昨日まで結構大変な事があったというのにもうみんなは通常状態に戻ってきている。
そこら辺はたくましいからぜひとも学ばせてもらわないとなと思っている。
そう、今日みんなが浮足立っているのバレンタインであるからだ。
友チョコでもいい、普段お世話になっている人に贈るのでもいい。
だけどかなり厚かましいとは思うけど私は結構もらえるのではないかと期待をしてしまっている。
執務室でそわそわしながらも仕事は怠らないでやっているのだけど、
「提督? あまり作業が進んでいませんよ?」
「あ、ああ。すまない大淀……」
「もう……。病気は治ったのですからしっかりしてくださいね? それとも提督が欲しいものはこれですか……?」
そんな事を言いつつ大淀が私に包みを手渡してくれた。
これってやっぱりそうだよな。
「大淀、ありがとう。君が初めてなんだよ」
「そうでしたか。それはとても、よかったです……加賀さんではないですけどやりました」
「よし。記念すべき一個目が貰えたのでやる気が出てきたぞ。頑張るとしようか」
そんな感じで午後になって粗方今日の任務も終了したのでゆったりとしていた。
そんな時に執務室に来訪者がやってくる。
「司令官? もうお仕事は終わったかしら?」
「神風? ああ、もう大丈夫だよ」
「そっかー。よかった。それじゃ、はい!」
ズン、と机の上に筒状のどでかいピンクの包みが乗せられる。
「えっと、これは……?」
「えへへ。少し頑張って作り過ぎちゃったの。食べてくれたらうれしいな……」
「そっか。ありがとな」
「うん!」
その神風のチョコを皮切りに次々とやってくるみんな。
「クマー! 熊さん方のチョコクマ。食べるクマ!」
「お、おう……」
おめかしした球磨から熊さん人形型のチョコを頂いた。
とても甘そうだというのは分かった。
「後で感想をちょうだいクマよ?」
「わかった。美味しく食べさせてもらうよ」
「んふふー!」
こんな球磨の可愛い姿を見せられたら食べないわけにはいかないじゃないか。
そしてその後に潮達がやってきた。
「あ、あの……提督。今回は控えめにクッキーにチョコをコーティングしてみました……。食べ過ぎて倒れないでくださいね?」
「心遣いありがとな、潮」
「はい……!」
またその後に隼鷹がどこで買ってきたのかチョコレートボンボンを持ってきた。
「提督よー……後で一緒にお酒でも交えて食べようぜー?」
「チョコレートボンボンにお酒を交えるって……さすがにチョコの意味がないんじゃないか?」
「どうせお酒だからいいんだよう! みんなの分はどうせ食べられないだろうから一緒に食べてやるって言ってんだから付き合いなって」
「まぁ、あそういうことなら……」
「約束だかんなー」
笑いながら隼鷹は出て行った。
そのすぐ後に秋津洲が入ってきて、
「提督ー! 二式大艇ちゃん型のチョコかも! 食べてほしいかも!」
「これはまた……凝ったものを作ったな秋津洲」
「うん。ほかのみんなに負けたくなかったから頑張ったかも!」
それで当分は記念に二式大艇型のチョコは飾られるかもしれないなと思った。
「パンパカパーン! 提督? 高雄と一緒にチョコを作ったから食べてくださいね?」
「その、提督……食べてくださいね?」
愛宕はいつもの調子で、高雄はそんな愛宕に押されて控えめに渡してきた。
こういう時に性格が出るもんだよな。
「提督さん。由良と夕張で作ったチョコです。絶対に食べてくださいね。ね?」
「そうですよー。後で感想聞かせてくださいね?」
由良と夕張のコンビが楽しそうにチョコを渡してきた。
うん、とても美味しそうだ。
夕張の方は昔に見たメロン型のアイスの器みたいなものに入ってるからなおの事美味しそうである。
その後にも海外艦や駆逐艦のみんなが色々と個性的なチョコを持ってきてくれたのでありがたく貰っておいた。
食べきるのに根気がいるぞ。
でも、私的には本命の人達からまだもらえていない事に少ししょんぼりしていた。
そう思っていると、
「ヘーイ! テートク! バレンタインのチョコ、受け取ってクダサーイ!」
「金剛か。ありがとな」
「イエス! テートクの為ならワタシ、頑張るヨー!」
「ところで、金剛。せっかく金剛が私に来てくれているのに悪いと思うんだけど少しいいか?」
「待ってくださいネ。おそらくハルナの関係だと思うデース」
「お見通しか……」
「ハイ。大丈夫デスヨ。ハルナならきっと渡してくれますカラ! テートクはドンと構えていてクダサーイ!」
「そうか。ありがとな金剛」
「それじゃテートク、お返しは待ってますよー!」
元気に出て行った金剛だけど気を使わせてしまったな。
それから時間は経って行って、もう十時過ぎである。
さすがにここまでくると怖くなってくるなぁ……。
だけど静かに扉が開いてそこから榛名とシンちゃんが姿を見せてきてくれた。
「その、提督……お待たせしました」
「提督さん、待たせてごめんなさい……」
二人は謝りながらもその手にはしっかりとチョコの袋が握られていた。
それだけで私は満たされる思いを感じながらも、
「大丈夫。安心してくれ、二人とも」
「はい。それじゃシンちゃん……?」
「うん。提督さん、チョコ受け取ってください! 榛名お姉ちゃんと一緒に頑張って作ったの!」
「はい! ちょっと時間が経ってしまいましたけど結構いい出来ですので必ず召し上がってください!」
「わかった。それじゃさっそく頂こうかな?」
それで私は榛名からもらったチョコを開封して一口食べる。
「うん。美味しいよ榛名」
「ありがとうございます提督……去年には渡せるなんて思っていませんでしたからもう思い残すことはありません!」
「提督さん、私のも食べてー!」
「分かったよ、シンちゃん」
それから私達は一緒にチョコを食べながらもお互いに換装を言って楽しんだのであった。
うん……やっぱり思う。この世界に残ってよかったって。
チョコレート風景でした。
さて、後はイベントまで残り二日間。
頑張っていきましょう。
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