異界の召喚憑依術師~チート術師は異世界を観光するついでに無双する~ 作:秋空 シキ
それからサブタイトルを色々変えました。混乱する方がいらっしゃたら申し訳ありません。尚、内容に変化は御座いません。
鉄で出来た剣が交差している看板を前に、俺は二度三度大きく深呼吸して足を踏み出した。
冒険者ギルド、それは異世界転移モノの最高度のテンプレにして、迷宮に入り一攫千金を狙ったり、秘境を目指して旅をする旅人だったりと、目的はそれぞれ違うが誰もが一度は夢見るまさにファンタジーな場所である。
そして、このアオリスの冒険者ギルドは他のギルドと比べて荒くれ者が少なく、みんながみんな仲良しである。その確固たる理由は勿論、支部長の手腕もあるが、一番は、その受付のせいなのだ。
俺的にはそれは無いだろうと言いたい。とても言いたい。……受付は、
「お客さ~ん、登録したいのはわかるけどねぇ~この規約書に十五歳以上ってかいてあるのよ~、あなたどう見ても十三歳くらいかそれ以下でしょ~、いかなる理由があろうともねえ~ダメなのはダメなのよ~」
などと言う勘違いをおこして頬に十字の傷がある、まさに歴戦を潜ってきましたというムッキムキ女ではいけないのだ。
わかるか?今の気持ち、なんかこう裏切られた感じが。こんな女、前にしたら荒くれ者も凄むわ、そんな貫禄がある。
「………十五歳です」
「あらそうなの~ごめんなさいねぇ~勘違いしちゃてぇ~じゃあこの契約書にサインとぉ~冒険者カードを作るからこの水晶に手をかざしてねぇ~」
ムキムキ女は白い紙と羽ペンを机の上に出すと今度は座布団とその上に大きめな水晶を一つ机に置いた。
あれだな、こいつが持つとペンが小さく見えるな。ペンが小さいのか、こいつの手が大きいのか。
多分こ…………やめておこう。これ以上言ったらヤバそうな殺気が飛んできたので。
それにしてもこの水晶はなんだろうか?一見普通の水晶玉のようだけど。
「この水晶はねぇ~ステータスっていう、魔力やスキルが書いてあるものなんだけど、それを知ることができるのぉ~だからほらさっさと手を乗っけちゃってぇ~」
言い方的にこの世界の人達は自力でステータスを見れないのか?そう思いながら契約書にサインし、水晶に手をかざすと、今度はさっきの間延びした話し方ではない真剣な顔つきになった女が
「少年、ちょっと悪いようだけど私に付いてきてくれるかな?」
と、言ってきた。
いきなりの変わり様に驚く俺を余所に、女は受付を離れ、奥に行ったかと思ったら直ぐに戻ってきて。
「待たせたね。今、他の者にここを頼んで来た。それじゃあ行こうかい」
と言った。
どうやら目的の場所は二階らしいが、その際に見た光景を俺は忘れない。
…………交代させられた子。美人だった。ちくしょう!
そして通されたのは明らかに雰囲気が固い支部長の部屋。
赤く長いストレートの髪をたなびかせ、窓際に立っていた彼女は俺の方を見ると……
「その者が件の新人か?」
ムキムキ女に確かめた。
その後、『君は退出してくれ、個人的に話しがあるんだ』と女を部屋から追い出した彼女は、俺の方に向き直る。
その鋭い眼光に俺は生唾を飲み込んだ。
「そう緊張するな、少し相談があるのだ。そこに座ってくれ」
彼女が顎で指したソファーは、かなり高そうで一瞬気が引けた。が勇気を出して座った。
そして彼女も対面に座る。
「それで、なんでしょうか?」
多分だけど固有スキルのことか、それとも……
「そう焦るな、まずは自己紹介といこう。私はクレア=ティファーレ、このギルドの支部長をやっている。よろしく頼む」
そして握手を求めてきた。
そうだな焦ってはいけない。俺は支……ティファーレさんの手を握り返すと返事をする。
「私は天城優一です。それとえーっと……」
やばい、これ以上の自己紹介が出来ない。此処に来てコミュ障が発動するとは……
「ああ、話したくない内容ならそれでいい」
よかった……勘違いしてくれたようだ。
いや、良くないな、改善しなければ。
そもそも、このコミュ障は昔俺が気弱だったのがいけなかったんだ。この世界でも気弱なままいてなるものか。そうと決まれば、ここで挽回しよう。
「いえ、言います。少し家事が得意です」
「……お、おう、そうか」
ティファーレの顔が盛大にひきつる。
……………やっちまったああ!よく考えりゃ家事が得意な冒険者なんてそうそういないよ!
