【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0210話『巻雲の相談と強請り』

 

 

 

 

 

えー……本日は巻雲の進水日であるのです。

だからと言っても真正面から司令官様に突撃するほど巻雲も子供ではありません。

でもでもー、もしもらえなかったらそれはそれで悲しいです~。

司令官様が忘れているわけでもないですけど少し心配になってしまうのも分かってもらいたいです。

 

「というわけで夕雲姉さん、ちょっといいですか?」

「なぁに? 巻雲さん……?」

 

夕雲姉さんはいつも通りにその優しそうな笑みを私に向けてきてくれます。

それだけでどうしても甘えたいという気持ちが沸々と湧き上がってくるのは止められません。

でも今は我慢です!今日は巻雲、頑張りますよ!

 

「そのですね! 今日は巻雲の進水日なのです!」

「まぁ! そうだったわね。それじゃなにか皆さんで集まってお祝い事でもしましょうか」

「もしかして夕雲姉さんは忘れていたのですかー!?」

「うふふ……冗談よ。しっかりと覚えているわ」

「はう~……よかったですぅ」

「ごめんなさいね。でも巻雲さんがそう言う事を聞いてくるという事は提督に関しての事よね?」

「うえっ? どうしてわかったの……?」

「いえ、なんていうのか……提督って必ず進水日の子にはお祝いの品を贈っているじゃない? だから巻雲さんの事を忘れるわけがないと思うからよ」

「そうなんですけどー……やっぱり少し心配なんです。司令官様はとても優しい人ですけどたまに一緒に遊んでもらえるとよく袖に関してからかいみたいなことをしてきますから……」

 

そうなのです。

司令官様ったら巻雲の伸びている袖をよく私の隙を見ては縛っていたりと意外とお茶目な事をしてきますからね。

初めてそれをされた時はつい「何をしてくれやがりますかー!?」と叫んでしまったのは忘れたい思い出です。恥ずかしい……。

と、とにかく!

 

「それでもし司令官様が巻雲の部屋に来たら夕雲姉さんは司令官様を見張っていてもらいたいのです」

「あらあらー。提督ったらお茶目な事をするのね。そう言う所も可愛いですけどね」

「巻雲は少し迷惑なのですよー!」

「うふふ……まぁそう言う事なら分かったわ。見張っておいてあげるわね」

 

よし!夕雲姉さんを味方にできたのは大きいです。

ふっふっふー……司令官様、今回はそう簡単に行かせませんよ?

それから夕雲姉さんと一緒に司令官様が部屋に来るのを待ち構えている間に色々とお話をすることにした。

 

「でもー……やっぱり司令官様はお優しい人だと思うんです」

「そうね。提督は誰にでも優しいから皆さんから好かれていますからね」

「そうなんだけどー……その優しさに付け込まれて外の人間の誰かに悪だくみに加担させられそうでそこも心配なんですよね」

「そうねぇ……あの柳葉大将というお方と久保少佐というお方は信用に足りる方々だと思うけど、それ以外の人に関してはあまり信用ならないからね」

「そうなんですよー」

 

思い出すのは司令官様にセクハラをしようとしていた例の別の鎮守府の提督の話。

どうにもそいつはきな臭いイメージがしましたので巻雲は心配です。

もちろん司令官様も気づいていると思いますけどね。

司令官様は女性の身体でありながら心は男性のままですから違った視線を感じ取れるらしいという話を前に聞いた。

だから事前にセクハラをされないで済んでいるわけですし……。

 

「まぁ末端の夕雲たちがとやかく言える立場ではないから提督の事を信じるしかできないんだけどね」

「そこもどこか歯がゆいです……。でも」

 

巻雲は袖を何度も振りながら、

 

「きっと司令官様なら大丈夫だとも思うのですよ。確かに不安ですけどそれでも今までこうしてこの世界で過ごしてきたわけですから司令官様も誰が信用出来てだれが怪しい人なのかも区別は出来ると思いますから」

「そうね。そこは見る目がある提督の事だから多分平気よね」

「そうです!」

 

夕雲姉さんとそんな会話をしている時でした。

扉がノックされたのでやっと来たかな?と思って出て行って扉を開けるとそこには司令官様と一緒に長波の姿もありました。

 

「おー! 巻雲姉、やっぱり夕雲姉と一緒にいたんだな!」

「お邪魔しても大丈夫かい? 巻雲」

「どうぞどうぞ! 多少汚いところですけど座れるスペースはありますので大丈夫です!」

「そんじゃあたしも座らせてもらうわ」

「長波はちょっと図々しいですね」

「いいじゃん! あたしもせっかく巻雲姉のお祝いをしにきてやったんだから大目に見てくれよ、な?」

「まぁ、いいですけどね……」

 

それで司令官様と長波を部屋の中に入れる。

 

「提督、長波さんもいらっしゃい」

「おう!」

「ああ。同席させてもらうよ」

「それじゃそろそろいいかしらね?」

「そうだな」

「ん、そだね」

 

……ん? なにやら巻雲が知らないところで三人が示し合わせたかのように言葉を交わした後にクラッカーを取り出して三人で一斉に打ち鳴らしていました。

パンッ!パンッ!という軽快な音が鳴り響いて少し煙も上がっていてそして、

 

「巻雲ー! 進水日おめでとう!」

 

司令官様が代表して私に贈り物を渡してくれました。

それから夕雲姉さんと長波も色々と渡してきたので、

 

「もしかして……夕雲姉さんもグルだったんですか~?」

「ごめんなさいね。もう昨日の間にこの計画は立っていたのよ」

「そういうこった」

 

夕雲姉さんが手を合わせてごめんねポーズをして、長波が二ヒヒと笑いながら言葉を紡ぐ。

うー……なにか腑に落ちませんけど、でも嬉しいのは確かですからここは流されておきましょう。

 

「まぁ、なにはともあれ……巻雲。何かしたい事があったら言ってもいいぞ? 出来る範囲でなら一つは叶えてあげるから」

「いいんですかー? でしたらー……」

 

巻雲は少し考えた後にこう答えました。

 

「ここにいる私も含めたみんなに間宮のケーキを奢ってください!」

「そんなのでいいのか……?」

「いいのです。司令官様も懐事情はそこまで潤ってもいないでしょうし駄々を捏ねたらいけませんから!」

「巻雲さんったら立派よ」

「巻雲にしてはだけどなー」

「長波は黙ってて!」

「はいはい」

 

それで少し目が目のズレを直しながら改めて司令官様の方へと振り向くと司令官様はいい笑顔を浮かべて、

 

「わかった。それじゃみんなで食べにでも行くか」

 

と言ってくれましたので私は少し嬉しい気持ちになりながらもみんなで間宮へとデザートを食べに行ったのでした。

とってもアイスが美味しかったです!

 

 

 




今回は巻雲の方を書かせてもらいました。
朝雲は続いていたら来年ですかね?




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