【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0049話『提督と榛名の問題』

 

 

 

 

今日は演習で敷波の錬成も一応は終わったので次の駆逐艦を育てようと考えている。

それで艦娘表を取り出して少し考えてみる。

基本改二とか大規模作戦で重要になってくる子が来ればその子を育てているんだけど、ある程度育成について落ち着いてきている最近はこの鎮守府への配属順に育てている。

それで敷波を錬成し終わったからnewソートを確認して、思えば初期からこの鎮守府にいる子達にはまだ未熟だった頃には大変お世話になったなぁと思う。

初期艦の電から始まりどこから手を付けたらいいかを色々と考えさせられて、本当に最初なんか『工廠』とか『入渠』とかの読み方すら分からなかったんだもんな。

それから白雪、龍田、赤城と任務で仲間になる子達にも大変お世話になった。

それで資材集めて艦娘集めてイベントや通常海域攻略を頑張って、気づけば異世界で本当に提督をやっている。

なかなか普通なら経験できない体験をしていると思う。

そんな事を思っていると榛名が表に出て来て私の顔を覗き込みながらも、

 

《提督…? どうされました? なにか考え事をしている顔をしていますが》

「いや、なんでもないよ榛名」

《そうですか…? 提督は考え事をしている時は、こう…眉間に皺が寄る感じでしたから》

 

榛名が私の真似をしているのか眉間に皺を寄せている。

榛名…。うちに最初にやってきた戦艦。

最初は金剛とか目当てで始めた艦これだけど最初という事で愛着が沸いてしまって今では好きな艦娘なんだもんな。

それでつい榛名に手を伸ばしている自分がいた。

だけどスカッと榛名の透明の身体を通り過ぎてしまった手を見て、

 

「卑しい意味じゃないけど純粋にやっぱり、榛名に触れてみたいな…」

《提督…》

 

それで少し場がしんみりとしてしまう。

 

「すまない…榛名の気持ちも考えないでこんな発言をしてしまって…」

《いえ…。私も提督と触れ合いたいのは本当です。榛名は…提督と触れ合いたいです》

 

そう言いながらも榛名は私の背後に回ってその透明の腕を伸ばしてきて後ろから抱きしめてくれた。

その感触を確かめられないのがとても残念だけど今だけは嬉しい…。

そうだな。

 

「明石に相談してみるか…?」

《明石さんですか…?》

「ああ。明石なら榛名の今の状態を改善できるいい案でも浮かべられるかもしれないから」

《もしそんな方法があったら榛名も嬉しいです…》

「よし。事は早めにしたほうがいい。忘れないうちにな」

 

それで今日の任務を終わらせて、午後になり早速明石のいる工廠へと足を運んでいた。

工廠のドアを開けて、

 

「明石、いるか…?」

「はいはーい。いますよー」

「提督が工廠に来るなんて珍しいですね」

 

そこには明石以外に夕張の姿もあった。

ツナギ姿でとても見えている肌は健康的だな。

 

「ああ。明石、それに夕張。少し相談したい事があるんだけどいいかな…?」

「なんです? 改修以外でも出来る事ならやりますよ」

「私も工作関係は好きですから力になりますよ」

「すまんな二人とも。それで今日は折り入って相談があるんだが…榛名」

《はい》

 

それで榛名も出てきて一緒にある事を相談する。

 

「そのだな。今の榛名の現状なんだけどどうにかならないものかな…?」

「榛名さんの現状ですか。まぁそうですね。

どういう理由なのかは分かりませんが提督が宿った代わりに榛名さんは今は幽霊みたいな状態ですからね。

私と夕張ちゃんも何度かその事で議論した事はあるんですよ。

でも今まで提督と榛名さんは現状は満足していたらしいですから聞かれない限りは黙っていようと思っていたんです」

「だけどこうしてやっと提督も重たい腰を上げて榛名さんについて考えてくれているというのは嬉しい事なんですよ?」

「そ、そうか…それで二人はなにかいい案はあるのか?」

《よければ教えていただけませんか…?》

 