しかも自分は、話したくない内容だと思ってたのに(家事が得意です)という、女子か!ってくらいの自己紹介されて、答え方に困るのは仕方ないよな。ごめんなさい!
「ま、まあ?家事が出来て悪いことは無いんだしいいんじゃないか?」
ここで、相手に気を使わせるという痛恨のミス。
……………オレモウシャベンナイ。いやいやいや気をとり直せ、本題を忘れるな。
「ありがとうございます。ごほん、それで相談というのは?」
「ああそうだつたな、実は君は固有スキル保持者だろう?」
「まあ、はいそうですが。それがどうかしました?」
「……やはり、気付いてないか……」
一体なんの話だ?固有スキルと聞かれるのは分かっていたからそれほど驚いていないだけだが。
「一万人に一人……これがなんの確率か分かるか?」
ティファーレはこちらを見定めるような視線で言ってきた。それは、これでわかるだろ?と言ってるようで、必死に考えさせられた。
一万人に一人………………?
あっまさか!
「オッドアイ!?」
「違う!」
えー違うの。じゃあなんだろ?
「君はきっと天然なんだ。そうに違いない………この確率は固有スキル保持者の確率だ」
………固有スキルの?ふーん
で?である。
「へぇ意外と少ないんですね」
「……よくそんな反応が出来るな」
なんだ?だめだったのか?それほど驚くことじゃないだろうし。
「いや、驚くから普通……まあ、とりあえず君が固有スキルの重要性を理解するのは後にして」
と、ティファーレは両手で箱を持つような仕草をして横に置くと一瞬にして真面目な顔になった。
「問題なのはこの街に固有スキル保持者が二人いることなんだ。勿論、君ともう一人、ね」
「固有スキル保持者は少ないんじゃ」
「そう、少ないさ。だからだ。だから彼女は孤立してしまったんだ」
ティファーレは少し悲しげな顔をして話始める。
「……やはり固有スキルが目立つためパーティで重宝されていたが、浮きやすく、パーティを辞めてしまったそうなんだ。だから自分ではない固有スキル保持者がいた場合連絡してほしいとね。パーティを組んでみたいそうだ。どうだろうか?」
「どうと、言われましても会ったことが無いようじゃ……自分的にはもっと親しい人となりたいので」
一応は優しく断ったつもりである。
そもそも俺と組むのは良くない選択だ。自分で言うのもあれだけど、未だスキルを使いこなせていないのだ。 だから人に迷惑をかけてしまうため少しソロで活動しようと考えてたのにこの展開。
すこし早すぎやしませんかね?
「大丈夫だ。彼女はもう来ている。これから面会してそして、そこで君が決めればいい。」
おおっと。これはまた急展開。どうやら彼女は来てしまったらしい。どうしよう
「私がそれらしき新人がいると伝えたら、すぐ来たんだ」
お前か!?
「とりあえず、入って貰おうか」
俺の放ったツッコミを華麗にかわすとティファーレはパンパンと手をならし……
すると支部長室のギイとひらいていった。
「失礼します」
入って来たのは…………って
「あなたですか!?」
「へっ?ん?あっ、あなたは!」
なんと俺の知り合いだった。
「どうした?知り合いか?」
「まぁ、そうですかね」
次回 道端ではこんなことがあった。