歯車戦記   作:アインズ・ウール・ゴウン魔導王

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戦闘シーンやら区切りに四苦八苦してたら大分間が空いてしまった。


こんばんは。これにて歯車戦記、大戦話が終了となります。ようやく本編に入れるよ…


さて突然ですが皆さん、歯車とも幼女とも無関係ですが、スカイリムをご存知でしょうか?

いえ、昨日スカイリムをプレイしていたらハースファイヤで建てた家に子供がペットを連れ込んでたんです。


"マッドクラブ"を…


ええ、はい、初めてペット枠と化したマッドクラブを見ました…いえフロストバイトスパイダーよりはいいんですが…スパイダーはキショいし…


では下らない話は終わりと致しまして、本編どうぞ。


第3話

いや、あんな物理法則とか人間の身体構造を完全に無視した行動を見せられれば、誰だって声を挙げずにはいられない。

 

 

そいつは瞬く間に建物の屋上に登りきると、こちら目掛けてクロスボウを乱射し始めた。

 

 

「…っと!」

 

 

再び間一髪で矢を避ける私。

 

 

そして漸く思考が追い付いた連中が、あの男目掛けて発砲する。

 

 

が、今度は何と凄まじいジャンプ力で、通りの建物を次々と移動しながらクロスボウを撃ってきた。もはや唖然とするしかない。

 

 

おまけにそれだけでは終わらなかった。

 

 

先ほど古参兵連中が世紀末のモヒカンばりにヒャッハーしながら火炎放射器を振り撒いて退治したハチが再び集まってきたのだ。

 

 

そしてそのハチが密集した場所から野太い男の笑い声が響いたかと思いきや、ハチが分散した。

 

 

そこには覆面を着けたガタイの良い大男が短機関銃を片手に、もう片手にはハチの塊がガントレットのように密集していた。

 

 

「ちっ…(先ほどのハチの襲撃はこいつの仕業か…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうしてこうなった!?)

 

そう内心叫ばずにはいられなかった。

 

 

我々が対抗するのは連合国の優秀な兵を集めた少数精鋭の特殊部隊───確かにそう聞かされていた。

 

 

だが………某アメコミヒーローの蜘蛛男の如く建物を登ったり跳んだり、ファンタジーのテイマーよろしくハチを密集させたり腕にまとわりつかせたりするような化け物集団等とはこれっぽっちも聞いていないぞ!!

 

 

だが悲しきかな…神は───いや、クソったれの存在Xはまだ私を虐め足りないらしい。

 

 

我々が進軍していた街道の前方から、バカスカと盛大に砲を放ち、雨よ霰よとばかりに機関銃をバラ撒きながら後退してくる中隊規模の部隊────街道先で所属不明の歩兵部隊と交戦していた筈のグランツ達だった。

 

 

その向こう側からは覆面やガスマスクで顔を覆ったオリーブドラブの野戦服の歩兵───恐らくはコブラ部隊の歩兵達だ。

 

 

どうやら我々本隊の到着まで持ちこたえ切れず、最低限の体裁は保ちながらも、尻尾を巻いて逃げ戻ってきたようだ。

 

 

「たかが軽歩兵相手に随伴歩兵付きの装甲部隊が押しきられてどうするバカ者が…」

 

 

呆れて怒鳴り散らす気にもなれないではないか。

 

 

勿論グランツには後で説教を垂れてやるつもりではあるが、今は目の前の敵を凌ぐことが先である。

 

 

そう割りきって私は自身の背中に背負っていたG43を手に持ちかえ、瓦礫をバリケード代わりに腰だめになり、前方から迫ってくる歩兵に牽制射を浴びせる。

 

 

…で、そこでまたもや非常識を眼にした。

 

 

いや、コブラ部隊の歩兵に混じってスコープ付モシン・ナガンを突スナばりに撃っている禿爺も非常識と言えば非常識だが、最たる非常識はその後ろからやって来た。

 

 

オリーブドラブの野戦服に混じって1人だけ、真っ黒な野戦服を纏った男だ。

 

 

そいつは背中に背負ったボンベを何やら後ろ手で操作してから、火炎放射器を構えた。

 

 

そして放射器の口から地獄が噴き出された。

 

 

 

 

 

火でも炎でもなく、"地獄"だ。

 

