【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0298話『提督のとある症状』

 

 

 

 

「提督、本日の任務なのですが今晩にも大本営からなにかしらの発表があるらしいですよ?」

「………」

「……? 提督?」

 

大淀は反応が返ってこない提督に少しだけ不思議に持ってもう一度問いかけてみた。

すると提督は大淀の声に気づいたのか慌てて、

 

「す、すまない大淀。また少しだけ意識がどこかに飛んでいた……」

「そうですか」

 

大淀は思っていた。

最近の提督はどうにも集中が出来ていない事を。

というより意識が飛んでいる? それは一体……?

 

「どうされたのですか提督? 最近やけに意識が飛んでいる事が多いですがどうされたのですか? 体調が悪いのでしたら休まれた方がよろしいですよ?」

「あはは……すまん。なんか最近頭の中に変なささやきのようなノイズが走ってくる事が多くて……」

「ノイズ、ですか……?」

「ああ。なんか榛名とは違って妙に聞いていると眠くなってくる感じなんだ。なんだろうな一体?」

 

それを聞いて大淀は昨日に相談を受けた第七駆逐隊の面々との会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

『大淀さん。ちょっといいですか?』

『はい。なんですか漣さんにみなさん?』

 

漣は少しだけ神妙な表情で、潮は少し怯えるように体を震わせていて、曙はそんな潮の手を握ってあげているんだけど自身もどうにも表情が優れない、朧に至っては信じたくないというべきなのか曙以上にきつい表情になっていた。

さすがのその四人の顔を見てはただ事ではないと大淀も察したのか、

 

『ゆっくりで構いません。どう言う事か話してくれませんか……?』

『はい。最近なんですけどご主人様ってどこか調子を悪くしてませんかね?』

『またどうしてそう思ったのですか……?』

『まぁそうなんですけど……ただの目の錯覚だったならよかったんですけど漣たち四人が同時にご主人様の姿が前の榛名さんみたいに透ける瞬間を見てしまいまして……』

 

その漣の発言に大淀は驚きの顔をする。

確かに四人同時にそんな光景を見たら潮の怯えようも納得というものだ。

 

『そうでしたか……』

『はい。それに漣達以外にももしかしたらご主人様が透けてしまう光景を見ている子もいるかもしれませんからよく執務を一緒にやっている大淀さんにはご主人様の事を見ててもらってほしいんですよ』

『わかりました。提督の事は注意深く観察しておきますので四人ともどうか気に病まないでくださいね?』

 

そんな感じで大淀は相談を受けた四人を帰しながらも、そのまま明石の工廠へと足を運んでいった。

 

『明石、いますか?』

『ん? どうしたの大淀?』

『それが―――……』

 

大淀は明石に漣たちに受けた相談内容をそのまま伝えると明石も少し悩む素振りをしながらも、

 

『……もしそれが本当だったら非常にやばい状態かもしれませんね。私の想定していた事が実際に起こるかもしれません』

『それはどういう……?』

『今回私は良かれと思って提督達が分離できる薬を開発してそれは見事成功しました。

ですけどそれはつまり榛名さんとの繋がりが切れたわけですから今は提督の精神だけで今の状態を保っているわけです。

さらには提督の魂の幾分がシンちゃんとして抜け落ちてしまったために今の提督の状態はかなり不安定なものだと私は推測しています』

『それはつまり……』

『はい。もしなにかのきっかけで提督の精神に異常が起こったらいきなり目の前から消えてしまうかもしれないという感じですね。考えたくないですけど……』

『そんな……』

『私も何か対策は考えておきますので大淀は提督の事を注意深く観察していてください。何か起こったら私がすぐに駆けつけますので』

『わかったわ。お願いね明石』

『うん』

 

 

 

 

 

 

その会話内容を思い出していて、さらには今もどこか提督は頭にノイズのような音が聞こえてくるという。

やっぱり分離をしてしまったがために変なものが提督の身を蝕んでいるのではないかと大淀は危惧していた。

 

「提督。一度明石に検査をしてもらいましょうか。まだ分離できてから数日で安定していないのかもしれません」

「そうだな……この変なノイズも相談しておいてもいいかもしれないしな」

「そうですね。それでは長門さんをお呼びしますので提督は明石のところへと向かっていてください」

「わかった。苦労をかけるな大淀」

「いえ。提督の身の安全が一番ですから気にしないでください」

 

それで提督は大淀に詫びの言葉を入れて明石のところへとやってきていた。

そして相談してみると、

 

「謎のノイズ、ですか……どんな感じですか?」

「なんていうんだろうか……? こう、ザザー……みたいなテレビのモノクロ時代の感じなんだけどそれを聞いているとなぜか意識が遠くなって眠くなってきてしまうんだ」

「なるほど……それ以外にはなにか問題とかありますか?」

「今のところは特にはないかな? でも、このままだと職務に身が入らないからどうにかしておかないとな」

「そうですね。これでもし提督が艦隊運営が出来なくなってしまったら私達もどうなってしまうか分かりませんから」

 

そう、提督がいなければ艦娘達は独自で行動できないから海での惨事にも駆けつけられなくなるし、もし空襲でもされたらそれこそおしまいだろう。

 

「それじゃ一応艦娘用の頭痛薬を処方しておきますね。それと検査をしますので横になっていてください。少し時間を要しますので寝ていても構いませんよ」

「わかった」

 

それで提督は横になるとすぐに寝入ってしまった。

明石はそんな提督のすぐに寝入ってしまう光景を見て、

 

「まずいですね……提督の意識を手放す時間が早いです。これはもしかするともすかするかもしれません」

 

それから明石は提督に検査器具を付けようとして、次の光景を見て絶句する。

そう、提督の身体が透けたり戻ったりを繰り返しているのだ。

 

「提督!!」

 

思わず明石は提督を起こそうと体を揺さぶる。

そんな明石の必死の声を聞いて提督は何とか目を覚ました。

 

「ど、どうした明石? そんな必死な顔をして……?」

「なんとも、ないんですか……?」

「特にはないけど……なにかあったのか?」

「………」

 

明石はどう話すべきか悩んでいた。

でも、提督に自覚してもらってしまうとなにかさらに悪化してしまうかもしれないと思った明石は、

 

「……今は言えません。ですが提督。提督の身体は必ず私が治しますから……」

「そ、そうか……」

 

一応提督は納得したけど、その後に明石は提督とお布団を共にしている榛名を呼んで提督の症状を説明して注意を促しておくのであった。

 

 

 




さて、問題が起こってきました。




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