俺と君を繋ぐ音   作:小鴉丸

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今回の話はタイトルから察してください。
何回も忘れられないように言います。この作品のヒロインは花音です。


第九話 帰り道と気付いた心

〜奏side〜

 

 

学校が終わって家に帰る、そして鞄を置いて俺は再び家を出た。

目的地は花女だ。家からは距離があるので自転車で向かう。電車でもよかったが、この時間帯は混むのでなしだ。

 

今日学校で思い出したのはこころに相談したい事があったという事。まぁ相談というよりも頼み事に近いと思う。それは過去の自分の克服……手伝いをするためには嫌でも音楽と関わらないといけない。

 

「(……俺が勝手に思い込んでいただけらしいけどな)」

 

音楽を辞めたのは俺だ、でも最近龍斗がもう一度再開しようと言ってる。

 

「(ドラムの感覚、残ってるかな)」

 

ライブを見たくはないが別に楽器が無理になってる訳ではない……と思う。

言い出しておいてなんだが少々不安になりつつ花女へと向かった。

 

 

〜こころside〜

 

 

「(こ、ここで待ってればいいのよね?)」

 

HRが終わって教室を出て待ち合わせの場所に着く。どうやら奏はまだ来ていないようだ。

 

「じゃーねー弦巻さん」

 

「え、ええ! また明日ね!」

 

クラスメイトとすれ違うと挨拶をして帰っていく。

時間を見ると四十分、そろそろ来てもおかしくない時間だ。

 

「(どうしてドキドキするのかしら……、やっぱり奏と――)」

 

「なんで下向いてんだ、眩しいか?」

 

「えっ!? かな――!?」

 

目の前にはいつの間にか制服姿の奏がいた。あたしは驚いて声が一瞬出なくなる。

 

「何驚いてんのかは知らんが帰るぞ」

 

自転車の後ろを指を指しながら言う。

 

「ええ、そうね」

 

あたしは奏の前に出て歩く。すると呼び止められた。

 

「歩くよりこっちの方が早いだろ。後ろ、乗れよ」

 

さっきと同じく後ろに指を指す。どうやら後ろに乗れ、という事だったらしい。

 

「周りに見られるじゃない……」

 

「恥ずかしいのか? 別にお前は大丈夫だと思ってたんだがな。恥ずかしいのならなるべく速くするぞ」

 

「でも……」

 

「はぁ、気にするなって」

 

手を握られ近くに引き寄せられる。あたしは指示されるように後ろに乗った。

 

「ちゃんと掴まっとけよ。飛ばしていくからな――ッ!」

 

「え――ひゃっ!?」

 

奏が自転車を漕ぎ始めたと思ったら体ががくんとなる。あたしは咄嗟に奏の体にしがみつく。振り落とされないように、強く。

 

「(奏の匂い……あの時みたいに落ち着く……)」

 

みんなと一緒だと楽しい。けれど奏と居る時は楽しさ以外の気持ち……心がドキドキして、余計に考えてしまう。

最初はあんな事になったけど受け止めてくれて、打ち明けてくれて……。

 

「(ふふっ。これじゃまるで、物語の恋する――)」

 

と奏に抱きついたまま一つの結論にたどり着いた。

“まるで恋するヒロイン”あたしはそう思った。おとぎ話のお姫様、王子様を一途に思い、物語の最後には結ばれ幸せとなる。

 

「(そう、そうなのかしら。あたしは……)」

 

最近の出来事は決まって奏が関係している。

あの日から奏が私にしてくる事全てにドキッとして強く意識をして鼓動が早くなる。

 

「ねぇ奏!」

 

気付いたら自転車を漕いでいる奏に声をかけていた。

 

「どうしたー!」

 

車の音に声が消えないように大きく返してくれる。

 

「あたし頑張るわ! 笑顔も! 思いも!」

 

「あー? どういう意味だー!」

 

