山の翁、異世界に行く   作:新宿のショーター

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皆さんありがとうございます。


第4話

場を支配するは濃密な殺気と、一瞬にして姿、雰囲気そして口調を変えた死音に対しての驚き。

 

飛鳥と春日部はあまりの迫力に呆然とし、口を閉じる。

 

しばらく無言が続くと、最初に喋り出したのは、十六夜、白夜叉ではなく死音だった。

 

「安心しろ、我は汝らの敵ではない。」

 

そういうと、殺気は抑えられ無意識のうちに息を吐き出す。

 

最初に質問をしたのは十六夜だった。

 

「やっぱあの時は本気出してなかったんだな、ヤハハ。なんであの時その姿になんなかったんだ?」

 

「使う必要がないからだ。今は姿を見せてはいるが、この姿を見せることは少ないだろう」

 

「なんでだ?」

 

「我が攻撃には常に死が付いて回る。故に我が宿主は我を使う場においては一切の容赦はせぬ」

 

またもや衝撃が駆け抜ける。

 

「では、貴方の剣が少しでも掠ると私は死んでしまうのかしら?」

 

飛鳥が聞く。

 

「運命によるがその通りだ」

 

「それなんてチート?」

 

春日部が呟く。

 

「しかし、おんしは本当に山の翁なのか?何人かは既に箱庭に呼ばれたことがあっての、会ったことはあるのだがおんしみたいな者はおらんかったぞ?」

 

白夜叉は長くを生きているため、数回だけだが幾人かの歴代山の翁と面識がある。

 

しかし、目の前にいるような暗殺者らしからぬ大剣を使い、尚且つ弱体化しているとはいえ白夜叉を萎縮させる程の殺気を放つ山の翁は見たことがない。

 

だからこそ、

 

「おんしは本当に山の翁なのか?」

 

「然り。我は山の翁であり、ハサンを殺すハサン也」

 

「ハサンを殺すハサンとはどういうことなのデスか?」

 

「それは私も気になるわ」

 

黒ウサギの疑問に飛鳥も賛同する。

 

「我は……すまないそろそろ時間だ。それは我が宿主に聞くが良い。」

 

その瞬間、身体を黒の霧のようなものに包まれ出てきたのは元通りの死音だった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

ふう、解除、解除っと。

 

やっぱあの姿になると山の翁に身体の操作を取られてしまう。

 

夢幻召喚すると意識はあるけど身体や口は勝手に動く。

 

イメージとしては、勝手に動く身体とは別に意識があり、解除したい時は強く頭に訴える感じだ。

 

「すいません皆さん。あの姿になるとどうしても山の翁さんが強く表に出てしまい」

 

「そのことなら大丈夫よ。貴方の言葉によるとあれは貴方の意思とは別にうごいているのかしら?」

 

「はい、こればかりはどうにもできなくて…でも、意識はあるのである程度は大丈夫です」

 

多分、ギルガメッシュのカードみたいなものだろう。

 

乗っ取られたくなかったら、無感情な人形でもないとダメだろう。

 

「だから、最後の質問。黒ウサギの質問なんですが」

 

「そうデス!どういうことなのですか?」

 

まぁ確かにハサンなのにハサンを殺すというのは意味がわからないだろう。

 

「あの方は、山の翁の始まりであり、同時に教団の腐敗を断罪する監視者としての人生を選んだんだ」

 

「それがどうしてハサンを殺すハサンになるの?」

 

耀さんの疑問は暗殺教団ハサンサッバーハを知らぬものなら当然の疑問なのだろう。

 

「十六夜は分かる?」

 

「なんとなくだが、わかったぜ。けど、お前が質問には答えろよ」

 

やっぱ十六夜は気づいたか。

 

おそらく黙ってはいるが白夜叉も気づいているだろう。

 

「もちろんだよ。耀さん、教団の腐敗とは、即ちトップである山の翁の堕落なんだ。精神、技術の堕落であれ衰退した者に山の翁の名は与えられない。衰退には即ち死の引導を。首を断つことで罪を許し次の山の翁に名が送られるんだ。酷いと思うかもしれないけど歴代の山の翁達は初代山の翁に断罪されることは光栄に思っているんだ」

 

「分かった。あと耀でいい」

 

意外とあっさりしていたな、あと呼び捨て許可貰えたゼ!

 

「わかりました、耀、でいいんですね?」

 

「うん」

 

「黒ウサギも理解しました。先程は慌てて大声で呼んでしまいすみませんでした」

 

おそらく、十六夜の発言に反応しときのかな、

 

「全然いいよ。誰でも暗殺者が近くにいたら驚くよ」

 

本当、最初のみんなの警戒は当たり前だと思う。

 

暗殺者が近くにいるなんて普通はないからな。

 

「しかし、暗殺者なのに大剣使うんだな死音」

 

「それは…………………あまり言わないであげてください」

 

キングハサンさんが暗殺者っぽくないのは今更ですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

その後、色々合ったが私たちはサウザンドアイズを出て黒ウサギ達のコミュニティへ向かっていた。

 

「この中が我々のコミュニティでございます。本拠の館は入り口から更に歩かねばならないので御容赦ください。この辺りはまだ戦いの名残がありますので………」

 

「戦いの名残?噂の魔王って素敵ネーミングな奴との戦いか?」

 

「は、はい」

 

それは気になる。

 

魔王というのがハサンさんより強いのかは気になっていた。

 

黒ウサギが躊躇いつつ門を開ける。

 

死音達の視界には一面の廃墟が広がる。

 

「っ、これは………⁉︎」

 

「おい、黒ウサギ。魔王のギフトゲームは今から何百年前の話だ?」

 

十六夜の言う通り、既に地面は死んでいて周りを見ても既に何百年かは経っているかのように感じる。

 

「僅か3年前でございます」

 

これを、3年⁉︎

 

ハサンさんの能力を使っても流石にこれは無理だ。

 

魔王、今死音の心にあるのは戦いたいという欲求と、必ず魔王を倒し黒ウサギ達に恩返しをするというおもいだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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