 

 

 

 

通常の火炎放射器ではあり得ない量の………いや、例え火炎放射を装備した化学戦車でも無理であろ量の炎が街道一面に吹き荒れたのだ。

 

 

前言撤回、グランツへの説教は無しだ。

 

 

むしろあんな非常識相手に最低限の体裁保ちながらも後退してきたことを誉めてやりたい。

 

 

私は後で、バーベキューにされてなければグランツを慰労してやろうと決めながら、蜘蛛男とハチ男と撃ち合っている部隊連中に叫んだ。

 

 

「諸君、コブラ部隊の歩兵共がお出ましだ!着剣!スコップとナイフもだ!乱戦に備えろ!」

 

そして始まったのは、第一次大戦の塹壕か日露の203を再現したかのような乱戦であった。

 

 

映画では格好良くライフルを扱いながら敵を撃ち倒したり、華麗に格闘技を決めたりするが、現実はこんなものだ。

 

綺麗も汚いも無い。

 

相手に組み付いての殴打は当たり前。

 

 

首もとや耳に噛み付き、瓦礫や銃床で殴り、ストレートスコップで頭や肩をかち割り、ナイフで腹や胸を滅多刺しにする。

 

 

まったく…乱戦に持ち込まれては、せっかく用意してきた戦車は役立たずではないか。

 

 

予想通りに進まなすぎる戦況に愚痴のひとつも言いたくなる。

 

 

そして私も例外に漏れず、近接戦で私を狙ってくるコブラ部隊の歩兵5人と近接戦闘にもつれ込んでいた。

 

 

私と至近距離での撃ち合いで弾が切れたガーランドの銃床で殴りかかってきた奴を手刀で頭から股ぐらまで一気に引き裂く。

 

 

臓物をぶちまけながら半分になった奴の後ろから銃剣を着けたガーランドで斬りかかってきた奴の一撃を鉄板仕込みのブーツで蹴り上げ銃剣を粉砕し、ついでに腰から引き抜いたルガーで両脛を撃ち抜く。

 

 

両脛を撃ち抜かれたそいつが地面に膝をついたので正面から首を脇に抱え込むように締め上げ、こちらをトンプソンで蜂の巣にしようとしていた奴を即席のヒューマンシールドと片手のルガーで牽制する。

 

 

予想通りそいつは味方ごと撃つのを躊躇ったので、脇に抱え込んだ奴の首を勢い良く上に持ち上げてへし折り、間髪入れずに牽制していた奴に接近──首にラリアットをかましながら同時に踵で相手の後ろ足首に足払いをかけて地面にハッ倒した。

 

 

倒れた拍子に後頭部を地面に強かに打ち付けて痛みに悶える奴に止めを刺すべくドタマをブーツで踏み抜いた。

 

 

ひび割れた瀬戸物のように頭蓋が粉々に割れ、脳味噌やら血飛沫やらが撒き散らされ私のブーツや顔を汚すが、まだ2人残っているため気にする余裕は無い。

 

 

仲間を惨殺され逆上した奴が怒声をあげながら武器を投げ捨て、私目掛けて向かってきた。

 

 

ハッ倒した奴の頭蓋を踏み抜く作業の最中だったため一瞬反応が遅れ、そいつの両手が私の細い首を締め上げる。

 

 

咄嗟に私はルガーを下に落とし、首を締め上げてくる奴の腹部に両手を打ち込み、背骨まで貫通させる。

 

 

そいつは、信じられないものを見るかのようにまじまじと自分の腹部に埋まる私の両手を凝視していた。

 

 

今は突然のことで痛みを感じていないらしいが、このままではこいつは確実にこれから襲ってくる激痛に悶え苦しむ羽目になるだろう。

 

 

だが私はサディストでも快楽殺人者でもないので、わざわざ時間を掛けて苦しむ敵の姿を眺める趣味は無い。

 

 

私はそいつが痛みに絶叫をあげる前に腹に埋まった両手を左右に振り抜き、上半身と下半身を切断した。

 

 

そして間髪入れずに落としたルガーを手に取り、まだ息のあったそいつの脳天を撃ち抜いた。

 

 

そして最後の1人と相対して向き合う。

 

 

ただ、こいつが他の連中とは違った。

 

 

名前は分からんが、覆面の端から覗く金髪があるので、とりあえずは"金髪"と呼称する。

 

 

ん?私も金髪だと?ややこしい?やかましいわ!

