【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0079話『隼鷹と飛鷹とお酒』

 

 

 

 

 

……ええ。先日からの工廠系任務で消費した資材を回復させるために遠征部隊のみんなには頑張ってもらっているそんな時に私は隼鷹に居酒屋鳳翔へと誘われていた。

私がお酒はあまり得意ではないのはもうみんなには周知の事だけど、それでも隼鷹は一度私とお酒を交わしながら語り合いたいという。

それで仕方なくっていうのも変な言い方だけど参加させてもらう事にした。

 

「提督~。今回はあたしと飛鷹のおごりだから遠慮はなしだかんねー?」

「わかっているけど……隼鷹もあんまり飲み過ぎるなよ?」

「そこは安心してください提督。飲み過ぎないように私が見張っていますから」

 

飛鷹がそう言って手を胸に添えて言い切っていた。

うん、頼りにはなるんだけど少し心配なんだよな。

なにがって……飛鷹も隼鷹に劣らず酒を嗜んでいるからだ。

だから少し不安になってしまう気持ちも分かってもらいたい。

 

「飛鷹も硬いな~。どうせ飲み始めたら飛鷹も止まらなくなるのはあたしも知ってるんだよ……?」

「だけど、提督の前では無様な姿は見せたくないから」

「おーおー。いい子ちゃんぶっちゃって…」

「……なによ? やる気?」

「いいよー? 久しぶりに飲み比べでもするかい?」

 

ほら……。飛鷹がもう隼鷹のペースに乗せられてしまっているよ。

だから言わんこっちゃないんだよな。

だからここで釘を差しておこう。

 

「隼鷹……? 今回は私となにか話をする予定なんだろう? 素面のままでもいいけど飲みすぎもいけないんだと思うけどな?」

「ふん……わかったよ。飛鷹、勝負は今度つけるからね?」

「望むところよ」

 

それでお互いになんとか和解が出来たのか普段通りに戻っていた。

そしてそんな会話をしながらも私達は居酒屋鳳翔へと到着した。

暖簾をくぐって扉を開ける。

すると中から色々な食材のいい匂いが漂ってきて少しお腹が空いてくる感じだ。

 

「やっぱ鳳翔さんの所に来ると酒を飲む際にはおかずが欲しくなるね~」

「そうね」

「そうだな」

 

私達が意見が一致したために少し笑いあう。

 

「いらっしゃいませ。あら、提督に隼鷹さんに飛鷹さん。珍しい組み合わせですね」

「ああ。鳳翔さん、今日は貸し切っていいかい? 提督と少しばかり込み入った話がしたいんだよ」

「別に構いませんよ。そろそろ店仕舞いにしようかと考えていたところでしたので……」

 

それで鳳翔さんは暖簾を下げに行った。

 

「……さて、それじゃ提督。カウンター席に座ってくれよ。特等席だぜ?」

「わかった」

 

それでカウンター席に着席する。

そして隼鷹が右に、飛鷹が左に着席した。

しかし……いったい隼鷹たちは私となにを話をするつもりなのだろうか……?

 

「鳳翔さん。少しお酒をくれないかい?」

「はいはーい。わかりました。準備しますね」

 

そう言って鳳翔さんは厨房の奥へと入っていって少しして戻ってきた。

そこには未開封の瓶が持たれていた。

 

「おっ! 鳳翔さん、話が分かるね。高知名産の純米大吟醸ときたか」

「はい。隼鷹さんが好きそうなものを出してきました。提督は甘いモノなら飲めるそうですからこれなら平気かなと思いまして」

「いいですね。鳳翔さん、ナイスです」

 

そして鳳翔さんは三人分のとっくりを出してコポコポと注いでいった。

その透き通るようなお酒の色は確かに純米だな。

 

「はい。どうぞ。それではなにか作ってまいりますね。その間にお話をしていてくださって結構です」

「おう! あんがとう鳳翔さん!」

「はい。それでは……」

 

そして鳳翔さんはなにかを作りに厨房に入っていった。

それで場も整ったのか隼鷹がお酒が入れられたとっくりを持ちながら、

 

「さぁさ。それじゃまずは一杯。いってみましょうか」

「そうね」

「わかった」

 

