【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0146話『フランス艦の語らい』

 

 

 

 

ウォースパイトとアークロイヤルがこの鎮守府での提督の事や色々と話をしている同時間に、コマンダンテストとリシュリューもまたこの鎮守府について話をしていた。

 

「コマンダンテスト、この鎮守府について教えてもらえマスカ?」

「いいですよ。この鎮守府は少し特殊ですから誰かが新入りには教えるというのがしきたりのようなものになっていますカラ」

 

コマンダンテストはそう言って笑顔を浮かべる。

前回の大規模作戦時はガングートにはヴェールヌイが教えていたりと同郷の人が教えるパターンが多かったりする。

北海道組も縁がある多摩が教えていたりしたからである。

それでコマンダンテストもウォースパイトが説明したような感じでこの鎮守府の事情と提督について話をしていた。

それで聞き終えたリシュリューはというと、

 

「J’ai été surpris……いえ、驚きました。ハルーナとamiralがそういう不思議な関係だなんて……」

「はい。それでも現状二人は今のところはお互いに不満がないところなんですね」

 

それでコマンダンテストは手を合わせて「いいものですねー」と笑っていた。

リシュリューもそんなコマンダンテストに同意したのか同じように笑みを浮かべていた。

 

「amiralについてはわかったわ」

「もういいのですか……?」

「ええ。リシュリューが色々と意見を言っても現状はもう変えられないのだからamiralの件については素直に受け入れるわ」

「そうですか」

「それより問題なのは……あなた達よ」

「私達……? なにか変なとこがありましたか?」

「ええ。リシュリューはこの世界で生み出された艦娘だけど、あなた達は……いえ、この鎮守府のほとんどは別の世界ではもとはただのデータだったのでしょう? 体の不備とかはないのかしら?」

「あー……その事でしたか。はい、大丈夫デスヨ。確かに私達はもとは自由意思のないデータでしたけどちゃんと心は持っていました。

そしてこの世界に転移したと同時に束縛という名のそれが解放されて提督とも自由にお話ができるようになったんデス」

「そうなの……。コマンダンテスト以外にもそんな感じの子は何人もいるのでしょう? 意識調査とかはしたの?」

「はい。この世界に転移してきて提督とも合流出来た後にみんなで色々と話し合いましたから。それで感じたのが総じて提督への思いでしたね」

「提督への思い……?」

 

それでリシュリューは不思議そうに首を傾げる。

この世界出身のリシュリューはいまいち要領が得ないだろうけど、ゲームとしてのキャラクターとして存在していた彼女達は刷り込みのような思いを感じていたのだ。

 

「提督に対してのこの気持ちは本当のものなのか……。それが最初に話し合われた議題でしたね。ワタシ達は本当に提督に対して親しみを感じているのか……? それは皆さんも同様だったのでしょう。ワタシ達の心はもともとデータでしたから本物の物ではありませんでした。ただ、データ場、提督に対して普通に接触できる程度のモノだという感じだったのかもしれません。

でも、この世界に来て本物の体と心を手に入れたワタシ達は提督の事を本当に思っているのか……? それだけが不安要素でした」

 

……そう、当時まだ提督とも合流できていない現状で不安一色だった鎮守府と艦娘達。

あちこちで泣き声やすすり泣きが聞こえてくるような現状でコマンダンテストも不安に支配されていた。

ワタシ達はこれからどうすればいいのかすら判断できない状況だったのだから。

 

「だけど……」

「だけど?」

「ハルーナの姿としてワタシ達の前に現れた提督によってワタシ達はその不安を吹き飛ばされました。提督はワタシ達の事を心の底から大事に思っていてくれたのです」

 

それでコマンダンテストはあの時の提督の行動をリシュリューに教えた。

覚悟のこもったやり取りは、見ていて嬉しいものだったと……。

 

「Japan式のDogezaというものをしたのね、amiralは……」

「ハイ。それでワタシ達はこの気持ちが嘘の物ではないと確信を持てたのです」

 

それで両手を胸に持って行って添えるコマンダンテスト。

この気持ちは本物なのだと。

提督の事を信じていいのだと。

 

「それに……ワタシ達は提督の事を大体はもとから知っていたのが大きいですね」

「それはそうでしょうね。データの時から一方的にamiralはあなた達に話しかけていたのだから」

「はい。だからお互いに隠しあう事もあんまりないのが嬉しいのです」

「なるほど……ね? あっちの世界でのamiralはどういった感じの人だったの? リシュリューは最初からハルーナと同化している状態のamiralしか知らないから……」

「それについては内緒にしておきます。リシュリューを混乱させたくないから」

 

それでコマンダンテストはわざわざ指を口の前に持って行って内緒の為のジェスチャーをしたのであった。

 

「ひどいわ……。amiralとは隠し事がないのにコマンダンテストはリシュリューとは隠し事をするのね?」

「ゴメンナサイ……」

「嘘よ嘘。大丈夫よ、誰だって隠した事があるのは当たり前だから。それにもうamiralもあなた達に隠している事もいくつかはありそうだしね」

「それは……そうですね。もうディスプレー越しではないのですから、提督も秘密の一つや二つはあっても不思議ではありませんよね?」

「ええ。まぁ、ハルーナは大体は把握しているでしょうけどね」

「あはは……。確かに。提督はハルーナには頭が上がらないと以前に言っていましたから」

「ふふ。やっぱりこの鎮守府は面白いわね。これからの生活がとても楽しみだわ」

「そう思っていただけると嬉しいです」

 

それで二人はこれからも続くであろう、この鎮守府での生活に思いを馳せたのであった。

 

 

 




今回は初登場時にあんまり話せなかったリシュリューとコマンダンテストとの会話を書きました。
元の世界出身者の艦娘とこの世界の出身の艦娘は意識の根底が少し違いますからね。
ズレはあって然るべきです。




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