【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

182 / 306
更新します。


0182話『体育の日。怠惰な初雪の災難』

 

 

 

 

初雪です……。何やら吹雪姉が今日は体育の日だからって運動をしようとかふざけた提案をしてきたんだけど、初雪以外のみんなは乗り気のようで吹雪型は強制的に運動をすることが決定してしまったらしいの……。

だるいー。部屋でゲームしていたい……。

そんな事を顔には出す事も出来ずに初雪も今現在みんなと走り込みをしているんだけど……。

 

「ねぇ、白雪姉さん……」

「なんですか、初雪ちゃん?」

 

白雪姉さんは平気そうな顔で走っているけど少しどうなんだろうと思う。

 

「もう少し、ペースを落とさない……?」

 

私はせめてもの思いでもう少し走るスピードを下げないかという事を進言したんだけど、

 

「それは却下です」

「なんでー……?」

「この程度のスピードならまだ海上を走っている方が体力の消費が激しいからですよ。だから初雪ちゃんも我慢してね」

「うー、分かった。頑張る……」

 

確かに海上を走るくらいならまだジョギングをしている方が気楽ではあるからね。

それでもやっぱりダルイ事には変わりはないんだけど……。

 

「ほら、初雪姉さん。もっと早く走んなよ? 後ろがつっかえちゃうだろう?」

 

体力バカの深雪がなにかほざきだしているんですけどー? 私だってこれで精一杯だっていうのに……。まったく困ったものだ。

 

「……それじゃ追い越してもいいよ。深雪なら一番前を走る吹雪姉に追いつけるでしょう……?」

「まぁな。そんじゃ深雪スペシャルをお見舞いするとするかー! ゴー!!」

 

そう言って深雪は一気にダッシュをかけて吹雪姉のところまで走っていく。

吹雪姉にそれで「うわっ!? 深雪ちゃん元気だね!」と驚かれているし。

それを見て単純だねぇと思う始末である。

 

「あの、初雪ちゃん……なんか深雪ちゃんに悪いと思うんだ」

「そうだよ初雪姉さん」

 

磯波と浦波がそう言う事を言ってきたけど、

 

「私は悪くない。深雪がただ単純なだけ……」

「ま、まぁそうなんですけど……」

「それを言われちゃ仕方がないけどさぁ……」

 

それで磯波と浦波も静かになってくれた。

私としてはありがたい。

この無意味ともいえる長距離走では喋るだけでも体力を奪われるんだから少しでも力を温存しておかないと身が持たない……。

そんな中、叢雲にふと目が止まる。

彼女だけはなにか考え事をしながら走り込みをしているという少し器用な光景だった。

それなので私は少し走るスピードを落として叢雲に並走してなにをしているのか聞いてみようと思う……。

 

「叢雲……?」

「……吹雪……落とす……こんな……くだらない事に……私を……参加……させるなんて……」

 

ゾワッ!っと少し寒気を感じたのは間違いじゃなかった。

叢雲は私以上にこの長距離走をダルイと感じていたのだ。

だから考え事の邪魔をしてはいけないなぁ~という事で私は叢雲から距離を取った。

……うん。藪をつついて蛇が出てきたらたまらないからね。合理的判断という奴だ……。

だから私はまた白雪姉さんのところまで戻っていった。

 

「初雪ちゃん……? どうしたの? どこか顔が青いよ」

「なんでもない……。そう、なんでもないよ……」

「そう? それならいいんだけど……辛かったら行ってね」

「うん……」

 

そして午前をかけて走り込みが終了して私達は午後には何をしようという話題になったんだけど、

 

「吹雪姉……」

「なぁに、初雪ちゃん?」

「もう走り込みは嫌だから別の事をしよう……」

「んー……まぁそうだね。それじゃ体操関係でもしていようか」

 

それで私含めて吹雪型のみんなは安堵の息を吐く。

結構みんなも疲れがたまっていたようだから体操関係ならまぁ……という気持ちになったんだろうね……。

 

「その前にお風呂にでも行こうか。一回走って掻いた汗を流してこよう」

「「「賛成……」」」

 

それでみんなでお風呂へと向かっている途中で、司令官と出会う。

司令官もお風呂に入りに来たのか桶と着替えを持ってきたのだ。

 

「あれ……? 司令官もお風呂ですか?」

「ん? 吹雪達もか? 私は演習で汗を掻いたんで少しお風呂に入りに来たんだ」

 

そういえば……司令官は最近カンストしていない戦艦がリシュリューさんだけになったのか嬉々として演習に参加しているという話を誰かに聞いたね。司令官も物好きだね……。わざわざ演習に参加しようなんてダルイだけなのに……。

私が一人そんな事を思っていたんだけど、

 

「その……司令官、もっと自身を労わってくださいね?」

「そうよ。指揮官が前線で活躍する鎮守府なんてうちくらいなものよ? 分かってる?」

 

吹雪姉と叢雲がそれで司令官を少し叱っている。

まぁそうなるのも明白だよね……。

司令官を好いている子は私から見ても結構の数いるから心配になるのはしょうがない……。

司令官も分かっているのか黙って大人しく二人のお叱りに耳を傾けているから。

そんな時に白雪姉さんが私に話しかけてきて、

 

「……司令官が前線に出張る事態にならないように、私達も頑張ろうね」

「まぁ、そうだね……。だるいけど私もそうならないように頑張る……」

 

私はそう答えておいた。

私だって司令官を失う事態だけは避けたいし……。

もしそんなことになったらうちの子達は集団で何をやらかすか想像しただけで怖いし……。

だから、

 

「司令官……初雪も頑張るからあんまり無茶な行動はしないでよ……」

 

私は司令官にそう言った。

それで私がそんな事を言うとは思っていなかったらしく珍しく司令官も少し目を見開いていたし。失礼な……。

 

「……ああ。わかった、そうならないように努力するよ」

 

司令官はそう言って私の頭を撫でてきた。

うー……別に強請ったわけじゃないんだけど……。

ほら、吹雪姉さんと叢雲が羨ましそうに見てくるし……。

本当にだるいなぁ……。

 

 

そしてその後はどうせなら司令官とも全員で入ろうという吹雪の思いがけない提案で、またしても吹雪姉の思い付きに振り回される羽目になった。

司令官と一緒に入るのは……まぁいいんだけどやっぱり恥ずかしいから私は隅の方で隠れるように体を洗っているのであった。

 

 

 




今回は初雪視点で体育の日の運動でした。
私も今日は町の体育祭でなにかをやりますから疲れそうです……。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。