【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0052話『神通の献身』

 

 

 

 

……昨日に姉さんは提督と一緒になぜか忍者のような黒装束の恰好になってどこかへと行ってしまいました。

いつもなら夜になると姉さんの「夜戦だー!」という叫びが上がるものなのですがその日に限っては叫び声は上がらずにいつも姉さんと一緒に夜の哨戒をともにしている子達が心配になって部屋まで来るほどでした。

それで少し心配になりましたが日にちが変わる時間帯くらいに姉さんはなにやらゲッソリとした顔つきで部屋に帰ってきました。

 

「どうしたの、川内ちゃん!?」

 

那珂ちゃんが姉さんの心配をしますが姉さんはただ一言、「寝る…」と言ってそのまま深い眠りについてしまいました。

その姿に何があったのか本気で心配になりました。

これはおそらく提督も絡んでいる話だと思いましたので夜遅くに提督の寝室を訪ねてみたのですが、その際に布団になにもかけずにうつ伏せで横になっている提督の姿に私は慌てました。

 

「て、提督!? どうされたのですか!?」

「うっ………うう…ずい、うん…うー…」

 

なにやら言っているようでしたが小さすぎて聞き取れなかったので代わりに榛名さんに聞くことにしました。

 

「榛名さん、出てきてください」

《はい…なんでしょうか神通さん…?》

 

透明の姿で出てきた榛名さんは知っていないものからしたらお化けと勘違いしてしまいそうな光景ですがこの鎮守府ではその事を知らない子はいません。

だけど、出てきた榛名さんの表情は本気でお化けと勘違いしそうなほどに疲弊していました。

 

「あ、あの…大丈夫でしょうか?」

《榛名は…榛名は、大丈夫、ではありません…》

「ッ!?」

 

榛名さんのいつもの元気になれる合言葉である『榛名は大丈夫です』とは真反対のセリフにこちらもただ事ではないと悟りました。

 

「なにが、あったのですか…?」

《なにがあったか、ですか…? そう…瑞雲…》

「瑞雲…? 瑞雲がどうされたのですか?」

《いやっ! 瑞雲が迫ってくる…榛名は、榛名は大丈夫ではありませんッ!》

 

突然癇癪を起したかのように涙を流して瑞雲に対して恐怖を抱いている榛名さんの姿に、

 

「…本当になにがあったのですか…?」

 

私の疑問は絶えなかったです。

この状態の榛名さんは使い物にならなかったためにすぐに提督の中で休んでくださいと言って、それで榛名さんは無言で承諾したのか姿を消しました。

提督と榛名さん、それに姉さんのこの様子に私は少し考えました。

それで行き着いた回答はおそらく日向さん以下瑞雲の友の会メンバーによって悪夢を味わったのでしょうね。

後で日向さんにその件について問いただしましたが、日向さん曰く、

 

「提督は最後まで私達の話を聞いていたのだが、川内に榛名は早急にダウンしていたな。情けない…」

 

確信犯でした。

犯人、見つけました。

 

という事態でした。

だけどその時の私はこの件は知りえなかったのでとにかく提督の回復のお世話をしないとと今晩は提督の献身をしていましょうという結論に至りました。

それで備え付けの電話で那珂ちゃんに連絡を入れて事の重大さを教えて、

 

『そっかぁ。うん、わかった。川内ちゃんの方は那珂ちゃんに任せて!』

「はい、お願いしますね那珂ちゃん」

『うん! 神通ちゃんも提督の面倒をお願いね!』

「はい」

『それじゃ深夜の夜更かしはアイドルのお肌に大敵なのでお休みなさーい。キャハッ☆』

 

そう言って那珂ちゃんは電話を切ってしまいました。

最後まで那珂ちゃんは自身のプライドを貫いていましたね。

那珂ちゃんが隊長を務めている第四水雷戦隊の皆さんのご苦労が滲み出てくるようですね。

とにかく提督のお世話をしませんと。

 

