【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0057話『熊野達の不安と他の鎮守府の現状』

 

 

 

 

 

今、鎮守府内ではとある事が話題になっている。

それは今度の大本営の発表でまたしても改二が追加されるという話題だ。

この間の大規模作戦が終わったと同時に長門が改二になった。

それなのに今度は時期も置かずに改二の発表があるかもしれないとまだ改二になっていない子達の間では羨ましいという話題が尽きないという。

そう…大本営の前情報によるとすでに由良も初夏くらいには改二が来ると言っているし、他にも主力戦艦が改二になるという話もある。

改二と言えばうちではそろそろ大鷹とガングートも改二になる練度に達しそうでそわそわしているという。

それでか知らないが熊野達が執務室に逃げてきたのは、まぁ分からない話でもない。

 

「…提督? しっかりと聞いていますの?」

「そうですわ」

 

…熊野二人が左右で声を出してきている為に少し混乱する状況だけど我慢だ。

 

「ああ、聞いているよ。それで今日は二人ともどうしたんだ…?」

「事情は分かっているのでしょう? 明日には大本営が何かしらの発表をするというのはすでに青葉さんから聞き及んでいます」

「そうだな」

「そうだな、って…少しはわたくし達の気持ちも理解してくださいまし」

「そんな事を言われてもな。君たち二人の改二の情報は前々から出ていたし、今更慌てても仕方がないだろう?」

「そうですけど、クマノン的には練度は足りているとか不安なんですわ」

「そうです。熊野はもう練度は90を越えていますがクマノンは88で中途半端ではないですか。少し不安ですわ」

 

二人はそう言ってお互いに心配している。

ちなみに一人目の熊野の方は自身の事を『熊野』と呼称して言っており、もう一人の二人目の熊野は自身の事を『クマノン』と呼称している。

これは鎮守府では同型艦の子は前にも言ったと思うがそれぞれ呼称を変えてやり繰りしているという事だ。

鈴谷も改二の方は鈴谷で通して、航改二の方はスズヤンで通っている。

これを最初に言い出したのは三隈らしいというのはらしいと言えばらしい。

…もしかしたらだけど三隈と最上も改二になる騒ぎになったらもし、二人を用意するようになったら私も三隈の事をミクマンとか言わないといけないのだろうか…?

なんか言い方的に卑猥な感じがするのは気のせいか…?

まぁ、とにかく、

 

「その辺は大丈夫だろう。鈴谷も改二だけなら練度は84で足りたんだから」

「そうなのですが…もし、大本営が差別化を図って練度をさらに上げないとは限りませんから」

「クマノンの言う通りですわ」

 

それで二人はやはりどこか渋い表情をしている。

そこまで気を張る事でもないと思うが…。

別に改二は期間限定ではなく一度実装されれば決して逃げないんだから足りなければまた上げ直せばそれで済む話だし。

その辺をやんわりと二人に説明すると少し納得していない表情だけど、

 

「…分かりましたわ。提督がそこまで言うのですからもし出来なくても我慢します」

「はい、熊野のいう通りですわ」

 

なんとか納得してくれた。

まぁ、そこまで心配することは無い。

それに、

 

「それに別に改二にもしなれなくても十分君達は強いじゃないか。数少ない航空巡洋艦としていつも助かっているよ?」

「それは本当ですか?」

「提督が嘘をついているとは思っていませんからそうなのでしょうが…」

「ああ。だからそこまで心配するな。そんな落ち込んだ顔をしていると鈴谷達に心配されてしまうぞ」

 

その件を話した途端、二人は「はっ!」という何かを感じ取った表情になり、

 

「鈴谷に心配はかけたくありませんわ。もしそんな不安な表情で顔を合わせることになったらわたくしがダメになってしまいそうです」

「クマノンの言う通りですわ。いつも通り華麗に優雅に上品に振る舞わないといけませんわね、熊野」

 

そんなやり取りを交わして二人も自信が戻ってきたのか、

 

