【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0035話『前哨戦、出撃する空母機動艦隊』

 

 

 

先日の北端上陸姫を倒したことで占守島の奪還を成功出来た。

だけど時を置かずして北方水鬼という深海棲艦がまた占守島をその手に収めようと戦艦棲姫とともにオホーツク海に進行しているという。

それで迎撃部隊を組む事になった。

まずは前線にいるという戦艦棲姫を倒すために私は空母機動部隊を組む事にした。

私が出撃するのは最後の戦い…北方水鬼の時だ。覚悟を決めないとな…。

それで執務室に入ってくるメンバー。

 

第一艦隊の旗艦は妙高。

そして大鳳、瑞鶴、翔鶴の装甲空母の三人。

高火力のザラ。

そして対空特化の摩耶だ。

 

第二艦隊の旗艦は阿武隈。

そして重巡の第五艦隊所属の那智、足柄。

対空特化の秋月。

雷巡の北上。

最後に雪風だ。

 

戦艦を入れた方がいいとも考えたがまだ様子見でこの編成で挑んでみて手ごたえを感じたのなら最後までこの編成で行こうと思っている。

第一艦隊旗艦の妙高が前に出て、

 

「空母機動部隊旗艦の妙高、以下私を含めて十二名、参りました」

 

妙高が礼儀正しく敬礼をしてきたので「楽にしてくれ」と言って全員の肩に入っている力を抜くことにした。

それで妙高達は苦笑いを浮かべながらも普段通りになった。

 

「さて、それではまずはこの空母機動部隊で戦艦棲姫を倒してもらいたいと思っている」

「その事なんだけど…」

 

そこで瑞鶴が何かを言いたげな表情で手を上げた。

それで発言を許すと瑞鶴はそれで少し不安げな表情になり、

 

「提督さんが最後のボスに行くことは無いんじゃないかな…?」

「なんでだ…?」

「だって、確かに提督さん=榛名はこの鎮守府では高練度だけど、戦うのは榛名じゃなくてあくまで提督さんの腕なんでしょ…?」

「そうだな…」

「だったら! それに大本営が言ってきたのはあくまで最終海域への出撃なんだから最後のボスまで提督さんが行く必要はないよ!!

今からでも遅くないから妙高さんと変わって戦艦棲姫を倒すだけでいいじゃん!!」

 

瑞鶴の心からの心配が今はとても嬉しいものだ。

だけどな…大本営が望んでいる戦果はそんな中途半端なものじゃないんだと思う。

あくまで戦艦棲姫は前哨戦にしかならない。

それを知ってか知らずか今日の電文でこう言われてきた。

『甲作戦で敵本隊を提督の手で撃滅せよ!』と…。

その事をみんなに伝えたら瑞鶴は分かりやすく怒った表情になり、

 

「なにそれ!? 大本営は提督さんにむざむざ死んで来いっていう命令でもしているつもりなの!?」

「瑞鶴、落ち着いて…」

「でもさ、翔鶴姉…」

 

翔鶴がなお食い下がる瑞鶴を窘めている。

きっと翔鶴も辛い気持ちなのだろうけどそれを耐えているのだ。

 

「瑞鶴。君の気持ちはとても嬉しく思う。だけどもう私は覚悟を決めているんだ。

それに榛名も私の手助けをしてくれるというし怖いモノなんてないと思っている」

「そうなんだ…榛名、聞いているんでしょう? ちょっと出てきて」

《はい》

 

それで榛名が透明な姿で出てきた。

 

「提督さんは、私達の提督さんなんだよ。だから一緒になんか絶対に逝かせないんだからね…?」

《はい。私も絶対に提督を逝かせたりしません。だから瑞鶴さん、信じてください》

「そう…榛名がそう言うんだったらもう信じたかんね?」

 

それで瑞鶴は普段通りの人好きのするような笑みを浮かべた。

そして場は落ち着いたので話を再開しようと思う。

 

「それでは話を再開する。瑞鶴、翔鶴、大鳳は敵深海棲艦を艦載機で圧倒してくれ」

「わかったよ提督さん」

「わかりました提督」

「はい。この大鳳にお任せください」

 

それで空母の三人は頷く。

 

「そして摩耶は対空特化にさせてあるので敵艦載機を第二艦隊の秋月とともに撃ち落としてくれ」

「おう! 任せろ! 防空巡洋艦の腕の見せ所だ」

「微小ながらもこの秋月にお任せください。いいわね? 長10cm砲ちゃん?」

 

摩耶が元気に頷いている横で秋月が長10cm砲ちゃんに呼びかけていて、長10cm砲ちゃんも砲塔を何度も動かして応えていた。

 

