【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0177話『ヴェールヌイのサンマ漁』

 

 

 

 

 

私は同士ガングートの為に秋刀魚を釣りたいと思い、司令官に話をしようと執務室に向かっていた。

その道すがらで暁と出会う。

 

「あら。響、どうしたの?」

「いや、ちょっと司令官に用があってね」

「そっかー。それじゃ私も一緒に着いていくわ。なんてったって私は響のお姉ちゃんだから!」

 

暁は優しいと思う。

改装して響という名からヴェールヌイという名に変わって他のみんながヴェールヌイと呼ぶようになっているというのに未だに私の事を響と呼んでくれる。

まぁそれは雷と電もだけどね。

出来れば司令官にも響と変わらず呼んでもらいたいけどこの世界に来る前からすでに司令官はヴェールヌイという呼び方が定着していたようで今更治せないそうだ。

少し残念にも思うけど仕方ないとあきらめておく。

 

「それで響は司令官になにを頼みたいの?」

「うん。秋刀魚漁のために装備を整えたいんだ」

「装備? ソナーとか爆雷とかそんな感じ……?」

「いや、一般的な釣り道具が欲しいところかな?」

「なるほどー。それじゃ一回町に出ないといけないわね」

「そう言うわけだよ」

「それじゃ司令官の所に向かいましょうか」

「そうだね」

 

それで暁は私に笑顔で手を差し出してくる。

その合図が何を示しているのかは分かっている。

だから私は暁のその手を握る。

それから二人して仲良く手を繋ぎながら執務室へと向かった。

そして到着して扉をノックする。

最近はドアノブが高い位置にあるとは感じなくなったのはいい事だと思う。

私達より小さい海防艦の子達が頑張って背伸びしている光景をよく見るようになったからかな?

とにかくノックをした後に司令官の声が聞こえてきた。

 

『誰だい?』

「ヴェールヌイだよ。司令官、入ってもいいかい?」

「暁もいるわ」

『そうか。入ってもいいよ』

「それじゃ失礼するよ」

 

それで私と暁は執務室の中へと入らせてもらった。

中では司令官が任務表とにらめっこしている光景があった。

どうやら少し忙しいところのようだね。

だけどその動作をやめて私達の方へと向いてきて、

 

「それでどうしたんだい二人とも?」

「うん。司令官! それがね、響がちょっと欲しい道具があるんだって!」

「欲しいモノ……? 言ってみなさい」

「……うん。秋刀魚漁での釣り道具一式を欲しいところなんだ」

「釣り道具か……。それじゃ町に出ないといけないな。酒保では売っていないだろうから」

「やっぱりそうなんだー……」

 

それで暁は少し残念そうな表情をしている。

だけど司令官が少しいい顔をしながら、

 

「それなら一緒に買いに行くかい? 町内会への経過報告をしないといけなかったからちょうどいいし」

「いいのかい?」

「ああ。少ししたら行くとするか。それまで準備をしておいてくれ。暁も行くだろう?」

「当然行くわ!」

 

暁がすぐに食いついていたので外に出かけるのが嬉しいんだろうね。私も楽しみだけど。

 

「司令官、ハラショーだよ」

「はは、そうか。それじゃ私も準備をするから正門で待っていてくれ」

「了解だよ」

「わかったわ」

 

それで私達は正門へと向かっていく。

そこでは毎度おなじみの番人の木曾さんがいた。

 

「お。チビども、どっかにいくのか?」

「うん。司令官と一緒に町にお買い物に行くのよ」

「そうか。まぁ楽しんできな」

 

そう言って木曾さんはもう興味が無くなったのかまた正門の番人modeに入っているんだけど、

 

「前から思っていたんだけど、木曾さんって退屈じゃないのかい? こんなあまり人が来ない場所で一日中立っていて……」

「ん? まぁな。でも誰かがしないといけないだろう? 俺の暇つぶしも兼ねてこの役目を引き受けたんだよ」

「そっか……。それじゃ頑張ってくれ」

「おう」

 

