山の翁、異世界に行く   作:新宿のショーター

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よろしくお願いします。


第1章
第1話


転生してから数年、早くも死ぬ。

 

「死いぃぃぃぃぃぃぃぃぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

そう叫びながら湖に着水、他の三人も同じように着水していた。

 

「し、信じられないは!まさか問答無用で引き摺り込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「……。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」

 

「俺は問題ない」

 

「そう。身勝手ね」

 

二人の男女はフン、と互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。

 

その後ろに続く形で死音が岸に上がる。

 

適当に服を絞り終えた金髪の兄ちゃんが髪の毛を掻きあげ、

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前たちにも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずオマエっていう呼び方を訂正して。ーー私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、猫を抱えている貴女と、白髪の君は?」

 

「……春日部耀。以下同文」

 

「はい、私は木部死音です。よろしくお願いします。」

 

「そう。よろしく春日部さん、死音君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。みたまんまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

「はは、まじかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

そんな彼らを物陰から見ているものがいた。

 

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいないんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇよか?」

 

「そうね、なんの説明もないのでは動きようがないもの」

 

「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

(全くです。まぁ、悩んでいても仕方がないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか)

 

と、黒ウサギが出てこようとしたとき、

 

「じゃあ、あそこに隠れている人に聞きませんか?」

 

物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を掴まれたように飛び跳ねた。

 

「なんだ、貴方も気づいていたの?」

 

「うん。空間の掌握は当たり前だからね。」

 

「やはははは、面白いなお前」

 

軽薄そうな十六夜の目は笑っていない。理不尽な仕打ちを受けた四人は殺気を含んだ視線を向ける。

 

「や、やだな皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?此処は一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますよ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「すみません、無理です。」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。

 

しかしその眼は冷静に四人を値踏みしていた。

 

そうすると、春日部耀が黒ウサギの横に立ち、黒いウサ耳を鷲掴み、

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

力いっぱい引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

「じゃあ、私も」

 

「あっ、私もやります。」

 

「ちょ、ちょっと待ーー!

 

言葉にならないほどの悲鳴をあげ、その絶叫は近隣に木霊した。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

その後、小一時間程黒ウサギで遊んだ後、箱庭の説明を受けた。

 

要約すると、箱庭ではコミュニティに属すること、全てがゲームで決まること、ゲームは主催者と参加者に別れ互いに自己責任であること、だ。

 

聞いた感じだと神様から与えられたものは恩恵に当たるらしい。

 

というか、早くゲームというのに参加したい、力を使いたい、などと考えていると静かにしていた十六夜が黒ウサギに質問する。

 

「この世界は…………面白いか?」

 

それは正に、私の思っていたことと同じだった。他の二人も返事を待つ。

 

「YES。ギフトゲームは人を超えたものたちだけが参加出来る神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギが保証いたします。」


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