異界の召喚憑依術師~チート術師は異世界を観光するついでに無双する~   作:秋空 シキ

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【第三話】主人公として覚醒は当たり前だと思う

 その後いろいろと説明された。要約すると、俺が死んでからは女神様の部下である死神が魂を回収し忘れ、地球の輪廻の輪に戻せなくなるという事件が起きたらしい。

 全く、何やってくれてんだか死神は。

 そしてそのまま漂い続ける魂は、このラマキアとアースの世界間に辿り着いた。

 さらにそこから俺が歩き続けたため発見するのが遅くなり、俺の精神もすり減るという事態に陥ったわけだ。 

 どっかの誰かさんが俺、行動力はあるのだ。とかほざいてたが自業自得とはこのことである。

 で、今の俺には三つの選択肢がある。。一つ目、このまま世界間を旅し続ける。二つ目、ラマキアに赤ちゃんから転生する。三つ目、ラマキアに今の姿のまま転移する。尚、多少の願いや要求は許されるらしい。

 さてさてどれにしようかと俺は顎に手をあてる。一度やってみたかったポーズだ。

 まあもう決まってるんだがな。まず一つ目はない、絶対ない、ありえない。そして二つ目、これは一瞬迷ったが俺は親に良いイメージがないため却下。こんな風に消去法でやってみると、まるで仕組まれてるんじゃないかと疑いたくなるほど迷いなく決めれた。

 

「女神様、優一様、紅茶でございます」

 

 銀髪美少女天使がソファーテーブルにカップを置き、女神様から淹れていく。そして、俺の方にも淹れたかと思うと口を開いてきた。

 

「優一様、お決まりになられたでしょうか?」

 

「はい決まりました。三つ目にしようかと思います」

 

 うんうん、やはりこの人は良い人だ。気が利くし、丁寧だし、それにこの口調。完璧じゃないか。

 

「んでー、願い事は何にすんのー?」

 

 対して、腕を伸ばし机の上にまたどっかから出したクッキーを掴みあげていく女神様。そのままあーんと一口に食べると指に付いたカスを拭く……のではなく舐めるという豪快っぷり。どっからどう見ても神には見えない。

 この神様を交代させた方が良いと思ったのは、今まで沢山いただろう。

 

「そうですね」

 

 だがしかし、これでも神様なので俺も敬語である。些か不本意だがな。

 

「ラマキアという世界のガイドブックが欲しいですかね、未知の世界とは興味深いので、それから私を働ける年齢まで上げてくれると嬉しいです」

 

 思い出したくない嫌な両親(かお)が頭にちらつく。もう二度と他人なんか頼ってなるものかと思えたあの顔が。そして、一人であらがえる力がいる。それから……いやもういい。これ以上考えると、本当に自分がなにもできなかった悔しさで潰れそうだ。

 

「ふーんなるほどねぇー」

 

 女神様はほんとどうなってんのか分からんが、またどっかから出した紙を見ながら呟いた。

 

「よしわかった。その願い叶えよう」

 

 そして肯定すると、立ち上がりこちらに向かって歩いてきて俺のソファーの後ろまで来ると――――

 

「それから、ラマキアで働けるのは15歳からなんだ。たがら、もう三つ特典をくれてやる。それは着いてから確認しろ。あと、私に近況報告を週一でするんだ。わかったな」

 

――――耳元で囁いた。

 俺はというと赤面で固まっている。美少女が耳元にいるんだしょうがないだろ?。

 そして女神様は手をつけていなかった俺の紅茶をすっと飲んでからテーブルに置くとゆっくりと戻り半分顔をこちらに向けて。

 

「あと……そうだな数分で転生するだろう。転生する場所は街の近くにしといてやる。じゃあ私とフルエルはこれで失礼する」

 

 片手を軽く上げて去っていく姿は、かっこよかった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 というわけで時間は戻る。

 俺は、蝋もなくなり火の勢いが衰えた蝋燭へ目を移した。もう転生というわけだ。

 立ち上がり首を数度鳴らす。

 

「さて、いくか」

 

 それと同時に火が消え足元が輝いた。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 目に写るのは、爛々とした太陽。頬を撫で付けてくる風は涼しい……嘘だごめん。

 

 目に写るのは爛々と血走った眼。頬を撫で付けてくる鼻息は生ぬるい。つまり目の前に怪物。

 

 

 

 女神様?どんな場所に召喚してくれてるんですか?

