【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0296話『提督と榛名の一緒じゃない生活』

 

 

榛名とシンちゃんと分離できてから二日目。

榛名は今まで貯めていた気持ちを発散するがごとく金剛達との時間を大切にしているようだ。

シンちゃんも主に鳳翔さんや秋津洲がともになって過ごしているようで教育係は鹿島と香取がやっているそうだ。

明石の説明によると今のシンちゃんの状態は言ってみれば駆逐艦みたいなものらしい。

主砲は体格差もあって装備できないけどなぜか駆逐艦の主砲が装備できるというのには航空戦艦のみんなが騒いでいたのは記憶に新しい。

日向なんて瑞雲教徒にいずれ引き込むとか言っていたから恐れ多い。

 

「提督。もう二月に入りましたのでもうじき大規模作戦が控えています。ですのでそれを前提に艦隊運営をしていってくださいね?」

「わかってるよ大淀。そこのところ、榛名はどう思う? 榛名……? あっ……」

「ふぅ……提督、またやってしまいましたね。今日でもう五回くらいはやっていますよ? 気持ちも分からなくはないですけどもう少ししっかりしてください」

 

それで大淀に怒られてしまった。

ふむー……これは結構な重症かもしれないな。

榛名がいないだけで集中力が持続しないでいるなんて……。

 

「すまない。どうしてもいつも一緒に榛名がいてくれていた時を思い出してしまって前の感じで話しかけてしまう」

「それは仕方のない事だと思いますけど、いつまでもその調子ではいられませんよ。もう明石の言う事が正しいのでしたら榛名さんと一緒にはなれないのですから」

「心配かけてごめん。でも、そうなると榛名の方は私よりもダメージがでかいんじゃないかな?」

「提督がそうなのですから榛名さんもおそらくそうなのでしょうね。当分は慣れてこの状態が普通だと思えるくらいにはなりませんと身が持ちませんよ?」

「そうだな……頑張ってみるよ」

「はい。それでは気を取り直してやっていきましょうか」

「ああ」

 

それからなんとか榛名のいない状態でもやっていけるように努力はしていった。

 

 

 

 

 

……提督。

榛名は本当にこのままでいいのでしょうか……?

この状態であるのが本来なら普通だというのに榛名と来ましたらもう提督に寄り添えない事を感じてしまうと心が締め付けられてしまいます。

 

「ハルナー? どうしましたデスカー? やっぱりまだテートクと一緒じゃなきゃハートが痛いデスカ?」

「あっ……いえ! 大丈夫です! 榛名は、榛名は大丈夫です!」

 

なんとか笑顔を作って金剛お姉さまに心配されないように努めているのですけど、

 

「はー……これはダメネ。ハルナはテートクに依存しきってイマース」

「そのようですね金剛お姉さま。なまじ今までずっと司令と一緒にいたからいざ離れてしまったら気持ちが追い付かないものです」

「榛名は苦労を背負うタイプですからねー。ま、あたしも金剛お姉さまと離れ離れになるって言われたら思わず叫んでしまうでしょうけどね。そう思ったら……ヒエー!!」

 

お姉さま達が騒いでいますけどどうしましょうか。

こういう時に提督だったら優しい言葉でこの場を鎮めてくれるのでしょうけど……。

はっ!? いけません。

いつまでも提督に頼り切りではこれからの深海棲艦との戦いでみなさんの足を引きずってしまいます。

そのために今でもカンを取り戻すために演習で出ずっぱりなんですから。

幸い提督の練度が私の練度と重なっていたので高練度のままで安心しましたけど、演習相手の方々に「なんかいつもより動きにキレがないですね」と言われてしまいまして落ち込んでしまいましたから。

提督はやっぱりすごいです……。

榛名の身体を榛名以上に動かして今まで戦っていたのですから。

私も早く提督に心配されないように落ち着かないと……!

 

「すみません……すぐにこの状態に慣れますのでそれまでお姉さま達には苦労をおかけします」

「気にしないでイイネ! 妹の事を面倒を見るのは姉の務めデスカラ!」

「姉妹なんですから何も遠慮はすることは無いんですよ榛名」

「そうですよー。それを言ったら比叡なんていっつも金剛お姉さまに苦労を掛けてしまって……」

 

それでどこか和やかなムードになってそれからはなんとか提督の事を気にしつつも平常心でいられました。

そうですよね。慣れないといけませんよね。

慣れないと……。

 

 

 

 

 

 

 

そんな感じで提督と榛名はお互いに今の状態に慣れよう慣れようと努めていたんだけど、それも夕食時を過ぎれば我慢の限界に達していた。

提督は本日の任務ややる事も終わらせて細かい後処理などは大淀に任せて自室へと向かっていた。

だけどその心はしずんでいた。

 

「(ふぅ……榛名がともにいない日常がここまでの疲労を及ぼすなんて考えられなかったな)」

 

肩を何度か回して改めて疲労が溜まっている事を自覚する提督。

それで自室へと到着して別に誰が中にいるわけでもない自分の部屋なんだからとノックもせずにドアを開けた。

だけどそこには先客がいた。

 

「あれ? もしかして、榛名か……?」

 

電気が付いてなかったので誰か分からなかったけど榛名は後姿で提督の布団の上に座っていた。

提督が呼びかけるとビクッと榛名は震えて、

 

「て、提督……」

 

その潤んだ瞳を提督に向けてきていた。

その榛名の表情を見て提督は悟った。

榛名は自分以上に心の隙間が大きくなっていたのだと。

 

「榛名……」

「提督。お願いします……。昼間は榛名も提督とは一緒ではない事に耐えますから夜だけは一緒にお布団で眠っていただけませんか? 提督と一緒じゃない生活がここまで苦しいものだなんて思っていなかったので榛名は、榛名は……」

 

提督は何も言わずに榛名の事を抱きしめてあげて、

 

「……わかった。榛名の思う存分気が済むまでいつでも私の部屋に来なさい」

「ありがとうございます、提督……」

 

その晩は提督と榛名は一緒の布団で眠った。

そして今後も慣れるまではできるだけ夜は一緒にいようという話になった。

翌日になって大淀には呆れられていたけどもう決まったから文句は言わせないという気持ちだったという。

 

 

 




こんな感じでお互いに依存しきっていますのでまだ別々で過ごすには時間が必要ですね。




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