木曾さんとそんな話をしている間に司令官も正門へとやってきた。

 

「木曾、いつもながらお疲れさま」

「ああ。提督も楽しんで来いよ」

「わかった。それじゃ行こうか二人とも」

「ああ」

「うん」

 

それで司令官と暁と町へと繰りだしていく。

それから司令官と一緒に町内会へと顔を出して秋刀魚漁の経過報告を済ませた後に、

 

「それじゃ釣りショップへと向かおうか」

「わかった」

「うん」

 

それで釣りショップへと顔を出す私達。

そこでは色々な釣り道具が並べられていた。

それで少し私は目を輝かせていたのかもしれない。

だって司令官が少し笑みを浮かべながら私の頭を撫でてきて、

 

「楽しそうだね、ヴェールヌイ」

「うん。そうかもしれない。榛名さんもそうかな……?」

 

それで私達お一緒にいる時はあまり顔を出さない榛名さんにも話かける。

それで榛名さんが顔を出してきて、

 

《そうですね。こうして見て回るのも楽しいですよね。響ちゃんはどんなのが欲しいの……?》

 

ああ、そう言えば榛名さんも数少ない響と呼んでくれる人だったね。

そんな事を考えながらも、

 

「うん。ウェアに釣り道具一式が欲しいところかな?」

「それならヴェールヌイに合ったものがいいだろうな」

 

それで司令官が私のために服を探そうとしているんだけど、ふと暁の顔を見てみると少しムーッとしている。どうしたんだろうか?

 

「司令官! ちょっといいかしら!?」

「ど、どうしたんだい暁?」

「司令官も響の事をヴェールヌイじゃなくって響って呼んであげてよ。確かにヴェールヌイっていうのも響のもう一つの名前だけど私的にはちょっと嫌かな……」

 

暁はそれで服を掴んで少し悔しそうな顔をする。

別に私はどちらでも構わないんだけどな。

だけどそれで司令官は少し悩む素振りをして、私の方へと顔を向けてきて、

 

「響。君は私にどちらで呼ばれたい? 今まで改装が終わってからずっとヴェールヌイって呼んできたけど響も気にするなら響って呼ぶけど……」

「そ、それは……その、私も出来る事なら響って呼んでほしい、かな……」

 

私の精一杯の言葉で司令官は笑顔になって、

 

「分かったよ、響。これからは前のように響って呼ばせてもらうから」

「……は、ハラショー」

 

私は少し嬉しい気持ちになった。

呼んでもらいたいっていう気持ちが暁のおかげで叶ったんだから。

 

「よかったわね響」

「うん……」

 

それで少し司令官との距離も近くなれた気持ちになれた。

だから暁には後で感謝の言葉を贈っておかないといけないね。

そして話は戻ってウェアと釣り道具一式を買って後はと思って目についたものを購入しようとしたんだけど……、

 

「あのさ、響。それってワカサギ釣りの道具だよな? 秋刀魚漁で使うのかい……?」

「ああ。これは私の趣味で購入するものだから気にしないで大丈夫だよ司令官」

「そうか。ならいいんだけど……」

 

私はいつか使うかもしれないという気持ちでこの道具も購入した。

いつか使えるといいな。

そしてホクホク顔で帰っている時に、

 

「響、嬉しそうね」

「そうかな? うん、そうだと思う。暁も今日はありがとう」

「いいわよ。これもお姉ちゃんの務めなんだから!」

 

暁はやっぱり頼もしいね。

そんな事を思いながらも司令官たちと一緒に鎮守府へと帰ったのであった。

 

 

 




ヴェールヌイの道具購入の回でした。
本当にワカサギ釣りの道具はどうして買ったのってぐらいにはヴェールヌイのグラには疑問を感じてしまいました。



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