【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0088話『七夕の準備』

 

 

 

 

 

私は明日に控えていた七夕について準備を始めていた。

そして今日は町への視察の警護に島風と白露を連れていた。

島風は開口一番で、

 

「提督、白露おっそーい!」

 

と落ち着きがないようにそわそわしていた。

 

「まぁそう焦るな。島風」

「そうだよ? 別に町は逃げないんだからさ」

「そうだけどー……やっぱり一番になりたいんだもん」

「その気持ちはわかるよ、うん」

 

私の注意に島風はそう答えて白露は速攻同意して寝返りやがった。

まぁ二人ともどちらも一番を目指している性質上気が合うというか何とか……。

片や走りに関しては誰にも負けない自負がある島風。

もう片やは白露型一番艦としての一番という生まれが原因の一番になりたがりの白露。

この二人が仲良くなるのはそんなに時間はかからなかったんだと思う。

島風はよく天津風や時津風とかとかけっこをして遊んでいるけど島風に関しては常に本気で遊んでいるから見てる分は少しひやひやする場面も多い。

そんな折に白露が島風とかけっこ勝負をするという展開に発展してその為だけに『改良型艦本式タービン』と『新型高温高圧缶』を装備してお互いに速力を最速にして勝負をした。

そして結果は見るまでもなく二人は一日中勝負をしていたらしく、

 

『いい加減、諦めなさいよ……』

『島風……諦めないもん』

 

そんなやり取りをしながら走り続けた二人はいつしか同時にぶっ倒れてそのまま医務室送りへと相成った。

それからというもの、二人には微妙だけどライバル意識と友情が芽生えたのか適度に走り込みは一緒になってやっているという。

この二人の説明に関してはこのくらいでいいだろう。

そんな二人をして私は言う。

 

「島風、今度走り込みに付き合ってあげるから今は我慢しておきなさい」

「いいんですか、提督!」

「ああ。これでも高速戦艦の名に恥じない走りは見せられると思う。な、榛名」

《はい。私も走りに関しては負けない自負はあるんですよ。ぜひ提督には頑張ってもらいたいです》

 

そんな私と榛名の話が聞けたのか島風は目をキラキラさせて、

 

「約束ですよ!」

 

そう言って何度も飛び跳ねていた。

お供の連装砲ちゃん達も一緒に飛び跳ねているので同調しているのだろうな。

 

「うう……提督ぅ。あたしも一緒に走り込みしたいよぉ」

「わかったわかった。それじゃ今度三人で勝負でもしようか」

「やったー!」

 

それで島風と白露の二人は機嫌がよくなったので素直に私の後ろを着いてきていた。

ただ……やはり白露はともかく島風の恰好は少し派手な事もあり町の道中でよくギョッとする視線を何度も受けるのは、まぁ島風らしいとしか言えない。

この辺はまぁ我慢だな。

それで町内会へと顔を出して、

 

「町長さん。ご無沙汰しています」

「おお。提督のお嬢さん。よく来てくれましたね。本日は視察ですかな……?」

「はい。それもあるんですけどうちでも七夕の準備もしたいと思いまして笹の葉を数本いただけないかという相談に来まして……」

「そんな事でしたか。でしたらちょうどいい笹の葉がいくつかありますので持っていきますか?」

「いいんですか……?」

「ええ。常日頃から漁師さん達の海上護衛をしてもらっていますからせめてものお返しと思ってください」

「そうですか。……ありがとうございます」

「いえいえ。お互い様ですよ。市場にも顔を出してあげてください。漁師の皆さんは提督や艦娘さん達の事はきっと歓迎してくれますよ」

 

そう言いながら町長さんは私の隣でそわそわしていた島風の頭を撫でていた。

そんな島風も気分は悪くないらしくされるがままだったけど……。

 

「ほら。島風ちゃん、それに白露ちゃんも飴ちゃんをあげよう。後で舐めるといい」

「ありがとうございます!」

「美味しく頂きますね」

 

そして二人は飴を貰って上機嫌になるのであった。

うーん……単調で分かりやすいな二人とも。

そんなやり取りをして後は町の今後のスケジュールなどを調整していって七夕の翌日に行われる瑞雲浴衣祭りの件に関しても町長さんとは話し合いを重ねていった。

そして時間は三時過ぎ。

お昼を取るには中途半端な時間だし、町内会の会議で私を含めて三人とも食事は頂いたのでそれほどお腹は減っていないのもあり、

 

「二人とも。なにか町に用とかはあるか……?」

「え? うーん、そうですね。島風は特にはないかなぁ」

「あたしもあんまりないかも。酒保で買えるもので事足りているし」

「そうか。まぁいいか。後でこれが欲しいといってもお預けになるけどいいよな?」

「うーん……そう言われると少し後ろ髪が引かれる思いかも」

「それじゃ提督! アイスが食べたいです!」

 

島風はそんな事を言い出す。

普段間宮でも食べられるけど町のアイスというものも食べてみたいのだろうな。

 

「わかった。それじゃどこかのカフェに寄るとするか。笹の葉はもう鎮守府へと送ってもらったから手持ちぶたさだしな」

「やったー!」

 

それで三人で近くにあるカフェへと寄って注文をする。

 

「このベリーベリージャンボパフェが食べたい!」

「あたしもあたしも!」

「白露……? 一緒のものを頼むって事は島風と勝負したいの……?」

「いいよお。いつでも相手になってあげるよ」

 

そんなやり取りが行われていて私は気長にショートケーキを頂きながらも、

 

「それじゃどちらが勝っても恨みっこなしだからな。それと二人とも女の子なんだからがっつき過ぎな食べ方は控えろよー」

「「はーい」」

 

そしてパフェが運ばれてきて二人は私の「それじゃはじめ」という合図とともに食べるのを開始した。

それから数分……。

私が懸念していた事が発生していた。

それはというと、

 

「うぷっ……やっぱり量が多かったかな?」

「白露だらしないよ。島風はまだまだ平気なんだから」

 

そんな事を言う島風も顔には汗が浮かんでいた。

二人とも駆逐艦で低燃費だからあんまり量も食えないのだろうな。

仕方がないな。

 

「二人とも。全部食えなかったら言いなさいね? 最悪私が食べてあげるから」

 

これでも戦艦だから量は入るしな。

だけど二人はやせ我慢をして食べるのを止めなかった。

そして、

 

「ふぅー……島風が一番!」

「悔しいよー……うっ」

 

先に島風があの量を食べきって人差し指を掲げていた。

それで白露はまだ残っている為に食べ終わるまで待っていることにしてあげた。

そして帰り道、

 

「提督ー! 腹ごなしに走り込みでもしよう!」

「おいおい。白露がまだダウン気味だから勘弁してやってくれ」

「ううー……当分はあまりああいうのは食べたくないかも……」

 

島風はもうお腹の調子はいいらしくそんな事を言って私がそれとなく注意して白露は唸っていた。

うん。カオスだな。

まぁ楽しかったからいいけど。

そんな一日だった。

ちなみに鎮守府のみんなには七夕にするお願い事を考えておくように通達しておくのであった。

 

 

 




七夕の準備と島風と白露の回でした。




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