【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0305話『決戦前の弱気』

 

 

 

 

 

ついに今夜、決戦が始まるな。

鎮守府内もやる気と熱気が溢れているのかバレンタインが過ぎてからすでに臨戦態勢に入っている子も何人もいる。

みんな、悲願を成し遂げたいんだろうな。

そんな中、

 

「提督……榛名、今度こそは皆さんをお守りできるように頑張りますね。

演習でもう完全に力を取り戻しましたので必ずお役に立ちます!!」

 

榛名はそう言ってギュッと拳を握っている。

うん。頼もしいものだな。

だけどなぁー。

 

「やる気を出してくれているのはとてもありがたいんだけど、もう私が前線に出ることは無いから榛名と一緒に戦えないのが少しだけ寂しいものがあるな……」

「そうですね。今までどの作戦でも提督と榛名は一緒に戦ってきました……。

ですが! 安心してください! 提督が安心して勝利を望んでくだされば必ず私達は応えますから!」

「わかった。期待しているぞ榛名」

「はい。榛名は大丈夫です!」

「ははっ。久しぶりにその決め台詞を聞いたな」

 

そう言いながらも私は榛名の頭を撫でてあげる。

榛名もそれで嬉しそうにしているし、やっぱり分離できたのはいい効果だったんだろうな。

執務室でそんな話をしている時だった。

扉がノックされて私が「いいよ」と言うと瑞鶴と加賀さんが中に入ってきた。

 

「提督さん……少しいいかな?」

「提督、少しよろしいですか……?」

「また珍しい組み合わせだな。どうしたんだ……?」

「ええ。少し、この子に活を入れてもらいたいのよ」

 

加賀さんがそう言いながら瑞鶴の頭を撫でている。

瑞鶴もそんな加賀さんの言葉に改まっているのか無言でこっちを見てくる。

 

「……わかった。瑞鶴、何が不安か話してみなさい」

「うん……。今度の戦い、己惚れているわけじゃないけど私が艦隊の中心に添えられると思うんだ。だけどそう考えると前世の事を思い出してとっても不安に駆られてしまうんだ……」

 

それで瑞鶴は思い出しているのか苦い表情をしている。

 

「今度はちゃんと艦載機もある。練度も十分に上がっている……提督さんもこの日のために資材をたくさん準備してくれた。だからもう悩む必要はないのに、不思議だよね? 怖いんだ……私の判断ミスが命取りとなってまた過去のように囮部隊の二の前にしてしまうんじゃないかって……」

「そうか……」

 

瑞鶴は自身の不安を言葉にして改めてシュンッとなってしまっている。

これが普通の軍の人間だったらきっと『弱音を言っているんじゃない! 貴様はただ勝てばいいんだ!』とか言うんだろうけど、生憎私もまだ感性は一般人に毛が生えた程度のものだ。

だから瑞鶴の気持ちは痛いほど分かる。

誰だってもし負けるかもしれない戦いだったら臆してしまうものだしな。

だから私は瑞鶴に安心してもらえるように頭に手を置く。

そして、

 

「瑞鶴。君はもう一人じゃないんだ。それは分かるな?」

「うん……」

「過去の最後の時の仲間はもちろん、翔鶴や、そして加賀さんも一緒になって戦ってくれるだろう。そうですよね? 加賀さん」

「ええ。後輩のしりぬぐいをするのは先輩の役目。過去では沈んでしまって手を貸せなかったけど、今度は必ず役に立って見せるわ……きっと赤城さんや飛龍、蒼龍も同じ気持ちよ。今度は誰も欠けていないのよ。だから瑞鶴、あなた一人が背負い込むことは無いのよ」

「加賀さん……」

「それに、私と赤城さんの一航戦を引き継いだあなたがそんな腑抜けになっているのなら手柄は私達がもらうわ。ねぇ、五航戦?」

「むっ……こんな時に五航戦って呼び方やめてくださいよ!」

「五航戦は五航戦よ。私達からすればね……だから一人で背負い込むのではなくて肩を貸しなさい。持ってあげるから……」

「あっ……うん。お願いします、一航戦の先輩」

「よろしいわ。勝ちに行くわよ……?」

「うん!」

 

それで笑顔を浮かべあう加賀さんと瑞鶴。

なんだろうな……私と榛名もいるのに瑞加賀の光景を見せられてしまっている……。

放っとけば勝手に解決したんじゃないか……?

 

「提督……もう二人の世界に入っていますね」

「そうだな、榛名……」

 

私と榛名の呟きが耳に入ったのか二人はすぐに離れて咳ばらいをしながら、

 

「と、とにかく! 提督さん、決戦が始まったら私は少し気合を入れるから期待をしておいてね!」

「わかったよ。楽しみにしておく」

「うん! あー、でもやっぱり相談できて良かったかも。胸がすっきりした感じ」

「それは当然よ瑞鶴。なんせ私達の提督なのだから……」

「そうだね加賀さん!」

「おいおい……そこまでよいしょしなくてもいいんだぞ? 私だって榛名と一緒に戦えないんだったらかなり弱体化してしまっているんだから」

「そのようですね……そうなるとまた大本営から提督自身が出撃してこいとかけったいな命令をしてこなければよいのですけど……」

「それはもうさすがにないとは思いたいんだけどな……」

 

ありえそうで苦笑いを浮かべるしかできないでいた。

 

「安心してよ提督さん。提督さんの分もきっと瑞鶴達が戦うから!」

「そうですよ提督。この榛名にお任せください!」

「……それなら私も張り切るしかないわね」

「あはは。まぁもしそんな命令が来たらもう戦えない旨を伝えておくよ。柳葉大将にももう事情は話してあるから大丈夫だとは思うしな」

「それならよいのですが……」

 

それで落ちつく私達。

そして、

 

「例の神様な子供の言い分じゃないけど、提督さんにはきっと加護が付いているから今度の戦いも乗り越えられるよ。提督の力が足りなかったらみんなの分を合わせればいい事だしね!」

「たまにはいい事を言うわね……それじゃ期待しておきましょうか」

「任せてよ加賀さん!」

「みなさんで力を合わせましょうね!」

 

そんな感じでみんなで気合を入れ直して話は終了したのちに、

 

「後は、そうだな。不安を抱いているだろう子達に一声かけておく事でもしておこうか、榛名?」

「はい、提督。お供します」

 

それから榛名とともに声かけをしてったのであった。

今夜が決戦だな……頑張ろうか。

 

 

 




ついに今夜決戦の火蓋が切られますね。
まぁメンテが伸びて明日になるでしょうけど……。
とにかく提督の皆さんは艦これ一期最後の戦いも頑張りましょうね。





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