【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0252話『平和的な薬の副作用(その3)』

「もー! 提督ってとってもかわいいかもー!」

「くすぐったいよー秋津洲お姉ちゃん!」

 

今日は秋津洲さんが鳳翔さんのお部屋に訪れていて今現在提督とキャッキャと戯れています。

提督も積極的にスキンシップをしようという子に対しては警戒してしまうのですけどなぜか秋津洲さんだけには平気でいられているんですよね。少し不思議です。

 

「あ、そうだ! ね、提督」

「なぁに?」

「少しだけ秋津洲と一緒にお散歩でもしてこようか?」

「いいと思う! 秋津洲お姉ちゃんなら安心だからー」

「そう言ってもらえると嬉しいかもー!」

 

二人でそんな話をして盛り上がっています。

 

《というわけですから大丈夫でしょうか鳳翔さん……?》

「まぁ、大丈夫でしょう。榛名さんももし提督が迷ったら案内をお願いしますね」

《わかりました。それでは秋津洲さん、行きましょうか》

「わかったかもー!」

「かもー!」

 

うふふ、秋津洲さんの口癖を真似して一緒に言う提督も可愛いですね。

すっかり仲良しになってしまいましたね。秋津洲さんは料理とか掃除に関してはかなりの腕を持っていますからその一切の邪気のない感じで提督との触れ合いも上手ですし、もしかしたら保育さんという職業にも向いているのかもしれません。

 

「それじゃいこっか。二式大艇ちゃん」

 

秋津洲さんの呼びかけに二式大艇さんも起動して空に浮かび上がりました。

こういう時は頼りになる相棒がいるのもいいものですよね。

 

「わー! かっこいいなー!」

「でしょでしょ! 私の二式大艇ちゃんはとってもかっこいいんだから!」

(キュイキュイ!)

 

秋津洲さんの言葉に二式大艇さんも照れているのか何度も艦首部分を振っています。

ここまで褒めてくれる人も珍しいのでしょうね。

普段は二式大艇さんは大体は航空基地隊で活躍していますからこう目立った場面は少ない方ですからね。

 

《秋津洲さん、そろそろ……》

 

楽しそうな雰囲気を壊すのは悪いとは思うのですが今日も提督の記憶を取り戻すために頑張らないといけませんからそう言って行動を起こすように促します。

それを汲み取ってくれたのか、

 

「あ、わかったかも! それじゃ提督、いこっか!」

「うん! 秋津洲お姉ちゃん!」

 

二人仲良く手を繋いで歩いていきます。

その姿を見ながら私もいつかはこういうことをしたいなぁとは思うけど我慢ですよね。

 

「それじゃどこにいこうかー……」

《そうですね。それでは今日は執務室にでも行ってみましょうか。いつも提督がいた場所なら何かの反応を示すかもしれませんから》

「わかったかも。長門さんと大淀さんがいるんだよね?」

《はい。簡単な任務なら今の長門さんでも十分できますから。大淀さんも付いていてくれますから安心です》

「安心ー!」

「そうだよね。長門さんは艦隊の星だから安心かも!」

 

それで提督と「ねー」と呼吸を合わせているところを見ているので私もそう感じるのですが最近の長門さんはなにかと様子がおかしいといいますか……。少し会いに行くのが不安ですね。

そんな心のわだかまりを感じながらも執務室へと到着しました。

秋津洲さんが扉をノックしながらも、

 

「長門さーん、いるかもー?」

『なんだ? 秋津洲か。入ってもいいぞ』

「了解かもー!」

 

そして長門さんの了承を得て執務室の中に入らせてもらったのですけど、長門さんは提督をその目に収めると目を見開いて顔を赤くしていました。うーん、やっぱり他の人より過剰に反応気味でしょうか……。

 

「ど、どうしたんだ。て、提督も連れているではないか」

「うん。提督のいつもいた場所を巡っているんだけど執務室なら記憶を思い出せるんじゃないかなって思ってきたかもー」

「そうなのか……わかった。特に今は忙しい用事もないので適当に過ごしていても構わないぞ」

「わかったかもー。それじゃ提督、なにか探そっか」

「うん。それじゃなにか記憶に引っかかるものでもあるのかなー?」

 

提督も積極的に探そうとしています。

でも、提督はなにかを思ったのか長門さんのところへと近づいていきます。どうしたのでしょうか……?

