【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。
まずは50話達成です。


0050話『長波の練度上げと慣れてはいけない事』

 

 

 

本日から長波が演習艦隊で出撃するようになった。

それで昨日は練度をリランカ島で40そこらまで上げておいた。

 

「提督っ! ついにあたしを育ててくれるようになったんだな!」

 

執務室で活気あふれる顔つきで長波が私に抱きついてきていた。

その突進力たるや時折背後から飛びかかってくる雪風や時津風並の威力を出しているので中々に腰に来る。

 

「ああ。今は大規模作戦も終わってそんなに時間も経っていないから駆逐艦を平均的に練度上げをしようと思ってな」

「うーん…それだとあたしも70まで上がったらまた待機になっちゃうのか」

「すまないな」

「いいって…あたし達を全体的な視点で見てくれているんだから構わないよ。

今日の午前中の演習で出会った艦隊にいる駆逐艦の子に話を聞いてみたらその艦隊は効率重視で使える子しか育てていないとかいうんだぜ?

それを聞いてて嫌になっちゃったよ…。

あたし達駆逐艦は確かに他の艦種に比べれば弱いかもしれないけど、それでも練度を上げれば強くなれるんだ」

「そうだな。だから君達も順番に育てているんだろう? 改二艦にも練度が高ければ勝てるっていう事を証明したいだろ?」

「おうよ!」

 

それで長波は「あたし達の気持ちも汲み取ってくれてありがとうな!」と笑みを浮かべていた。

うん。そうだよな。

決して駆逐艦は弱くない。

改二艦にも引けを取らない子はたくさんいるんだ。

それを見れていない提督が数いるのも現状だからしょうがないといえばしょうがないが。

うちは一応まず目指すべき道は最低ラインは全員70~80に届くように上げていきたいと思っている。

まだまだ先は遠いけど全員が満遍なく力を振るえるように日々努力していきたい。

 

「それはそうと…提督。たまには提督も出撃もした方がいいんじゃないか…?」

「え…?」

 

長波の意外な相談に私は目を丸くしてしまった。

いや、だってね。驚きますよ。そりゃ。

 

「意外な相談だったか…? 確かに提督は榛名さんとかのアドバイスを借りてなんとか大規模イベントでは戦えたと思う。

だけど、また大本営から無茶な注文をされないとも限らないだろ?

だったら通常海域でも少しは出撃して慣らしておいた方が後々になって効果を発揮すると思うんだ」

「ふむ、確かに長波の言う事も一理ある。だけどそれでみんなが納得してくれるものかな?

ただでさえ私が直々に出撃するのに否定的な子も多くいるんだろうし…」

「まぁそりゃそうだけど。でもだからって腕を鈍らせてちゃ勿体ないと思うんだ」

「ふむぅ…そうだな。長門と大淀に相談してみるか」

 

それで二人を執務室へと呼んだ。

そしてやってきて長波の相談を二人にしてみたら、

 

「反対…と言いたいところだが、無碍に断るのもできないかもしれないな。これからの事を考えると大本営はどう出るかわからんからな…」

「そうですね、長門さん。榛名さんや妖精さんに頼らずに提督自身の練度を上げるのも解決策の一つだと思います」

 

長門と大淀も私の出撃に関しては幾分肯定的みたいだな。

長波もうちのトップ陣営の二人のその反応に満足そうに頷いているし。

だけど榛名は納得するだろうか…?

