異界の召喚憑依術師~チート術師は異世界を観光するついでに無双する~ 作:秋空 シキ
ポツポツと瞼を打ち付けてくる雨粒が、眠りという海から意識を浮上させ、目を開けさせる。どんよりとした黒い雲が青い閃光を放ちながら唸り声をあげるのが目に入った。
ゆっくりと瞬きをした。
辛うじて動く指先から急速に熱が失われていくのがわかる。それに伴い背中から流れる生温かい液体が路上のアスファルトに染み込んでいった。口から出る錆び臭い液体は内臓がやられてしまったことをあらわしてるのだろう。
ああ、くそ……ここまでか。
酷い耳鳴りとぼんやりとした視界の中に人垣が見え、皆一様に写真を撮っていた。仰向けに寝てるから雨に濡れた道路標識が見える。
はは、よく聞こえねぇけど……これはサイレンの音か?
どうやら既に救急車が呼ばれたらしい。安心からか、先程ふっとばして今、呆然とこちらを見つめているカッパを着た女の子に微笑みを浮かべた。最早輪郭が霞んで、顔が見えないが多分あっているだろう。
ここで格好いい一言でも言えれば良いんだけど、生憎、俺じゃあそんな器用なことはできない。
俺は薄く開けた瞳をもう一度瞬きさせて苦笑いしながら、目を閉じた。
いつもの帰り道のことである。
いつからだっただろうか人目を過度なくらい気にするようになったのか。小学校からか、幼稚園からか、もしくは、いや、きっと本当に随分と過去のことなんだろう。身近な人間関係がそうさせたのだ。そのため元々弱気だった俺は、人といることを嫌い学校でも徐々に孤立していった。授業のグループ学習の時も、学校行事も、孤立していた。いじめの標的にもされていた。
ははは………なんで今更……走馬灯ってやつか。
中学生になってもいじめはなくなんなかった。むしろ暴力はヒートアップしたと思う。家にボロボロで帰っても、両親は、何の気遣いもなく仕事を押し付けてきた。
その頃にはもう憔悴しきって逆らう気も起こさなかったな。自殺も考えたこともあったけどそんな勇気あるならいじめられてなんかいない。こんな普通とは違う特別な毎日を送ってきた俺だけど、漫画のように、自分の日常に花が咲くことはないってわかってた。けど最後の最後に自分に誇れることをして、日常に自分自身が赤い花として咲くことができたから、
―――――満足かな………
◆◆◆◆◆◆
チェス盤のような白黒の床の先には果てしなく続く暗闇。水を打ったような静けさの中にポツンと立つ蝋燭は揺らぎの一つもしなく、静かに闇を照らしていた。
それをボーっと見つめる俺。目を開けたらこれだ。全くもって見覚えのない場所に訪れた?らしい。意識があることも謎だけど、この空間が謎すぎて何もいえねぇ
一応冷静を保っているつもりだが安心している訳ではない。死んだなら死んだで早く女神よこせや、まさか永遠にここで独りぼっちとかないだろうな、寂しすぎて死ぬっつの。とか思っている。というか死んでもボッチ、悲しすぎだろう。
さて現実逃避していたのはいいがそろそろ何かしなければならないな。
蝋燭だって見渡して見たけどこれ一本しかないんだ。なくなったら純粋な闇だ、そんな中人間の精神が耐えられるか?答えはノーである。だから移動しなければならない。これでも行動力はあるのだよ。
俺は蝋燭をなるべく広範囲を見渡せるように上に持つと、迷子にならないように足元の升目に沿って歩き始め……
「グーー」
そういえば幽霊って腹空くんだろうか。疑問である。
主人公が腹を空かしたのは下校中に死んだから、時間帯にして16:30くらい
次回は女神に会います。