【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0007話『歓迎』

 

久保祥子です。

先程の榛名提督の宣言は見ていて私は感動していた。

確かに轟沈させてしまった過去は消せないけど榛名提督はそれを一人ひとりしっかりと覚えていてあんな宣言までしちゃってちょっと情けない姿だったけどカッコいいとも思ってしまった。

その証拠に港に入れてもらった矢先に金剛さんに「ヘーイ! 提督ぅ! 榛名の体、大事にするんデスヨ!」と言われて抱き着かれている。

次には今の私ではおそらく入手は困難だろう、アメリカ海軍の戦艦であるアイオワさんが「あれが大和魂の集大成であるDOGEZAナノネ。感激したワ」と榛名提督の事を褒めていた。

他にも様々な艦娘の人達にあれこれ言われてそれでも榛名提督は笑顔を浮かべている。

きっと素直に迎え入れられたのだろう。

羨ましい光景だな…。

私も一度でも轟沈を経験してしまったら榛名提督のように後悔するんだろうな。いや、絶対する!

だからそれでも歓迎されている姿を見て嬉しい気持ちになる。

そんな時だった。

私の手を誰かが握ってきてくれた。

見れば私の初期艦である電ちゃんが握ってくれていた。

 

「司令官さん。司令官さんも榛名提督のような立派な提督になりましょうなのです」

「うん。そうだね! 私達もまだまだこれからだ! 頑張っていこう」

「ハラショーだよ、提督」

「雷はどこまでもついていくからね、司令官!」

「このレディに任せなさい!」

 

まだまだ私を含めて五人の弱小鎮守府だけど、絶対に榛名提督のような立派な提督になるんだ。

私はそう誓いを立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなに揉まれながらもようやく落ち着きを見せてきたので私は久保提督のもとへと足を運んだ。

 

「久保提督…情けない所を見せたね」

「いえ、いいモノを見させていただきました。貴方のような人を模範にしていきたいです」

「そうか…。こちらとしては恥ずかしいやらなんやら…とにかくだ。これから長い付き合いになるだろうけどよろしく」

「はい。こちらこそ」

 

それで私は久保提督と改めて握手を交わす。

 

「…というわけで『ヒャッハー! 宴だー!』…って、ちょっとまて隼鷹!?」

「…提督~。ポーラ、一度提督と飲み比べしたかったんですよー」

「そうだな。今夜ばかりは本気で飲ませてもらおう!」

「提督…。お酌は私がしますね?」

「んっふふふー。14と飲み比べしよう! 提督!」

 

こ、この飲兵衛ども…ッ!(上から隼鷹、ポーラ、那智、千歳、伊14)

私が笑い上戸ですぐに酔ってしまい記憶が飛んでしまうほどの下戸だと知っての狼藉か!?

 

「い、いきなり頭が痛くなってきた…」

「た、大変ですね。榛名提督…」

「…久保提督。君も艦娘が集まってきたらいずれこうなる事を覚えておいた方がいいぞ?」

「はい。肝に銘じておきます…」

「とりあえず会議とやらは後日でいいかな? そちらも上との擦り合わせの時間が必要だろうし…」

「そうですね。それではまた後日に連絡を寄こしますね」

 

そう言って久保提督は指揮艦船に乗って先に帰っていった。

さて、それじゃ逝くか…。

その晩は盛大に宴が繰り広げられたのは言うまでもない………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――翌朝、私は酒が抜けきらずに頭痛がする頭を我慢しながら周りを見回す。

そこにはみんながみんな、宴会で酔いつぶれていたので目に毒のような光景が広がっていた(特にポーラ)。

男のままだったらこの空間には居た堪れなくて居られなかっただろうと思う。

 

そんな中でももう起きている者も数名いるようで何人か姿がない。

とりあえず今は頭痛が酷いので水を貰おうと動こうとして、スッと目の前に水の入ったコップが差しだされていた。

 

「どうぞ」

 

顔を上げてみれば鳳翔さんが木製のトレーで水を持ってきてくれたのだろう、笑みを浮かべながら差し出してくれていた。

それで感謝をしながら飲ませてもらった後、

 

「提督。昨晩はお疲れ様でした」

「いや、確かに疲れたけどあれが彼女達なりの歓迎だと思えば苦じゃないよ」

「ふふ。でしたら嬉しいですね」

 

鳳翔さんは笑みを零しながら「ちょっと着いてきてください」と言って私を自室へと案内してくれた。

何があるんだろうと思っていると、

 

「提督、もしよろしかったらお召し物をこれに着替えてみたらどうでしょうか?」

「これは…」

 

そう、鳳翔さんが差し出してきてくれたのは榛名の体のサイズで出来上がっている提督服であった。

これをすぐに用意してくれた鳳翔さんに感謝の念を感じながらも私は少しまだ服を脱いで肌を晒すのに抵抗を感じたが、これはもうしょうがない事だと思って一回裸になった後に提督服へと袖を通してみた。

しばらくして、鳳翔さんの前で着替えた姿を見せると、

 

「まぁ! ふふ。提督、とても似合っていますよ」

「ありがとうございます、鳳翔さん」

「いえ、お気に召したのならよかったです。それと…昨日は格好良かったですよ。

あそこまで言われてしまったら私達は提督の事をもう二度と憎めないではないですか」

「あれは私なりのけじめのつもりだったからな」

「木曾さん達も顔を赤らめていましたから反応は上々だったんでしょうね」

「だと、いいんですが…」

 

それで私は鳳翔さんに案内されながらも鎮守府内を散策していると前から私の初期艦である電が歩いてきた。

久保提督の電ちゃんとは使い分けないといけないな。

うちの方は普通に呼び捨てにするつもりだし。

 

「あ、電か」

「あ、お早うございます、司令官さん。ふふっ、その恰好お似合いなのです」

「ありがとう」

「でも、もう榛名さんは出てこないのでしょうか?」

 

少し落ち込んだ表情をする電。

そんな時だった。

 

《いえ? いつでも会えますよ》

 

そんな榛名の声が聞こえたと思うと今度はすんなりと透明な姿で榛名が姿を現した。

 

「榛名さん!」

《提督、電ちゃん。お早うございます》

「…あ、ああ。お早う榛名。しかしそんなにすぐに姿を出せるものなのか…?」

《はい。提督が呼びかけてくだされば榛名はいつでも出てこれます》

「そうか。それならよかった。これで金剛達にもいい返事ができそうだよ」

《はい。私はこうして実体がありませんから眺める事しかできませんが、話す事ならいつでもできます。ですからいつでもお呼びくださいね、提督》

「わかった。その時はよろしく頼むよ榛名」

《はい!》

 

そう言って榛名はまた姿を消した。

 

「榛名さん、よかったのです。…でも、少し羨ましいです。司令官さんといつでも一緒にいられるんですから…」

「…そうか。まぁそう言うな。これからは私はいつでもこの鎮守府にいられる。だから…」

「分かっているのです。我が儘を言って司令官さんに幻滅されたくありませんから」

「別に幻滅することは無いと思うけど…」

「女心は複雑なんですよ? 司令官さん」

「はい。肝に銘じておきます…」

 

そんな他愛もない、でも素晴らしい日常を毎日できるなんて元の世界に残してきた家族や友人には悪いと思うけど私はこの世界にこれてよかったと思う。

 

 

 




榛名はスタンドみたいになりましたね。

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