【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0265話『曙と対馬の大掃除』

 

「…………なによ?」

「なんですか……?」

 

曙と対馬の二人がともに大掃除のための恰好をして箒と塵取りを持って提督の私室の前で睨み合っていた。対馬に関しては普段から薄い目をしているが……。

 

「あたしがクソ提督の部屋を掃除するんだからあなたは引っ込んでいなさいよ?」

「そうはいきません……。司令は私の観察対象ですから出来る事ならしたいのです」

「観察対象って……」

「そういうあなたも司令のことが嫌いなのではないのですか……? クソなんて呼ぶんですから相当の物なんだと思いますけど……」

「いいじゃない! クソ提督はクソ提督よ! そ、それに別にき、キライなんかじゃないしー……」

 

対馬の言葉に小さい言葉でなんとか答える曙は形勢が不利であった。

そこに対馬はニヤリと笑みを浮かべる。それは相手の弱点を掴んだがごとくのような……。

 

「そうですか……。でも、それなら対馬の方が勝っていますかね……? 対馬は司令のことをただの上官以上の気持ちを抱いていますからね」

「なっ!?」

 

妖艶に笑う対馬の発言に曙は思わず絶句する。

だけどここまで来て負けたくないという気持ちが勝ったのか、

 

「そ、そう……あなたって小さいくせにませているのね」

「別に不思議な事はありませんよ……? 今はこんな成りですが年齢はかなりのものなんですから」

「それもそっかー……って、流されないわよ!?」

 

思わず納得しかけていた曙だったけど、それを言うのなら自身も相当な年齢であるのは確かな事であるから負けてはいられない。

 

「むー……別にいいじゃないですか。ただ対馬は司令のお部屋を掃除したいだけなんですから」

「いや、あんたは多分それ以上の事をしそうよね? あなた、ムッツリそうだしクソ提督の持ち物とか物色しそうよね……?」

「それは思い違いも甚だしいです……対馬は司令本人以外は興味ありませんから」

 

きっぱりとそう言い切る対馬に曙は「クッ……手強い」と内心で愚痴る。

ここまで言い切られると本気で曙は分が悪い。

普段から提督に対してはツンとした態度を取っているから第七駆逐隊の面々以外には弱みは握られたくないから曙の本音も言えないからである。

そんな感じでくすぶっている曙に対馬は猛攻をかけることにした。

 

「それに対馬は司令のことは大好きですよ……いつもの司令も好きですけど幼児化した司令もそれはそれで可愛いから食べてしまいたいほどに好きです……これからも司令がなにかしら変な事に巻き込まれてしまわないかと思うと胸の鼓動が高まってきます……」

「うわー……」

 

赤くなった頬に手を添えて想像しているのか体を左右に振っている対馬に対して曙はかなりの低音で本音から来る声を出した。

さすがの曙もここまでくるとその対馬の提督に対する思いがかなり歪んでいる事に気づいてかなり引いている。

下手すればヤンデレ一歩手前ではないかと……。

 

「あんたってかなりの特殊性癖を持っているのね……」

「フフフ……褒めても何も出ませんよ?」

「別に褒めてないし!……っていうかかなり話が脱線してるんだけど気づいてる!?」

「別に忘れてはいませんよ……? 部屋を掃除したいというのは本当ですし」

「あーもうっ! あんたと話しているとやりにくいわね!?」

 

音を上げ始めた曙はこれからどう挽回しようかと思っているけど、

 

「……そういう曙さんは司令のことは好きなのではないのですか……? 普通なら他人の部屋の掃除なんてやりたがらないでしょうし……」

「うっ! そ、それは……」

「好きなんですか……? 好きじゃないんですか……? どっちですか? 曖昧な態度を取り続けていてはあなたの身体に悪いですよ……?」

「う、うっさい! 本人の前じゃ言えないけどあたしはただいつもお世話になっているクソ提督のために何かやってあげたいだけよ!!」

「なるほど……これがツンデレというものなんですね。勉強になります……」

 

涙を浮かべながらも大声で叫ぶ曙に対馬はツンデレというものを理解した。

 

「うぅ……あんた、やな奴ね……」

「ひどいですね……対馬はとてもいい子ですよ? それでしたら一緒にお掃除しませんか……? これならお二人で出来ますから問題も解決ですよ」

 

対馬の妥協案に曙は惹かれるものがあったけど、これを鵜呑みにしてもいいものかと思案した。

だけど対馬は待ってくれないらしく曙の耳元まで近寄って、

 

「それに……対馬、司令には及びませんが曙さんに少し興味を持ちました。ですからこれから仲良くしてくれませんか……?」

「ひぃっ!?」

 

耳元でそんな事を言われて思わず曙は後ずさりした。

本能からの緊急司令が来てこの子とは深く関わってはいけないと何度も警鐘をならしている。

対馬は曙のそんな反応に嗜虐心を刺激されたのか、

 

「ああ……いいですね。曙さんのその表情、そそるものがあります……」

「わ、わ……」

 

曙はもう逃げ出したい気持ちで一杯だった。

だけど提督の部屋も掃除したいという気持ちで何とか踏みとどまっていた。だけど決壊は近い。

そんな時だった。

 

「あれ……? 曙に対馬? 私の私室の前でなにをしているんだ……?」

「あ、司令……お仕事は終わったんですか……?」

「クソ提督ー!」

 

二人が同時に提督に話しかけた。曙に至ってはもう泣き顔で抱きついている。

 

「おおっと……どうしたんだ? 曙がここまで消耗しているなんて……対馬は何か知っているか……?」

「ふふふ、はい。それはもう……それより司令。司令のお部屋を曙さんと一緒にお掃除しても構わないでしょうか……?」

「掃除か。構わないけどあんまり配置とかは変えないでくれよ? 下着とかも漁るのは厳禁な」

「わかっています。それでは曙さん……逝きましょう?」

「い、嫌よ! いまなんかニュアンスが違く聞こえたしー!」

 

そんな曙を対馬は「やれやれ……」と言いながらも首根っこを掴んで部屋の中へと引っ張っていく。

そしてドアを閉める際に、

 

「それでは司令……。少しの間、お部屋を失礼しますね?」

「わ、わかったけどあんまり曙の事をイジメてやらないでくれな?」

「分かっています。それでは……」

「助けてクソ提督ー!」

 

曙の悲鳴が聞こえてくるけど対馬の笑みで提督も一歩引きさがって曙の無事を祈った。

その後に曙はしばらくして部屋へと帰ってきたんだけど漣とかに様子が変だと言われたが「なんでもないわよ……」と、ただただ疲れ切った表情を浮かべていたとかなんとか……。

ここから曙と対馬の変な関係が続いていく事にはこの時には本人でさえ気づかなかったのである。

曙に幸がある事を……。

 

 

 




何か、自分の中でかなり対馬が他の子と違って特殊な個性を持っている事に気づいた。
書いていてかなり面白いというか……。




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