歯車戦記   作:アインズ・ウール・ゴウン魔導王

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ようやく投稿出来ました。一回間違って全部削除してしまい、やたら時間が掛かりました。
俺のせいじゃない!俺の押し間違えた指が悪いんだ(断言)!


なおこの度転職しまして、就業先が六本木となりました。なので仕事に慣れるまでは投稿頻度が落ちそうですが、よろしければ最後までお付き合い頂ければと…。


また前回の投稿日から間が空いている間に評価に星1つがおっ付けられてました…。様々な方が閲覧するので理解はしていたつもりですが、いざそれを目の当たりにすると結構心に来ました・゜・(つД`)・゜・


第6話

──ソ連領、ツェリノヤルスク山中──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、バーチャスミッションを開始する」

 

 

森の中に、男の声が小さく響いた。

 

 

男はサプレッサー付拳銃とナイフを構え、鬱蒼としげる森の中へと歩を進め出す。

 

 

周辺警戒は怠らずに、しかし不必要な体力消耗を避けるために、警戒は必要最小限に─────

 

 

一見両立し難いように見えるこの行動を、男はまるで呼吸をするかの如く自然に行っていた。

 

 

それだけで、この男が並々ならぬ訓練と経験を積んできた人間だということが見て取れる。

 

 

突然、男が警戒しながら進めていた歩みを止め、辺りを再度警戒してからゆっくりと地面にしゃがみ込んだ。

 

 

男は地面に落ちた葉や枝を音を立てないように慎重に退かしていく。

 

 

そしてその下から現れたのは、まだ地面にくっきりと形を残した靴の痕であった。

 

 

そばには同じような靴の痕が幾つも残り、うち一つの近くには煙草の吸殻が捨てられていた。

 

 

男は先ほどの体勢から屈み込み中腰に近い姿勢を取ると、周辺警戒を行いながらまた歩み出した。

 

 

男はしばらくその体勢で歩いていた。そしてその目先にうっすらとだが腰近くまでしげった草むらから人の上半身が見えたと同時に、即座に太い大木へと身を隠した。

 

 

男は胸元に固定された小型無線機を使い、誰かと小声でやり取りを交わす。

 

 

やり取りを終えると、男は腰のバックパック側面にある双眼鏡を取りだし、先ほどの人間を観察し始める。

 

 

観察対象は兵士…ツェリノヤルスク山中を巡回警備するソ連の兵士であった。

 

 

先ほどの靴の痕を残したのは恐らく彼らだろう。そして煙草の吸殻は、彼らが隠密作戦ではなく公規もしくはそれに準じた目的を与えられた存在だからこそぞんざいに捨てていたのだろう。

 

 

もし彼らが非合法な目的のために居たとすれば、靴の痕はまだしもああも煙草の吸殻を残す等という間抜けは犯さない筈である。

 

 

男は一通り兵士達の動きや巡回ルート・武装の観察を終えると双眼鏡を仕舞い、匍匐前進の体勢を取り、ゆっくりと進み始めた。

 

 

兵士達は自らの足元を生い茂った草や枝に隠れているとはいえ、大の男が匍匐前進で通り抜けていくにも関わらず、誰も気付かない。

 

 

これは彼らが無能なのではない。男の隠密技能の高さが異常なのである。

 

 

匍匐前進の動作にしても腕や腹が地面や草と擦れる音は最小限、ほとんど無音と言っても過言ではない。

 

 

野生動物が吠え、野鳥が鳴くこの森の中では例え耳が良い兵士が居たとしても、匍匐前進の衣擦れの音は聞き取れないだろう。

 

 

そして男はそのまま、まるで野に潜む蛇のように風景に交じり、歩哨に一切気付かれることなく奥へと消えていった…。

 

 

彼こそが今世紀最高の変態……ではなく最高の人間とあだ名される事となる英雄────ネイキッド・スネークであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──同時刻、ツェリノヤルスク、ネイキッド・スネークの作戦地点より約1km先の山中───

 

 

 

 

 

とある大木の一つ、そこに1人の人間がいた。

 

 

いや、正確には吊り下げられていた。

 

 

人間の背中には大きめのバックが背負われており、そこから伸びる何本ものロープの先には、ダークグレーのパラシュートが開いていた。

 

 

そのパラシュートは大木の枝に引っ掛かっており、パラシュートを背負っていた人間は大木の幹の中間辺りでブラブラと揺れている形だ。

 

