【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0080話『少し遅めのプール掃除』

 

 

 

それはとある艦娘達が言い出した事であった。

複数いる潜水艦の子達なんだけど毎日オリョール海域へと任務のために出撃してもらっているのだけどたまには普通に安全なところで遊びたいと言い出したのだ。

それでふと思い出す。

この世界にきてから知った事だけどこの鎮守府には潜水艦専用の練習プールというものが存在していたのだ。

だけどうちの潜水艦の子達は大体高練度だから使う予定もなくて放置されていた。

それでためしに確認をしに向かってみると案の定ともいうべきか……梅雨の季節もあってか藻が浮いていて緑の水になってしまっていたのだ。

その現状を見てイク達はさすがにこんなプールに入りたくないのか、

 

「提督ぅ…さすがにこんなのじゃイヤなのね」

「はっちゃんもさすがにこんな藻だらけのプールには入りたくないです」

「ニムもちょっと遠慮するかなぁ……」

 

口々に入りたくないという苦情が飛び交ったので仕方がないと私も腹を括って、

 

「それじゃ他の艦娘達も夏には入りたいだろうから今から水を抜いて掃除するか……?」

 

私のそんな提案に、

 

「いいでちね!」

「掃除! 楽しみですって!」

 

ゴーヤとローちゃんが即座に反応を示した。

なので私は急きょ青葉に頼んでプール掃除をしたい艦娘達を募集する事になった。

そして翌日。

集まったのは第六駆逐隊の面々と長良、名取といった長良型の面々だった。

意外に少なかったな。

夏には水着modeになる艦娘も多いと思うから結構来ると思っていたんだけど……。

ちなみに潜水艦のみんなはオリョール海域に出撃中で参加できなかったとさ。

……まぁいいか。

 

「よし! それじゃこのメンバーで今日は一斉にプール掃除を決行するぞ!」

「「「おー!」」」

 

ちなみに私は濡れてもいいように榛名の水着を着用してその上にTシャツを着ていた。

羞恥心はどうしたって……?

そんなものはもうとっくに麻痺しているからどうということはない。

別に男性に見られる心配もないのだからどんな服装だろうと着てやるさ。

 

《提督も結構感覚がマヒしてきましたね……》

「榛名……? こんな女所帯の鎮守府で羞恥心はもうないに等しいんだよ?

いつも味わっているだろう……? いざお風呂に入ろうとしたら誰か必ず一緒に入ってくるんだから……」

《はい……みなさん、提督は中身は男性のままですのにそれを完全に気にしていませんから》

「私にだって男のプライドは残されているから女性の裸には抵抗があるのにみんながそれをゴリゴリと削ってくるんだからもう慣れてしまって興奮すらしなくなってしまった私はすでにもう手遅れだと思うんだよな……はは」

 

それで私は覇気のない笑いをする。

 

《提督……お労しいです》

「わかってくれるか榛名……?」

《はい。わかります。提督は女性になってもいつでも襲える環境なのに誰も襲わない……とても偉いです》

「そんな後で罪悪感と艦娘達の非難の声に襲われるようなことはしたくないからな」

《提督はとてもご立派です》

 

そんなやり取りをしている時だった。

 

「司令官! 早くお掃除しようよー!」

「わかったよ長良。昨日のうちにはもう水は全部抜いてあるからいつでもできるからな」

「私達も夏になったら泳ぎたいからね。本気でいくよ」

「わかった。期待しているよ」

 

と、そこで暁たちが目に入ったので少し注意しておく。

 

「暁ー!」

「ん? なに司令官……?」

「他の三人もだけど今現在プールはぬかるんでいるから十分注意して掃除するんだぞ?」

「わかったわ」

「わかりましたなのです」

「ふふん、雷に任せなさい司令官!」

「了解だよ」

「よし。それじゃみんな、始めてくれ」

「「「了解」」」

 

それで私もデッキブラシを持って一気にプール内を掃除していく。

そこに阿武隈がさっそくこけていて、

 

