【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


追記。
町の人の暴力的な発言をカットして修正させてもらいました。


0021話『町の人々の視線』

高雄型三番艦の摩耶は同じく高雄型四番艦の鳥海とともに近くの町へと提督とともに買い出しに出ていた。

その際に摩耶が少し町を見てくると言って一人軽い軽食が入っている荷物を片手に持ちながらも町を散策していた。

だけど今まで気づかないふりをしていたがいい加減この視線に摩耶は耐えかねないものがあった。

それで摩耶は思い切って視線の主である町の店の一人の店主に声をかけた。

 

「…なぁ、おっちゃん。ちょっといいか…?」

「ひぃっ!? な、なんでしょうか艦娘様!!??」

 

その男性の態度に軽く声をかけただけだった摩耶は驚いた。

そして男性の口から飛び出してきた『艦娘様』という敬っているような言い方はなんなのか…。

 

「そんなに怯えないでくれよ。アタシ達は別に取って喰ったりしねぇからさ」

「そ、そうですか…」

「それだよ!」

「はい…?」

「その怯えた態度は一体何なんだ? おっちゃん以外にもそんなような雰囲気を周りから感じるしよ」

「そ、それは…」

 

それで言いあぐねているのか男性は口ごもったまま黙ってしまった。

そこにちょうどよく提督と鳥海が荷物を持ちながらやってきた。

 

「摩耶姉さん…? どうしたの?」

「喧嘩はよくないぞ摩耶」

「提督。それに鳥海…それがよぉ」

 

摩耶が二人に声をかけられて少し困ったように振り向く。

だけど同時に男性から怯えの表情は消えて少し、いやかなり睨みを提督に効かせていたのだ。

それに気づいたのだろう摩耶と鳥海は提督を守るように前に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然どうしたんだ? この男性の人、私が提督だと分かると態度が急変したぞ。

そして摩耶と鳥海が私の前に出て守るように警戒しながらも、

 

「…今度はなんだ? 提督に向ける視線が気に入らねぇな」

「何事か分かりませんが敵意を向けるのでしたらお覚悟をしてください」

 

それに対して男性は睨みを私に効かせながらも聞いてくる。

 

「なぁ、提督の嬢ちゃんよ。お前は艦娘様たちを無下に扱っているか…?」

「えっ…?」

 

その男性の言葉に少し頭が混乱した。

なんでそんな事を聞いてくるのだろうか。

 

「…無下に扱っていないかと聞いているんだ。答えてくれ…」

 

男性は少し懇願するようにそう聞いてきた。

そこから少しの悲しみの雰囲気を感じられた。

過去に艦娘と何かあったのだろうか…?

それで聞いてみることにした。

 

「…事情を聞かせてくれませんか? なぜ提督という存在にそんなに警戒するのかを…」

「いいだろう。少し着いてきな」

 

男性のその言葉とともに聞いていたのだろう町の店員の老若男女関係なく人が出て来て私達を囲むようにしてとある店へと案内された。

その異様な空気に私はさすがに今軽口を叩けるほど場の空気を読めないわけでもなく黙っている事しかできないでいた。

それで男性に案内されて一つの席に座らされてなにやら話し合いのような場が設けられた。

 

「さて、それじゃ少し話をしようか。嬢ちゃん、あんたは久保提督の事は知っているか?」

「はい。まぁこの世界では親交がある提督仲間という認識ですが」

「先日にその嬢ちゃんにも今と同じように囲んで話を聞いたわけだ」

 

それで想像する。

囲まれた久保提督と第六駆逐隊の面々はさぞ怖い思いをしたのだろうと。

 

「それはどういった…?」

「嬢ちゃんは俺たちが期待していい提督なのかをな」

 

男性のその言葉に次は女性の人が声を出してきた。

 

「そうよ。知っているでしょうけど、あなたはここいらでは有名人よ?

なんせ異世界から鎮守府の施設ごとこの世界に来たっていう話だからね」

 

その事は知っている。

大本営のその発表は日本を震撼させるには十分な出来事だったからだ。

当然、それを聞きつけてインフラ整備が整った次の日には色々な野次馬が鎮守府を外から眺めていたからな。

最近はあまり見なくなったけど最初の間は少し居心地が悪かったのを覚えている。

 

「そうですね…。あ、挨拶はしたと思うのですが…」

「確かに…集会を開いて演説していたのは見たよ。でもまだ俺達は嬢ちゃんの事を完全に信用していないんだ。

…知らないだろうから教えてやるよ。嬢ちゃんの鎮守府が転移してくる前の場所は廃れていたっていう話は聞いているか?」

「はい、聞いていますが…」

「その鎮守府にいた提督がそれはもう上から目線の奴だったんだよ。

艦娘様達を兵器としか運用せずに無理無茶を平然と要求して毎日必ず一人か二人は艦娘様が轟沈をしていた」

 

