【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0162話『磯波と浦波のカメラ』

 

 

 

朝にみんなと一緒に朝食を食べた後に本日の予定である町への視察の事を考えていた。

誰を連れていくかに寄るんだけどどうしようかな……?

私がそんな事を思いながら執務室へと向かっている道中で背後から誰かに「あの……司令官!」と声をかけられた。

この声は……磯波かな?

それで私は後ろへと振り向くとそこには磯波だけかと思っていたら浦波の姿も確認できた。

 

「磯波に浦波。どうしたんだ?」

「は、はい! その……」

 

私になにかを訴えたいような感じなんだけどどうにも口ごもってしまっていて中々切り出せないでいる磯波。

そんな磯波に少し痺れを切らしたのか浦波が「磯波姉、私が言っていいかな?」と口を出していた。

それで磯波も「うん。ごめんね浦波ちゃん……」と返していた。

うん、姉妹仲がよろしいようでいいね。

そして浦波が磯波の一歩前に出て少し真剣な表情になって、

 

「あの、司令官。今日の町への視察の件なのですが、まだ決まっていないのでしたら私と磯波姉を連れて行ってもらってもよろしいでしょうか……?」

 

浦波からの意見具申だった。

それは磯波も同じようでコクコクと頷いていた。

そうだな。

 

「ああ、別に構わないよ。今日は誰を連れて行こうかと悩んでいたところなんだ」

「そうだったんですか。それはよかったです! やったね、磯波姉」

「うん、浦波ちゃん!」

 

それで二人は手を合わせてきゃっきゃと騒いでいる。

そんな二人の姿を見てやっぱり仲が良いなぁと感じながらも、

 

「ところで二人は町になにか用があったのか……?」

「あ、はい。ちょっと買いたいものがありまして……」

「その……青葉さんにいつも写真を撮ってもらっているのも悪いかなと思いまして……私と浦波ちゃんもカメラには興味がありましたので、今まで貯めていた貯金を切り崩して思い切って買ってみようかなと思ったんです、はい」

 

そこで青葉を話題に出してくるか。

青葉はよくみんなの姿を写真に収めている姿を見かける。

それで聞いてみると鎮守府での思い出をアルバムに収めたいという理由らしいので特に私は反対はしなかったという経緯を持つ。

そんな青葉に磯波と浦波の二人は感化されたのかカメラを欲しがっているという所か。

 

「わかった。それじゃ視察の帰りにカメラショップへと足を運んでみるか」

「あ……! ありがとうございます!」

「それでは司令官。すぐに準備してきますので正門で待っていてください」

「わかった。早めに頼むな」

「はい!」

 

それで二人は一度お金とかもろもろを取りに部屋へと足を運ばせていった。

うんうん。これも成長かな……?

吹雪型のみんなは一部を除いて駆逐艦の模範になろうという気概を感じるから戦闘以外の事にも興味を抱いてくれているというのは私としても嬉しい限りだ。

そんな私の考えが顔に出ていたのか、

 

《提督。どこか嬉しそうですね?》

「おっと、顔に出ていたか。ああ、榛名。戦闘以外で興味を持ってくれて嬉しいんだよな」

《そうですか。でも他の子も結構戦闘以外の事も興味を持っている子はたくさんいますよ?》

「うん、それは分かっているんだけどどうしてもな、そう思ってしまうんだ」

 

そんな会話をしながらも私は磯波と浦波を待つために正門まで来ていた。

そこでは大体いつも正門で警備をしている木曾の姿が見えたので、

 

「木曾。お疲れさま」

「ああ、提督か。どうしたんだ? 町への視察か?」

「まぁ、そんなところだ」

 

木曾と軽い挨拶をしているところで後ろから二人分の足音が聞こえてきたので振り向いてみると磯波と浦波がカバンを持ってやってきた。

 

「司令官、お待たせしました」

「待ちましたか……?」

「いや、大丈夫だ」

 

私はそう言って安心させる。

そこに木曾が声を二人にかけていた。

 

「なんだ。今日の提督の護衛は二人か」

「あ、はい。ちょっと司令官に頼んでみたんです」

「その……買いたいものもありましたので」

「そうか。まぁいいけどな。だけど提督の護衛も抜かりなくやれよ?」

「はい、もちろんです」

「その、頑張ります……」

 

三人の会話もそこそこに私が「それじゃ行くか」という声をかけて町へと出発していった。

 