そう言って私と榛名は二人に頭を下げる。

それで二人も慌てたのだろう、「よしてください!」と言葉を零した後に、

 

「提督と榛名さんのお気持ちは分かりました。二人とも触れ合いたいんですよね?」

「青春ですね。いいですよねー…」

「ばっ!? た、確かに触れ合いたいというのは本当だけど榛名の自由を束縛しているのが嫌なだけだ」

《そうです! 確かに提督と本当に触れ合いたいのは本心ですけど、その…》

 

榛名!? そこで恥ずかしがって言葉を濁さないでくれ、こっちもなんか恥ずかしいから。

 

「…御馳走様でした」

「そうですね。まぁ方法はなくもないんですよ」

「本当か!?」

「ええ。まぁそうなってくるととてもシンプルで簡単な話なんですけど妖精さんの力を借りて榛名さんの精神だけを別のもう一つの身体に移すっていう手もあるかもしれないんです」

《え…それってもしかして…》

「はい。榛名さんの考えている通り、榛名さんの個体を用意してもう一人の榛名さんと意識を融合させるっていう感じなんですけど…」

《それは嫌です!》

 

そこで榛名が叫んだ。

それは当然だ。

意識の融合は下手をすればそのもう一人の榛名の意識を奪い取る行為だからだ。

私も最初、榛名の意識を殺してしまったと思った瞬間には血の気が引いてしまったからな。

 

《そんな…もう一人の私の意識を奪ってまで生きたくありません。申し訳が立ちませんし…》

「そうですよね。相手の気持ちを尊重できる榛名さんならそう言うと思っていました」

「だから安心も出来ましたよ。もしこの方法を採用すると言ったら最悪榛名さんは嫌われ者になってしまいますからね」

 

それで安心したと言って明石と夕張は安心する溜息をついていた。

 

「それじゃ明石に夕張。他にはなにか方法はないのか…?」

「無くはないですけどそれも危険なものです。最悪提督の魂も無くなってしまうかもしれないものですからこの方法はお教えできません」

「あるにはあるんだな…?」

「はい。ですが私達も含めて提督という存在は私達の支柱です。ですから危険な策に乗らせるわけにはいきません。

ですからもっと安全で、かつ二人とも別々に生きられる方法を夕張ちゃんと模索してみようと思います」

「頼めるか…?」

「お任せください」

 

そう言って明石は親指を立ててくれた。

こういう時の明石は頼りになるから安心できるものなのかもしれない。

私も私で案があったら話していこうという話で今回の相談は幕を閉じた。

そして工廠を後にして、

 

《提督…榛名は少し不安なんです。もしもですよ? 提督と私が無事に分離できたとします。

でもそしたら提督は戦う術を無くしてしまうかもしれないからです。

そんな時にまたこの間の大規模作戦の時のように出撃しろと言われてしまったら、榛名はもう提督と一緒に戦えないから提督が危険に晒される頻度が上がってしまいます。

そんな事になってしまったら分離できたことを後悔してしまうかもしれません…》

「そこまで私の事を考えていてくれたんだな。嬉しいよ榛名。

大丈夫…その時は柳葉大将を通じてもう戦えなくなったって大本営に報告するから」

《本当ですね? 約束してください。もう、あの時のように提督が大破してしまう光景は榛名は見たくありません…》

 

それで思い出しているのだろう、北方水姫の攻撃で大破してしまった私の姿を。

そしてその時になにもできなかった榛名はとても後悔をしたのだろうと…。

 

「大丈夫…。きっと榛名の事を悲しませることはしないから」

《約束しましたからね?》

「ああ…」

 

そう約束しながらも私達は執務室へと歩いていくのであった。

 

 

 




提督と榛名の問題を今回は書いてみました。
時折この話を挟んでいこうと思います。



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