 

何のことは無い。ぶっちゃけるとこの人間はパラシュート降下をした際に目測を誤り大木に接触───パラシュートが引っ掛かり、大木から吊るされる形になったのである。

 

 

そして当人はブラブラ揺られながら、しかめ面をしているような声でブツブツと文句を口に出している。

 

 

「全く、部隊初のHALO降下でこんな醜態を晒すとは…部下に顔向け出来んではないか。そもそも何が降下に最適な地点だ…どう考えても降下に最悪な地点ではないか。大木はそこかしこに点在し枝や葉は生い茂り放題…いや、それ以前にっさと任務に戻らねば…」

 

 

そう一人ごちた人間は右手を手刀の形にすると一呼吸の元、自らの頭上に伸びるロープ部分を薙いだ。

 

 

すると、バックから伸びるロープはまるで鋭利なナイフで切断されたかのように切れ、吊るされていた人間は地面へと落下───しかし慣れたような動作で衝撃を和らげるように着地した。

 

 

人間は着地体勢から立ち上がると、マスクのチューブが繋がった部品等を取り外し、顔を覆うマスクを脱ぎ去った。

 

 

その人間はひどく小柄であった。身長が低いとか以前に、その身体ははっきり言って子供のそれと大差ない。

 

 

顔立ちに至っては完全に幼い少女のそれであった。

 

 

しかしその面構えは、歴戦の男のそれと大差ない。瞳は鋭く、口元は固く結ばれている。

 

 

10人の兵士を集めて「あれは何か」と問えば、10人全員がこう答えると思われる。

 

 

 

 

<<顔立ちが幼い軍人>>

 

 

 

 

…と。

 

 

 

 

少女は手首の腕時計を眺め、辺りを見回す。

 

 

「さて、予定ならそろそろこの辺りを"連中"が掌握している筈なのだが…」

 

 

更に少女が周りを見回していると、背後から枝や草を掻き分ける音が響いてきた。

 

 

少女は何かが近づいて来てるというにも関わらず、まるで警戒していないかのような体勢で音の主が現れるのを待っている。

 

 

そしてついに最後の枝が掻き分けられ、そこからオリーブドラブの野戦服にマガジンポーチが取り付けられたベスト、頭部を覆うフードや目出し帽といった武装をした10人前後の男達が現れた。

 

 

男達は少女を見つけると、何やら耳を寄せあい、僅かな時間だが話し込む。

 

 

そして先頭のリーダー格であろう、スリングでAK47を腰部分に吊るした男が、少女に対して敬礼を示してきた。

 

 

少女も間髪入れずに見事な敬礼を男に返す。

 

 

互いに敬礼の動作を終えると、少女は男に対して言葉を紡いだ。

 

 

「出迎えありがとう、軍曹。さて、時間は有限だ…早速だが、"案内"をお願い出来るかね?」

 

 

「はっ!お任せを。予定地点はここから1時間も掛かりません。それでは、こちらへどうぞ────"ティクレティウス少佐"殿。」

 

 

「ああ…了解した」

 

 

"ティクレティウス"と呼ばれた少女は、男の言葉に、少女が浮かべるとは思えない歪んだ笑いを浮かべ、答えた。

 

そして少女は彼等と共にソ連の山中を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─場所は戻り、ソ連領ツェリノヤルスク山中、ネイキッド・スネーク、廃工場内部─

 

 

 

 

 

 

「少佐、こちらスネーク。ソコロフを無事、救出。怪我はない。大丈夫だ」

 

「よくやった、スネーク。ソコロフを連れて、回収地点まで急げ!回収地点で落ち合おう。それと見張りは?」

 

「問題無い。誰にも見つかっていない」

 

「分かった」

 

「ザ・ボスは?」

 

「ザ・ボスとの通信は先ほどから途絶えているんだ。」

「何があった?」

 

「電波状況が悪いだけだろう。とにかく脱出を急いでくれ」

 

 

スネークは少佐の説明に納得が行かない感じではあったが、とにかく脱出をするべく、ソコロフを連れて廃工場内部を進んでいく。

 

 

「動くな!」

 

 

しかし突然響いた声にスネークとソコロフは身を固くした。

 

 

そこに居たのは、オリーブドラブの野戦服にAK47を構えた複数の男たち───廃工場を警備していた兵士達ではない。

 

