俺と君を繋ぐ音   作:小鴉丸

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星3花音が遂に僕にも来ました!

それと同時に奏と花音の水族館デート(?)の今回から開始です!

それと、高評価をくれた方ありがとうございます! お気に入りはもうすぐ300件や日間ランキングに入るとかでやる気も起きてますのでこれからもよろしくお願いします!


第十三話 水族館へ【前編】

~奏side~

 

 

「あっ……奏くん」

 

俺よりも先に来ていた花音が手を振っているのが見える。その日、俺らは駅前で待ち合わせをしていた。

 

「ごめん、少し遅れた」

 

「ううん。私が早く来ちゃってただけだから……遅れてないよ」

 

時計を見ると待ち合わせ時間の三十分も前だった。

 

「そっか、じゃあ行くか」

 

早いが二人で駅のホームへ行く。

 

「…………」

 

「…………」

 

ホームで電車を待ってる間、どうも会話がはずまない。

 

前に総士に言われた事を思い出すと幼馴染みを意識して話し掛けづらくなったのだ。

 

「えへへっ」

 

突然花音が笑う。

 

「どうした?」

 

「いや、奏くんと水族館って久々だから……嬉しくて」

 

「久々? ……あー、そっか」

 

二人で最後に行ったのは中学三年の夏だった気がする。

 

エタハピが解散して初めての夏休み。

ドラムの前に座らず、今まであったものがなくて心にぽっかり穴が空いたような気持ちの時に花音が誘ってくれたっけ。

 

花音の笑顔はその時の支えで、俺は彼女が隣に居てくれるだけで心が落ち着いていた。

 

「(今でも支えだけどな……)」

 

勿論、気恥ずかしくてそんな事は本人の前では言えない。

 

『間もなく電車が到着します。危ないので黄色い線の内側まで――』

 

「電車もうすぐ来るみたいだね」

 

ホームにアナウンスが流れる。

それを聞いた俺達は線まで下がり電車が到着するのを待った。

 

 

 

 

~花音side~

 

 

電車に乗った私達、なんだけど……。

 

「暑い……人多すぎだろ……」

 

満員だった。

 

私達は車両の端っこに立っている。

 

「あー……花音ちょっとこっち来い」

 

「え? う、うん……」

 

扉側に立っている奏くんと場所を入れ替わる。

 

「確か、前にお前と行った時人に流されてたよな」

 

そう言われて両手を私の後ろにある壁につく。そこには小さな空間が出来ていた。

 

「(えっ……え!? こ、これって――!?)」

 

所謂“壁ドン”というものだ。

 

周りには人がいっぱい居るはずなのに私には奏くんしか見えなくない。

 

電車が揺れる度に奏くんも揺れる。

よっぽど暑いのだろう、汗が流れ落ちるのが分かる。

 

少しでも涼しくしようとか服のボタンを開けてパタパタとしている。

 

「(うう……どうして私の前でするの~!?)」

 

その男の子っぽい仕草にドキドキしてしまう。

 

たまに私の鼻に届く匂いや普段見ない部分の肌を見てその意識は加速していく。

 

「花音は……」

 

「ふえっ!?」

 

奏くんに声を掛けられる。

 

見ていたのがバレた? 見すぎちゃったかな……。なんてふうに思う。

 

「花音は暑くないか?」

 

「え、あ……。暑い、よ? 今日はテレビでも一番の暑さって言ってたし……」

 

暑くないわけがない。

かく言う私も汗をかいている。でも奏くんのおかげで周りに人がいないからまだマシだ。

 

「やっぱりか。妙に暑いと思ったらそれか……。そうだな、電車降りたらアイスでも買って行くか?」

 

そう提案をされる。丁度いいと思う、体も暑いし……水族館までは距離も少しあるから体温を下げるためにはいいと思った。

 

「うん。アイス食べてひんやりしたいね」

 

「だな」

 

駅につくまでの間、私達はアイスの話をして気持ちだけ涼んでいた。

 

 

 

 

〜奏side〜

 

