【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0187話『不知火の見た夢』

 

 

 

 

朝から私は変な夢を見まして執務室へと向かっていました。

この、胸のわだかまりを相談できそうなのはやはり司令だけだと思いましたので……。

ですが道中で早霜が歩いてきましたので、

 

「早霜、おはようございます」

「不知火さん、おはようございます……。どうされましたか? なにやら少し難しいお顔になっていますが……」

 

むっ? 顔に出ていましたか。

それで早霜に私が今朝見た夢に関して司令に聞いてみようかと思いましたという話を伝えてみると、

 

「夢、ですか……」

「はい。なにやら現実味の帯びた夢でした。きっと司令ならこの答えを教えてくれると思いまして……」

「そうですか。でしたら私も着いていってもよろしいでしょうか……?」

「別に構いませんがきっとつまらない結果になると思いますよ?」

「構いません。それに不知火さんの事に関してはつまらないことなんてありませんから」

 

そう言って早霜は笑みを浮かべます。

……やはり少し早霜は私にとって苦手な部類なのかもしれませんね。

まぁ、いいでしょう。

 

「それではいきましょうか」

「はい」

 

それで私は早霜を連れて執務室へと向かいました。

中に入ろうと思いノックをします。

雪風や時津風はノックもしないで入ってしまうそうですが規律はきっちりとしないといけませんからね。

すると中から司令の声が聞こえてきました。

 

『誰だい?』

「不知火です。少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

『構わないよ。入りなさい』

「はい。それでは失礼します」

 

そして執務室の中に入ると司令以外にはちょうど人はいないみたいで少しホッとしている私がいました。

 

「早霜も一緒にいたんだな」

「はい……」

「それでなにかあったのか?」

「はい。少しつまらない内容ですがぜひ司令の耳に入れておきたいと思いましたので……」

 

すると司令官は「ほう……」と声を鳴らした後に、

 

「言ってみなさい。つまらないつまらなくないに関しては私の方で判断するから」

「ありがとうございます。それでですが私は少し今朝に夢を見たんです」

「夢か……」

「はい、夢です。その夢の内容がまた少し不思議な物でした」

 

私はそれで思い出す。

私が昨日に見た夢はおそらく進水日の光景だとは思うのですが私の時とは少し船体の姿が異なっていたのです。

これは?と思い……。

そんな少しあやふやな内容を私は司令に伝えました。

 

「なるほど……進水日の光景が目に映ったのか」

「はい。ですが私には身に覚えのない光景でしたのでどういうことなのかと司令に相談に来たのです」

「なるほど……なんとなくわかったよ。そしてだけどおそらくその進水した船体の正体は不知火の名を引き継いだ『護衛艦 しらぬい』だと思うな」

「しらぬい、ですか……」

「そうだ。多分武装とかも近代的だったんじゃないのか?」

「は、はい……確かに昔の私達が装備していた武装とはかなり異なっていました」

「それならおそらく私の予想は当たっていると思う。やっぱりどこかで不知火と繋がっているんだと思う。私の元の世界ではおそらく昨日がそのしらぬいの進水日だったんだな」

 

司令のその予想の内容を聞いて私は胸にストンッとなにかがはまる感じを覚えました。

そうですか……。

私の名を引き継いだ船が就役したのですね。

それは……とても素晴らしい事だと思います。

 

「不知火さん、よかったですね」

「ええ。もしそれが本当だったのでしたら私も嬉しい限りです」

 

早霜にそう言われましたので私も少し表情が笑っているように感じました。

 

「お、不知火の久しぶりの笑みを見れたな。なんとも役得な気分だな」

 

おや。顔にもやはり出ていましたか。

ですが司令になら見られても別に構いませんけどね。

 

「それでしたらその新たな私にはこれからも活躍してもらいたいものですね」

「そうだな。きっと、不知火の魂を宿しているだろうから果敢に挑んでくれるだろうさ」

「そうです……。不知火さんの名を引き継いだのですから立派になってもらわないと困りますからね」

 

それで三人で笑みを浮かべあいます。

こうして笑うのも久しぶりな気がしてなりません。

実に気分がいいものですね。

 

「司令。私も新たな私に負けないようにこれからもご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」

「わかった。不知火もいい練度に達しているから限定作戦では使う時が来るだろう。期待しておいてくれ」

「はっ! 了解です」

 

それで私は司令に敬礼をしました。

それから私は執務室を早霜と一緒に出ていきました。

部屋へと帰る道中で、

 

「ですが、やはりいいものですね。もう一人の自分が就役するというのは……。私にもいずれは名前を継ぐ船が現れるのでしょうか……?」

 

早霜はそれでどこか遠い眼差しをしていました。

おそらく気分を私と重ねているのでしょうね。

 

「きっと必要な時が着ましたら早霜の名を継ぐ船は出てくると思いますよ」

「そうですね。だといいのですが……」

 

それから早霜と少しの間、色々と話し合いました。

話的には事務的なあれこれがほとんどですが悪いものではなかったですね。

その後に早霜とも別れて私は部屋に戻るなり、

 

「ふぅ……ですがやはり司令に話してよかったです。こんなに胸が晴れやかな気持ちになるとは思っていませんでしたから。ふふっ……護衛艦 しらぬい、ですか。頑張ってくださいね、もう一人の私……」

 

目を瞑ってもう一度進水したしらぬいの光景を思い出していました。

するとどこからか船の汽笛の音が聞こえてきたような錯覚を覚えましたが目を開けてみてもなにもありません。

ですが私には分かりました。

きっと、私の呼びかけに応えてくれたのだと……。

私はそれでまたさらに気分がよくなりましたのでこれからの活力にしていきたいと感じました。

不知火は今日も元気です。

 

 

 




昨日に護衛艦 しらぬいが進水したという話を聞いたのでこんな話を書いてみました。





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