それで提督の衣服をすぐに寝室着に着替えさせてお布団をしっかりとかけてゆっくりと寝てもらいましょう。

…そうですね。

なにか身体にいいものを作るとしましょうか。

それで勝手ながらも提督の冷蔵庫に入っている食材を拝借させてもらいまして提督が元気になれるようにおかゆでも作りましょうか。

そうと決まりましたら話は早いです。

提督の安らかな寝息をバックに聞きながらも私は色々と身体にいいものを作っていきました。

意外にこういった事は間宮さんの間宮食堂で食事を摂っていますのでしていませんが腕が鈍っていなくてよかったですね。

それであらかた食事も作り上げて後は提督が起き出すまで寝かしておきましょう。

するとかすかに提督が寝言で「ずい、うん…うー…」と魘され始めました。

これはいけませんね。

それで私はタオルに水を浸して濡れタオルを用意して提督の額の汗を拭ってあげました。

 

「大丈夫ですよ…神通が提督の事をしっかりとお世話しますから今はゆっくりと眠ってください…」

 

しばらくして提督は寝息も落ち着いてきましたのでこれで一応は大丈夫でしょうという結論に至って、私も少し仮眠を取ろうと腰を上げようと思った時でした。

提督の手が私の裾を掴んでしまっていまして離れられなくなりました…。

それで仕方がなく私は提督の横で一緒に仮眠をとる事にしました。

こういう役得もありですよね。

そして私も少し眠くなりましたので仮眠をとる事にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…うん? なんだ。昨晩の瑞雲談話を聞いて気が狂いそうになってしまい布団にすぐさまダイブした後は記憶がないのになにやらとても寝心地がいいな。

不思議に思った私は目を開けてみると寝る前までは川内に用意してもらった忍者装束を着ていたのに今ではいつもの寝間着を着ていて不思議に思って、ふと気配を感じたので顔を横に向けてみるとそこには神通の寝顔があった。

ホワイ…?

数秒思考が停止していた間に神通も私が起きた気配で目を開けて、

 

「あ…おはようございます、提督…良い朝ですね」

「う、うん…ソウダネ。ところでなんで神通がここに…?」

「あ、そうでしたね。昨晩は提督が心配になって来てみましたら魘されていましたので勝手ながらもお世話をさせていただきました」

「そ、そうなんだ…」

「はい。あ、おかゆの準備を致しますね。昨晩に用意をしていたんです」

「そこまで…?」

「はい。なにかダメな事があったでしょうか…?」

 

コテンッと首を可愛らしく傾げる神通に私はそれ以上何も言えることができずに、

 

「あ、ありがとう。嬉しいよ神通」

「はい。提督の為なら神通は頑張ります」

 

眩しい笑顔を浮かべた神通を見て、もう私はただただ恥ずかしい思いをしていると思ったけどそれ以降もされるがままだった。

さすがに神通が蓮華を持って「あ~ん」は憤死してしまう思いだったのは記憶に強烈に残った。

それからも執務室にいくまで甲斐甲斐しく世話を神通はしてくれてなにやら居た堪れない気分だった。

 

「なにからなにまでありがとうな、神通。おかげで身体も心も回復したよ」

「そうですか。よかったです。それでは今日も神通、水雷戦隊の皆さんの稽古をしてきますので失礼しますね」

 

そう言って神通は帰っていった。

…ああいうのを良妻というんかな?

結婚した事がないからわからないけど…。

 

《提督!》

「うわっ!? ど、どうした榛名!?」

《今日は神通さんととても仲良かったですね。榛名、とても嫉妬してしまいました…》

 

いつから気づいて見ていたのかわからないけど榛名さんはとても嫉妬を焼いていました。

怖いけど可愛らしかったです。

そんなやり取りをしながらも話は大淀がやって来るまで続いたのであった。

 

 

 




昨日の続き物で神通がまるで母のようだ、という話を書いてみました。
普段は鬼のようなしごきをしますが普段は優しい神通さんもいいよね?



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