【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0032話『大本営の意思』

 

大本営の幹部たちが部屋に集まってなにやら話し合いをしている。

それは今もっとも話題に上がるであろう異世界から来た提督とその艦娘達についての議論だ。

 

「それで、その提督の艦隊は前段作戦を突破したというのだね…?」

「うむ。それも艦娘一人も犠牲も出さずに、だ」

「そうか…その通っている名は榛名提督と言ったか? 彼女は期待できる人材なのかね…?」

「はい。なんでも現状我々では扱いが手に余る大和型を普通に運用できるほどには実力はあるようで…」

「むぅ…」

 

それで代表の人物が唸りを上げながらも、

 

「ならば榛名提督は現状は我が国に役立てる人材だと考えてもよいのだな?」

「はい。特に反骨心などと言った話はないようですから。それにこれをご覧ください」

 

とある役員は先日に柳葉提督が榛名提督達から受け取った艦娘練度表を今いる全員に渡す。

全員はその練度表を目にして驚きの表情を浮かべる。

 

「ばかなっ…現状今のこの世界の日本にある全鎮守府を入れても最高練度を誇る横須賀鎮守府にいる古参の艦娘である武勲艦の長門の練度を上回る艦娘だらけではないか…!」

「はい。榛名提督の艦娘は総じて練度が高いモノばかりなのです。まだ数十名の駆逐艦が練度は低いですがそれでも目を見張る者達ばかりです」

「なるほど…ならば前段作戦を軽く突破したのも頷けるというものだな」

 

それで代表は腕を組みながらも少し考えて、

 

「その榛名提督は現在は戦艦榛名に宿っているのだろう…?」

「はい。身体を共有しているという話です」

「つまり歳をとらない艦娘である榛名提督は轟沈しない限りはいつまでも提督としても、そして戦力としても期待できるほどであると考えてもよいのだな?」

「おそらくは…」

 

それで会議室の中にはどよめきが起こる。

 

「これは、いよいよをもってその榛名提督を厳重に保護を検討しないといけないかもしれないな。

有益な人材をむざむざと深海棲艦に倒されてはこちらとしてもなにかと都合が悪い。

なにせ、もう榛名提督の事は全国に知れ渡っているのだからな」

「そうですな」

 

それで大本営の幹部たちは情報伝達するのを早まったかという思いに駆られた。

 

「だがしかし、だからと言って提督業を手放せと命令をしたら簡単に応じるとは思えない。

最悪は艦娘達とともに反逆されても困る…。

だから今現状は使える手駒として考えていくのが普通なのだろうな…」

「はい。そうですが…現状の全国の提督達から見た榛名提督の評価をご存知ですか…?」

 

役員の言葉に代表は顔を顰めながらも、

 

「ああ、知っているよ。

なんでも無駄にプライドが高い提督達が榛名提督の事を疑った目で見てきたり妬んでいたりしているのだろう…?」

「はい。まだ信用も出来ないし背中を預けられないというのがほとんどの意見です」

「ふぅ…まったく困ったものだな。今は一つでも強い鎮守府が必要だというのに…。

勝手に内輪揉めを始めてしまったら深海棲艦はここぞという時に隙をついてくるぞ…?」

「はい。それで一つ考えがあるのですがよろしいですか、代表…?」

「なんだ? 言ってみたまえ」

「はい。榛名提督の事を信用してもらうためには今回の最終作戦では榛名提督自身が出撃するのもよいのではないでしょうか…?」

 

その役員の発言に代表は顔を顰めた。

当然だ。

今は艦娘として存在している榛名提督だがいざここでもし轟沈でもして鎮守府の運営がままならない事にまで至ったら残された艦娘達の牙の矛先は大本営の我々に向けられてしまうのだから。

だからその役員の発言を却下しようと思ったのだが、

 