 

 

とにかく、"金髪"は今まで戦ったどの兵士よりも格闘に長けており、隙が無かった。

 

 

私が繰り出した拳を流すように受け止められ、拳を手首の方へと捻られ、鳩尾に膝蹴りを食らう。

 

 

しかし私も負けじと鳩尾に蹴り込まれた脚を、"金髪"が引き戻す前に抱え込み、全体重を掛けて地面に押し倒す。

 

 

仰向けに倒れた"金髪"に、胸元の鞘から逆手で抜いたナイフを首目掛けて突き出すが、即座に出された腕に手首を打たれ切っ先を反らされ、首の端を僅かに掠めるだけに終わった。

 

 

"金髪"はその瞬間を逃さず、頭突きを入れてきた。

 

 

鼻にもろに頭突きを受けて噴き出した鼻血が口回りを濡らすのを感じながら、今度は私が仰向けに倒れ込んだ。

 

 

しかもナイフを取り落とした。

 

 

「(…マズい!)」

 

 

そして今度は"金髪"が、仰向けになった私の上でマウントポジションを取り、抜き放ったナイフを降り下ろしてきた。

 

 

私は右腕で、"金髪"がナイフを降り下ろしてきた左手首を受け止め、反対の左手で、ナイフの柄を押して切っ先を首に刺そうとする"金髪"の右手を掴み、首にナイフが突き刺さるのを止める。

 

 

しかし細身の"金髪"とはいえ私と"金髪"では体格に違いがあり、マウントポジションという事もありナイフは徐々にだが私の首に近づいてきている。

 

 

くそ…忌々しい存在Xの呪いを使えば"金髪"を簡単に潰せるのだが、奴にいちいち祈りを捧げる必要があり、はっきり言って御免である。

 

いや、仮に祈りを捧げるとしても"金髪"はまったくその隙を与えてくれそうにない。

 

しかもマウントポジションで首の直ぐ側にナイフ。

 

 

祈るにはロザリオを握りしめなければならないため、一度"金髪"の両手を抑えている手のどちらかを放さなければいけない。

 

 

だが、どちらか一方でも手を離せば、まず間違いなく私が祈る前に"金髪"のナイフが私の首を切り裂くだろう。

 

 

おまけに部下も部下で、ヴァイスもケーニッヒもノイマンもグランツも非常識ども相手に苦戦しており、今の私の危機的状況に気付いていない。

 

 

いや、仮に気付いてもあの非常識相手では助けにくる余裕も無い。仕方ないのは分かるが、誰かしら気付けと叫びたい。

 

 

ええい、お前らのあだ名を堅物とノッポと微笑みデブとモブにしてやろうか!?

 

 

そんな私の叫びを聞き取ったのかどうかは知らないが、神の代わりに部下が微笑んでくれた。

 

 

私の危機に気付いたヴィーシャが、戦車に備え付けられていたスコップを手に、こちらに全速力で駆け付けてきたのだ。

 

 

そしてマウントポジションを取っていた"金髪"の背後から駆け寄り、頭目掛けて真横にスコップを振り抜いた。

 

 

相手がもし普通の兵士であったならば、ここでヴィーシャの振り抜いたスコップはそいつの頭を見事にかち割り、終わりになっただろう。

 

 

しかし残念なことに相手が"金髪"であった。

 

 

"金髪"は即座に殺気を感じ取ったらしくマウントポジションの体勢から流れるように横に身体を反らし、真横から振り抜かれたスコップをかわす。

 

 

だがそのお陰で"金髪"のナイフを持つ手から一瞬だが力が抜ける。

 

 

私はヴィーシャが作ってくれた機を逃さず、落としたナイフを即座に握り"金髪"の顔面に振るった。

 

 

だが"金髪"は不安定な体勢ながらも素早い動作で顔を反らし、ナイフを間一髪でかわした。

 

 

ナイフは"金髪"の顔面ではなく"金髪"の着けていた覆面を斬り裂いた。

 

 

そこにヴィーシャが今度は真上に振りかぶったスコップを、"金髪"の頭目掛けて降り下ろした。

 

