【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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勢いに任せて第二話を更新します。


0002話『介入』

 

 

妖精さんが俺の肩の上に乗って海の上を走りながらも俺は不思議な感覚を味わっている。

海の上を滑るというのは摩訶不思議現象であり、解明したい出来事ナンバーワンである。

 

「妖精さん。艦娘って自然に海の上を歩けるものなの?」

【はい。最初は…つまり練度1の時は千鳥足のようなものですからいくらか訓練が必要ですが次第に慣れていくものだと思います】

「………」

 

それを聞いて俺は今までなんて酷い事をやっていたんだという気持ちになった。

ゲットした艦娘を図鑑を収める為にいきなり5-5………サーモン海域北方に突っ込んでいたのだから。

あのレ級にいきなり洗礼を浴びせられるとか鬼畜か!

誰だそんな事をしたのは! はい、俺です。すみませんでした…。

一人後悔をしながらもそれでも海を滑っていく行動はやめないのである。

 

「それで妖精さん。弾薬はともかく燃料ってあとどれくらいあるかな?」

【満タン状態でしたからこのまま戦闘を起こさなければ三日か四日は持つでしょう。気を付けてください。燃料がなくなったら…】

「当然機能停止してしまうんだよな?」

【はい。艤装が消えて海を泳ぐ事になってしまいますから…】

「それは怖いな…。早く陸地を探さないとな」

【こういう時に電探が装備されていればどうにかなったのでしょうが…】

「そこはごめん。こういう事態を想定していなかったから徹甲弾なんか装備させちゃっていたし…」

 

少し気落ちしていた妖精さんの頭を撫でて慰めながらもどうにかならないかという気持ちで前進する。

だけど電探は装備していないとしても感じ取れることはできる。

なんかこの先にいくと鈴谷風に言うとなんかヌメヌメするぅ!な展開が起きそうな気がしたのだ。

それで少し進路を変えてみた。

 

【良い判断です】

「ん…?」

【私は貴方をサポートする妖精ですから多少はソナー要員にもなれます。それで先ほど貴方が進路を変えなかったら深海棲艦…それも潜水種に遭遇していたと思いますから】

「なるほど。直感には従った方がいいね。戦艦は潜水艦に対しては無力だから」

 

今後、この直感をヌメヌメセンサーと呼ぼう。

我ながら酷いネームングセンスである。

 

それからさらに進んでいくと次第に日が落ちてきて夜になってきた。

まずいな…。さすがに夜戦だけはしたくない。

いざという時の一撃はとても重たいものなのだ。

それはサブ島沖海域で嫌というほど味わっている。

そんな時だった。

暗い中、一つの光が立ち上ったのだ。

これはもしかして照明弾…?

という事はこの先に艦娘、あるいは深海棲艦がいて夜戦を開始しているという事だろうか…?

 

「妖精さん、どうする…?」

【貴方の判断に任せます。それと今まで注意していませんでしたが口調を意識してください。変異種と思われたくはないでしょうし】

「つまり榛名のように振る舞えって事ね。できるかな?」

【なにも本物通りに振る舞う必要はないかと。ある程度砕けた感じで大丈夫だと思います】

「そっか。なら一人称だけ変えとけば大丈夫かな。いきなりの実践だけどなんとかやってみよう」

【サポートはお任せください】

「頼むね」

 

それで俺―――いや、私は照明弾が上がった方へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

榛名提督が進んでいった時にはすでに戦闘が開始されていた。

艦娘の戦力は駆逐艦、電を旗艦に同型艦である暁、雷、響の四人編成の単縦陣。

深海棲艦の勢力は戦艦ル級を旗艦に重巡リ級が二隻、軽巡ホ級一隻、駆逐ロ級二隻の水上打撃部隊。

明らかに戦力差がありこのままだと負けは必須である。

だがそれでも四人は諦めていなかった。

 

「暁お姉ちゃん! ここを切り抜けてなんとしてでも提督のもとへ帰るのです!」

「当たり前よ、電! こんなところで足を止めるわけにはいかないのよ!」

「その通りだよ。なんとしても倒そう」

「雷に任せなさい! さっきの探照灯であらかた敵の位置は把握できたからやってやるんだから!」

 

