【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。
少し文字数多めです。


0205話『ハロウィンの日と油断』

 

 

今日は年に一度のイベントであるハロウィンの日だ。

私はこの日のためにお菓子を買いためておいたと言っても過言ではない。

それだけうちには駆逐艦も含めてトリック・オア・トリートと言ってきそうな子がたくさんいるしな。

執務室のテーブルの上にはそれはもうお菓子が山積みされている。

 

《提督、準備が万端ですね》

「当然だ。彼女達にイタズラをされるというのもどういうものか味わってみたいというのもあるけど後が怖そうだし……」

《そうですね。金剛お姉様とかも言ってきそうでなんとも……》

「ああ、ありえそうで怖いな……」

 

そんな事を榛名と話し合っていたら早速とばかりに「コンコンッ!」という執務室の扉を叩く音が聞こえてきた。

さて、誰が来るかな?

少しの期待をしながらも入っていいよと言って中に招き入れる。

そこにはそれぞれ衣装を纏っていた第六駆逐隊の姿があった。

電はカボチャの被り物かな? 響はミイラ男で、暁は魔女、雷はドラキュラかな。

四人が揃ってこう言った。

 

「「「司令官! トリック・オア・トリート!!」」」

「また初っ端から可愛い子たちが来たな。待っていなさい。すぐにお菓子を持ってくるから」

「わーいなのです!」

「あたしとしては司令官にいたずらをしたかったかなー?」

「ハラショー! こういうのもいいものだね」

「暁もちゃんとイタズラの内容を考えてきたのに残念だわ」

 

四人がそれぞれ言い合っている中、榛名が、

 

《四人とも、とっても可愛いですよ!》

「「「えへへー……」」」

 

榛名に褒められたので四人ともとてもいい顔をしていたのは記憶に残りそうだな。

私はそんな事を考えながらも四人にお菓子をプレゼントする。

 

「ありがとうなのです!」

「ちゃんと食べたら歯を磨くんだぞ?」

「はーい!」

「それじゃ次の場所へと行こうか」

「そうね。司令官、それじゃまたね!」

 

そう言って四人は次のターゲットへと向かっていった。

 

「ふふ……やっぱりこういう催しはいいものだな。みんなの可愛い格好が見れるというのは役得ではあるし」

《そうですね》

 

そんなこんなで次がやってきた。

 

「ガオー! 提督、トリック・オア・トリートー!」

「が、がおー……司令官……その、トリック・オア・トリートーよ……」

 

そこには狼の恰好をしている島風と少し恥ずかしがっている天津風の姿があった。

狼の被り物がキュートで微笑ましいな。

てっきり島風はウサギで来ると思ったんだけどな。

 

「二人とも可愛いよ。それじゃお菓子を持ってくるな」

「おっそーい! もっと早く渡してくれないとイタズラしちゃうぞー!」

「そ、その……ガオー……」

「はいはい。少しお待ちを、お姫様達」

 

そんな事を言いながらも私はお菓子を二人にあげる。

 

「わーい! それじゃ提督、次にいっくねー!」

「あ! 島風待ちなさい! その、あなた! この恰好はあんまりじろじろ見ないでね……? も、もう行くから……それじゃ!」

 

島風は元気に、天津風は少しツンツンしながらも出て行った。

うーん……天津風は初々しくていいね。

そしてお次は、

 

「ぽーい! 提督さん! お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞー!」

「その、司令官! トリック・オア・トリートです!」

「睦月にお菓子を献上するにゃしぃ!」

 

夕立と吹雪と睦月の三人は揃ってウサギさんの恰好をしてきた。

島風が予想を外れたのでこちらで来たかと思いながらも、

 

「三人とも可愛いな。はい、それじゃお菓子を献上しようじゃないか」

「わーい! でも、いたずらもするっぽーい!」

「うわっ!?」

 

夕立はそれで私の胸を鷲掴みにしてきた。

なんてことだ! これではお菓子の意味がないじゃないか!

 

「ゆ、夕立……やめなさい! うっ……ほんとに、やめ……ッ!」

「ふっふっふー! 提督さんのお胸はとっても柔らかいッぽーい!」

「あわわ! 夕立ちゃん、やめようよ! その、司令官も変な感じになってきたし……」

「そういう吹雪ちゃんだって興味津々みたいにゃしー! 睦月もまぜるにゃしー!」

「もう! 睦月ちゃんまでー!?」

「……ッ! ッ!!」

 

私は必死に口を抑えて変な声を出さないように堪えていた。

ここで変な声を出してしまったらそれこそ変態じゃないか!?

いや、今の私は女性なんだから別に平気なのか!? いやいや、そんなわけはないしね!

 

《て、提督! 耐えてください! ここが踏ん張りどころですよ!》

 

榛名ー!? そう思うんだったら夕立と睦月を説得して!?

