【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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余裕があり次第朝八時に更新していこうと思います。


0004話『再会』

 

 

私はもう一度ノックをして中に話しかける。

 

「話したい事があるんだけど入っていいかな?」

『誰? 声的に榛名っぽいけど…』

「うん。今は榛名だけど多分あなた達の事を私は知っていると思うから」

『まぁ、そう言うんなら入んなよ』

「うん」

 

それで部屋に中に入ってみるとそこには思った通り、川内改二、皐月改二、江風改二、卯月、三日月、涼風の六人の姿があった。

なぜ彼女達六人なのかというと第二遠征艦隊のメンバーがこの六人だったからである。

そして暗い理由が分かった。

おそらく事情は私と同じで急にこの世界に落とされたのだろうと予測する。

窓もカーテンが閉められていて暗い雰囲気が感じられるほどだ。

彼女達は私と違って何日前からここにいるのだろうか?

そんな事を考えていると川内が話しかけてきた。

 

「…それで? 榛名はどうして私達なんかに話があるんだ?」

「うん。その前に一言…会えてよかったよ。六人とも」

『え…?』

 

それで全員がポカンとした顔になる。

 

「分からないかな…? まぁ、今は姿は榛名に変わっちゃったし分からないと思うけど、それじゃ私の…いや、俺の提督名でも言えば分かるかな?」

 

そして私は艦これのアカウント名を言った。

すると最初に皐月が涙目になりながら、

 

「司令官、なのかい…?」

「うん。そうだよ皐月」

「司令官ッ!!」

 

そして皐月が私に抱き着いてきた。

続いて卯月と三日月が近寄ってきて、

 

「嘘を言っていないぴょん? 本当なの?」

「本当なのですか…?」

「ああ。本当だとも」

 

そして二人も涙目になって私に抱き着いてきてくれた。

 

「かぁー…ったく、泣かせないでよ。本当に心細かったんだからさ。な、江風?」

「ああ。もう提督に会えないのかと本気で思っていたかンな」

 

涼風と江風は抱き着いてこないけどそれでも涙を流していた。

そして最後に川内が話しかけてきて、

 

「提督…だったらさ? 私になにか言う事はあるんじゃない?」

「え? えっと…」

 

それで少し考える。

そこでピンときたことがある。

川内の性分というか所謂夜戦バカゆえに、

 

「もしかして、ずっと遠征隊は嫌だったり…?」

「そうだよー! 私を夜戦に連れてってよさー!」

「あー、はいはい。今度機会があったらね」

「約束だからね!?」

 

それでなんとか六人と和解できたところでまた川内が代表して話しかけてきた。

 

「…ところでさ、提督はなんで榛名になってんの…?」

「うん。まぁそうだよな。分かる」

 

それで私の現状を教えた。

突然謎の光とともに気づいたら榛名になっていて本物の榛名は今は眠りについているとかなど。

 

「私達と大体同じ感じだね。私達も遠征を終えて帰ってきたところで謎の閃光とともに気づいたら見知らぬ海の上にいたからね」

「うんうん。ボクもびっくりしたよ」

「二日前に路頭に迷っていたところで電さん達に偶然出会ったのです」

「飢え死には嫌ぴょん…」

 

概ね皆も同じ感想だったらしい。

とにかく一つ分かった事がある。

 

「みんな、いいかい…? 一つ分かった事があるんだけど、多分他のみんなもどこにいるかは分からないけどこの世界に転移していると思うんだ」

『………』

 

それで真剣になって話を聞いてくれる六人に感謝をしながらも、

 

「それで当面の目標は散り散りになった皆を探し出す。そして拠点を構えてこの世界の情勢を知る事が第一だ」

「ン、確かに…」

「そうだね」

「いいと思います」

「辛い事もあると思う…。だけど一人じゃないという事はとっても嬉しい事だ。だから今は久保提督に協力しながらも頑張っていこう!」

『おー!』

 

