【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0295話『分離の成功』

 

 

 

 

 

提督達は一同が集まれる講堂で今か今かと明石が薬を持ってくるかを待っていた。

提督なんてそわそわしているのか落ち着きがない感じであるから期待度は高いんだろうと伺える。

 

《提督、少し落ち着きましょう。明石さんは必ずやってくれますから》

「分かってはいるんだ。だけど、まだ不安が拭いきれていないのが正直な所なんだ」

《まぁそうですよね。榛名も少しだけ不安に感じていますから……》

 

二人ともやっぱり考える事は一緒らしくお互いに声をかけあっている。

そんな中、

 

「あ! 提督、明石さんがきたよ!」

 

最初に気づいたのだろう那珂がそう叫んでいた。

それで全員が入口の方へと視線を向けるとなにかのケースを持っている明石と付き人の夕張が入ってきた。

みんなはそれで一気に緊張しだす。

当たり前である。

今から行われるのはこの鎮守府に在籍している艦娘全員が待ち望んでいた提督と榛名、そしてシンちゃんの分離が決行されるのだから。

 

「提督。お待ちしました……これがそのお薬です」

 

明石がケースを開けるとそこには完成した時には見栄えが悪かったが今では普通の薬みたいに着色されていて見る人が見れば普通の錠剤となんら変わらないものが入っていた。

 

「明石。これが本当にその薬なのか……?」

「はい。命名して『分離薬・真』と言います」

「薬の名前はまぁ、いいとして―――……「よくないですよー!」……すまない。

とにかくこれを飲めば本当に三人に分離できるんだな?」

「はい。今度はもう副作用もなくずっと分離したままでいられます。ですからもう榛名さんとは一緒じゃいられないですけど覚悟は決まっていますか、提督……?」

 

明石のその言葉に提督は少しだけ間を置いて、

 

「ああ」

 

その一言とともに頷いた。

 

「昨日に分離が可能という話になってから榛名とは色々と話し合ったさ。その結果が今日の事に繋がっている。大丈夫、離れてしまっても別れるわけじゃないんだからなんとかなるさ」

《はい。少しだけ一緒の時間が長かったですから心細くなることもあるでしょうけど、きっと……提督と榛名は大丈夫です!》

 

提督と榛名ももう心が決まっているような感じで明石は安堵の表情をしながら、

 

「それでは提督。思い切って行きましょうか!」

「わかった」

 

提督は明石の持っているケースに入っている錠剤を手に取って少しだけそれを見つめつつ、

 

「それじゃ……榛名、行くぞ?」

《はい。提督》

 

そのまま薬を提督は一飲みした。

そして少しの間を置いていつもの感じで身体が発光しだしていく。

 

「テートク! ハルナ!」

 

金剛が提督と榛名の事を叫ぶ。

最後まで確認しないとやっぱり不安なのか金剛以外の面々も固唾の思いで経過を見守っている。

提督の身体に光っている粒子が左右に分かれて人型を形成していく。

最後にその光が晴れるとそこには榛名の姿と、そしてシンちゃんの姿があった。

 

「て、提督……どうなったんですか?」

「……今のところは成功のようだけど……明石、どうなんだ?」

「まだ分かりません。シンちゃんの意識が覚醒するのを見届けないとどうとも……」

 

先に意識を取り戻した提督と榛名はいいとしてまだシンちゃんは目を瞑ったままだった。

だけど少ししてシンちゃんはその目を開く。

 

「…………私は………?」

「シンちゃん、私のことが分かりますか?」

「榛名お姉ちゃん……?」

「はい。……………提督! シンちゃんの意識が覚醒しました!」

 

榛名は嬉しそうに提督にそう告げる。

提督も確認が取れたのか安堵の笑みを浮かべて、

 

「シンちゃん……こうして会うのは初めてだね」

「もしかして……あなたが提督さんなの?」

「ああ」

 

シンちゃんと視線を合わせるように片膝をついて会話をする提督。

だけどシンちゃんはどこか恥ずかしいのか榛名の背後へと隠れてしまった後に、

 

「あう……なんか恥ずかしい。どう言う事か分からないけど提督さんの前だと心がざわつく感じがする。なんでだろう……?」

「シンちゃん。おそらくは同族意識が働いているんだと思いますよ」

「明石お姉ちゃん。同族意識って……?」

「はい。シンちゃんと提督はもともと一人の人間だったのですから分離しても根っこの部分でまだ繋がっているんだと思うんですよ」

 

明石のその説明に提督も「なるほど」と言うけど、シンちゃんには難しい話だったらしくうんうんと考え込んでいた。

 

「とにかく! これで分離は完了です! シンちゃん、もう時間の制限はないですからいつまでもここにいられますよ!」

「ホントー……?」

「はい。本当です」

 

まだ実感が持てないらしいシンちゃんだけど明石の自信の顔でそれが本当なんだと悟ると嬉しそうに破顔させて笑顔になって、

 

「それじゃそれじゃこれからはお姉ちゃん達といつまでも一緒にいられるんだね!? わーい!」

 

心の底からの喜びを感じているシンちゃんに周りで見ていたみんなももう我慢の限界だったのだろう、シンちゃんに群がって一緒に喜んでいた。

その光景を見ながら提督と榛名は明石や金剛達と一緒になって話し合いをしていた。

 

「それでアカシ! 本当にもう大丈夫ナンデスカー? また元に戻るって事はナイデスヨネ?」

「金剛さん。ご心配なく。もしそんなことになったら更なる研究を重ねて今回の精度を上回るものを作ってみせますから。ですから今は経過を観察していてください」

「榛名! よかったですね! これでもう窮屈な思いはしないでいいんですよ!」

 

比叡がそう言いながら榛名の事を抱きしめていた。

 

「ひ、比叡お姉さま……はい!」

「比叡お姉さまずるいですよ。霧島も榛名の事を抱きしめたいんですから!」

 

そんな感じで金剛四姉妹が久々に並ぶ光景を見れて提督もどこか嬉しそうにしていた。

 

「これでよかったんだよな?」

「はい。離れても絆は変わりませんからね」

 

提督の呟きに明石はそう答えていた。

そうだな……と納得する提督だったけど、ここから少しの間とある事件で少しだけ悩まされる事態に陥る事になるとは今は想像はしていなかったのである。

 

 

 




最後にちょっとだけ最後の謎に触れる文章を書きました。
果たしてその内容とは……?




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