三人して「乾杯」と言ってそれぞれお酒を口に入れる。

そして一気にそのお酒の味が喉に浸透してきた。

どこかワインのような甘さもあってか私も苦手意識はあんまりない。

むしろ美味しいと感じられるほどであった。

 

「どうだい…? 子供舌の提督でもおいしく感じられるだろう?」

 

どこか勝ち誇っているような表情の隼鷹の顔に少しムッとさせられるが、まぁ本当なのだから仕方がない。

なので、

 

「ああ。確かにうまいよ」

「でしょう? よかったわ。提督もこれくらいは飲めるくらいにはならないとね」

 

飛鷹にそう褒められた。

それで素直に喜んでいいのかに関しては横に置いておくとして、

 

「……さて、お酒も回った事だしそろそろ話といこうじゃないかい?」

「その話って何なんだ……? 内容によっては答えられないぞ?」

「わーかってるって。なに……別に機密とかそんな情報を聞き出そうなって野暮な事はしないさ。聞きたいことはただ一つだよ」

 

そこでどこか真剣な表情になった隼鷹に私も自然と体が引き締まった気分になった。

 

「提督……? そんなに肩筋張らなくて大丈夫よ。隼鷹もただ興味本位で聞きたいだけなんだから」

「飛鷹? 今はあんま茶々入れるなって……?」

「わかったわよぅ……」

 

それで飛鷹は飛鷹でお酒を嗜んでいた。

なるほど。やっぱり今回飛鷹はお目付け役ってところか。

 

「聞きたいことは一つだよ。提督よぉ……最近榛名としっかりと話はしているかい……?」

「え……?」

《えっ?》

 

隼鷹にそんな話をされたのでとっさに榛名も表に出てきて私と一緒に首を傾げる。

 

「あちゃー……。そっか。榛名もだいたいは一緒になって聞いていることを忘れていたよ」

《はい。でも、隼鷹さん。それってどういうことですか……?》

「まぁ、榛名も一緒に聞いているならちょうどいいと言えばいいか? まぁいいか」

 

そう言って隼鷹は一回頭を掻きながらも、

 

「たださ……最近、提督と榛名をたまに観察していると思うんだけど二人とも、本音で会話しているようでその実はお互いに本音は隠しているんだろうなって思ってね……」

 

隼鷹のその言葉に少し当たっているだけに胸にグサッと刺さるものがあった。

確かに榛名にも隠している本心はいくつかある。

だけどいつかは話し合いたいとも思っているのだ。

そして榛名も思い当たる節があるのか少し顔を赤くさせながらも、

 

《……はい。提督には隠している本心がいくつかあります》

 

やっぱり榛名もあるよな。

一緒の身体で共存しているからって心まではお互いに読めないから。

 

「だから、さ。余計なお節介だとは思っているんだけどね。たまには本心で語り合ったらどうかなって、思うんだよ……あたしはさ」

 

隼鷹の表情はどこか哀愁が漂っていた。

過去を思い出しているのかどこか切なそうだ。

過去と言えば榛名と隼鷹は終戦まで生き残った組だから色々と見てきたものがあるんだろうな。

その隼鷹の言葉に少し感化されたのか、それともお酒が回ってきたのか、

 

「……わかった。榛名、今度いつか本音で二人で一緒に話し合おうな」

《はい……。私もできるだけ提督と話し合いたいです》

 

それで見つめあう私と榛名。

 

「かぁー……。やっぱりこういうのは柄じゃないわ。こっ恥ずかしいなー」

「いえいえ……隼鷹もたまには中々いい事を言ったじゃない?」

「たまには、は余計だよ飛鷹。たっく……二人していい雰囲気になっちゃってさ。見事な道化じゃん……」

 

そんな隼鷹の会話で慌てて私と榛名は即座に視線を逸らす。

恥ずかしいやらなんやらで。

そこに鳳翔さんがちょうどよくおかずを持ってきてくれたのか、

 

「さって……そんじゃもうあたしの話はおしまいだから後は飲み明かそうぜ?」

「いいわね。提督……? 覚悟してくださいね」

「ほどほどに頼むぞ……?」

 

そして鳳翔さんも加わって今夜は少しいつもより多めにお酒を飲んでしまったのであった。

 

 

 




今回は少し本筋に関わってくる問題に触れました。
榛名と本音で話し合える日は来るのだろうか……?



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