「ふふっ、教えなーい!」

 

ギュッと抱きついて笑う。奏は何だそれ、と少々呆れている。

 

この気付いた気持ちはあたしの初めての恋心……。恋のライバルは花音。

 

「(あたしは負けないわよ! 花音! あなたに追いつくわ!)」

 

あたしは始まっているのかいないのか分からない勝負に燃えていたのだった。

 

 

 

 

~奏side~

 

 

こころの家に着いて自転車から降りて中に入る。

 

「行きましょう! 奏!」

 

笑顔で手を引かれその後に続く。

 

「(花音もこれくらい元気が……いや、あのままでいいな)」

 

そんな事ともう一つ思う事があった。それはさっきの自転車の件だ。

 

ちゃんと掴まっとけよ、と言ったのは失敗だった。その、何だ。意外と“ある”んだな……って。

 

「(って何考えてんだ、俺は)」

 

でも花音ほどは……。

ダメだ。考えるな。……よし、オッケー。

 

そうこう考えてる内に扉を開けて中に入っていた。

俺から手を離してこころが話しかけてくる。

 

「それで頼みって?」

 

「あぁ、前に来た時にドラムを見かけた気がするんだが……」

 

前に来たのはハロハピで会議をした時だ。その時にチラッと別の部屋で見た気がした。

 

「ドラム? 確か二階にあったわよ?」

 

よし。

 

「もしよかったらそれ、今貸してくれないか?」

 

「ええいいわよ! それじゃあ二階に行きましょうか!」

 

 

 

そして二階に行きある部屋に向かう。

やっぱり広いよな、と思いながらこころの後ろをついて行ってた。

 

「アレでよかったかしら?」

 

「おう、ありがとうな。ちょっと叩いていいか?」

 

「いいわよ! あたし奏の音を聴いてみたいわ!」

 

瞳をきらめかせて期待をするように言ってくる。

 

「一年以上触ってないから下手かもだぞ、期待はすんな」

 

そう言って軽く叩いてみる。

 

どうやら叩きはできるようだ。あの時からやってもないのに無理だと思い込んでいたせいで妙な感動っぽいのがある。

 

「(……思い出すなあいつらとバンドやってた日を)」

 

エタハピとして活動していた時の事や蘭達に教えていた頃が最近のように感じる。

 

「(何か、乗ってきたな……)」

 

自然ととある曲を叩いていた。

 

「〜~〜~♪」

 

こころはそのリズムに少しづつ乗って鼻歌を歌っている。

 

「(ぎこちないけどこの曲はやっぱり覚えてるんだな)」

 

俺が叩いているのはエタハピでも思い出のある曲だ。最後のライブで一回だけ演奏した曲、他の曲も思い出はあるが何回も演奏したの以上にその一回は大きかった。

 

一曲終わってドラムを叩くのを止める。するとこころが感想を言ってくれる。

 

「凄かったわ! か……カッコよかった……し、聴いてて楽しかったわ!」

 

「そりゃどーも」

 

褒められて悪い気はしない。

少しづつ、感覚は取り戻していけばいい。

 

「もうちょっと叩いててもいいか? 俺は満足したし、お前が迷惑なら帰るが」

 

言うとこころは首を振る。

 

「迷惑じゃないわよ! もし知ってる曲があったらあたしが歌ってもいいかしら?」

 

「断る理由なんてねぇよ。じゃ叩けるものからやるか」

 

「ええ!」

 

楽しい。と心から思ったのは久々だったかもしれない。それほどこの時間は心地よかった。




お気に入り200と増えていてびっくりしてる小鴉です。

読んでくださってる方にとても感謝しています! これからもこの作品をよろしくお願いします!

それとバンドリの作品をもう一つ書き始めました、投稿ペースはこれよりも遅いと思います。因みに登場キャラはこっちと繋がってます。(つぐ可愛いよね? つぐ最高)

今回も読んでもらいありがとです!

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