「あー……やっちゃったぁ……」

「阿武隈。もう服が泥だらけになっているぞ」

「うー……ヌメヌメしていて気持ち悪いですぅ」

「阿武隈! それじゃ掃除が終わったら入っちゃおうよ! きっと気持ちいいぞう!」

 

鬼怒がそう言って前向きに笑っていた。

そうだな……。

プール掃除に参加してくれたみんなにはご褒美も必要だな。よし。

 

「わかった。みんなー! このプール掃除が終わったら一番に入る権利を上げよう。だから頑張ってやっていこう」

「「「やったー!」」」

 

それでみんなは俄然やる気を出したのかデッキブラシで藻を擦る作業がスピードが上がった。

いい調子だな。

 

「提督さん。こちらは終わりましたよ」

「由良。そうか。それじゃ第六駆逐隊の方を手伝ってやってくれ」

「わかりました。由良、頑張っちゃいます」

 

そう言って笑顔を浮かべた由良は暁たちの方へと向かっていった。

一方で長良が一番この中ではプールに入りたいらしく、

 

「とおーーーーりゃー!!」

 

すごい勢いでデッキブラシを走らせていた。

 

「な、長良姉さん! 待ってぇ!」

「遅いよ名取ー!」

 

長良と名取は競争でもしていたのかプール中を走りまくっていた。

 

「長良と名取も元気ねぇ……」

 

五十鈴はマイペースに掃除をしていた。

そんな五十鈴に近寄っていく。

 

「調子はどうだ五十鈴……?」

「うん。この調子なら午前中には終わるんじゃないかしら……?」

「そうだな。よし、もう少しみんなを見習って私も頑張るとしようか」

「その意気よ」

 

それで五十鈴とともに一緒になって掃除をしていた。

そして……。

 

「終わったー!!」

 

長良のその一言で分かる通りプールの掃除が終了したのだ。

みんなの頑張りもあってかどこかキラキラと輝いていた。

 

「わーい!」

「やったのです!」

「やればできるものね!」

「ハラショー」

 

長良に続いて第六のみんなも喜びの声を上げていた。

どうやら掃除が終わったのが嬉しいらしく長良型のみんなも笑みを浮かべていた。

うんうん。

やっぱり清潔になると嬉しいものだよな。

 

「っていうわけでさ。司令官、さっそく入らせてよ?」

「まぁ待て。まだ水を貯めないといけないから君達はまずはお昼を食べてきてから水着に着替えてきなさい。その間に水を貯めておくよ」

「わかったよ。みんなー! それじゃさっさと済ませてプールはいるぞー!」

「「「おー!」」」

 

元気よくみんなはそれで一度出ていった。

その間に私は排水装置を操作して水を貯める準備をしていた。

そして午後の三時過ぎくらいには十分な量の水が溜まっていた

そこに水着姿の第六駆逐隊と長良型の面々がやってきたので、

 

「みんな。溺れないように注意しながら入りなさい。私はその間に食事を摂ってくるから」

「「「はーい」」」

 

それでいの一番に長良が準備体操を終わらせて飛び込んでいた。

 

「ひゃー! 冷たいよ! 楽しいなー!」

「暁たちも入るわよ!」

「なのです!」

 

それで次々とみんなはプールへと入っていった。

楽しそうで何よりな光景が広がっているのを後にして私は食事を済ませて戻ってくる道すがら。

掃除に参加しなかった艦娘達がちらちらとプールで遊んでいる長良達を見ていて、

 

「いいなぁ……」

「ちぇっ! 私も参加すればよかった……」

 

と少しプール掃除に参加しなかったことを後悔している姿が目についた。

それなので、

 

「みんなも長良達に感謝しながらプールに入るんだぞ」

「「「はーい」」」

 

みんなも素直で大変結構だ。

明日からプールは賑わいそうだなと思った一日だった。

 

 

 




遅いプール開きでした。
普段使わないものを放置しておくとダメですよねー。



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