それを聞いて摩耶は「うぇ…」という顔になって嫌悪感を浮かべている。

鳥海は冷静になって男性の言葉をうまく咀嚼して聞いているのか黙っていたまんまだった。

 

「俺達にもこう言ってきた。

『俺が守ってやっているんだからお前たちは素直に従えばいい』とな」

「ひどいですね…」

「だろう? それで結局最終的には二年前に深海棲艦に鎮守府を襲撃されて一人、また一人と艦娘様達が死んでいく中でそのあほは何を思ったのか鎮守府を逃げ出してきやがった」

「………」

 

私は黙ってその言葉を聞いていたが、おそらくその提督の末路は…、

 

「それで今まで偉そうだったあいつは俺達に頭を下げて助けてくださいと命乞いをしてきたんだ。

失望したもんだね…俺達はこんな奴に今まで頭を下げていたのかと思ってな」

「そうよ! 情けないったらありゃしないさね」

 

それで当時を思い出しているのだろう町の人々は愚痴を零し始める。

 

「…それでそのバカは最終的には業務内容を大本営に知られたのだろう、艦娘への扱いなどとかいった色々な罪で捕まっていったさ。

それから二年間の間、誰も近辺に赴任してこないから怯えた暮らしをしていた。

だけど最近になって新しく久保提督が近くの鎮守府に来てようやく深海棲艦から怯えて暮らさずにすむのだろうと期待していた矢先に正体不明のあんたらがやってきた。

ここまで言えば、分かるだろう…?」

「…そうですね。私はまだあなた方から信用されていないのは分かりました。

それも踏まえて言わせてください。確かに私は過去に指示のミスを侵してしまい数人の艦娘を轟沈させてしまった事があります。

ですが決して私は艦娘のみんなを無下に扱ったりはしません。

それに提督の私自身も今は艦娘です。ですから艦娘のみんなを対等に扱い、そしていざとなったら一緒に出撃しましょう」

 

私がそこまで言い切ったのだろう、それを聞いていた摩耶と鳥海は、

 

「て、提督!? なに勝手な事決めてんだよ!?」

「そうです司令官さん! あなたは私達の提督です。ですから…」

「それでもだ」

 

私は鳥海の言葉を遮るように言葉を重ねる。

 

「…確かに提督は艦娘のみんなに指示を出すのが役目だろう。だけど一緒に戦わせてくれないか…?

私には正面切って深海棲艦と対峙する覚悟はまだないのかもしれない。見ろ…?」

 

それで私は震えている手をみんなに見せる。

 

「この通り私は臆病者だ。艦娘のように戦えるかもわからない。だけどそれでも皆と一緒に戦いたいんだ」

「ッ…提督、お前って奴は」

「司令官さん…」

 

それを聞いていたのだろう。町の人々は少し黙っていた後、

 

「…信じていいんだな、嬢ちゃん? 俺達は前のバカのせいで嘘の空気には敏感だからさ。

嬢ちゃんが言っている事は嘘じゃないって分かるんだよ。だから信じていいか?」

「信じてもらえるならとても嬉しいです」

「…わかった。なら俺はあんたを信じるぞ。この町も含めて守ってくれよな」

 

すると他の町の人達も男性に呼応して次々と信じると言ってくれた。

それでとても嬉しい気持ちになった。

そして一段落して帰り道になって、町の人達を驚かしたくなかったのだろう榛名が出て来て、

 

《提督…。先ほどの件ですが、言った事は責任が重いですよ?》

「わかっている。だからもし私も戦う場面に遭遇したら榛名、一緒になって戦ってくれるか…?」

《お任せください。提督の事は私が守りますから》

「あっ! 榛名、ずりーぞ! アタシだって守ってやるからな提督!」

「はい。私も司令官さんを守りますから無茶して前に出ないでくださいね?」

 

そんな約束をされてしまい、少し恥ずかしい気持ちになった。

鎮守府に帰った際もその議案が鳥海からみんなに伝わったのだろう、一波乱あったのは別の時に語ろうか。

 

 

 




ちょっと種を変えてイベント前ですがこの話を書いてみました。



それとイベント名が発表されましたね。
『出撃!北東方面 第五艦隊』という名前らしいです。

それにちなんで固定メンバーになるであろう艦娘。
那智、木曾、足柄、多摩、阿武隈、曙、潮、霞、不知火、初春、若葉、初霜。
この艦娘を育てておりますでしょうか…?
うちはなんとか全員70を越えてました。


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