「そして妙高とザラが敵前線を高火力で屠ってくれ」

「わかりました。この妙高にお任せください」

「はい。ザラは粘り強さがモットーですから必ず食らいつきます!」

 

妙高とザラも礼儀正しく答えていた。

 

「最後に第二艦隊は夜戦でとどめを刺してくれ」

 

私の発言に那智と足柄がまるで戦闘に飢えているような笑みを浮かべて、

 

「任せろ。提督、貴様の期待には応えてやるさ」

「ええ。やっと出番が巡ってきたんだからきっちりこなしてみせるわ」

 

そう答えた。

次に阿武隈と北上が、

 

「阿武隈、期待に応えますね」

「北上さんも今回は本気でいかせてもらうね」

 

最後に雪風が、

 

「しれぇが安心して出撃できるように見事敵深海棲艦を叩いてみせます!」

 

みんなが答えてくれたのを確認して、

 

「よし。では出撃してくれ。いい報告を期待している」

「「「了解」」」

 

それで全員は出撃していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…? 道中は特に小破したものはいませんがどうしますか…?」

『油断せずに進んでくれ』

「わかりました」

 

出撃していった後に、提督に指示を仰ぎながら私、妙高は旗艦を任されながらもとある事を考えていました。

提督は笑顔で私達を送り出してくれましたがその実、きっと怖がっているのだと。

瑞鶴さんの発言で執務室の中の空気は少し悪くなり、私はそれで提督の事をしばし見ていたのですが、提督は普段通りに私達に笑顔を向けてくれましたが、私は見逃しませんでした。

提督の手は少しばかり震えていたのです。

それを見て、「ああ、やはり…」という感想を持ちました。

当然です。

私達艦娘は第二次世界大戦時の記憶も持っていますから戦う事に関しては怖くはありません。

それは一度は沈んだ過去がありますから感覚が麻痺しているものなのかもしれない。

ですが提督は本来こんな血生臭い戦いとは無縁の生活をしてきました。

それなのに、神様はどんな罰を与えたのか提督に艦娘の力を与えるなんて…。

そして大本営も大本営です。

たとえ提督の事を思っての行動だとしても提督に最終海域に出撃せよという無茶な命令はさすがに看過できないものがあります。

それでもし提督が沈んでしまったら私でしたら身が引き裂かれるような思いでもうきっと耐えられません。

 

「妙高姉さん…? どうしたの?」

「足柄…」

 

そこに私の様子がおかしい事を感覚的に悟ったのか足柄が話しかけてきました。

いけませんね…。足柄に悟られるほどに私は動揺を隠しきれていないようです。

 

「なんでもありませんよ、足柄。

それより全艦に通達します。そろそろ戦艦棲姫のいるエリアに到着します。

各自武装のチェックを!」

「「「了解」」」

 

そして索敵が済んだのか目の前には戦艦棲姫の姿があります。

 

「ナンドデモ……シズメテ……アゲル…」

 

戦艦棲姫がその余裕をしている笑みを私達に向けてきます。

だけど今、私達は虫の居所が悪いです。

ですからそちらが向かってくるのでしたらお覚悟ください。

それで私は少し残酷な感情に身を任せながらも、

 

「皆さん、殲滅の用意を!」

 

私の言葉に全員は分かっているかのように各自艦載機や連装砲を構えて攻撃を開始します。

そう、所詮前哨戦の戦い。

ですから提督の手を少しでも煩わせないためにも戦艦棲姫…あなたにはここで消えてもらいます。

それから私達の一方的な攻撃が深海棲艦群を襲い、戦艦棲姫も最後には第二艦隊の総攻撃を受けてすぐさま撃沈しました。

 

「提督…? 戦艦棲姫の殲滅を確認しました」

『そうか…。だけど妙高、少しいいか?』

「はい。なんでしょうか?」

『君たちは確かに兵器だけど同時に人間と同じように心も持っている。

だからそんな心を殺した様な戦い方は今後一切しないでくれ…』

 

ッ!? 提督は私達の事を見透かしていたようです。

それで少し恥ずかしくなりながらも、

 

「わ、わかりました…気をつけます」

『それならいいんだ。皆にも伝えてくれ。決して怒りを発散するような戦い方はしないでくれと…』

「わかりました」

 

それで提督との通信を切った後、みんなにその事を伝えると、

 

「やっぱりしれぇはしれぇです! とっても私達の事を考えてくれています…!」

 

雪風さんのその言葉に私達はどれほど救われた事か。

ですが、提督。そんな優しい提督だからこそ私達はいつまでも提督の事を心配していますからね?

それだけは分かってくださいね…?

 

 

 




後半は妙高さんを主に書いてみました。
冷静そうながらも心のうちは怒っていますっていう感じですね。


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