【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0041話『いい雨だね』

 

 

 

本日の天気は曇り時々雨、この時期にしては少し蒸し暑くもあり湿気を誘う気温帯。

そんな中で私は後少しで終わりそうな報告書作成という悪魔と大淀とともに立ち向かっていた。

 

「…大淀、これのチェックを頼む」

「わかりました。私? そちらはどうですか…?」

「はい、私。報告書作成はほぼ滞りなく完了したと思われます」

 

大淀達のやり取りも慣れたものでその言葉を聞いて私はやっと解放された気分に浸れた。

 

「やっとこれも終わったか…」

《お疲れ様です、提督…》

 

榛名の表情も少し苦笑いで優れないものになっているのはそれだけ大規模作戦での報告書の多さにやられている為だろう。

これで夏の本格的大規模作戦を想定して考えると目が白けてくるのは仕方がない事だ。

榛名自身は私を応援する事しかできないから私が寝落ちしそうになったら頭に直接響く謎の不協和音をかき鳴らして強制的に覚醒させてくれるので頼もしかったりする。

…できれば優しく声をかけてもらいたいものだけど今回ばかりはありがたかったりした。

 

「ふぅ…」

 

それで報告書も終わった事で一息ついていたところで窓の外を見る。

外はポツリポツリと言う滴り落ちる雨音が聞こえてくる。

テレビでは予報は曇りだったがやっぱり雨が降り出してきていたか。

 

「それでは提督。倉庫に保管する用の資料などは私達にお任せください」

「ん、任せる」

「はい。それでは提督ももうそろそろ一休みをいれてください。眠たいでしょうし」

 

大淀達の優しさに涙が出そうになるけどやっと解放された反動でナチュラルハイになっているのかあんまり今は眠気が来ないんだよな。

なので、

 

「まだそんなに眠気が来ていないからちょっと羽を伸ばしてくるよ」

「わかりました。それでは榛名さん、提督が眠りそうになりましたら誰かを呼んでくださいね?」

《任せてください》

 

大淀達はそう言って報告書の束を一緒になってカートで運んでいった。

それを見送りながらも、

 

「しかし、今回はさすがに効いたなぁ…」

《そうですね。大淀さん達にもよくしてもらいましたしこれからも深海棲艦が侵攻してきて作戦が起きるたびにこの報告書とも格闘する羽目になるのですね》

「やめてくれ榛名。今はもう報告書の事はあまり考えたくないから」

《ふふっ…はい、わかりました》

 

それで執務室でこれからどうしようかと悩んでいた時に執務室に騒がしい声が響いてきた。

 

「Heyテートク! 榛名! 報告書は終わりマシタカ!?」

「ああ、金剛か。ああ、なんとか終わったよ」

「そうですカ。手伝えなくてsorryデース…」

「いや、金剛達はその分戦ってくれてるだろう? だから私がその分頑張らないとな」

「グレートデース。とても立派だよー」

「はは、ありがとう」

 

そう言って私は金剛の頭を撫でる。

それで金剛もされるがままになっているので私も気兼ねなく撫でる。

だけどそこで私の中で今は一番嫉妬焼きが多い印象の榛名がでてきて、

 

《金剛お姉様、ずるいです…榛名も提督に頭を撫でてもらいたいです…》

「Oh…そうでした。榛名は触れないから提督に触れられないのデシタネ」

《はい。あ、いえ…私からは触れることはできるのですが皆さんからは私は触る事ができないんです》

「そうですか…榛名? いつでもいいから本音をぶちまけてもいいですからネー? 私が受け入れマース」

《はい。ありがとうございます、金剛お姉様》

「Yes! それで提督もセットで来てくれるんですから嬉しいデース」

 