「改二になりましたら鈴谷達をあっと驚かせましょう!」

「そうですわね! 最上型重巡洋艦の末っ子として堂々とした態度で挑みましょう!」

「その意気だぞ、二人とも。私も改装設計図を準備して待機しているとしよう」

 

私がそう言った途端、二人の動きはピタッと止まり、

 

「…別の件で不安になってきましたわ」

「ええ。熊野の気持ちも分かりました。提督…? 勲章に関しては大丈夫でしょうか? 足りていますか?」

「その件もまるっとお見通しだ。大丈夫だよ。大規模作戦前に一回阿武隈をもう一人改二にしてしまって、こんなに改装設計図を使う改二ラッシュが来るとは思っていなかったが少し心配だった。

だけど、さっきも言ったように勲章も改二も実装されたら逃げないんだから足りなくなったら、また貯めればいい事だしな。

だから二人もそこまで深刻に考えないで堂々と振る舞っていてくれ」

「…わかりましたわ。提督がそこまでおっしゃるのでしたらもう心配はしませんからね?」

「ええ、ええ。それでいざって時に泣きついてきても知りませんからね」

「わかっているよ。その辺は自己管理でどうにかするとしよう」

 

それで熊野達はどこか不安な事は大体言い切ったのかすっきりとした顔で執務室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ですが、提督もああは言っていましたがわたくしとしてはやはり不安なのですわ。

本題をはぐらかしてしまいましたわという気持ちである。

鈴谷が改二になった時には素直に喜びましたが、いざわたくし達が改二になった時には他の鎮守府からどんな反応をされるのか少し想像すればわかります。

それはやはり妬みの感情も含まれるでしょうね。

知っていますのよ? この世界ではうちのように高練度の艦娘が揃っているという例は稀なケースだという事を。

だから提督がまた他の鎮守府からやっかみ扱いを受けてしまわれないかと不安になってしまうのです。

長門さんが改二になった時もそうでしたわ。

演習をした時に相手の方の艦娘の方たちに聞いた話ですが、その鎮守府の提督が「またあの鎮守府か!」と見当違いにもほどがある怒りを顕わにしていたそうです。

それで艦娘達も無茶な練度上げを強いられているという話ですわ。

いい練度上げの場所も把握していないらしく、その鎮守府ではブラックなやり方が横行しているという話です。

それで演習相手の艦娘達の話ではもう何人か低練度の子達が轟沈を繰り返しているという話を聞いて、怒りを顕わにしましたわ。

なんでそこまで艦娘を使い潰すやり方をしてしまうのか理解できませんでしたわ。

うちの提督がわたくし達艦娘達の事をとても大事に扱ってくれているというこの世界では稀なケースだというのは重々承知ですが、それでもその鎮守府の子達が可愛そうに思えました。

同情している時点でわたくしもその子達の事を下に見ていると言われればそこまでですが、でもブラックな鎮守府と提督は許せませんわ。

それでいつしか提督にその件を相談してみたところ、

 

『…そうか。わかった、柳葉大将に相談してみるとするよ』

 

と、どこか寂しそうな表情を浮かべていたのが印象的でしたわ。

それだけ提督も他の鎮守府に対して思う所があるのだろうという感じを受けましたわ。

だから、

 

「ねぇ、クマノン?」

「はい…? なんですか、熊野?」

「もし今度演習で助けてくださいと言ってくる艦娘がいましたらすぐに提督に報告いたしましょう。多少なりともその子達の役に立ちたいのですわ」

「…そうですわね。ではまずは他の皆さんにもその件を話してみましょうか。理解してくれる人は多いと思いますから」

「ですわね」

 

それでわたくし達は他の鎮守府の艦娘達が務めている場所がもしブラックな職場だったら救済しようという思いになりましたわ。

 

 

 




今回は熊野達をメインにしていました。
改二の任務内容もありますから当分は熊野達の回が多くなってくるかと思います。

運営の情報では6/6のメンテでもしかしたら改二を実装すると思いますから楽しみです。



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