異界の召喚憑依術師~チート術師は異世界を観光するついでに無双する~   作:秋空 シキ

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【第七話】冒険者なる前に仲間ができた(仮)だけど

 外壁を離れ、賑わう人混みの中を地図を頼りに縫うように進んでいった。

 

 それにしても、どこもかしこもお祭り騒ぎである。もう少し静かに暮らせないのか、マジ鬱陶しいわ

 

 俺は手に持ったハイスペックブックに目を走らせた。

 アオリスの街情報その一、はじめは此処に来てよかったと、思える場所だが、住民がハイテンションすぎてすぐ引くことになる。

 

 ハイスヘックブックにはこう書いてある。成る程、よくわかった。

 それにしても、ハイスペックブックは気が利く。本来の名前、知識本なんてのもあるだろうが、ふと、疑問に思ったことをすぐさま検索?してくれてるのか、直ぐに答えが表示されるのはこの世界では異常なことだろう。これがあったら自堕落な生活も夢じゃないぜ。

 先生が聞いたらすぐやめなさい。と言われそうな夢を抱えそうになったところで誰かとぶつかりそうになった。

 

「キァ!」

 ……っと危ねえ

 

「大丈夫ですか?」

 

 しかし彼女はバランスを崩してしまったらしく手に持った荷物を落としていた。

 

 

「手伝いますよ」

 

 手伝いながら思考を開始する。勿論アオリスについてだ。ハイスペックブックは今は使えないから、自前の脳みそで、だけど、

 

 少々どころか異常とも言えるこのハイテンションは一体どこから来たのかというと、それは祭りの数が問題だ。

 月に平均八回……異常だろ?そして前夜祭を入れるとあら不思議、一月の半数以上が祭りなのである。

 さらに、連日行われる祭りもあるので……まあつまり、はた迷惑な話なわけだ。……っとこれでラストか。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

 そう言って彼女は満笑な笑みを浮かべて急ぐように帰っていった。

 そうそう、彼女の荷物を拾った理由は、罪悪感でも親切心でもないぞ、単に美少女だったからだ。それじゃなきゃ無視する。

◆◆◆◆◆◆

 

「っとこれが俺と彼女が知り合いである理由ですかね」

 

 俺はテーブルに置かれたジュースを飲んでからそういった。ジュースなのは気にしちゃダメだ。

 

「成る程、で、君は彼女とパーティーを組んでくれるのかね?」

 

 おいこら、感想もなにもないのかよ。それから、彼女の顔を見ながら言うんじゃない。ここで断ったら気まずいじゃないか。この打算野郎。

 

「私としては、組んでくれると助かります」

 

 そしてそこの女、こっちをチラチラ見ながら言うな。

俺はそんなのには釣られないぜ。

 それにしても皆さん大事なことが抜けてますよ。さも当たり前の様に会話してるが、

 

「とりあえず、組むか組まないかの前に名前……教えて貰っていいですか?」

 

 名前知りません。

 

「ああ!申し訳ありません。私シルロット=グレイスと言います。今後ともよろしくお願いします」

 

 このアマわかって言ってるのだろうか?何故俺がパーティー組む前提のように言ってるんだ?もしかしてお世辞かもしれないが、そもそも人見知りな俺が他人に声を掛けるかっつの、だから断ったら今後はなし!

 

「まだ、パーティー組むかなんて決めてないので今後があるかは態度次第です」

 

「ええ!?組んでくれないのですか!?」

 

 見ず知らずの奴とそんな簡単に組める訳無いだろ!……といってやりたいが、さすがにキツい言い方なので優しくその節を伝えたら、ティファーレさんが、そういう事には気付くんだな。とか呟いていた。

 あいにく、かつて俺の唯一の友人が『お前、人を疑いすぎだろ』とか言っていたくらい、俺は人間不信であるのでな。

 

「では試しに、というのはどうですか?」

 

 グレイスさんが、よくありそうな提案をしてきた。

 試しに、か……思い出したくない記憶が甦る。

 

 放課後の教室、そこには俺と、一人の女子が赤面して佇んでいた。

 

『優一くん、これ……受け取ってください!』

 

 俺は、好きであった女子からのラブレターを貰い有頂天になっていて、まるで周りが見えてなかったんだ。

 急いで家に帰り封を開けると、

『(優一くんへ、………ぷぷぷばっかじゃないの。私がお前なんかにラブレターなんか書くわけないでしよ。試しに書いてみたけど、本当にひっかかるなんてマジうける。)』

って、書いてあって、その後にもつらつらと長い辛辣な言葉がつらなっていた。

 翌朝、学校に行くと何故か俺を見て笑い声が起こり、それで全てを理解することになった。

 あいつ、いやあのとき後ろにいたあいつら含めて俺をはめやがったのだ。

 

 俺は、その脳裏に映された暗い過去の映像をかき消すかのように頭を振ると、何を勘違いしたのかグレイスが悲しそうにうつむいた。

 

「お前、そこまで強く否定しなくてもいいだろうに」

 

「ああ、違いますよ、少し思い出したくない記憶が甦りましてね。……仮パーティーという意見には賛成です」

 

 少しの動作でも人柄が読み取れるし、なおかつ、俺がまだ足手まといなはずなので、それに対してどう反応するか、というのにもその人の性格が読み取れる。仮パーティーというのは、合理的に見てとても良い案なのだ。

デメリットも少ないし、

 

「本当ですか!?」

 

「はい」

 

「やったぁ!」

 

 何故ここまで喜ぶ?意味が分かんない。

 そんな、俺の心情を察したのかティファーレさんが、

 

「彼女だって一人だと寂しいんだよ、君だって一人はいやだろう?」

 

と、聞いてきた。確かにそうかもしれない。

 俺も常に一人だったが、あいつが友達になってくれてからは、あいつと会う度に気分が高揚していた。

 グレイスさんもきっとそんな気持ちなのかもしれない。似てるのかな……俺。

 

「まあ、そうですね。じゃあよろしくお願いします。グレイスさん」

 

 支部長室ではしゃいでるグレイスさんと握手をした。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 俺とグレイスさんはギルドの一階に降り、ギルドの居酒屋に移動して、俺のギルドカードが出来上がるまで食事をしようということになった。

 俺もこの世界では成人を越えている……という設定(本当は14才)なので、一応酒は飲んで良いのだが、何しろ日本では20才まで飲酒禁止だったのと、それに肝臓を壊したら、冒険者生活が続けることができないのとで、飲むのは止めておいた。

 

 俺は顔を向けずに視線だけを横に向ける。

 

「思いっきりのんでやがる、大丈夫か……こいつ」

 

 もう既に酒瓶三つは開けている。だが、一向に止まる気配はない。そんなグレイスさんを周りは引いて、

 

「ぷはぁああ!」

「オオオオオ!スゲェぞ、このねぇちゃん」

「「 ワアアアアアア!!」」

 

いないな、うん。

 金、しっかり払えよ。俺は払えないからな。




 主人公、ついにヒロインと出会う。
次回グレイスと優一は、初の依頼を請ける。そして彼女の固有スキル公開!

習慣ランキング13位に入ってました。ありがとうございます!
 まだまだ拙い文ですが、みがいていこうとおもいます。これからもよろしくお願いします。
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