退屈そう。母さんはそう言った。それは、まぁ事実だ。その発散としてマザーが俺に
「⋯⋯今までもそれが理由だもんな」
「うん。だって、私にはそれぐらいしか思い浮かばないからね」
苦笑を交えて答える母さん。
今までも、というのは言葉通りだ。今までも母さんは多くのVRゲームを俺に勧めてきた。それこそ自社他社の物問わずだ。
サバイバル物や戦争物。恋愛物にサスペンスやホラー、レーシング。ジャンルも様々だった。が、そのどれもが俺には面白くなかった。響く物は何ひとつなかったと言っていい。理由は単純明快で、リアルじゃないからだ。刺激が少ないからだ。
そんなことを思ってるなんて母さんには伝えてなかったけど、隠せてはいなかったらしい。
「これで退屈しない、かな? 私はあなたの本当のお母さんにはなれないけど、でもできるだけあなたに寄り添ってあげたい。そう思うよ」
真剣な表情をはにかんだものに変える。
年不相応に幼く見えても、大人だな。なんて偉そうに思ったりして照れ臭さを誤魔化すが、どうもできていないらしい。少し頬に熱を感じる。今鏡を見れば、俺の頬は赤くなっているんだろうな。
誰得だよ、ホントに。
「うんっんん。それで今からするのか? もう1時近いぞ」
態とらしく咳払いをして頬の熱を誤魔化し、壁掛けの電子時計を確認する。
室外気温と室内気温、湿度も計れる優れ物だ。
「そうだね。明日、学校から帰ってきてからの方がいいかな?」
「ああ、今日はこのまま風呂に入って寝たい」
「お湯は張ってあるから。出たらお掃除、しておいてね。お母さんはお先に寝まー⋯⋯」
会話の最中に不自然に言葉を切らせた母さんが、パタリと机に倒れ込む。限界だったらしい。
「⋯⋯部屋にいってから寝ろよ」
溜め息を溢して俺は席を立ち、母さんに近付いて背中と膝裏に腕を回して抱え上げる。
「ホントに軽いな、母さんは」
女性の体重をどうこうと考えるのは失礼なんだろうが、母さんは40kg前後の重さだ。その重さのほとんどが、他を圧倒する胸部装甲だろう。
抱えやすいように、俺に凭れ掛からせるように抱えているのだが、その立派な胸部⋯⋯敢えておっぱいと言い直そう。おっぱいが俺の胸に当たってむにゅ、と形を変える。
それが歩く度に強弱を付けて何度も繰り返されるのだ。普通は母親に欲情などしないが、俺と母さんの間に血縁関係はない。無問題だ。
というわけで、じっくりと堪能しながら母さんの部屋に向かう。
ガチャ。
リビングを出て直ぐにとある一室のドアが開く。俺は開けていない。そしてこの家には住民は3人だけだ。
不法侵入者でもなければ見知らぬ人間ということはあり得ないだろう。
即ち⋯⋯。
「⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯キモ」
ぽそっと呟いてドアを開けて出てきた張本人、数秒俺と見詰め合っていた我が妹のリナは、俺に冷めた視線を飛ばしてトイレのあるドアに向かって中に入っていった。
深く、それはもう深く傷付いた俺は、母さんを部屋に連れていき、ベッドに寝かせて布団を掛けてやると、自室に戻って着替えを取り出して、風呂場の一室前の部屋、脱衣場へ向かい服を脱ぐ。
洗濯物を入れる篭に脱いだばかりの服を入れる。あるのは母さんのだけだ。リナは自分で洗濯したんだろう。判断は置いてあるブラの大きさでできる。
花の刺繍があしらわれた赤く扇情的な上下のランジェリーは、見た目が幼い母さん(肉付きは半端ないが)とは相当なギャップがある。
ふざけた思考を追い出すように脱衣場から浴場に入りシャワーを浴びる。リナにだらしない顔を見られたことを綺麗さっぱりと洗い流した。