【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0170話『風雲の飛龍の心配』

 

 

 

 

数日前に二人目の飛龍さんが艦娘保管庫から連れてこられました。

本人はやる気を出していたようだけど私としては少し不安なのよね。

思い出すのはミッドウェーでの飛龍さんが沈む前の出来事だった……。

大破した飛龍さんの乗組員を全員で巻雲姉さんと一緒に収容出来たところでふと二発の銃声が鳴り響いたのは……。

そして私の甲板に落ちてきたピストルを感じた時には艦船の時にも思ったけど、私は『山口司令官と加来艦長は逝ったのね……』と、私に乗っていた乗組員の人達と同じことを感じていた。

それで二人目の飛龍さんもそんな怖い目に合わないかという不安に駆られてしまった。

それで現在私は空母寮へと足を運んでいた。

相談するのは一人目の飛龍さん。

飛龍さんにその事を相談してみたんだけど、

 

「あはは! 風雲も心配性ね。私が多聞丸と同じ死に方なんかしてやらないんだからね?」

「ですけど、二人目の飛龍さんはまだこの鎮守府に馴染めていません。だから色々と不安に感じる事もあるのではないでしょうか……?」

「まぁそうだろうね。でも、それでもあの子は飛龍()なのよ? そんな事くらいでクヨクヨするたまじゃないわよ。私が言うんだからそこは確かね」

「はい……」

 

それで私はそれでもつい顔を俯かせてしまう。

そんな私に飛龍さんが頭を撫でてくれた。

 

「飛龍さん……?」

「ありがとね、風雲。私の事を心配してくれて……」

 

そう言ってニッコリと笑う飛龍さん。

その笑みには不安など一切感じなかった。

 

「それに、もうあの時のように慢心はしないって決めてるんだから! 最後まで足掻き続けるわよ! それが私の取柄なんだから!」

 

おそらく赤城さん、加賀さん、蒼龍さんが沈んだ後も奮戦した事が飛龍さんのやる気の源なのだろう。

私はそこまで強い心を持てないからどうしても憧れてしまう。

 

「……私は、これといって武勲がありません。それでも、飛龍さんは私の憧れです。だからどこまでも着いていってもいいでしょうか……?」

「うんうん! もちろん構わないよ! どこまででも着いてこさせるんだから! そこが私達の勝利の場所なんだから! 二ヒヒッ!」

 

惚れ惚れする笑みを浮かべる飛龍さんには敵わないなと思っていたところに、

 

飛龍()~……? 今日のノルマが終わったわよー?」

 

二人目の飛龍さんが部屋に入ってきた。

 

「お! 噂をすれば……」

「何のことよ……? あ、風雲じゃん?」

「どうも。飛龍さん、今日は練度上げに行っていたんですか?」

「そう。演習にキス島と行くところは決まっているから少し飽きてくるよねー?」

「そんな事を言わないの。早く改二になって蒼龍を迎えるんでしょう?」

「うん。そこは早めにやっておきたいね」

 

二人の飛龍さんがそんなやり取りをしている。

二人を見比べてみればどこかしこにいくつか違いがあるから見分けはつく方ね。

一人目の飛龍さんはどこか自分を誇っていて自身の笑みをよく浮かべる。

対してまだ二人目の飛龍さんは艦載機と自身の実力が伴っていないのを気にしているのかまだまだ不安は抜けない感じだ。私が感じた通りのイメージよね。

 

「飛龍さん! なにか困った事があったら相談に乗りますから言ってくださいね!」

「お、おおう……? なんだろう、風雲が妙に私に優しい……?」

「ま、素直に受け取っておきなさいな。今日はあんたの心配をして私に相談を尋ねてきたんだからさ」

「あっ……! それは言わないでください!」

「あっはは! 風雲、顔が真っ赤だよ。いいじゃない、それくらい? 知らない仲じゃないんだからさ」

「まぁ、そうですけど……」

 

そんな会話をしながらもそれから相室の蒼龍さんが部屋に帰ってくるまで私達は色々な話をしていった。

そして空母寮を出る際に、

 

「ま、私の心配もいいけど風雲自身も自分の事を心配しておきなさいよ? まだまだ練度が低いんだから」

「はい、精進します」

「ふふ。それじゃ頑張ってね」

 

それで飛龍さんは空母寮の中へと戻っていった。

その後ろ姿を見送りながら思った。

やっぱり飛龍さんは私の憧れの人なんだって……。

だから私自身も強くならないと!

そんな思いを抱きながらも私は気づけば執務室へと足を向けていた。

 

「提督? 少しいいかしら……? 風雲よ」

 

私は執務室の扉をノックして提督が中にいるかを確認した。

 

『風雲か。入っていいよ』

「それじゃ失礼するわね」

 

それで執務室の中に入らせてもらうとそこには夕雲姉さんと巻雲姉さんという先客がいた。

 

「あら、風雲さん。どうしたの……?」

「そういう夕雲姉さん達だって……どうしたの?」

「うん。今日は巻雲達が司令官様の手伝いをしているのだー!」

 

「えらいでしょ!? 褒めて褒めて!」と巻雲姉さんが言っているけどどうにも気が抜けるような思いだわ。

 

「それで風雲はどうしたんだ……? 用があったんだろう?」

「そうね。提督、今の駆逐艦の練度上げの状況ってどうなっているの?」

「そうだなぁ……。もう少しで朝風と旗風の二人が練度70になるから次には遠征で鍛えている中で練度が高い朝雲と山雲を育てようと思っている。その四人が終わったら次は浜風かなと考えているかな……?」

「そう……。それじゃ浜風の次でいいから私を練度上げをしてもらってもいいかしら?」

「またどうして……? まぁ最終的には全員上げるつもりではあるけどな」

「強くなりたいの……。今も二人目の飛龍さんが練度上げを頑張っているんだから私もと思って……。ダメ、かしら?」

 

それで提督の顔色を伺うけど、どうにも優しい表情だった。

 

「そうか。まぁみんながみんな、誰かのために頑張ろうとはしているからな。わかった。浜風の次にシフトを入れておくよ」

「ありがとう、提督」

 

いい返事を貰えたのでよかった、んだけど、

 

「風雲いいなぁ~。夕雲姉さんと巻雲もまだ練度が低いから上げてもらいたいよー」

「そうねぇ。ねぇ、て・い・と・く? 夕雲たちはいつ上げてくれるのかしら……?」

 

巻雲姉さんがそれで袖をパタパタさせて羨ましがっていて、夕雲姉さんに至っては提督をその甘い音色で催促している。

うん……ごめん、提督! 相談する機会を間違えたわ!

 

「そ、それはだな……」

 

案の定、提督は少ししどろもどろになってしまっている。

 

「そ、それじゃ提督、頑張ってねー?」

「あ! 風雲、私を置いて逃げるなー!」

 

提督の救いを求める声を敢えて無視して私は執務室から脱出した。

後で夕雲姉さん達に何か言われそうだけど私もあの空間は少し苦手な部類だから提督には生贄になってもらおう。

さて、それじゃ鍛えてもらえるまで自己鍛錬を頑張ってやろう!

 

 

 




今日は風雲の進水日という事で書かせていただきました。
風雲と飛龍の史実は少し物悲しいですよね。多聞丸の最後のとことか……。
後半から少しテンポが変わったけどまぁいつもの事ですよね。



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