【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0297話『節分ではしゃぐ一同と不安な光景』

 

 

 

 

「福はうちー! 鬼はそとー!」

 

今日は節分の日。

主に駆逐艦が豆を投げる感じで鎮守府内は賑やかになっていた。

その中でシンちゃんが佐渡とともに豆を持って一緒に鬼がやってきたら投げてを繰り返していた。

 

「がおー!」

「あ、鬼だ! いくぞシンちゃん!」

「うん。佐渡お姉ちゃん!」

「くぅ! お姉ちゃんて呼ばれるのもいいな! 対馬の奴は呼んじゃくれないからね!」

 

そんな感じで鬼の仮面を被った鬼怒が豆まきの餌食になるところなんだけど……今回は様子が違った。

 

「ふっふっふー! いつまでもやられっぱなしの鬼怒様じゃないぞー! そりゃー!!」

 

なんと鬼役のはずの鬼怒が豆を投げ返すという展開になって佐渡とシンちゃんは二人して「キャー♪」と楽しい悲鳴を上げながらも逃げていた。

 

「そりゃそりゃー! どんどんいくぞー!」

 

鬼怒は実に楽しそうである。

そんな鬼怒に対して二人はどうするかという相談をしていて、

 

「シンちゃん、どうする? あの鬼は手強いぜ?」

「そうだね……反撃されないように一気に投げ返しちゃおうか?」

「お、いいねぇ! それじゃ行くか!」

「うん!」

 

それで二人は鬼怒の前に姿をさらして、

 

「お? 観念したのかな?」

「どうかな! 行くぞシンちゃん!」

「了解だよ!」

 

二人はあろう事か豆が入っているケースごと鬼怒に投げつけた。

それで案の定鬼怒のおでこに命中して、

 

「あいたー!? くそー! 覚えてろー!!」

 

鬼怒は仮面越しに涙を流すという器用な事をしながらも退散していった。

そして二人は「いえーい!」と言ってハイタッチをしていた。

だけど一部始終を見ていた鳳翔さんが二人の襟首を掴んで、

 

「お二人とも……? ケースごと投げるのは大変危険ですからもうしないでくださいね?」

 

ゴゴゴゴゴ……と謎のオーラを出す鳳翔さんの前に二人は顔を青くさせながらも「ひゃい……」と生返事を返しながらも謝っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

ところ変わってしおんがプリンツオイゲンとなにやら揉めていた。

 

「ですからプリンツオイゲンさん。この行事はセッツブーンじゃなくって節分ですよ!」

「セッツブーン♪」

「ですから節分……」

「セッツブーン♪」

「セツブーンですってば!」

「あ。あってるんだね?」

「え? あ……」

 

そこでしおんは自分もセッツブーンと言っている事に気づいて落ち込んでしまっていた。

 

「お姉ちゃんも迂闊だなー。プリンツさんには敵わないのに」

「もうごーやも諦めたでち。ろーちゃんやユーちゃんも二人ともセッツブーンって言っちゃってるから……」

「大体の海外艦のみんなはセッツブーンって言っているのね。プリンツさんのが移ったみたいなのね」

「海外の人にはどうしても発音が難しいものなんですね。はっちゃん、学習しました」

「いやいや。はっちゃん、そんなの学習したって何の役にも立たないから……」

 

しおい、ごーや、イク、はっちゃん、いむやの五人がそんな会話を敗北しているしおんを見ながら話していた。

そこに噂をすればという感じで、

 

「でっちー! 豆まきですって! セッツブーン!」

「あいたっ!? ろーちゃん、ごーやは鬼役じゃないでち! 龍鳳だよ!」

「あ、ごめんねーでっち」

「いや、別に構わないけどあんまり強く投げないようにするんだよ? 目に当たったら後が怖いから」

「わかったですって!」

 

そんなごーやとろーちゃんのやり取りを見て、

 

「ごーやさんってなんだかんだでろーちゃんには甘いよな。姉貴」

「そうだね……ごーやさんは面倒見がいいから適任だと思うの……」

「ろーちゃん、いいなー。ごーちゃんも相手してほしいよ」

「それじゃ木曾さんのところにいきましょうか。まるゆ、木曾さんにはいつもお世話になっていますから」

 

その後にまるゆは木曾のところに行くとちょうど鬼役をしていたので豆を投げていたんだけど中々当たらずに泣いていたという。

木曾も木曾でまるゆには甘いから頭を撫でていたとか。

 

 

 

 

 

「みんな、楽しそうだな」

「そうですね提督」

 

提督と榛名の二人はそこら中で頻発している豆まき騒動を楽しそうに見守っていた。

まだ分離して三日目だけどどうにか二人は落ち着きを見せ始めてきたのだ。

それでも今日の夜にはまた二人で一緒に眠るのだろうが。

 

「また来年もこうしてみんなと騒ぎたいものだよ」

「大丈夫ですよ提督。提督と榛名たちで海を深海棲艦の魔の手から守っていけばいつまでもこんな事は出来ますから」

「そうだな。これからも海を守っていこうな榛名」

「はい!」

 

そんな感じで和やかに時間は過ぎて行ったのだけど、提督達の近くで豆まきをしていた第七駆逐隊の面々は少しだけ不思議そうな顔つきをしながらも、

 

「あれ……? いま一瞬……」

「そうだね。なんか一瞬ご主人様の姿が透けたような……」

「き、きっと気のせいだよ漣ちゃん……そんなことありえないよ」

「そうよ。クソ提督が消えるはずがないじゃない……?」

 

四人は揃って提督が一瞬だけだけど以前の榛名のように透けているような錯覚を感じていた。

ただもう提督の姿はいつも通りのままだったので四人は不思議そうにしていたけど曙は胸の中でざわめきを感じていた。

 

「(まさかあたし達の前から消えるなんてことしないわよね? クソ提督。そんな事になったら絶対に許さないんだから……)」

 

ただたださっきの光景が嫌な知らせではない事を祈るばかりだった。

 

「曙ちゃん……」

 

潮が曙の手を握ってきていた。

見れば手が震えている事に気づく曙。

 

「大丈夫よ潮。きっと大丈夫だから……」

「そうだよ潮。提督が消えるなんてありえないですから」

「そうですよー。もしそんな事になったらご主人様の事を許しませんから。さ、気を取り直して豆まきでもしましょうか」

 

四人はそれで豆まきを再開したのだけど、さっきの光景が現実になるだなんて今は思いもしなかったのであった。

 

 

 




最後に意味深な事を書きました。




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