装ヘリからこちらを見ており、そして自らの恩師───ザ・ボスによって叩きのめされた自分がいる。

 

 

そこに差し出された恩師の手──「ジャック、貴方は連れていけない」と口にした彼女が差し出した手を、何故かは知らないが自分は取ろうとした。

 

 

恐らくはこんな一目瞭然の今になっても信じたくなかったのだろう。彼女が祖国を捨て敵対国に亡命するといった悪夢のような現実を…。

 

 

そんな愚かな一途の光にすがるような自分を戒めるように、伸ばされた手を握った瞬間彼女によって自分は引っ張られ、腹部に彼女の肘鉄が叩き込まれた。

 

 

破れかぶれで彼女のバンダナを掴み、視線を交わし───直後に身体が浮き上がった。彼女によって橋から投げ落とされたのだ。掴んだバンダナがほどけ、自分を見下ろす彼女を視界に入れながら下へと落ちる。

 

 

そこで、あるものが目に入った。上空に滞空する武装ヘリのうち1機、そこからこちらを覗いている男の左腕に縫い付けられた2つのワッペンを…。

 

 

自分は常人より視力は良いが、それでも重力落下しながら自分より上空にいるヘリの、しかも人間の腕に縫い付けられたワッペンを見る暇も術も無い筈だ。

 

 

だがその時ばかりは落下速度が遅くなったように感じた。視力が普段より良くなった気がした。まるで神のイタズラにでもあったかのように…。

 

 

ひとつは左右に広がる銀の翼に髑髏が刺繍されたタワーシールド型のワッペン。そしてもうひとつは見慣れた長方形のワッペンだ。白地に50越えの星と、赤と青のライン──見間違えようもない、アメリカ合衆国のワッペンだった。

 

 

だがそれに考えを巡らす間もなく、川へと叩き付けられる。荒れ狂う急流に押し流され、橋とそこから自分を見ている彼女は遠ざかっていった。

 

 

「新たな血は…拒絶された」

 

 

一部始終をヘリから見ていた、ザ・ボスの部下であるバラクラバを着けた男が、一人ごちた。

 

 

「…さぁ、ソコロフの設計局を襲いにいくわよ!」

 

 

そして彼女、ザ・ボスの言葉に、同じく一部始終を見ていたヴォルギンは握りこぶしを作り、叫んだ。

 

 

「シャゴホッドは頂きだ!!」

 

 

 

この約20分後、ソコロフの設計局であるOKB157──核搭載戦車シャゴホッドの開発・実験施設は突如として謎の部隊による強襲を受ける。

 

 

設計局の防衛の為の偽装施設に幾度となく応援要請を乞うも無線機からはノイズが走るばかりで、誰も出ない。

 

 

設計局に居た2個小隊が防衛に出るも、奇妙な部隊との交戦により僅か数分足らずで全滅と相成った。

 

 

設計局に居た研究員や科学者達は抵抗もままならずに拘束され、部屋へと押し込まれ監禁された。

 

 

嵐のように強襲してきた謎の部隊は、目的である新型兵器シャゴホッドを奪うと、嵐のように去っていった。

 




現時点での追加設定


・皆さんご存知ノイマンさんです。彼が使用する重機関銃はNSV重機関銃の試作型です。こいつの設計年は本来は1969年なのですが、この作品では試作型が1964年から存在している扱いです。ガタイの良い男が重機関銃を振り回すってまさに漢のロマンだよ!

・ターシャ・ティクレティウスが偽名ですが、今回からはターニャと表記します。偽名を使う場合や説明等では時折ターシャを使います。


間違いや設定が矛盾する箇所があれば、ご指摘お願い致します。

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