金剛の狙いはそれなんだよな。

榛名はできるだけ金剛姉妹と過ごしたいと思っている。

だけどこの姉妹たちだけを構う訳にもいかない。

日々艦娘達のメンタルケアもしていかないといけないからな。

自意識過剰かもしれないけど私が構うことが出来ずにそれで寂しがっている子達も実際は結構いるわけだし。

まぁ、それはおいおい考えていくか。

私は聖徳太子じゃないから全員の言葉に耳を貸すことは不可能だしな。

とにかく、

 

「金剛、少し歩かないか…? やっと報告書作成も終わったし気分転換もしたいしな」

「わかりましたー! それじゃ傘を用意しますね」

 

それで私と金剛は傘を用意して小雨が降っている中、中庭を歩いている時だった。

 

「オー、あれは時雨デスネ?」

 

金剛が指さした方を見ると木の下で雨に濡れているのか傘をさしていない時雨の姿があった。

そういえば………金剛に時雨。

この二人の進水日は確か一昨日だったか…?

そう考えて今からでも遅くないかなと思って、

 

「金剛。少し時雨と一緒に雨の中だけどお話でもしようか」

「いいんですか?」

「ああ」

 

それで私と金剛は時雨へと近寄っていくとあちらもこっちに気づいたのか、

 

「提督に金剛…いい雨だね」

「はい! そう思いマース」

「そうだな。時に時雨はどうしてこんな雨の中外に出ているんだ?」

「そういう提督達こそ」

「私はやっと報告書が終わって気分転換に金剛を誘ったんだ」

「そっか。…僕は、そうだね。雨に濡れたいと思った事かな…?」

「濡れたい…?」

「うん…深海棲艦を撃退した後はいつも僕はこうして雨の中を歩いているんだ。

気落ちしている時でも雨は平等に降り注いでくれて硝煙の匂いも誤魔化してくれるから」

 

それで私は少し驚く。

時雨と言えば雨が代名詞だけどそんな理由もあったんだな。

だから私はそんな時雨の頭に手を置いて撫でてやる。

 

「な、なんだい? いきなり…」

「いや、ただそんな思いを抱かせてしまってすまないなと思ってな」

「いいんだよ。僕が勝手にやってることなんだから」

「それでもだ。私の勝手だから気にしないでくれ」

「そう…」

 

それで少し場はしんみりする。

金剛も気を使ってくれているのか私の隣で黙り込んでいる。

そんな少し静かな空気に私はある事を金剛と時雨に言う。

 

「時雨、それに金剛も…少しいいか?」

「なんですか…?」

「なんだい…?」

「うん。大規模作戦で他に頭が回っていなかったんだけど、一昨日は君たち二人の進水日だろう…?」

「覚えてくれていたんデスカ!?」

「提督…嬉しいよ。忘れられていたと思っていたから」

 

それで二人は話してくれた。

一昨日は姉妹艦達とそれぞれ間宮に行って祝っていたと。

 

「私もみんなに祝ってやりたいけどそんなに進水日に詳しいわけじゃないんだ。

ただ二人の進水日は覚えていたっていうか…そんな感じだな」

「それでも覚えていてくれてるだけで嬉しいな」

「Yes! その通りデース」

 

それで金剛と時雨は嬉しそうに笑顔になってくれていた。

よかった。

二人の笑顔が見れて、

 

「だからって訳でもないけどプレゼントも用意してないから代わりにこれから三人で間宮にいかないか? なにか奢ってあげるよ」

「嬉しいデース」

「提督からの進水日のプレゼントか。嬉しいな…。あ……」

 

時雨はふと空を見上げた。

それに釣られて空を見上げてみると空は少しばかり晴れて来ていた。

虹も出来ていて綺麗な感じだなと思った。

 

「Oh! 日が差してきました! 虹が綺麗デース!」

「雨は、いつか止むさ…でも今回はタイミングもあって嬉しいな」

「そうだな」

 

それで私達は傘を畳んで笑顔になりながらも間宮に向かっていったのだった。

 

 

 




今回はスポットを時雨と金剛に当ててみました。
進水日ネタはイベントでできなかったですから少し遅れてしまいましたがね。




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