それで私は嵐が過ぎ去るまで必死に耐えていた。

終いには腰砕けになってしまったのか床に突っ伏してしまっていた……。

 

「むふー……堪能したっぽい!」

「睦月も睦月も!」

「はー……司令官、大丈夫ですか……?」

「い、今はあまり私に触れないでくれ……体がやけに敏感になっているから……」

「ほんとーにすみません。後でなにか謝罪の品を持ってきますね。ほら、いくよ! 夕立ちゃんに睦月ちゃん!」

 

ちゃっかりお菓子も確保しながらも私の身体を堪能した二人を引っ張って吹雪は消えていった。

私はしばらくの間、体の火照りを収める為に必死になって立ち上がってなんとか椅子に座って机に突っ伏していた。

 

《提督……大丈夫でしたか?》

「なんとか……体の敏感さも少しは収まってきたけど、夕立と睦月め……遠慮を知らないなまったく……」

《あはは……とにかく平気そうで良かったです》

 

榛名の苦笑いが今は恨めしいと感じるのは間違っていない。

まぁそんな事をしている間にも次の子達はやってくるのだから今度はもっと用心して構えないと。

そんな感じで駆逐艦の半数以上が執務室へと顔を出してきたのでその度にお菓子をプレゼントしてやったんだけど、

 

「少し数が心もとなくなってきたな……」

《そうですね。人数分は確保してあったと思うんですけど……》

「数個ちょうだいって言ってくる子が結構いたからな。今頃他の大型艦の子達も四苦八苦しているんじゃないのか……?」

《そうですね……》

 

それで少し困っているところにまだまだ時間は許す限りの次の刺客が入ってきた。

 

「うふふ~、司令官。トリック・オア・トリートよ~……」

「夕雲も……。トリック・オア・トリートですよ~」

 

そこに荒潮と夕雲の二人が入ってきた。

なんとも二人らしい恰好をしているな。

何と二人ともサキュパスの恰好をしているから大胆極まりない。

幼さとは裏腹に妖艶さも感じられる佇まいだな、二人がこの恰好をすると。

 

「わ、わかった……少し待っていてくれ」

 

私はテーブルの上にあるお菓子を取りに行こうと二人に背後を見せた。見せてしまった……。

そこからが二人の行動は早かった。

二人とも私の腕に手を回してきて、

 

「て・い・と・く……夕雲はイタズラしたいんですけどー……」

「荒潮もよ~」

 

二人は耳元でそんな言葉を発してくるために思わず体を震わせてしまった。

なんとも言えない感情が迸ってくる。

いかんな……このまま流れに身を任したら後が本当に怖いぞ!

榛名なんか《あわわ……!》と言って目を必死に隠しながらもチラチラと覗いているし。

 

「あ、あはは……。ふ、二人とも……? 冗談はいけないぞ?」

「冗談じゃないんですけど……」

「そうよねー」

 

二人は常に耳元で喋っている為に常に耳が敏感になっている為にどうしたものかと体を震わせている。

 

「あは♪ 提督ったら耳がとっても赤いわ……甘噛みしたいわね」

「しちゃいましょうか?」

 

そんな事を言いだしている二人に私はどうにか逃げ出そうと体を振るおうとするんだけどがっしりと腕をホールドされているために動けない。

 

「それじゃ……、はむ♪」

「あむ……」

「ッッッッ~~~~ッ!!」

 

やばいやばいやばい!!

二人は私の耳を本当に甘噛みし出し始めた。

身体が甘噛みされるたびにゾクゾクとやばい感覚が体を突き抜ける。

 

《あわわ……その、夕雲ちゃんに荒潮ちゃん! 提督が困っていますから、その……ッ!》

「「(ギンッ!)」」

《あうっ……》

 

二人の妖艶な眼差しに榛名が貫かれたのを幻視した。

あり大抵に言うと邪魔するな、か……?

ううう……早く終わってくれ!

しばらく未知の感覚を味わっていたけど二人とも満足したのか、

 

「ぷはぁっ……司令官の反応はとっても可愛かったわぁ」

「そうねー……提督、こんなサービスは今日だけですよ♪」

 

最後に二人はウィンクしながらもちゃっかりお菓子も貰って執務室を出て行った。

私はやっと解放されたのを実感したのかその場でへたり込んでしまう……。

 

《て、提督!? 大丈夫ですか!》

「あはは……大丈夫そうに見えるなら榛名は眼科に行った方がいい……あの二人は本当にやばいな……」

 

二人の行動に戦慄していながらもそれから朝潮達が来て、その真面目というか素直さに思わず涙を流しそうになったのは内緒だ。

そしてその後に軽巡や重巡、特殊艦の子達も来たりしたけど無事にあらかたお菓子も配り終えたと思った頃に、

 

「ヘーイ! テートクー! トリック・オア・トリートネー!」

 

またしてもサキュパスが現れた。しかも予想通り金剛だった。

 

「やっぱり来たか……」

《そうですね。しかも予想通り大胆な恰好で来ましたね……金剛お姉さま》

「ワッツ!? もしかしてすでに誰かこの恰好で来ちゃったデスカ!?」

「ああ……しかもちょっとした爆弾を置いていったよ」

「チッ……先を越されたネ……」

 

金剛は本気で悔しがっているようだった。

まぁ、もう油断はしないで挑みたいのでちゃんと視界に金剛を収めながらもお菓子を渡そうとしたんだけど、

 

「あ、あれ……? もしかして……」

《あはは……お菓子、切れちゃいましたね……どうしましょうか?》

「ほほーう……? それはいい事を聞いたなぁ~」

 

そこに龍驤の声が金剛の背後から聞こえてきた。

まさか……!?

私は思わず執務室の端へと逃げていきながらも、

 

「そやでー? 司令官、油断したなぁー……ここからは大型艦の出番やで!」

 

そしてぞろぞろと入ってくる戦艦や空母の皆さん。

 

「ひゃっはー! 提督、お菓子がないんだって? そりゃいかんなー!」

「隼鷹……」

「Admiral……せっかくですからイタズラされてくださいね?」

「「「トリック・オア・トリート!」」」

「うわー!?」

《て、提督ーーー!!?》

 

それから次々とやってくるみんなに私はなす術もなくイタズラされまくったのであった……。

くそう、来年は全員分用意しとかないと……。

私はそう心に誓ったのであった。

 

 

 




最後はこんなオチで終わらせました。
読者の皆さんのなにかの琴線に触れたのなら幸いです。




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