「その、司令官? もし荷物が増えるようでしたら送ってもらえるのも可能でしょうか……?」

「え? そんな大きいモノを買おうとしているのか……?」

「いえ。ただ、ちょっと値段が張るものかもしれないので……」

「そうか。まぁそれなら店員さんに頼んでみるよ」

「ありがとうございます」

「よかったね、磯波姉」

「うん」

 

そんな会話をしながらも私達は町の視察をするために町内会へと顔を出していた。

 

「町長さん、ご無沙汰しています」

「ああ、提督さん。よく来てくれましたね。今日は視察をよろしくお願いしますね」

「はい、頑張らせていただきます」

「君達も初めて来たのだろうからあんまり気張らなくても大丈夫だからね。この町の人達はいい人ばかりだから」

「「はい」」

 

おそらく初めて顔を出してきた磯波と浦波に気を使ってくれたのだろう。

 

「ありがとうございます、町長さん。ですがよく二人が初めてだとわかりましたね?」

「ええ、まぁ。提督さんは必ず町の視察に来るときは私に声をかけてくれますからその度に連れてきている艦娘の子達も顔ぶれが違いますから誰が来たのかいつも覚えているんですよ」

「そうだったんですか」

 

それで少し町長さんと話をした後に町の視察を開始していた。

今日は祝日ともあり町はいつもより人が多く歩いているのを確認できる。

私が視察に来たのを確認するとその度によく私に声をかけてきてくれるのでとても安心できるというものだ。

そんなこんなで視察をしていく道すがら、

 

「司令官はこの町の人達に慕われているんですね」

「そうか?」

「はい。その、とてもこの町の人達が司令官を信頼しているのが分かります」

「それならありがたいことじゃないか。それで私達もやる気が出していけるしな」

「はい。守っているという思いを抱けますからね」

 

浦波にも同感だと感じてもらってよかったと思う。

それで今日の視察もそろそろ終わりに近づいてきたので、

 

「それじゃ、そろそろ二人のお目当てのものを買いにいくか」

「あ、はい!」

「ありがとうございます!」

 

それで私達は町のカメラショップへと足を運んでいく。

そして店の中へと入っていくと二人は目を輝かせていた。

 

「うわー……浦波ちゃん! これ、いいと思うの!」

「こっちもいいと思うよ、磯波姉!」

 

二人はまるで宝石でも見るような感じでどれを買おうか悩んでいた。

少しその光景に微笑ましいなという気持ちを抱く。

 

《楽しそうですね》

「そうだな」

 

それでしばらく榛名と二人で二人が何を選ぶのか観察していた。

していたんだけど……、

 

「その、磯波さん?」

「はい? なんでしょうか司令官?」

 

私はついその金額に目がいってしまい磯波に声をかけてしまっていた。

 

「その、なんだ? 本当にそれを買うつもりなのか……?」

「そうですけど……なにかおかしいでしょうか?」

「いや、別におかしくはないんだけど……金額がすごいけど大丈夫なのか?」

 

そう、そのカメラ一式の金額が約70万という膨大な金額だったのだ。

確かにお給金は貰っているからそれくらいはお金は持っているだろうけどそれでもさすがに少し見過ごせない金額だった。

 

「本当に大丈夫か……? お金の心配だったら私も工面するぞ?」

「だ、大丈夫です! 司令官の手を煩わせるほどお金には困っていませんから! その、この日のためにこの世界に来てからずっとお金を貯めていたんです……」

 

それで恥ずかしそうに磯波は俯いている。

 

「磯波姉はずっと楽しみにしていましたから」

「そんな浦波も結構な物を買うんだな」

「まぁ、大丈夫です。私の方は10万そこそこですから」

 

それでも高いと思うんだけどな。

まぁいいか……。

 

「まぁ、金欠にならないようにしておけよ二人とも?」

「わかっています」

「その、平気です……」

 

それで二人はカメラ一式を購入していった。

その表情はどこかホクホク顔だったのは言うまでもなかった。

そして鎮守府へと帰ってみると青葉と遭遇して、

 

「なっ!? い、磯波ちゃん? そのカメラはまさか!?」

 

と、あの青葉ですら驚愕していたのは私の気持ちを代弁しているようだったと記載しておく。

 

 




観艦式modeの浦波の方のカメラはまぁいいんですけど、磯波の方はちょっと本気度がすごいと感じましたね。
しばふさん、本当にいい仕事をしますね。




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