 

恐らくはパトロールに出ていた部隊の兵士だろう。彼らはパトロールから戻った際に、廃工場内から聞こえるスネークとソコロフの会話を聞き取り、侵入者と断定───隊を分散して身を潜め、自分らが有利に立ち回れる位置で待ち構えていたのだろう。

 

 

これは想定外の事態というよりも、ソコロフから聞かされる権力奪取を狙うGRUの大佐や反フルシチョフ派などの不穏な話に聞き入ってしまっていたスネークの不手際と言えるかもしれない。

 

 

かといってソコロフからもたらされる話はアメリカ政府にとって片手間に聞いていられる捨て置いて良い話では到底無いため、アメリカに属するエージェントであるスネークが聞き入ってしまっていたのは仕方ないとも言える。

 

 

だが何よりも問題は、この包囲状況からソコロフを連れた状態でどう逃れるかであった。

 

 

しかし今のこの包囲では下手な行動は取れず、発砲など論外と言えた。

 

 

だが、そこに響いたある一言が、状況に変化をもたらした。

 

 

 

 

「やっと会えましたね?伝説のボスに…」

 

 

そこに居たのは黒い軍服を着こんだ青年───彼は右手でマカロフ自動拳銃を回しながらスネークの方へと歩いてきていた。

 

 

「貴様、スペツナズの山猫部隊!」

 

 

1人の兵士が発した警戒を伴った声に、他の兵士達も咄嗟にスネークとソコロフから視線を外し、青年へと銃口を向けていた。

 

 

「GRUの兵士がなぜここに?」

 

「兵士──だと?」

 

 

警戒する兵士から発された言葉に、青年は「心外だ、何故気付かない」とでも言いたげな不快感を伴った言い方をする。

 

 

そうして右手で回していたマカロフ自動拳銃を慣れた手つきでホルスターに仕舞うと、芝居がかった動作で両手を持ち上げ、自身の赤いベレー帽の位置を整える。

 

 

青年の声、動作──そして何よりブーツに取り付けられた拍車を見ていた兵士が驚愕の声を発した。

 

「オセロット(山猫)の大将!」

 

「間違えないでほしい。俺はオセロット少佐だ」

 

 

青年は「ようやく気付いたか」といった雰囲気で、身体を一回転させ、ポーズを決めた。

 

ブーツに拍車、キザと言える動作や自信にまみれた発言など、普通に考えれば侮られるであろ青年だが、兵士達の警戒や言葉から、青年が決して侮れる相手ではないという事がひしひしと感じ取れた。

 

 

何よりスペツナズ所属という事が、青年がただ者ではないといった証しでもあった。

 

 

「ソコロフは渡さん。さっさと立ち去れ」

 

 

兵士は青年を下手に刺激しないように──しかし青年の目的であろう科学者を渡しはしないという断固とした態度を示す。

 

 

「山猫は獲物を逃さない」

 

「何だと…!」

 

 

しかしオセロット少佐と名乗った青年のその言葉に、兵士は不穏な空気を感じ取った。

 

 

次の瞬間、オセロットと名乗った青年の右手が動いた───いや、動いたと思ったその右手にはいつの間にか、先ほどホルスターに仕舞った筈のマカロフ自動拳銃が握られていた。

 

 

そして青年のマカロフ自動拳銃の銃口が向いているのは自分、そう理解した兵士は理解から防衛のための行動を起こす暇もなく倒れ込んだ。

 

 

青年の持つマカロフから響いた一発の銃声によって…

 




【木から垂れ下がってブラつくターニャ】
前回のコメントで展開を言い当てたニュータイプな方がおりましたが、その通りパラ降下で木に見事に引っ掛かりましたw
誰かが引っ掛からないと面白くないでしょ?


【ティクレティウス】
皆さんご存知、ターニャの偽名です。戦後、アメリカに渡ったターニャは偽名として原作のように「ターシャ・ティクレティウス」を名乗っています。
だから何だと言われたらそれまでですがね…。

【オセロット】
皆さんご存知リボルバーと西部劇が大好きなオセロットさんです。決して某フレンズアニメに出てきた動物ではありません。
過去にタナカのSAAで3の彼の真似をしてみましたが、指をめっちゃ痛めただけに終わりました。

【廃工場】
ソコロフが隠してたのはシャゴホッドの設計図ではなく、きっとグラビア写真集。

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