思い出すのは昨日の榛名の言葉。

 

『本当ですね? 約束してください。もう、あの時のように提督が大破してしまう光景は榛名は見たくありません…』

 

という榛名の本音から来る言葉。

あれには榛名の思いのすべてが込められているからな。

それで一応榛名の意見も聞こうと思い、榛名に呼びかけてみた。

 

「榛名。君の意見はどうだい…?」

《はい。私も提督自身の練度を上げるという意味では反対はないですが…でも見ているだけはつらいんですよ?》

「ま、まぁ榛名さん。提督はあたし達が守るからさ! だからさ。安心してくれないか?」

 

長波が額に汗を浮かばせながらも榛名の説得に回っている。

それで榛名も素直に勘弁したのか、

 

《はい…。ですが提督? ダメだと思ったらすぐに言ってくださいね? 榛名、前にも言いましたけど気持ちには素直になってもらいたいんですからね?》

「はい。わかりました…」

 

榛名の少し涙を浮かべながらの訴えには私は決して逆らえない。

だから約束は決して破ってはいけないのだ。

 

「ふふふ…榛名さんも相当提督に過保護になりましたね」

《大淀さん。私の気持ちにもなってください! 私がどれだけ提督の事を思っているか…》

 

そんな榛名の言葉に長門と長波が小声で、

 

「榛名…盛大に自爆しているぞ」

「そだなー」

《はうっ………も、もう知りません!》

 

と、言っており榛名は顔が赤くなってしまい、そんな逃げセリフを言って私の中に隠れてしまった。

 

「あー…こうなったら榛名は中々出てこないな。

まぁ一応榛名の許しも得たから少しばかりリランカ島に長波の練度上げも兼ねて出撃してくるか。

長門に大淀。いつも通りに私のいない間は提督代行を頼んだ」

「わかった。提督も少しは練度上げを頑張ってくれ」

「お任せください。長門さんにはしっかりと出来るように今後も努力してもらいます」

「なっ…まさか、大淀? 今後は私に提督業も押し付けるつもりではないよな?」

「もし提督が不在の時に深海棲艦が攻めてきたら大変ですから一人でも提督の仕事が肩代わりできる人がいれば嬉しいのですが…」

「それは、確かにそうだが…むむむ」

 

それで長門は悩んでしまっていた。

改二になってから活躍の幅が増えたばかりだから悩ましいのだろうな。

 

「すまんな、長門。前にも言ったが長門以外に務められるような人材がいないんだ。だから頼む」

「はー…提督の頼みだと断れないではないか。わかった…少しでも尽力できるように努力してみる」

「ごめんな」

 

それで今日のリランカ島に出撃するメンバーに私の名前が書かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからリランカ島を何度も往復している時であった。

旗艦の長波が盛大に爆雷を投下して潜水艦を沈めている時に後ろから今回のメンバーで唯一の空母である葛城が話しかけてきた。

 

「でも、あなた。本当に大丈夫なの…?」

「何がだ、葛城…?」

「いや、平気そうな顔しているけどいざこういう戦闘になってもとは人間だった提督は怖くないのかなって…」

「そりゃ普通に怖いさ。でもその恐怖も北方水姫の圧に比べれば軽いモノなんだなって…。

最初に大物に当てられた事も関係しているけどあれに比べたらあんまり怖くはないんだよな。

もちろん油断も慢心もしているつもりはない。やるからには全力だ」

「そっか…。私が心配する必要もないくらいあなたも慣れちゃったのね」

「いやな、葛城。慣れているわけではないぞ。慣れたら慣れたで大変だ。

もとが人間だからこそ深海棲艦だろうと殺す事には変わらないんだからそこを見失ったらただの殺し屋になってしまうからな」

「そうよね…私達だってそれは同じことだわ。理由ない殺しはしたくないからね」

「そうだ。だから慣れるっていうのが一番いけないんだ」

 

そんな会話を葛城としている時だった。

 

「提督! ソナーに反応あるぜ! 水上艦もいるぞ!」

 

長波のそんなセリフが聞こえてきて、

 

「ほら。葛城、出番だ。かっこいい所を見せてくれ。私も援護を頑張るから」

「そうね。私も立派な正規空母だってところを見せてあげるわ!」

 

それから私達は協力して敵潜水型深海棲艦の群れを倒していった。

それで私も少しは自身の練度は上がったかなって思うのであった。

 

 

 




前半は長波。
そして後半は殺しに慣れちゃいけないという事を書いてみました。



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