【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0085話『阿武隈の憂鬱』

 

 

 

 

……先日に提督と秋月ちゃんの盛大なお祝い事でパーティーが開かれました。

それであたしも今日はとある人へとプレゼントを上げようかなと考えているんです、はい。

でもその相手がとても厄介なんです……。

そう、あたしがプレゼントを贈ろうとしている相手は今日が進水日の北上さんなんです。

昨日の件で感化されたわけじゃないけどたまにはいつもお世話になっている北上さんになにかあげられればいいなと思っていたりします。

だけどそう簡単にはいかないのが世の常と言いますか……問題がありましてぇ……。

それで思わずあたしは窓から今北上さんがいる場所へと目を向ける。

そこには、

 

「北上さん、はいプレゼントです!」

「おー……ありがと、大井っち。でもよくアタシの進水日が今日だって知ってたね?」

「当然のことです。この私が大好きな北上さんの記念の日を忘れるわけがありません!」

「んー……そっか。とにかくありがとね」

「はい!」

 

それで大井さんは満面の笑顔を北上さんに向けています。

北上さんも満更でもないようで大井さんと一緒に笑顔を浮かべあっています。

普段はあんまり笑わない北上さんですけどこういう時は素直に笑うんですよね……。

少し卑怯かも……。

まぁ、そういう訳で北上さんにプレゼントを渡すには大井さんという壁を突破しないといけないんです。

相手はとてもではないですけどあたしには敵わなそうな強敵です。

だからどうしたものかと考えている時でした。

 

「……おい、どうした阿武隈?」

「あ、木曾さん……」

 

そこであたしの様子がおかしい事に通りかかったついでに気づいてくれたのか木曾さんが話しかけてきてくれました。

うーん……? これはもしかしてチャンスなのかもしれません。

 

「木曾さん。少し相談に乗ってもらってもいいですか……?」

「お、おう……。どうしたんだ?」

 

あたしが急に迫ってきたのを驚いたのかどこかのけ反っている木曾さんですけどどうにか話を聞いてくれるようです。

そして普段鈍感そうな木曾さんだけどあたしが窓の外を見ていたのを見ていたのか木曾さんも窓の外を覗いて、

 

「北上姉さんに大井姉さん……? あー、なるほど。阿武隈、もしかしてお前……」

 

そこで木曾さんはすぐにあたしの相談したいことが分かったのか少し意地の悪い笑みを浮かべる。

うー……こういう時に限って察しがいいですね。

 

「多分木曾さんの思っている通り、北上さんにどうやってプレゼントを渡せばいいかと悩んでいたんです」

「なぁるほど……まぁ真正面から渡せれば世話はないけど大井姉さんがいるからな」

「そうなんですよ! あの人がいるから北上さんにプレゼントを渡せないんですよぉ!」

 

それであたしはつい興奮してしまい木曾さんの事を肩を掴んで揺すってしまいました。

 

「おおお、落ち着け阿武隈。わかった、俺がなんとか考えてやるから!」

「本当ですか!?」

「ああ。ちょうどこの話題は球磨姉さんと多摩姉さんともしていたからな。ちょうどいいしな。ちょっと付き合え、阿武隈」

 

木曾さんに付き合えと言われたのであたしは正直に木曾さんに着いていくことにしました。

そしてやってきたのは……、

 

「ここって……球磨ちゃんの部屋だよね?」

「そうだぞ。今頃は多摩姉さんも一緒にいるだろうから一緒に話し合おうじゃないか」

 

それで木曾さんは扉をノックする。

中から、

 

『合言葉を言うクマ』

「球磨型は最強……」

『よし、入るクマ』

 

そんな、なんか面白いやり取りを木曾さんと球磨ちゃんがしながらも木曾さんは扉を開けてあたしを球磨ちゃんの部屋の中へと招き入れてくれました。

そこには木曾さんが言っていた通りに多摩ちゃんも一緒にいて寛いでいました。

 

「木曾。よく来たクマ」

「待ってたにゃ木曾。おりょ……? 阿武隈の姿があるにゃ……?」

「ああ。阿武隈が俺たちと同じく北上姉さんにプレゼントを渡したいんだとさ。それでちょうどよかったから連れてきたんだ」

「そうかクマ。まぁいいクマ。阿武隈なら特別に許してやるクマ」

「ありがとう、球磨ちゃん……」

「いいクマ。これも軽巡仲間のよしみだからクマ」

「そうニャ」

 