それで現在七人になった私達は手を合わせて掛け声を上げた。

だけどそこでもう一人小さい手が乗せられる。

 

【私も忘れないでください。非力ながらもお手伝いします】

 

私の妖精さんが話に乗ってきてくれた。

 

「そうだな。これで七人…いや、八人で頑張っていこう」

 

こうして私達は一致団結してみんなを探すことになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…場所は久保提督の執務室。

 

「榛名さんはうまく話ができたかしら…?」

「まぁ、大丈夫じゃないかな。多分」

 

雷の言葉に久保提督は合いの手を乗せてきっと大丈夫だろうと言っていた。

そんな時だった。

電話の音が鳴り久保提督は受話器を取って、

 

「はい。どちら様でしょうか…? こちらは第164号宿毛湾泊地ですが」

『久保少佐か。私は第2号宿毛湾泊地の大将である柳葉(やなぎば)一二三(ひふみ)だ』

「た、たたた大将ですが!? ど、どうされたのでしょうか…!?」

 

突然の大将からの電話に久保提督はきょどりながらも応答する。

 

『そんなに緊張をせんでいい。それより君に話したい事がある。よいかね…?』

「は、はい」

『君の鎮守府の近くに今は使われていない廃れた鎮守府跡があったと思うがご存知かね?』

「はい。存じております」

『ここ数日でその鎮守府跡地に最高の練度を誇っているだろう鎮守府が出現したのだ』

「出現した、ですか…?」

『ああ。遠目からの確認故に詳しく調べられないのだがとても広い…。

それはもう300隻以上は艦娘が収められるであろう母港(宿舎)に見事なつくりの航空基地も確認できた』

 

それを聞いて久保提督は「ばかなっ!」という感想を抱いた。

そんな施設があればすぐに気づくようなものだ。

かの最大練度を誇る横須賀鎮守府とて200隻が収まればいい方なのに。

私の運営は始まったばかりだから航空基地なんてそれこそあるわけもない。

誰がそこにいるんだ…?

 

「その、一ついいですか…?」

『なんだね?』

「その鎮守府に入る事は出来なかったのですか…?」

『ああ。調査に出した者たちが悉く高練度の艦娘達に追い返されてしまったそうだ』

「艦娘までいるんですか!?」

『うむ。帰ってきた者の証言によるとその艦娘達は『私達の仲間を、提督を返して!』…と、発言していたそうだ』

「打って出なかったのですか?」

『出ようとはした。だが門番ともいうべき存在が二人母港の前の港に陣取っていて無理だったのだ』

「まさか、その二人というのは…」

『うむ。大和型二隻の艦娘である大和と武蔵だ』

「そんな…」

 

この国には大和型を通常運用できるほど備蓄に余裕はないのだ。

建造できてもその高い防御性と攻撃力で深海棲艦との戦いでは練度1の状態でいの一番に投入されて多少削ったら捨て駒にされるほどに扱いも燃費も悪いと聞く。

そんな大型艦が二人も陣取っているとなると勝ち目はない。

 

「どうされるのですか…?」

『うむ。それでだが君に和平交渉を頼みたいと思っている』

「わ、私がですか!? まだまだ新米の域を出ないと自覚しているのですが…」

『それでも不穏分子ともし戦闘を起こしてこちらが大敗したら目も当てられない。君の肩には日本という国が背負わされていると思え』

「そ、そんな…」

『どんな方法でも構わん。敵ではないというアプローチができればよいのだ。彼女らが言う提督という存在がどこに行ってしまったのかも調査しないといけないしな』

「わかりました…その任、引き受けます」

『うむ。任せたぞ』

 

それで電話が切れる。

しばらく無言の久保提督とそれを聞いていた雷。

二人は手を合わせて同時に、

 

「「ど、どうしよう…!?」」

 

と、嘆きの声を上げた。

 

 




鎮守府ごと来てしまいました。


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