「いいですか、代表。

ここで榛名提督が信用を得られなければいつまでも国が疑心暗鬼になってしまい運営がままならなくなっていまうのは必然です。

ならばここぞという場所で榛名提督の覚悟を見させてもらえれば他の提督達もおそらくは信用するでしょう」

 

その役員の言葉に代表は少し、いやかなり悩んでいるのは仕方がない事だ。

榛名提督は今は艦娘とはいえもとはただの人間だったのだ。

それでいざという時に人間という枠を超えた力を持ったからと言って深海棲艦と渡り合えるものなのかと…。

戦場に出て恐怖で棒立ちになってしまったらそれこそ信用など地に落ちてしまう。

しかし、逆転の発想ともいうべき今回の役員の提言は確かに効力を発揮すれば莫大な信用を足るに不足はない。

 

「…それは榛名提督には伝えるのかね?」

「伝えなければ話になりません。了承してくれるのを祈りましょう。国の存続のためにも」

「わかった…。至急柳葉大将に連絡を取って今回の話を榛名提督に伝えるように通達するのだ」

「了解しました」

 

それで役員たちは慌ただしく動き出し始める。

それを代表は静かに見守りながらも、

 

「(榛名提督…君には悪いが今回は君の覚悟を試させてもらうぞ)」

 

代表は心静かに榛名提督の無事を祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大本営で話し合われた議題が柳葉大将へと伝わったのはそれからすぐの事だった。

贈られてきた電文を見て柳葉提督は思わず目を見開いた。

それで少し怒りを顕わにしながらも、しかし冷静に事を吟味して考えて、

 

「榛名提督が信用されるにはこれしかないというのか…やはり周りの目はきついものなのだろうな」

 

少しばかり落胆していた柳葉提督だったが、

 

「これを榛名提督に伝える任を儂に与えるとは、老骨を労わらないようだな。

だがそれも仕方あるまい。

まだ榛名提督はこれといって交友を持っているのは儂と久保少佐しかいないのだからな」

 

内心で柳葉提督は榛名提督の事を深く同情しながらもこの事を伝えるために電話を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その件を伝えられた榛名提督は、

 

 

「そうですか。分かりました…出来る限り尽力したいと思います」

『そうか。すまないな。儂の力が及ばずに…』

「いえ、柳葉大将が落ち込む事はありません。いずれは通らなければいけない道なのですから今回はいいテストケースなのでしょう」

『そう言ってもらえると心休まるが、大丈夫かね…? 榛名提督も思う所はあるのだろう』

「はい、まぁ。でも大本営が決めた方針に逆らうわけにはいきません。ならば後はやるだけです…」

 

そう言って私はある意味諦めの思いでその報告を受け止めた。

最後に柳葉大将は『無事に帰ってきなさい』と言って通話を終了した。

 

「提督…本気ですか?」

 

そこに話の内容を隣で聞いていた大淀が真剣な表情でそう聞いてきた。

 

「ああ。分かっていたさ。この作戦が始まってから向けられていた視線を払拭するには私が覚悟を見せないといけない事は」

「ですが、もし提督が轟沈されてしまったら残された私達はどうすれば…」

 

それで少し泣き顔になる大淀。

そんな大淀の頭に手を乗せながら、

 

「大丈夫…きっと帰ってくるよ。それに私は一人じゃない。みんながいる。

そして榛名も一緒になって戦ってくれる。それなら怖いモノなんてないさ」

 

そこに榛名が出て来て、

 

《はい。提督の事は榛名が必ずお守りします。たとえこの心が砕けようとも…》

「そんな悲しい事を言わないでくれ、榛名。みんなで無事に帰ってこよう」

《はい、提督…》

 

それで私は最終作戦で私自身が出撃することを決めたのだった。

 

 

 




いつもイベントでは最終作戦では榛名はいつも旗艦で出撃していますのでこの話を考え着きました。
大本営もちゃんと国の事や榛名提督の事を考えてくれる人たちです。はい。


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