異界の召喚憑依術師~チート術師は異世界を観光するついでに無双する~   作:秋空 シキ

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【第十一話】討伐後のあれこれ

 俺たちは無事にゴブリンジェネラルを倒し、その魔石と道中集めた薬草、そして本命の只のゴブリンの討伐部位“耳”を持ち……いや正確には持っていないが、冒険者ギルドへと帰還していた。

 

「それにしても、亜空間収納かあ~、ぷはぁ……便利だよねえ~」

「まあ、俺の魔法の真骨頂ですし、それにしてもなん本目ですか飲みすぎですよ」

「あたしはこれくらい飲まないと気がすまないのぉ、やぁつと積年の恨みをはらしたんだからぁ」

 

 そういって本日七本目の酒瓶を開けるグレイスさん。

 

 俺は自分の水をぐいっと飲む。因みに水なのはこいつのせいで絶賛借金急上昇中だからである。……もう飲ませないからな。いくら祝杯だといっても限度があるってば。

 借金考えたことあんのかこいつ160万だぞ、俺もまさかこの年で借金抱えることになるとは思わなかったよ!

 

……と、いくら考えたって無駄だし何いっても聞かないから放置しといて。

 

 ゴブリンジェネラルは案外あっさりと死んだ。というか短剣の能力が強すぎた。

 

 

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爆剣【ボアノソード】クラス 魔剣級

 

 かつて巨匠ライガスが“シルロット・ボレアース”に贈ったされる【七大魔剣】の一振り。

真骨頂とされる能力は爆発。対象に装備者の魔法、スキルを装備中封印するがその威力は計りしれず、毎度変わるという。

 

[装備者]

シルロット・グレイス

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 最初こいつを見たときはびっくりしたよ。なんてったって【七大魔剣】の一振りなんだもん……いや知らないけど。なんか凄いじゃん。

 ともかくゴブリンジェネラルが死んだのはこいつが原因で、俺のしたことといったら大したことはないのだ。

 

◆◆◆◆◆◆ー初心者の森ー

 

 

 半妖狐へとなった俺は短剣を目標としていた木に突き刺すと、ゴブリンジェネラルを睨む。

 

「ウオオオオオオオオオ!!!」

 

 大層怒ってらっしゃるようで、それはもう怒りの表情で俺へと猛進していた。

 だがまあ、命がけの鬼ごっこもここまで、俺はおいとまさせて貰おうかな。

 

 俺がこれからするのは謂わば転移。よくある転移だ。だが、それをするにも大層な魔力と空間把握をしなければならない。転移したら土の中でしたとか嫌だし。ともかくハイスペックブックにそう書いてあった。

 だから半妖狐になった。

 

 音響世界で空間把握をし、グレイスさんの位置を確認したあとは妖狐の能力【九尾覚醒】『一尾解放』で身体能力、“魔力”を含むを強化する。これで準備完了。

 

 さてと……ゴブリンジェネラルさん_______

 

「さようなら」

 

 一瞬の浮遊感を体感した後は、固くそして縮こまりながらも森を睨み付けているグレイスさんの背後に

 

「っと」

 

 着地した。

 

「今です!」

 

ドカアアアアアアアアアン!!!!

 

 そんな爆音が森中になり響き、近くの木に羽を休めていた鳥や、林に身を潜めている動物らが一斉に羽ばたき、森を駆け抜けて行く。

 

「……やりましたね」

 

 返事がない。

 

 ふと、グレイスさんを見るとその目には数えきれない何かが流れていて、とても今は話しかけられないオーラが纏われていた。

 

 そして涙の結晶が地面に落ちたのと同時に波紋が広がるように静寂が訪れる。

 

 鳥も、動物も、あまつさえ森の木々も呼吸をしていないかのように。

 

 俺もそんな風景の一部だった。今まで高ぶっていた興奮が、威嚇している虎をあやすような、なだらかな空間の波長によって鳴りを潜めていく。周りの動物も同じなのか?

 きっとそうだ。突然の爆発音によって極限まで高められた警戒が嘘のように解れている。

 

 彼女の固有スキル、【白癒】……癒す力。ここまで癒されるのか。

 

 揺りかごのような落ち着いた空間の中、俺は彼女に初めて尊敬を抱いた。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 確かに尊敬を抱いたが……これはちょっと、ね。

 俺が記憶を遡っている間にグレイスさんはついに八本目を開け、ぐびぐびと喉を鳴らしていた。

 

 ちらりと視界に入った酒の種類とその代金を俺は見なかったことにする。

 

………見なかったことにする。

 

 

 

 

 そういえば、道中グレイスさんにこんな質問をされた。『ユーイチってさどうやって私の後ろに来たの?』

うーむ非常に困る質問だった。

 

 

 そもそも俺は彼女の固有スキルを知ってるが彼女は俺の偽装によって知らない。よって彼女は俺の固有スキルを知る権利がある。が、しかし教えるつもりはない。あんな口の軽そうな女誰が信用できようか!

 

 

 というわけで、只のスキルとしました。亜空間収納も只のスキルとしました。世界は広いんです。と言ったら信用してましたー。同じパーティとしては複雑……

 

 それにさっき、さらっとホントのこと言っちゃったけど、気付いてない様子。バカだろこいつ。

 

「ぐあーZzzzzz」

 

 酒抱えながら寝てるし、ったく。

 

「おばちゃんお水二つお願いします」

「ははははははははははははは……大変ねぇ」

「全くです」

 

 そう言いながらも冷水をコップに注いで渡してくれるおばちゃん。

 

 俺はひとつをぐいっと飲み干すともうひとつをグレイスさんの背中の方へ持っていく。

 そういえば、今日同じことやった気がする。

 

 

「ひやああああああああああ!」

 

 おはようございます。夜だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次の話はテスト期間に入るので二週間後……とかになりそうです。

 主人公……大変そう。
 私も大変でこざいます。主に勉強が。

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