 

だが"金髪"は機敏に察知し、マウントポジションの体勢から横に転がり込んでスコップを避けた。

 

 

ちなみにヴィーシャが空振りしたスコップは、私の股を掠める形で地面に叩きつけられた。

 

 

もしあと数cmズレていたならば、私の股は女性にしては力が強いヴィーシャが勢い良く降り下ろしたスコップによって、目も当てられない惨状を晒していただろう。

 

 

うん、その先は怖いので考えたくない。

 

 

さて、"金髪"はというと、ナイフで斬り裂かれ役目を果たさなくなった覆面を脱ぎ捨てているところだった。

 

 

その覆面の下から現れたのは、私の予想を大きく外して、整った顔立ちの女性だった。

 

 

年は30かそこらだろうか…真一文字に結ばれた口に並みの男共ならタマを縮み上がらせるであろう鋭い瞳。

 

 

あれだけの殴りあいの後だというのに女は呼吸ひとつ乱しておらず、未だ余裕を持っているかのように、流麗な動きで両手を持ち上げ、近接格闘の構えを取る。

 

 

「…セレブリャコーフ大尉、離れていたまえ。彼女は私が相手をする。大尉は他の連中を援護したまえ」

 

「り、了解しました。中佐殿!」

 

 

ヴィーシャは緊張のあまりか戦闘中だというのに律儀にローマ式敬礼をしてから、他の連中の所へと駆けていった。

 

 

「ふふっ(まったく…あいつは…)」

 

 

そう内心1人ごちてから、私は"金髪"へと向き直る。

 

 

「さて、再開といこうか」

 

「来い…」

 

 

初めて"金髪"の声を聞いた瞬間だった。

 

 

そう、そしてこれが私と"金髪"──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、

 

 

 

 

 

 

 

 

"ザ・ボス"との出会いであり、始まりであった…。

 




◆現段階での設定

【存在Xの恩寵という名の呪い】
ターニャが鋼鉄すら斬り裂く手刀やらコンボイばりの衝撃を持つ蹴りやらを使用するには、原作同様祈りを必要とします。簡単に言えば祈ると身体能力が全て化け物クラスに上昇。ただし、ロザリオを握り祈らなければならないため発動が原作よりも面倒になってます。

【コブラ部隊の歩兵】
原作では歩兵に関する話は出ないのですが、特殊能力持ちだけでは人手が足らないだろうし、部隊と称している以上少しくらい歩兵が居てもおかしくないだろうと想像し、登場させた。
で………本音をぶっちゃけるとターニャにぶちのめされるヤられ役が欲しかった。

【SS装甲師団】
ターニャが所属する武装親衛隊の中で、コブラ部隊に対抗するために新たに編成された特務師団。本来師団は第1SSのLSSAHから始まるのですが、ターニャの師団は表向きには存在しない扱いのため、例外で0の数字が付けられているという設定です。師団長は親衛隊参謀のゼートゥーア少将ですが、マーケット・ガーデンが始まる数ヶ月前にゼートゥーアからターニャに師団指揮が委譲されました。特にターニャが好んで率いるのは師団を構成する大隊の1つ「サラマンダー」。装甲師団名は誰か良い名をお願いします(後々の話でも名前やら逸話やらで使うため名前を決めないといけない)

【ターニャ】
師団の指揮を委譲されているという設定ながら、作中では中佐階級でしたが、これはマーケット・ガーデンのゴタゴタで本来行われる昇進が一旦中断していたから。マーケット・ガーデン終了後、正式に少将に昇進──ゼートゥーア少将は中将に昇進しターニャのサポートに回りました。

【マーケット・ガーデン】連合国によるオランダ制圧とルール工業地帯への進路確保が史実ですが、歯車戦記では目的のひとつにドイツ軍の有能将官の排除が入ります。ブラウニング中将はレジスタンスによる情報やモーデル元帥の話をまともに取り合いませんでしたが、米軍はこれを確かな情報と断定──ザ・ボスに命じて将官の殺害・拉致による排除を狙いましたが、ターニャによる妨害で作戦は失敗となりました。
そのため、モーデル元帥が英軍空挺部隊を自分を狙った拉致部隊と勘違いしたのはあながち間違いでは無かったこととなります。

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