 

電車が駅に着いて俺は前の人達が降りた後に続く。その俺の後ろに幼馴染みも続いた。

 

「気を付けろよ花音」

 

「う、うん……っ!」

 

ぴょん、と可愛らしく少しジャンプしてホームへ降り立つ。そんな姿を見ていると自然と笑が浮かんできた。

 

駅を出ると近くにアイス屋があるのでそこを目指す。

 

「アイス何食べようかな? 奏くんはどうするの?」

 

「そうだなー」

 

歩きながら考える。

 

別にこれといって好きなものがある訳では無いからどうすると聞かれては答えに困ってしまう。

 

「俺はチョコかな。花音は?」

 

「私はバニラにしてみよっかな」

 

短い会話をしているとアイス屋に着いた。

店自体はそんなに離れてないから距離的には助かる。

 

店の中に入るとひんやりとした空気が肌に触れる。

 

「いらっしゃいませー! 注文はお決まりでしょうか?」

 

「えと、チョコとバニラを一つずつで」

 

そう言って財布から金を取り出して二人分を支払う。

 

「じ、自分の分は払うよ?」

 

「いいって奢るから」

 

花音には何だかんだで感謝しているからちょっとでも恩を返したい。

 

まぁ本人は気付いてないだろうけど。

 

一人でそんな事を思いながら花音にバニラのアイスを手渡す。

 

「ありがとね奏くん♪ 外のベンチで食べよ?」

 

「ああ、そうだな」

 

丁度木影にベンチがあったからそこで二人腰を下ろしてアイスを食べ始めた。

 

「美味しいね奏くん」

 

「意外とここのアイス美味いんだな」

 

人気の店とは知ってたがこっちまで来ないとないから確かめようがなかったけど、これはいい店だ。

 

隣に座る幼馴染みを見るとアイスを食べながら周りをキョロキョロと見渡している。

 

俺もつられて見渡すと俺と花音のように男女二組のペアがほかの椅子に座っていた。おそらくあれらはカップルだろう。

 

それを見て何を思ったのか、花音はいつぞやのように俺にアイスをスプーンに載せて差し出してくる。

 

「奏くん、私の一口食べる?」

 

上目遣いにそんな事を言われる。

 

「(くそっ……そんなの反則だろ……)」

 

俺は短く頷く。

すると花音は「あーん」と言って口を開けるようにさせてくる。

 

「……うん。バニラも美味しいな。ほら、俺のも」

 

花音は少し動きが止まったがすぐに俺のスプーンに食いつく。

 

「チョコも美味しいね♪」

 

えへへ、と笑う花音はとても可愛くてその顔をずっと見ていたくなった。

 

「あ、花音ちょっとそのまま」

 

「ふえ?」

 

俺は花音に手を伸ばす。

 

「か、奏くん……?」

 

俺が何をしようとしているのか分からない花音は首を傾げている。

 

「口、アイス付いてる」

 

「え?」

 

花音の口の周りに少しだけ付いていたアイスを指で取って舐める。

 

その行動に花音は慌て出す。

 

「か、かか奏くん!?」

 

「……バニラやっぱ美味いな」

 

顔を赤くする花音を見ているとこっちまで恥ずかしくなってしまう。

 

あぁ、やっぱり俺は――。

 

「悪い悪い。そんじゃ、早く食べて水族館行くか」

 

「う、うん……、そうだね……」

 

顔を赤くし歯切れ悪く言葉を繋ぐ花音、そんな幼馴染みを見ながら俺はアイスを食べた。

 

自分らしくない、まるでチョコのように甘い事になった。そう思いながら。




次の話から水族館デート(?)のメインです!

少しでも甘くしようと今回は頑張ったと思います。

話は変わりますけど確か僕、第十二話の前書きで「パスパレの作品どうのこうの――」なんて言ってたんですけど……気付いた方がいると思いますが書き始めましたw
時間があればそちらも――。

感想はこれからも気軽にどうぞ!

それでは、今回も読んでもらいありがとです!

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