 

「ど、どうしたのだ提督よ」

「うん。長門お姉ちゃん、いつもありがとね」

「いきなりの感謝の言葉は嬉しいのだが、なんでだ……?」

「うん。なんでかわからないんだけど、いつもお世話になっていたような気がしたの……」

 

そう話す提督はやはりいつもお世話になっていた長門さんの事を無意識下で感謝しているんでしょうね。

やはり提督は素晴らしい方です。

でも、

 

「長門さん、しっかりしてください!」

「お、大淀……私はここまでかもしれない……後は……」

「物騒な事を言わないでください! 今ここで長門さんがリタイアしたら誰が艦隊運営をするのですか!」

「あうあう……」

 

大淀さんに何度も揺すられている光景をみて提督もどこかで悪い気がしたのか、

 

「あ、あの……なにか悪い事をしたならゴメンナサイ……秋津洲お姉ちゃん、次にいこ……?」

「わかったかも」

 

私達はそそくさと執務室から退散しました。

いまだに中から大淀さんの叫びが聞こえてきますね。

長門さん、大丈夫でしょうか……?

 

「提督もかなりやるかも。あの長門さんをノックダウンさせるなんて」

「ううん。なにが原因だったんだろう……?」

《おそらくは記憶を無くしていてもお世話になっていた事を提督が覚えていてくれたことが嬉しかったんだと思いますよ》

「そういうものかなー……?」

 

そんな話をしながらも廊下を歩いていますと前から少し表情が暗い朝潮さんが歩いてきました。今度はどうされたのでしょうか……?

 

「……あ、司令官」

《あ、朝潮さん? どうされました? 表情が優れないようですが……》

「いえ、大丈夫です……この朝潮、特に問題はありません……」

 

そう言う朝潮さんですけどやはり空元気のように見えてしまいますね。

ですけど、提督はそれでなにかを感じ取ったのか、

 

「朝潮お姉ちゃん、ちょっと付いてきて……?」

「え? あの、司令官……?」

「何事かも……?」

 

提督の突然の行動に私達は不思議に思いながらも提督の行きたい場所へと連れていかれました。

その場所とは提督の私室でした。

 

「どうしたのですか司令官……?」

「うん……なぜかわからないけど、ここに朝潮お姉ちゃんのためのものが置いてあると思ったんだ」

 

まさか、提督はあれを覚えていて……?

それはまだこの状態になる前に購入しておいた朝潮さんのための……。

提督はまるで覚えているかのように私室の中へと入っていってピンポイントに戸棚を探り始めました。そして、

 

「……あった」

「司令官、それは!」

 

そこには綺麗にラッピングされていて『朝潮へ』と書かれているプレゼントが入っていました。

そうでした、昨日は朝潮さんの進水日でしたね。

 

「はい! 朝潮お姉ちゃん!」

「あ、ありがとうございます。で、でも……どうして司令官がこれを……?」

「うん……。よくわからないけど朝潮お姉ちゃんの顔を見たら急にこれを渡さないといけないって気持ちになったの」

「ッッッ! 司令官!!」

「わっ……」

 

朝潮さんが感極まったのか涙を流しながら提督を抱きしめていました。

 

「提督、とっても偉いかも……」

《そうですね。提督は忘れていても私達の進水日の事を覚えていたのですね……》

 

提督は記憶を失っていても私達の事を大事にしてくれているという事を再認識させてくれました。

とても嬉しい気持ちが溢れてきます。

それから朝潮さんはとてもいい笑顔を浮かべながらも「私はどこまでも司令官についていきます!」と言って嬉しそうにしていました。

その後に朝潮さんとも別れて今度はどこに行こうかという感じでいましたが、

 

「あ、提督。ここにいましたか」

《明石さん……? どうしました? というか隈がすごいですね……》

「あはは……。ちょっと責任を感じていまして夕張ちゃんや妖精さん達と一緒に開発を頑張っていました……その成果もあってついに解毒薬が完成しました!」

 

そう言った明石さんですけど、提督は少し泣きそうな顔をしながら、

 

「やっ!!」

「あ、提督ー!?」

 

秋津洲さんの手を急に振り切って逃げ出してしまいました。

 

《て、提督! どうされたのですか!?》

「…………ッ!!」

 

私の問いかけにも答えてくれませんでした。いったいどうされたのでしょうか……?

 

 

 




最後に提督は逃げ出してしまいました。
次回、感動の幕引きをできたらいいですね。




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