 

「や、やあ熊さん?とと、とりあえず話し合わない?」

 

「グルアァアアアア!!」

 

「デスヨネー」

 

 やり直し利かないかなぁ。

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

 

 

 急に始まった熊さんとの鬼ごっこ、草を掻き分け、木の枝をかわし、小川を飛び越えて逃げる俺。

 よくこんな走れるなぁと思う。

 身体能力が上がっているのは間違いなしだ。確認できて良かった……こんな形でなければだけど。

 ふと後ろをふりかえれば、迫る黒い影。草を踏みつけ、木の枝を引き飛ばし、って

 

「逃げ切れる気がしねぇぇぇえ!」

 

 よく熊と出会ったら背中を見せるなというよね。よく見て下さい。あの赤い眼を、涎を垂らす口を……俺の選択は多分間違っていないと思う。

 

「クソが!次会ったら覚えとけよクソ女神ぃいい」

 

 週一どころか今すぐ会える気がする。そしたら殴ってやるんだあの端正な顔を、絶対スッキリする。

 

『いいかーおめぇはラマキアに行ったらまずこう言うんだ。オープンってなハハハびっくりするぞ』

 女神を思い出したためか説明の際の言葉がよぎった。

 だが、

 

「今、言えるかぁあああ!」

 

 あの女神様のことだ、絶対何かあるため怖くて言えない。しかも、あの女神はここまで予測して言ったのか、笑っていた。

 だが現状を考えると、それしか打開策はない気がするのだ意を決して言うしかない。

 

「くそぉ……オォープン!!」

 

======================

 

天城 優一

LV1 【15才】 

種族 人族(ヒューマン)

HP30/30

MP150/150

 

魔法適性【テトラ】

水 雷 風 時空間

 

固有スキル

召喚憑依『召獣載書』(ヴィヴリオ・マギア)

 

スキル

看破lv2

偽装lv3

神託lverror

知識書lverror

 

 

能力

 

 

 

称号

 

 

 

加護

世界神の加護

 

======================

 

「・・・・?」

 

 ステータス?一瞬高笑いしている女神の顔が浮かぶ。

……ああそういうことかよ。

 

『いくら地球がつまらなくたってねぇ、ラマキアはそうはいかないさ』

 

 この意味が解った。

 ていうか普通行くのが剣と魔法の世界なら先に説明しろよ女神様。でもあいつ(女神様)ならありえるな……今でも笑い転げてそうだ。

 

 

 さてさてツッコミはこのくらいにして、現状打破を考えなければ。

 まず気軽にスキルを使おうとするのはよくない。だから何かを利用しなければならないな。かといって手持ちもない。

 

 ならば……

 

 目に写るのは流れていく木の枝、俺により掻き分けわれる腰程の草、そして視界の端に先程跳んだ川の上流とその波を二分する大きな岩。

 耳に入るのは俺の息使い、足音、熊の荒い息。

 

 くそ!情報が足りない……ちがう!今はこれしか無いんだ。もっと応用を。

 一瞬身体が熱くなり、五感、身体能力が格段に上がった。

 

「うおっ!?なんだこれ?」

 

 今は、気にする時間はない!

 とりあえずあの熊を!

 荒くなった息使いを安定させ、耳をよく聞こえる様に立てる(・・・)

 なんだろうこれが一番よく解る気がするのだ。

 目をつむった。

 

 

 それにより目にまわされていた情報処理能力が失われる。

 足音によって発せられた衝撃波が波紋のように広がって物体ではね帰り、周囲の景色を見せてくれる。

 色褪せた360度の世界。

 みえた!あれだ!

 

 

 俺は後ろをちらりと見て熊が直線上に追いかけて来るのを確認。そして方向転換。川に向かって走った。

 

「はっはっはっはっ」

 

 作戦はある。だがこれを決めれるかと聞かれたら五割くらいとしか言えない。しかし

 

「やるしか……ない!」

 

 

 

 

 

 

 




次回 決着。そして召喚憑依のチート性能が分かります。

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