四人は気合を込めて夜間砲撃戦を始めていく。

まず電が気合を込めながらも、

 

「命中させちゃいます!」

 

12.7㎝連装砲を構えて砲撃をした。

夜戦での一撃だ。それは深海棲艦の旗艦であるル級へと吸い込まれるように直撃した。

 

「や、やったのです!」

 

電が喜ぶがそれもつかの間にル級はまったくダメージを受けていなかった。

それを確認できた四人は驚愕する。

やはり装備が心もとなかったかという気持ちであったのだ。

そもそもこんな戦力と遭遇する事はないと思っていたために慢心した訳ではないが軽い初期装備しか積んでいなかったのだ。

 

「い、電! 私に任せ…キャッ!?」

 

また砲撃を撃ちこもうとして、だけど先に撃たれてしまい一気に暁は大破してしまったのだ。

 

「ううぅ…そんな!」

 

これで戦力は6対3になってしまった。

 

「やらせないよ!」

 

響が魚雷をしかけるがそれは駆逐ロ級を沈めただけで対してあちらの戦力を削っていなかった。

しかしそれでも次は雷が響と同じように魚雷を装填して放った。

 

「いっけー!」

 

雷の魚雷はまたしてもル級に突き刺さった。

 

「や、やた!」

 

しかしやはり装甲が硬いのか小破どまりで終わってしまった。

それで四人は少しばかり絶望の顔をする。

実を言うとこれで弾薬が尽きてしまっていたのだ。

反撃どころかもう攻撃すらできない。

後は深海棲艦になぶられて終わりなのかと諦めかけたところで、突如として重巡リ級の二体が轟沈したのだ。

何事かと思った矢先に、

 

「榛名! 夜戦に突入する!」

 

そこに第三者の声が響いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

私が到着した時には戦艦ル級が旗艦の水上打撃部隊編成が第六駆逐隊の四人を追い込んでいる光景を目にした。

見れば暁が大破していて他もおそらく弾薬が尽きているんだろう避けることに専念している。

 

「これはまずい展開だね。妖精さん、バックアップお願いできる?」

【任せてください】

「よし! まずは気づかれる前に一体か二体は沈めておこうか」

 

それで二番砲塔と四番砲塔に弾を装填して私は二番砲塔を、妖精さんが四番砲塔を操作してそれぞれ重巡リ級に斉射する。

それは見事に二体に突き刺さって悲鳴を上げながら重巡リ級の二体は沈んだ。

そして、

 

「榛名! 夜戦に突入する!」

 

四人の前に滑走して滑り込んだ。

 

「あ、あなたは…?」

「今は詮索は無しね。敵じゃないから!」

 

私が安心させるように四人に笑顔を向ける。

すると四人は顔を赤くした。でも今はそれは置いておいて私はまだ残っている三体を睨む。

ル級は私を敵と定めたのだろう、砲撃を撃ってきた。

普通なら直撃コースだけどお生憎様だ。

その弾道はこの榛名のスペックなら見えている。

でも避けると後ろの四人に当たってしまう。

だから―――こうする。

 

「力を拳に込めて…放つ!」

 

そう、アニメで金剛が砲弾を殴ったのだから私にもできないことは無い。根拠はないけどね。

でも思惑は当たったようで砲弾は私の拳に当たった途端、どこかへと飛んで行ってしまった。

少し痛いけど我慢だ。

背後で雷が「すごい…」と言っている。

やっぱり常識外だったようだね。

まぁ、いい。

 

「一式徹甲弾装填! てぇッ!!」

 

放たれた徹甲弾は迷うことなくル級へと吸い込まれて着弾した瞬間に爆発炎上する。

旗艦が潰されたために残りの二体の動きが乱れるが逃がさないよ!

 

「続いて第二、第四砲塔装填! てぇッ!!」

 

残りの駆逐と軽巡もすぐに沈めた。

そして私の頭の中ではS勝利のファンファーレが鳴り響く。

 

「さて、と…」

 

それで私は背後へと振り向く。

 

「大丈夫だった…?」

 

四人は無言で何度も首を縦に振っていた。

さて、これからどうしようか…。

 

 




こんな感じにまずは介入していきます。


それではご意見・ご感想をお待ちしております。

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