それで球磨ちゃんと多摩ちゃんに許しをもらって北上さんの進水日のお祝いをすることになりました。

 

「ちなみに阿武隈はもうプレゼントは用意してあるクマ……?」

「あ、はい。……でもそうなるともう大井さんはプレゼントを渡していましたけど、そこのところはどーなんでしょう……?」

「なにクマッ!?」

「本当にゃ!?」

 

それで球磨ちゃんと多摩ちゃんは驚愕の表情をした後に、

 

「……大井に先を越されたクマ」

「うむ。大井には事前に伝えておけばよかったにゃ……」

 

その二人の反応におそらくだけど大井さんはフライングで渡してしまったのだと悟りました。

それで二人は木曾さんとともに少し諦めた表情になって、

 

「まぁ……大井についてはもう諦めるクマ」

「そうだにゃ」

「ああ。大井姉さんは言っても止まらないからな。俺達だけでも通常通りにお祝いの準備をしておくとするか……」

 

そして三人は疲れ切った表情でため息をついていました。

うーん……ここでも大井さんは少し問題児なんですねぇ……。

 

「それじゃ気を取り直して二人が来るまでに準備をしておこうクマ」

「そうだにゃ。木曾、阿武隈も手伝うにゃ」

「わかった、姉さん」

「わかりました」

 

それで四人で部屋の飾り付けなどをして事前にケーキも用意していたのかテーブルの中心に置かれました。

そして二人が入ってくる頃合いを見てクラッカーなども準備して待っていると、

 

『球磨姉さん。北上さんを連れてきました』

「わかったクマ」

『大井っち? 球磨姉さんの部屋でなにをするのさ……?』

『ふふ。先ほどの続きですよ北上さん』

『ふーん……?』

 

それで扉が開かれたと同時に、あたし達はクラッカーを打ち鳴らしました。

それで驚いている北上さんの表情が見れました。

普段は達観したような顔をしていますからどこか新鮮です。

 

「北上! 進水日おめでとうクマ! お姉ちゃんも嬉しいぞクマ!」

「多摩も鼻が高いにゃ!」

「北上姉さん、おめでとう」

「えっと……北上さん。進水日おめでとうございます……」

 

少し三人に出遅れながらもあたしもお祝いの言葉を言いました。

 

「球磨姉さんとかは別に分かるんだけど……なんで阿武隈がいんの……?」

「べ、べつにいいじゃないですかぁ! あたしも北上さんの事を祝いたかったんですよー! はい!!」

 

そのままの勢いであたしはプレゼント箱を北上さんに渡しました。

 

「まぁ、ありがと……? 受け取っておくよ」

「球磨も用意しているクマ」

「抜かりはないにゃ」

「ああ。俺からもあるぞ、受け取ってくれ姉さん」

 

あたしに続いて三人も渡していました。

それで北上さんは普段しないような優しい表情になって、

 

「なんだか知らないけど……色々とありがとね、みんな」

「さあさ! 北上、さっさと立っていないで座るクマ。ケーキも用意してあるクマよ」

「ちなみにケーキは俺が作った。球磨姉さんが作ると科学変異が起こって食えたものじゃないからな」

「木曾……そういうのは本人がいないところで言えにゃ。後で球磨に叱ってもらうにゃ」

「すみませんでした……」

 

そんなやり取りをしながらも北上さんの進水日の会は意外に静かに行われていきました。

そしてそんな北上さんはあたしの前髪をわざといじりながらも、

 

「阿武隈もありがとね」

「もう……あたしの前髪を自由にいじらせるのは今回だけですよ?」

「はいはい~」

 

それで北上さんはあたしが顔が赤くなっているのを承知でいじり続けていました。

大井さんの睨みが怖かったけど我慢です。

 

 

 




進水日のお祝いは特別提督に関係していなければそれぞれの艦娘同士が小さい規模でそれぞれ開いている感じです。
さすがに毎日誰かの進水日騒ぎをしていたら経費がとんでもないことになりますからね。

ちなみにうちには阿武隈改二は二人いますがもう一人は別の事をやっているという感じです。




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